非財務情報とは?【具体例でわかりやすく】ESG、人的資本

非財務情報とは、経営理念や経営計画、ESG情報など財務以外の情報のことで、企業評価の際に活用されています。注目される理由や情報開示のメリットなどについて、見ていきましょう。

1.非財務情報とは?

非財務情報とは、企業が投資家や株主、債権者などに対して開示する情報のうち、財務諸表などで開示される情報以外の情報のこと。たとえば有価証券報告書やCSR報告書、統合報告書など、企業が定期的に市場に開示する各種文書です。

財務情報との違い

財務情報は、企業の決算書のこと。たとえば下記のようなものです。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 附属明細書

上場企業は、財務諸表を開示しなければならないと金融商品取引法で定められています。

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2.非財務情報の具体例

IIRC(国際統合報告評議会)が国際統合報告フレームワークを発行しています。6つに分類された資本のうちで財務資本を除いた、下記の5つに関する情報が非財務情報です。それぞれについて解説します。

  1. 製造資本
  2. 知的資本
  3. 人的資本
  4. 社会・関係資本
  5. 自然資本

①製造資本

製品製造またはサービス提供に利用される設備や施設、インフラなどの製造物のこと。製造資本は一般にほか組織によって製造されます。ここには組織が販売目的で製造する試算や自ら使用するために保有する資産も含みます。

②知的資本

特許やノウハウ、人材や技術、組織力や顧客とのネットワーク、ブランドなど目に見えない無形資産のこと。企業に固有の知的資産を認識し、有効に組み合わせて活用して収益につなげる経営を知的資産経営と呼びます。

③人的資本

従業員のもつ能力やスキル、経験のこと。健康状態や従業員満足度などを含める場合もあります。具体的には、下記のようなものです。

  • 組織戦略を理解して実践する能力やプロセス
  • 商品やサービス改善への意欲
  • リーダーとしてのマネジメント能力

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③社会関係資本

信頼や規範、ネットワークやコミュニティ、ステークホルダー(株主や従業員、顧客や地域社会など)・グループなどの関係性を高めるため、情報を共有する能力のこと。共通の価値や共有された規範など、無形資産も含みます。

④自然資本

植物や動物、空気や水、土や鉱物など、再生可能および非再生可能な天然資源のこと。自然が人々に与えている利益は当たり前ではなく、社会や経済を支える重要な資本のひとつです。

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3.非財務情報が注目される理由

地球規模で環境課題、社会課題が深刻化しているなかで、継続的に成功し続けるビジネスモデルであるかを把握するため、情報の開示が求められています。

環境課題について求められるのは、下記のとおりです。

  • 地球温暖化課題に対応するための移行
  • 環境共生社会への変換
  • 資源、エネルギー資源の有限性に適応するための循環型社会の構築
  • 社会課題について企業への負担や貢献が求められるのは、下記のとおりです。
  • 先進国の少子高齢化
  • 途上国の貧困、衛生課題

ESG投資市場の拡大

ESG経営とは、環境汚染や社会的規範、コーポレートガバナンスの遵守を重視した経営スタイルのこと。ESG経営に取り組んでいる企業は、長期的な成長が見込めるとして投資家が注目しているのです。

ESGに着目したESG投資では非財務情報も考慮されます。ESGを意識した経営戦略のポイントは、下記のとおりです。

  • サステナビリティ(持続可能性)への取り組み強化
  • 社会のダイバーシティに即した組織づくり
  • 労働環境の改善
  • ガバナンスの徹底

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GPIFの参画

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)とは、国の年金積立金を管理、運用する機関のこと。

2017年にGPIFがPRI(責任投資原則:投資活動における投資原則)に署名したことを機に、ESG投資が長期的な資産運用法として評価されつつあります。GPIFは年金資金を確保するため、保有資産の1/4を投資しているのです。

人的資本経営の強化

人的資本は、人が持つ能力を資本と考えます。経済産業省では人的資本経営について「人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」と定義しているのです。

ダイバーシティ雇用や少子高齢化、働き方改革などで、多様な人材を活用してその価値を最大限に高める施策が重視されています。また中長期的に企業価値を向上させるには、それらの人材を活用する人的資本経営へシフトする必要があるでしょう。

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4.非財務情報に開示義務はあるのか?いつからか?

