「費用対効果」とは、商品やサービスにかかったコストに対する利益のこと。企業の意思決定において重要な指針のひとつです。ここでは費用対効果の計算方法や使い方、指標の種類などを解説します。
目次
1.費用対効果とは?
費用対効果とは、商品の製造や販売、管理などにかかった金銭的あるいは時間的なコストに対して得られた効果のことです。得られると見込まれる成果が掛けたコストに見合うかどうかを判定する企業経営において重要な指標でもあります。また仮説検証サイクルにおける仮説をブラッシュアップする際にも欠かせない指標です。
- 少ない費用で大きな効果を得られた場合:費用対効果が「良い」または「高い」という
- 効果が費用を下回る結果になる場合:費用対効果が「悪い」または「低い」という
2.費用対効果とROIの違い
ROI(Return On Investment)とは、投資した費用に対して得られた利益の割合を示す指標のこと。日本語では「投資収益率」といいます。
費用対効果との違いは、効果が出るまでの期間。費用対効果は、広告などすぐに効果が期待できる施策の効果を測り、ROIは設備投資や人材育成など長期的な施策の効果測定に使われます。
また費用対効果とROIは、効果を表す単位も異なるのです。費用対効果では施策にかけた費用に対して得られた効果を「円」で、「ROI」は得られた効果を「%」で表します。それぞれの数字を割り出す計算式を紹介しましょう。
- 費用対効果(円)=効果−費用
- ROI(%)=利益÷費用×100
どちらも数字が大きければ「収益性が高い」と判断できます。
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3.費用対効果とコストパフォーマンスの違い
コストパフォーマンスとは、価格に対する満足度の高さを示す和製英語。同じスペックを持つ商品が2つあった場合、価格が安いほうは「コストパフォーマンスが良い(高い)」、逆に価格が高いほうは「コストパフォーマンスが悪い(低い)」となります。
2つの違いは効果を見るときの目線です。費用対効果は「企業目線」で経費に対する効果を評価し、コストパフォーマンスは「消費者目線」で商品やサービスの価格に対する満足度を評価する傾向にあります。
4.費用対効果がビジネスで重要な理由
費用に見合う効果が得られなければ、ビジネスは成り立ちません。たとえば新事業の設立や新商品の開発、人材育成など何かの施策を行う際、「どれだけ効率的に利益を得られるか」という費用対効果の概念は不可欠です。
- 意思決定の指針
- パフォーマンスの可視化
- 将来の予測
①意思決定の指針
費用対効果を用いれば規模の異なる事業でも比較できます。また「どの事業にどの程度の費用をかけるべきか」を意思決定する指針にもなるのです。
費用対効果が低い事業は、無駄な費用を投じたことになり、利益も見込めません。原材料費や輸送費、人件費などの費用が高騰すれば、赤字を出す可能性もあります。費用対効果が高い事業は利益が出やすく、さらに大きな事業に成長する可能性もあるでしょう。
つねに費用対効果を観察すると、問題の見直しや改善策の立案につながります。
②パフォーマンスの可視化
費用対効果を算出すると、パフォーマンスを可視化できます。施策の効果を感覚ではなく明確なデータとして検討できるので、今後の事業の方向性を判断しやすくなるのです。
たとえば、広告を出したあとの売上と広告費用で費用対効果を算出すれば、その広告に効果があったかを数字で把握できます。担当者の「効果があった気がする」という感覚だけで、無駄な施策が続く状況を避けられるでしょう。
施策の比較
費用対効果を算出すると、異なる事業や施策の比較が容易になります。
たとえば単価の異なる商品は、単純に売り上げを比較できません。また商品の制作や販売にかけた費用も、そのまま比較するのは困難です。費用対効果を使えば利益から費用を引いた金額が示せるので、単価やコストが異なる商品でも明確に比較できます。
③将来の予測
費用対効果は結果の効果だけでなく、将来的に生じる費用や利益の予測も可能です。
新しい営業戦略や事業計画を策定する際過去あるいは他社の実績や市場の相場から費用対効果を算出すれば、実施したときの効果を予測できます。費用対効果が高い戦略や計画へ調整しておけば、実施後に赤字を出すリスクを減らせるのです。
5.費用対効果の使い方
費用対効果は、計測して比較し、その後検討して活用する指標のこと。以下のような言葉と一緒に使われることが一般的です。
- 費用対効果を「試算する」「計測する」「計算する」「比較する」
- 費用対効果が「高い」「低い」
- 費用対効果が「優れている」「劣っている」
- 費用対効果が「見込める」「見込めない」
- 費用対効果が「期待できる」「期待できない」
用いられる場面
ビジネスシーンでの費用対効果は、以下のような場面で使われます。
- 商品の製造原価の検討
- 商品の価格設定
- 販売個数の検討
- 広告出稿の検討
- 類似した企画の比較
- 販売方法の検討
- 物流システムの検討
- マーケティング戦略の改善
ビジネスで費用対効果を使うタイミングとして挙げられるのは、施策や戦略の検討や意思決定などです。
具体的な例文
ビジネスシーンにおける費用対効果の例文をご紹介します。
- 「3つの施策の費用対効果を比較検討した結果、Aを採用することになった」
- 「この事業は費用対効果が優れており、成長が期待できる」
- 「新製品の費用対効果が低いので、製造原価や物流コストを検討し直すべきだ」
