法人税とは、法人の所得金額をもとに算出する国税です。ここでは、法人税についてさまざまな角度から解説します。
目次
1.法人税とは?
法人税とは、法人が得た利益に対し課税される税金で、国税のひとつです。英語では「corporate tax」と記され、法人の所得金額などを課税標準として税額を算出します。
個人が得た利益に対し課税される所得税と性格が類似しているため、法人税は広意義で所得税の一種と考えられているのです。
税金には、税金を納める納税者と税を負担する担税者がおり、
- 納税者と担税者がイコールなのは直接税
- 納税者と担税者が異なるのは間接税
法人税は、直接税に分類されています。
2.法人税の種類は?
法人税は、どんな会社でも同じように生じるわけではありません。下記のように、会社の形態によって4種類に分類できます。
- 各事業年度の所得に対する法人税
- 各連結事業年度の連結所得に対する法人税
- 特定信託の各計算期間の所得に対する法人税
- 退職年金等積立金に対する法人税
①各事業年度の所得に対する法人税
各事業年度の所得に対する法人税とは、法人が一事業年度において得た所得に対し課税される税のこと。ここでの事業年度とは、法人税を課すための法人所得を計算する期間です。
多くの法人は、定款の中で会計期間を設けていますので、事業年度・会計期間は、同一と考えてよいでしょう。また一般的に「法人税」という言葉が用いられる場合、各事業年度の所得に対する法人税を意味します。
②各連結事業年度の連結所得に対する法人税
各連結事業年度の連結所得に対する法人税は、個別の企業を納税単位とするのではなく、企業グループ全体を1つの納税単位とする「連結納税制度」を用いて算出した法人税です。
- 各事業年度の所得に対する法人税
- 各連結事業年度の連結所得に対する法人税
どちらを適用するかは、各法人で選べます。連結納税制度を選択した場合、すべての子会社が対象となり、親会社は申告と納税を行い、子会社は連結所得の個別帰属額などの書類を税務署に提出するのです。
③特定信託の各計算期間の所得に対する法人税
特定信託の各計算期間の所得に対する法人税とは、信託会社を対象に、特定の信託を運用している場合に課される法人税のこと。
信託会社とは、信託業法により内閣総理大臣の免許または登録を受けた者で、「委託者の指図で信託財産の管理や処分が行われる信託」「信託財産につき保存行為」「財産の性質を変えない範囲内の利用行為」などを行います。
信託金融機関の信託業務の兼営等に関する法律により、金融機関が信託業務を営む以外では、信託の引受けは信託会社の専業とされているのです。
④退職年金等積立金に対する法人税
退職年金等積立金に対する法人税とは、退職年金業務等を営む信託会社や保険会社に対して課される法人税のこと。
信託会社や保険会社は、企業が雇用する従業員の退職年金となる掛金を、払い込みをした年度で計上します。しかし実際に掛金に課税されるのは、従業員が退職をし年金の支払いを受けたときになるのです。
そのため退職年金等積立金に対する法人税は、信託会社や保険会社における掛金の取り扱い時期のズレに課す法人税となっています。
3.法人税の納付方法
申告書を提出したら法人税の納付で、期限は原則、事業年度終了日の翌日から2カ月以内となっており、納付方法は3つあります。ここでは、3つの納付方法について解説しましょう。
- 現金支払いの納付方法
- 電子納税を利用した納付方法
- クレジットカードを使用した納付方法
①現金支払いの納付方法
現金に納付書を添えて納付する方法で、下記の手順で行います。
- 税務署から申告書と税目ごとの納付書が送付される
- 納付書に金額を記載する
- 金融機関または所轄税務署で納付する
現金による納付方法の注意点は2つです。
- e-Taxをした場合、申告書は送付されない
- コンビニエンスストアでは納付できず、コンビニエンスストアで納付を希望する場合にはバーコード付納付書が必要
近年、現金納付以外の方法が普及しています。しかし中小企業などを中心に現金で納付する方法を選択するケースが多く見られるのです。
②電子納税を利用した納付方法
届け出済みの預貯金口座から期日を指定して振り替える「ダイレクト納付」もしくはインターネットバンキングにて納付する方法です。金融機関に出向かず納付できたり窓口開所時間以外でも納付できたりなどのメリットから、徐々に利用者が増えています。
電子納税を行う場合、開始届出書やダイレクト納付利用届出書の提出が事前に必要です。それにも関わらず利用者が広がっている点を考えると、今後も電子納税による納付方法が普及していく見込みといえるでしょう。
③クレジットカードを使用した納付方法
国税庁長官が指定した納付受託者であるクレジットカード会社に国税の納付を委託する納付方法で、国税のクレジットカード納付専用のサイトより、納付の操作を行います。
納付情報の入力、クレジットカード情報の入力、確認、納付手続きの完了という簡単なステップで納付できますが、下記のような注意点があります。
- 領収書が発行されない
- 法定納期限内に納付手続が完了していれば、利用代金の引き落とし日が法定納期限を超えても延滞金は発生しない
納付税額に応じて決済手数料がかかる
4.法人税の計算で利益金となるもの
法人税の計算において、利益金は非常に重要な項目です。法人税法上の利益金について、下記2つから解説します。利益金に入るものを正しく理解し、法人税を適切に計算しましょう。
- 商品、サービスの提供(有償)
- 商品、サービスの提供(無償)
①商品・サービスの提供(有償)
商品を販売したりサービスを提供したりといった内容にて現金などを受け取った場合、それは税法上の利益金となります。そのほか下記項目も、法人税を計算する際に利益金へ含めるとされているのです。
- 固定資産の売却益
- 預金利息の受け取り
- 売上の計上漏れ
