日雇い派遣とは? 定義、年収要件、実態、社会保険、確定申告

日雇い派遣とは、1日や数日といった短い期間だけ派遣先の企業で働くシステムのこと。ここでは日雇い派遣の定義や実態について解説します。

1.日雇い派遣とは?

日雇い派遣とは、労働契約が1日単位の短い期間で働く派遣のこと。労働基準法では「30日以内の期間で雇用される契約」を日雇い派遣と定義しています。

働き方の多様化と、慌ただしいタイミングにて人員確保できる点で需要があり、1999年から急速に広まりました。手軽に登録でき、利用者のライフスタイルと融通が利きやすいため、副業したい人や学生、主婦など幅広い層が利用したのです。

しかし2012年労働者派遣法の改正にて、一部の場合を除き日雇い派遣は禁止となりました。

日雇い派遣の年収要件

「日雇い派遣は労働者の保護に欠ける」という理由から、原則、禁止されているものの、例外も存在します。やむなく日雇い派遣に就いているわけではない場合、日雇い派遣の従事が認められるのです。

たとえば世帯年収が500万以上かつ主たる生計者ではない人や、本業で500万円以上の収入を得ている人は、日雇い派遣をしても問題ありません。

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2.日雇い派遣は原則禁止

日雇い派遣は時間の都合が合わせやすく、さまざまな職業を体験できるといった理由で学生や主婦などの人気を集めました。しかし正社員との収入格差や雇用安定のため、2012年に派遣法35条で原則禁止となったのです。

とはいえいくつか例外があります。ここでは禁止となった経緯や、例外となる業務について見ていきましょう。

禁止となった経緯

2008年ごろに、不適正な日雇い派遣が問題化しました。労働期間が短いため、企業側が雇用管理を実施できていなかったのです。

それにより労働災害トラブルや、ワーキングプア(働いているにもかかわらず収入水準が低い人たち)などの問題につながりました。政府は派遣労働者の保護に欠けると判断し、2012年に労働者派遣法の改正で日雇い派遣を原則禁止したのです。

日雇い派遣禁止の例外

一部例外となるケースもあります。例外に当てはまれば、日雇い派遣で働いても問題ありません。例外には「業務」「労働者」の2つあり、いずれかに当てはまっていれば日雇い派遣で働けます。

例外業務

日雇い派遣労働者の正しい雇用管理に支障をきたす可能性がないと見なされる業務では、日雇い派遣の雇用が認められています。例外業務の一例を紹介しましょう。

  • ソフトウェア開発
  • 秘書
  • 取引文書作成
  • 受付や案内
  • 通訳や翻訳、速記
  • 書籍の制作や編集
  • 広告デザイン

なお厚生労働省では、18種類の例外業務を認めています。

例外となる日雇い労働者

以下の条件を満たす人は、日雇い派遣禁止の例外となります。

  • 60歳以上
  • 雇用保険が適用されない昼間学生
  • 本業の年収が500万円を超えており、副業として従事する者
  • 世帯収入が500万円を超えており、主たる生計者以外の者

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3.日雇い派遣の実態

日雇い派遣に従事する人はどれくらいいるのでしょう。ここでは、現代の日本における日雇い派遣の実態について説明します。

日雇派遣労働者数の推移

日雇い派遣禁止前の2011年の日雇い派遣労働者数は6万5,000人ほど。2012年に日雇い派遣が原則禁止となった翌年の2013年から、およそ半数の3万500人に減少しました。

2017年は4万5,916人まで増えたものの、現在まで日雇い派遣労働者の平均数は3万人ほどで推移しています。

日雇派遣労働者の内訳

近年、日雇い派遣労働者の数は再び増加しています。2018年は2万5,433人で、2019年に3万1,000人、2020年には3万2,502人。ではどのような人がどのような業種の日雇い派遣で働いているのでしょう。ここでは日雇い派遣労働者の内訳を見ていきます。

属性別

2018年時点の日雇い派遣労働者の内訳は、以下のとおりです。

  • 60歳以上(11.7%)
  • 学生(25.4%)
  • 副業として従事する者(4.8%)
  • 主たる生計者ではない者(43.0%)
  • そのほか(15.1%)

学生や主たる生計者ではない者が、単発の派遣業務で働くケースが多くなっています。

業種別

2018年時点における日雇い派遣の業種別割合は、以下のとおりです。

  • 添乗(33.3%)
  • 受付・案内(27.4%)
  • 事務用機器操作(14.0%)
  • 財務(4.8%)
  • そのほか(20.5%)