2023年3月期の有価証券報告書から義務化が予定されている項目は、次のとおりです。

人的資本

  • 人材育成方針
  • 社内環境整備方針

※上記2方針の指標および目標

多様性

  • 女性管理職比率
  • 男性の育児休業取得率
  • 男女間賃金格差
  • コンプライアンス/倫理

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5.非財務情報とESGの関係

非財務情報に含まれるESGは、企業の持続的成長性を評価する基準として企業へ投資する際に活用されています。環境や社会問題への取り組み、ガバナンスなど、財務状況だけでは見えにくい将来の企業価値を判断する上でESGは重要視されているのです。

しかし現在、ESGについての世界での基準統一はなく、評価指標についても各評価機関側の判断で行われています。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を中心に統一化が進められているのです。

ESGスコアの算出に非財務情報が必要

ESGスコアは、企業のESGにおけるパフォーマンスやリスクについて、WebサイトのIR・SR・CSR、アンケートなどを通じて情報を取得し、測定・算出するための評価指標のこと。スコアによってESGの取り組みの比較が可能となります。

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6.非財務情報と人的資本の関係

人的資本は非財務の価値のひとつ。人的資本とは、その人が持つ能力を資本とする考え方です。資本は投資の対象になるため、人的資本に投資をしてその価値を磨き、将来的に企業価値向上につなげるという捉え方になります。

2020年に米国証券取引委員会が、人的資本に関する情報開示を義務づけました。企業の規模に関係なく、企業運営においては人的資本の情報開示が重要とされており、今後、日本でも開示の義務化への動きが高まるとされています。

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7.非財務情報開示のメリット

非財務情報の開示はさまざまなメリットを企業に与えます。それぞれについて見ていきましょう。

  1. 企業評価の向上
  2. 強みや特徴を共有
  3. 投資家と企業の関係が良好化

①企業評価の向上

投資家や地域社会、一般市民などのステークホルダーからの評価と信頼が高まり、企業価値が向上します。株価上昇による資金調達も効率化し、得られるフィードバックをもとに、経営の改善から評価の向上というサイクルを作るのも可能です。

また、政府や投資家以外の要請に対する開示にも適切に対応すると、評価向上が期待できます。

②強みや特徴を共有

財務情報からは読み取れない、自社の事業活動やビジネスモデル、ビジョンやメッセージなどをとおして、自社の強みや特徴を伝えられます。

戦略的に企業価値のプロセス、自社の思いなどを投資家に届くよう、ストーリー仕立てにして自社をPRすると、経営意思としての非財務情報を投資家に訴求できるのです。

③投資家と企業の関係が良好化

自社の強みや特徴だけでなく、リスクなどの非財務情報を自発的な意思で公開することで、企業活動の透明性がより高まります。その際、わかりやすく説明し戦略的な開示が必要です。

その結果、企業上層部と投資家の間でより深く、かつ良質なコミュニケーションが可能となり、投資家の企業に対する理解や信頼も向上しやすくなります。

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8.非財務情報開示のポイント

企業が非財務情報を開示する際は、実績が不十分な取り組みも開示する、価値協創ガイダンスの活用が重要なポイントです。

  1. 実績が不十分な取り組みも開示
  2. 価値協創ガイダンスを活用

①実績が不十分な取り組みも開示

企業としての課題認識とそれに対する意思表示が重要です。取り組みが遅れている実績こそ、データの開示は良策になります。開示がなければデータを把握する仕組みの欠如と取られるでしょう。

積極的な情報開示を続けると、その企業に関心を持つステークホルダーが増えていきます。また投資家との新たなコミュニケーションが生まれる期待も持てるでしょう。

②価値協創ガイダンスを活用

価値協創ガイダンスとは、経済産業省が情報開示基準のひとつとして公表した「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス―ESG・非財務情報と無形資産投資―」のこと。

企業と投資家のあるべき姿を6項目にわけて解説しています。投資家はどのような情報を求めているのか、企業はどのような情報を開示すべきかなど、わかりやすい内容です。

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9.非財務情報の開示指針研究会とは?

内閣官房は「非財務情報可視化研究会」を発足しました。伊藤邦雄一橋大学CFO教育研究センター長を座長に、大手企業の役員や有識者など14名で構成されています。立ち上げの背景や、取り組みの内容を解説しましょう。

立ち上げに至った背景

世界で非財務情報開示の重要性が高まり、欧米を中心に開示への取り組みが進んでいます。日本企業の成長においても国内外への開示は不可欠であり、日本における開示の方向性を定める必要があるため、立ち上げに至りました。

取り組み内容

非財務情報の開示指針研究会は2021年より10回の議論を行いました。研究会の実績は経産省のWebサイトで確認できます。

  • 開示指針の世界的な動向把握
  • 開示事例を踏まえた人的資本開示で生じる課題の検討
  • 気候関連の財務報告基準のプロトタイプを踏まえた開示のあり方に関する検討
  • SSBのTRWGが公表した気候関連開示プロトタイプ等の分析・検討