補助金や助成金を申請する企業は多くあります。ここでは、補助金や助成金について詳しく解説します。
目次
1.補助金とは?
補助金とは、国や地方公共団体が事業者や個人事業主に対し、原則、返済のない金銭を支給する制度のこと。しかし誰もが無条件で支給されるものではなく、下記のような個別要件が設けられているのです。
- 公共の利益、すなわち公共性になりうるか否か
- 一定の条件に適合しているか
- 申請後の審査に通るかどうか
申請後に審査が行われ、これら要件を満たした民間部門が補助金の支給を受けられます。
助成金
助成金とは、国・地方公共団体・民間団体が、事業者や個人事業主に対し、原則として返済不要の貨幣を支給する制度のこと。仕組みを活用した具体的な事例には、厚生労働省による雇用増加や人材育成などがあります。
特徴は、対象となる組織の業種や社員数といった条件が適合していれば、比較的支給されやすいという点です。
補助金と助成金の違いはあるのか?
補助金と助成金の仕組みに大きな違いはありません。しかし補助金と助成金では、異なる部分もあります。
- 補助金:予算の範囲や支給件数などに制限がある、公募方法により抽選や先着順など、申請しても確実に支給されない可能性がある
- 助成金:支給要件を満たしている場合には制限なく支給されるケースが多い
2.補助金のメリット
補助金制度にはメリットがあります。ここでは、補助金と類似する仕組みを持つ助成金と比較しながら、補助金にはどのようなメリットがあるのかを、3つの視点から解説しましょう。
- 助成金より種類が多い
- 助成金より支給額が多い
- 適用範囲が広い
①助成金より種類が多い
補助金は、国・地方公共団体が税金を活用し、政策目的の実行や達成に向けて企業や個人などを支援する制度です。予算を組んだ後に募集するため、一般的な補助金の公募は4月、5月頃に集中します。
また、補正予算が組まれた後に2次募集で新たに追加募集するケースも。そのため補助金は種類が多く、利用しようと考えている組織や人にとってはメリットといえるでしょう。
②助成金より支給額が多い
補助金は助成金と異なり、国や地方公共団体が予算を組み、その後で募集されますが、予算が組まれた後でも2次募集という形で新たに募集される場合があるのです。
補助金の目的や用途にもよりますが、その金額は数百万円の規模から大規模な政策に関する補助金であれば数億円規模の補助金も珍しくありません。このように支給額の大きさは補助金のメリットです。
③適用範囲が広い
補助金は、国や地方公共団体によって行われる新規事業や創業促進といった国策を着実に推進させる支援のひとつです。これら目的のために必要考えられる資金を算出し、広く民間部門を援助します。
補助金に関する門戸を開放するために、補助金の適用範囲を広く設定する場合が多くあります。これは、補助金を利用する側としては大きなメリットです。
3.補助金のデメリット(注意点)
助成金と比較してメリットの多い補助金ですが、補助金にはデメリットもあります。下記4つから解説しましょう。
- 公募期間が短い
- 申請してももらえない可能性がある
- 支給までの時間が長い
- 企業の事業か一部の費用
①公募期間が短い
公募期間とは、広く一般から募集する期間のこと。補助金には、予算(上限額)や最大件数が決まっているため、抽選や先着といった公募方法を用いる場合が多いです。また支給要件の発表があってから締切までの期間が短いという特徴があります。
さらに予算の関係上、人気の高い補助金であれば公募期間前に公募を終了する場合もあるのです。
②申請してももらえない可能性がある
補助金は、国・地方公共団体が、新規事業の創業促進などの政策目的を達成させるために、税金を使って予算を組んで民間部門を支援する制度です。
補助金の原資は税金で予算の範囲は限られています。支給に際して「最大○件」といった要件が付く場合も多くあります。つまり申請しても厳しい審査が行われ、支給に至らない可能性もあるのです。
③支給までの時間が長い
補助金の支給を希望する場合、まず公募期間に応募します、その後、審査の過程を経て、審査に通った民間部門に補助金が支給されるのです。審査は厳しく行われるため、一定期間を要します。
そのため実際に補助金を申請して支給されるまでにかなり時間がかかり、補助金の支給が申請から約1年後の後払いとなるケースも珍しくありません。支給までの時間が長い点は、認識しておきましょう。
④企業の事業か一部の費用
補助金は、事業を補助するための資金です。しかし補助金が支給されるといっても、会社全体が潤うほどの支給となるわけではありません。
補助金の支給は、企業の展開する事業のすべてもしくは一部に対しての支援に限られるため、事業展開によっては別途、企業独自の資金調達が必要となります。補助金が支援できる費用範囲には限界があるのです。
4.助成金のメリット