たとえば65歳以上の人がバスツアーの添乗員として働いたケースです。

日雇派遣労働者の派遣料金・賃金の推移

厚生労働省の「労働者派遣事業報告」によると、2014年は1時間当たりの派遣料金が1,783円、労働者への賃金が1,294円。2018年は派遣料金が1,911円、賃金が1,332円でした。労働者への賃金はほとんど変わりませんが、派遣料金だけ高くなっています。

教育研修の実施について

厚生労働省委託の「労働者派遣法施行状況調査(令和元年度実施)」によると、一般労働者と日雇い派遣労働者では、教育実習の実施割合が異なっています。

雇用期間1カ月以上の労働者に対しては97.5%、日雇い派遣労働者が90.0%です。研修や教育の内容を見ると、日雇い派遣労働者に対するコンプライアンスや情報の保護に関する研修が少ない傾向にあります。

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4.日雇い派遣の社会保険

日雇い派遣労働者は働く時間が少ないため、保険に入れないと思う人も多いでしょう。しかし実は、保険に加入する手段があるのです。ここでは、その方法について説明します。

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雇用保険

雇用保険に加入するための条件は、「雇用保険に適用した事業所に雇用されている」のみ。そのため必要な手続きさえ行えば、日雇労働被保険者となります。前提条件には契約期間や勤務日数などが設定されていません。

ただし実際に雇用保険へ加入する際は、「同じ事業者のもとで31日以上継続して働く」または「2か月以上続けて18日以上働く」という条件を満たす必要があります。

日雇労働被保険者手帳

日雇労働被保険者手帳とは、日雇労働被保険者と認められた場合に交付される手帳のこと。手帳を手に入れるには、雇用保険の適用事業所に配属されたのち、本人がハローワークで必要な手続きをしなければいけません。

日雇労働被保険者資格取得届に記入をし、住民票か住民票記載事項証明書をともに提出すれば手続き完了です。内容に問題がなければ日雇い労働被保険者として認められ、日雇労働被保険者手帳が交付されます。

日雇労働求職者給付金制度

日雇労働求職者給付金とは、日雇労働被保険者に対し、基本手当に代わって支給される失業給付のこと。日雇い派遣労働者が仕事をした日は、派遣企業に日雇労働被保険者手帳を提出し、雇用保険印紙の貼付と消印を受けます。

失業時、一定以上の印紙の貼付と消印の数があれば日雇労働求職者給付金の給付が得られます。給付を受けるには、下記条件のうちいずれか1つを満たさなければなりません。

  • 失業した月の前の2カ月間で、26日分以上の印紙の貼付と消印がされている
  • 労働期間のうち連続する6か月の間、各月11枚以上、合計78枚以上の印紙の貼付と消印がされている

条件を満たしたら、ハローワークへ手帳を提出して給付を受けます。

労災保険

労災保険は、通勤中や業務中の事故やケガ、病気や死亡などが発生した際に労働者へ保険金を給付する制度のこと。すべての労働者が対象で、正社員はもちろん、パートやアルバイト、日雇い派遣も労災保険の対象です。

日雇い派遣が労災を受ける場合、派遣元が費用を全額負担します。日雇い派遣の労働中に怪我や病気などにかかってしまっても、労働者はお金を払う必要がありません。

労働者派遣における労災事故発生状況

厚生労働省の「令和元年労働災害発生状況の分析等」によると、派遣労働者の労災発生状況は、休業4日以上の死傷者数が2014年3,609人、2019年が5,911人と増加しています。

しかし死亡数を見てみると2014年は24人、2019年は15人と減少。死傷者が出ている業種の割合は製造業が50%近くと半数を占めています。また事故の原因として挙げられるのは、はさまれや巻き込まれ、転倒などです。

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5.日雇い派遣における確定申告の必要性

日雇い派遣といっても、条件を満たしていれば確定申告をしなければいけません。確定申告が必要な場合と不必要な場合の条件を見ていきましょう。

必要な場合

1年間(1月から12月まで)の所得が103万円以上の場合、確定申告が必要です。日雇い派遣の場合、給与を手渡す場合も多くなっています。しかしどのような給与の受け取り方でも確定申告はしなければなりません。