- 貸倒引当金の取り崩し
- 退職給付引当金の取り崩し
②商品・サービスの提供(無償)
無償の消費やサービスとは、金銭を受け取らず無償で商品を販売したりサービスを提供したりといったケースです。
金銭を受け取らない無償の販売や提供のため会計帳簿上に記載しない状況でも、無償の販売や提供が行われていた場合、法人税を計算する際に、利益金として所得に加え税額を計算しなければなりません。
5.法人税の計算で利益金にならないもの
法人税の計算で利益金として扱わないものは、法人税を計算する際、所得からマイナスして利益金を不算入にしなければなりません。法人税法上の利益金にならないものについて、下記2つから解説します。
- 受取配当金
- 還付金
①受取配当金
企業が他社の株式を所有している場合、配当金を受け取ります。通常、配当金は普通預金などに振り込まれるため、会計上は受取配当金として収益に計上するのです。
しかし配当金は法人税などを支払った後に残った利益を分配するため、配当金を受け取った企業の法人税の計算に配当金を算入すれば、二重課税になります。そのため配当金を受け取った企業では、利益金に受取配当金を組み込まないことになっているのです。
②還付金
税金は払い過ぎてしまった場合、還付されます。法人税や法人住民税の予定納税で払い過ぎてしまった部分について還付を受ける場合、還付金は利益金に算入しません。
とはいえ還付金がすべて利益金にならないわけではありません。事業税や固定資産税に損金となる税金が還付された場合は、利益金として算入します。
6.法人税の計算で損金になるもの
法人税の計算上、損金として算入すると決まっているものがあります。損金とは会計上、費用として取り扱うもの、つまり会社から出ていく損失を意味します。これら損金をどの年度に算入するのか、損金算入時期には決まりがあるのです。
ここでは、3つの損金について詳しく解説します。
- 原価
- 販売費・その他の費用
- 損失
①原価
原価とは、仕入れ値や材料費など、直接売上に関係する元値のこと。
原価に分類されるものは売上を得るための必須項目です。法人税上は損金として取り扱うため、売上が利益金として計上されるのと同時に損金へ算入します。
売上と同時算入を行うのは、会計に関するルールにある「年度の利益金を生み出した事業に関わる支出は同年度損金計上を行う」という、発生主義・費用収益対応の原則に則るためです。
②販売費・その他の費用
販売費やその他の費用である一般管理費とは、人件費や水道光熱費、事務用品費や地代家賃などのこと。
一般的に原価が売上に直結している支出は費用であると見なされます。一方、これら販売費やその他の費用は、売上に間接的に関係している費用と見なされるのです。
直接や間接の違いはあるものの、販売費やその他の費用も売上を得るために事業活動と関連性があるという観点から、原価と同様に損金として計上すると決まっています。
③損失
損失とは、企業の資産価値を減少させるもので、固定資産の売却損や陳腐化した商品の廃棄損などが該当します。これら損金は、直接的に売上金額に関係する費用というわけではありません。そのため損金に算入制限がかかる場合もあります。
しかし損失が事業を展開する上で発生しうるものだとすれば、損失・売上を得るための事業活動との関連性があるものとして、損失も原価や販売費などと同様に損金として計上できるのです。
7.法人税の計算で損金にならないもの
法人税の計算で損金にならないものもあります。そもそも損金に計上できるのは、事業活動との関連性が認められる費用です。
経営者の裁量で費用の金額を自由に決められるなど、損金に認めるか否かの判断によってその年の費用が大きく変動するような項目は損金とは認められません。
- 役員報酬・役員賞与
- 一定以上の寄附金
- 減価償却費の過大費用
- その他の費用
①役員報酬・役員賞与
役員報酬や役員賞与は、報酬や賞与を意図的に操作して損金を過剰に計上するケースも考えられるため、損金になりません。ただし下記条件を満たす場合、損金算入が認められます。
- 役員報酬:「従業員と同様に毎月同じ額を受け取っている」「報酬の額が相当な範囲である」といった定期同額給与の場合
- 役員賞与:「遅くとも会計年度の最初の4ヶ月目までに金額と支給時期を税務署に届け出る」「届け出た通りの金額を届け出時期に支給する」と事前確定届出給与として損金算入が認められる
②一定以上の寄附金
寄附金とは、慈善団体などへの寄付した金銭のこと。本来、寄付は社会貢献のひとつですので推奨されるべきものです。しかし寄附金を際限なく損金計上できてしまうと、恣意的に寄附をして租税回避に利用するケースも生じるでしょう。
損金計上のため寄附金を悪用しないよう、寄附金については一定金額までは損金に認められます。しかし限度額を超えた部分は損金として認められないというルールが設けられているのです。
③減価償却費の過大費用
減価償却費とは、長期にわたり使用する固定資産を取得する際に要した費用を資産使用期間で費用分配する手続きのこと。減価償却の考え方に基づけば、収益を出し続けるのに反比例して、その資産価値は減っていきます。
しかし税法上では損金について、
- 毎年同じ「金額」を計上する定額法
- 毎年一定の「率」で減るよう計上する定率法
が定められています。損金を計上する際、決定した計算方法に従って求めた限度額より費用が過大になった部分は、損金として認められません。
④その他
その他の費用とは、同業種や同規模の会社と比較して、金額が極端に多い費用について損金に計上できない諸々のこと。たとえば同族会社と経営者との間の取引です。
同族会社と経営者間の取引の場合、恣意的に金額を操作して損金を過大に計上する場合があります。そのためこのような取引が恣意的に行われた場合、取引自体をなかったものとし、損金への算入を認めない「同族会社の行為計算否認」扱いになるのです。