- 「費用対効果を算出して広告の効果を検討する」
6.費用対効果の計算方法
費用対効果の計算は、「費用」と「効果」をどのように考えるかがポイントです。ここでは費用対効果の計算方法について、説明します。
計算式
費用対効果の計算式は「費用対効果(円)=効果−費用」です。
たとえば2,000万円の費用をかけた事業を例に見てみましょう。3,000万円の効果が出たときの費用対効果は1,000万円、2,500万円の効果が出たときの費用対効果は500万円です。この場合、前者のほうが効率的に運用されているといえます。
「費用」に該当するもの
費用対効果の算出における費用には、その事業にかけたすべてのコストを含めます。たとえば商品の開発・製造・販売そして物流にかかったお金と時間、また人件費や労働時間も「費用」です。
「効果」に該当するもの
費用対効果の算出における「効果」には商品の売上やサイトへのアクセス数、問い合わせの数やブランドイメージの向上、メールアドレスの登録数などが含まれます。
7.費用対効果が見合わない時の打ち手
費用対効果が低い場合、改善策を打たねばなりません。ここでは4つの方法について、解説します。
- コスト削減
- 生産性の向上
- 業務の効率化
- 需要に応じた価格設定
①コスト削減
効果が同じ場合、費用を抑えると費用対効果の値は高くなります。部署問わず実施できるコスト削減の方法は、以下の2つです。
業務の最適化と標準化
業務プロセスの無駄を省いて最適化すれば、余計な手間やコスト、時間をカットできます。また最適化された業務の業務マニュアル化を整備し、誰でもわかるように整えればば、人件費や人材育成コストも削減できるでしょう。
アウトソーシングの導入で固定費を削減
常に社内の人材が業務を担当すると、固定コストになってしまいます。アウトソーシングを導入すれば、必要なときだけ委託料を払うといったコスト管理が可能です。
②生産性の向上
生産性とともに業績が向上すれば、費用対効果が高まります。また生産性の向上にて労働時間が短縮され、人件費といったコストがさらに下がるかもしれません。生産性を向上する施策として有効なのは、下記のようなものです。
- 残業や休日出勤を減らし、従業員へ十分な休息を与える
- 福利厚生を充実させてモチベーションを高める
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③業務の効率化
ITシステムやツールを活用すると業務が効率化し、生産性も向上します。無駄な作業を省けるようになるので、労働時間や交通費の削減も可能でしょう。
たとえば「クラウドストレージサービス」「チャットサービス」「顧客管理ツール」「タスク管理ツール」などは、情報共有や業務管理の円滑化に役立ちます。
④需要に応じた価格の設定
商品の単価を上げれば、同じ個数を販売しても売上が向上します。需要に応じて商品の価格を上げるのもひとつの方法といえるでしょう。
しかしただ価格を上げるだけでは、顧客が離れてしまうかもしれません。「パッケージのデザインを一新する」「商品に懸賞の応募券を付ける」など、顧客が納得する付加価値をつける施策が必要です。
8.費用対効果を示す指標
費用対効果を示す指標として使われている下記について、概要と計算方法について説明します。
- ROAS
- CPA
①ROAS(Return on Advertising Spend)
広告の費用対効果を表す指標のことで、その広告が「売上」に貢献した割合がわかるのです。
ROASと似たROIは、広告費に対して得られた「利益」の割合を示します。ただし売上からどれほど利益が残るかのほうが重要であるため、同時にROIも算出すべきです。
それぞれは以下の計算式で求められます。
- ROAS(%)=売上÷広告費×100
- ROI(%)=利益÷広告費×100
②CPA(Cost Per Action/Cost Per Acquisition)
「顧客獲得単価」を示す指標のことで、1件のコンバージョン(CV:サイトの訪問者が利益につながるアクションを起こすこと)を得るためにかかった費用を円で表します。たとえば「資料請求」「会員登録」「問い合わせ」「購入」などです。
CPAは以下の計算式で求められます。
- CPA=広告費÷コンバージョン数
またCPA(顧客獲得単価)には「CPO(注文獲得単価)」「CPR(レスポンス獲得単価)」が含まれます。この2つについて、以下で詳しく説明しましょう。
CPO(Cost per order)
「注文獲得単価」を意味する指標のことで、1件の注文を獲得するのにかかった費用を円で表すものです。CPOは以下の計算式で求められます。
- CPO(円)=広告費÷注文件数
上記の計算に当てはめると、100万円の広告費をかけて20人が購入した場合のCPOは5万円。一方100万円の広告費をかけて5人しか購入しなかった場合、CPOは20万円です。
CPOの値が小さいほど、効率的に受注できていることを示すのです。
CPR(Cost Per Response)
「レスポンス獲得単価」を意味する指標のことで、1件のレスポンスを得るのにかかった費用を円で表します。
レスポンスとは、サイト訪問者の「反応」を指し、具体的には「メールアドレスの登録」「無料サンプルの請求」「お問い合わせ」などのこと。CPRのレスポンスに購入は含みません。そのため訪問者が商品を購入した場合、CPOやCPAを使うのが一般的です。
CPRは以下の計算式で求められます。
- CPR(円)=広告費÷レスポンス数