ただし年末調整や源泉徴収が行われていれば、自分で確定申告を行う必要はありません。また以下の条件をすべて満たす場合は所得税が発生し、源泉徴収が必要となります。

  • 日給9,300円以上(交通費をのぞく)
  • 雇用主が事業者で、雇用契約を結んでいる
  • 2カ月以上の継続で日雇い契約をしている

不要な場合

日雇い派遣でも、源泉徴収や年末調整が行われている場合、確定申告の必要はありません。しかし日雇い派遣は単発の仕事がほとんど。そのため源泉徴収や年末調整を行っていないという企業も見られます。

その場合、本人による確定申告が必要です。ただし年間の所得が103万円を下回る場合、源泉徴収や年末調整が行われていなくとも確定申告の必要はありません。

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6.日雇い派遣を雇う場合

日雇い派遣を雇う場合、派遣先企業と派遣元企業は守るべき事柄があります。それぞれの企業がやらなければいけないことを見ていきましょう。

派遣先企業がやるべきこと

派遣先企業は、日雇い派遣労働者の雇用を安定させるために労働者派遣契約の就業条件を遵守し、安全衛生教育を実施しなくてはなりません。

  1. 就業条件の確認
  2. 派遣労働者の業務
  3. 安全衛生教育がされているかの確認
  4. 関係者への周知

①就業条件の確認

派遣先企業は、労働者に賃金や労働時間、労働内容などを労働者に明らかにするため「就業条件明示書」という書類を用意しなければいけません。これは日雇い派遣労働者を雇う際でも同じです。

厚生労働省で「就業条件明示書」の様式が公開されているので、事前に確認しておきましょう。

②派遣労働者の業務

派遣先労働者の仕事内容は、労働者派遣契約で決めた業務のみ。派遣先企業は勝手に業務内容を変更できません。

どうしても行わなければいけない追加作業が出てきた際は派遣元企業と話し合い、日雇い派遣労働者の意思を尊重したうえで契約内容に書きくわえます。

③安全衛生教育がされているかどうかの確認

派遣先企業は、派遣元企業が日雇い派遣労働者に、安全衛生教育を確実に行ったのかを確認しなければいけません。もし行われていなかった場合、労働安全衛生法によって派遣先企業も罰則を受ける可能性があります。必ず安全衛生教育を実施しましょう。

④関係者への周知

日雇い派遣労働者を雇った派遣先企業は、文書の配布で日雇い派遣労働者や直接指揮をする関係者に、関係法令(労働者派遣法や労働基準法、労働安全衛生法や雇用保険法、健康保険法など)の周知を行います。

派遣元企業がやるべきこと

続いて、派遣元企業が労働者を派遣する際にやるべきことを説明します。

  1. 就業条件の確認
  2. 就業条件が守られているか確認
  3. 労働・社会保険の手続き
  4. 労働条件の提示
  5. 教育訓練・安全衛生教育

①就業条件の確認

派遣元企業も、就業条件や勤務状況の確認をしなければいけません。派遣先の巡回や就業状況の報告などから、労働者派遣契約に反していないかを確認します。とくに大事なのが残業時間の確認や、日雇い派遣禁止の例外業務を担当していないかどうか、の確認です。

②就業条件が守られているか確認

派遣元は派遣先が労働者派遣契約に反していないか確認し、日雇い派遣労働者が問題なく働けるようにしなければいけません。そのために派遣先と細かな連絡や調整を行います。また日雇い派遣労働者に対して労働者派遣契約の違反がなかったか、確認しましょう。

③労働・社会保険の手続き

派遣元企業は、日雇い派遣労働者を社会保険や労働保険に適切に加入させなければいけません。日雇い派遣労働者を派遣する際、派遣先企業に保険加入の有無を通知します。日雇い派遣労働者を保険に加入させていない場合、非加入の理由を通知しましょう。

④労働条件の提示

労働契約が決まったら、日雇い派遣労働者に対して、書類で労働条件を詳しく伝えます。伝える内容は業務内容や賃金、休みの数など。そのほか派遣料金額(派遣元が派遣先から受け取る金額)も伝えます。

⑤教育訓練・安全衛生教育

派遣元企業の事業主もまた、日雇い派遣労働者に対して教育を行う必要があります。業務遂行や業務効率化のための教育訓練や、雇い入れ時の安全衛生教育です。

以前は必須となっていませんでした。しかし派遣労働者のキャリアアップ推進が義務化となったため、十分な教育の実施が義務付けられたのです。