助成金は、国・地方公共団体や民間団体が、組織などに対し、返済不要で金銭を支給する制度です。補助金と類似した仕組みを持ちますが、異なる点もあります。ここでは、助成金の特徴やメリットについて解説しましょう。
- 原則いつでも申請可能
- 条件に合っていればほぼ確実に支給
①原則いつでも申請可能
補助金とは異なり、助成金は通年で公募している場合が多いです。
たとえば厚生労働省が実施している雇用や人材育成に関する助成金の場合、いつでも申請できるものがあります。これは、助成金の要件に該当する場合、そのすべてに助成金を支給するという助成金ならではの特性が大きく影響を与えているからです。
公募期間が定められていると、それを逃すと支給が受けられなくなってしまいます。このような心配が少ない点はメリットでしょう。
②条件に合っていればほぼ確実に支給
助成金を申請するのは、組織などが何らかの支援を必要とするときですので、できれば確実にその資金の支給を受けたいものです。そんな組織などを支えるため、助成金は支給要件を満たしていればほぼ確実に支給・受給できるようになっています。
これは、助成金が助成を必要としているものに対し広く門戸を開放している、という点によります。助成金に期待し、申請を行った組織などにとっては大きなメリットでしょう。
5.助成金のデメリット(注意点)
いつでも申請できてほぼ支給されるというメリットのある助成金ですが、デメリットもあります。助成金のメリット、デメリットについてよく考えてみましょう。
人気の助成金だと募集期間が短縮される
助成金の多くは、通年募集しています。自治体にもよりますが、通常、助成金の多くは3月末の年度いっぱい募集や受付をしているのです。しかし人気のある助成金の場合、発表から2カ月程度で受付終了になるなど募集期間が短縮されてしまう場合も。
「門戸を広く開放している助成金だからいつでも申請でき、必ず支給される」と考えていて支給を受けられなくなる場合もあり得るのです。手続きの際には注意しましょう。
6.補助金の種類
補助金には、さまざまな種類があります。ここでは、3つの補助金について詳細を紹介します。補助金にはどのようなものがあるのかイメージを構築すると同時に、補助金への理解を深める一助にしてください。
- IT導入補助金
- 持続化補助金
①IT導入補助金
業務効率化などを目的としたITツールの導入を支援する補助金で、補助率は1/2、2/3,3/4と類型によって変わります。補助対象経費は、ソフトウェアや専門家の経費などで、こちらも類型によって30万~450万円まで変わるのです。
②持続化補助金
小規模事業者を対象とした販路開拓をサポートする補助金です。上限は型によりますが、50~100万円となり、補助率も型によって変わります。対象は、顔を合わせずに販売するためのホームページ作成や広告掲載など。
たとえば「今後を考えて出前を始めたい飲食店がホームページを作成して、出前に対応する」「外国語によるホームページを作成して、海外からの旅行者に対応」といったものが挙げられます。
7.助成金の種類
補助金と同様、助成金にもさまざまな種類があります。ここでは、3つの助成金の概要について紹介します。補助金と助成金の違いなどを考えながら助成金特徴などについての理解を深めてみましょう。
- 雇用調整助成金
- 労働移動支援助成金
- 中途採用等支援助成金
①雇用調整助成金
雇用調整助成金は、厚生労働省が設けている助成金です。「売上げが下がるなど、従業員を休業させる必要があった 」「休業させた従業員に休業手当を支払った」といった事業主に支給されます。
支給を希望する事業主は、下記ステップの後に助成金を申請します。
- 休業の計画を立てる
- 休業協定書にまとめ、労働組合または労働者の代表と合意する
- 計画通り休業させ、休業手当を支払う
申請後、支給要件に適合している場合には、口座に助成金が支払われます。
②労働移動支援助成金
労働移動支援助成金とは、下記のような事業者に対して、支給される助成金です。
- 事業規模の縮小などで離職を余儀なくされる労働者に対する再就職支援を、職業紹介事業者に委託する
- 求職活動のための休暇付与や再就職に向けた訓練を教育訓練施設などに委託して実施
- 支給を希望する事業主は、下記の手続きで申請できます。
- 再就職援助計画を作成し、公共職業安定所長の認定を受ける
- 求職活動支援基本計画書を作成し、都道府県労働局に提出する
③中途採用等支援助成金
中途採用等支援助成金とは、「中途採用者の雇用管理制度を整備する」「中途採用の拡大を図る」事業主に対して支給される助成金で、「20ポイント以上の向上で50万円」「40ポイント以上の向上で70万円」といった形式になっています。
中途採用拡大助成を支給後、一定期間後に生産性が向上した場合には、生産性向上助成が追加で支給されますが、「中途採用拡大助成」「生産性向上助成」それぞれ要件があるので申請の際は要件の確認が必要です。