HPI(ヒューマンパフォーマンスインプルーブメント)とは、Human Performance Improvementの略で、人材の現状から組織の課題を見出し、改善に向かって進める方法のことです。
ここでは、
- HPI(ヒューマンパフォーマンスインプルーブメント)とは?
- 読み方
- ODとの違い
- メリットやプロセス
について詳細を解説します。
目次
1.HPI(ヒューマンパフォーマンスインプルーブメント)とは?
HPI(ヒューマンパフォーマンスインプルーブメント)とは人材の現状から組織の課題を見つけ、改善に向かって進める方法のこと。本来あるべき人材の姿と現状とのギャップを洗い出し、根本となっている原因分析を行います。
そして、現状とのギャップを埋める適切な施策を立案・実行し、その実行結果を評価測定するシステム的なプロセスです。「組織開発(OD)」が経営的視点から組織の課題にアプローチするのに対し、HPIは人材からアプローチし、問題解決を行います。
HPIの読み方
HPIは英語のHuman Performance Improvementの略で、ヒューマンパフォーマンスインプルーブメントと読みます。
ASTDによるHPIの定義
ASTDはHPIを定義した団体で日本語に訳すと米国人材開発協会で、アメリカヴァージニア州アレクサンドリアに本部を持ちます。HPIを推奨しているASTDによると、まず本来あるべき姿と現状の人材のギャップを発見して分析していくのです。
成果・業績の向上と改善のために、現状とのパフォーマンスギャップを埋める効率的で適切な介入策を立案・実行し、その成果などを測定するシステム的なアプローチと定義付けられています。
2.HPIとODの違い
ODとは、組織そのものの課題を見つけ、改善に向けて進める方法のこと。英語のOrganization Developmentの略で、日本語では「組織開発」という意味を持ちます。
人材開発が「人」そのものを対象とするのに対し、人と人との「関係性」などを対象とし、それが好ましい方向に向かうようアプローチする方法です。対して、HPIは、組織の課題を人材の現状から見出し、改善に向けて進める方法のこととなります。
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3.HPIのメリット
では、HPIの3つのメリットについて、詳細を見ていきましょう。
人材育成について再考できる
組織はハード面でもソフト面でも、必ず人が関わっています。つまり人材によって、課題発見や改善、成功の質や量が変わるともいえるのです。人が組織の課題解決にあたる際や、改善策を打ち出し実行する際には必ず人的な質が関与します。
そのような視点から人材育成を再考することが、組織の将来につながるでしょう。
必要な人材育成の方法を見出せる
「これが良さそうだから取り入れてみよう」といった曖昧な方法ではなく、目的に沿って必要な人材育成の方法を取捨選択できます。
組織の課題を人材という観点から捉え、将来の解決策を見通すことができるのです。HPIが根底にあれば、人材育成を軸として、成果・業績に結び付けられるでしょう。
社員一人ひとりが人材育成の必要性を認識できる
人が年月をかけて組織をつくり上げていくという観点から、社員一人ひとりが人材育成の必要性を認識できます。
組織そのものが「全体的な目標に合わせた人材育成」を行うため、「人材育成がなぜ自分に必要なのか」ということを、社員一人ひとりが客観的に認識できるようになり、パフォーマンス向上へと結び付くのです。
4.HPIのプロセス
HPIには、
- ビジネスの分析
- パフォーマンスの分析
- 原因の分析
- 手法の選択
- 手法の実施
- 結果や成果を評価
- 現状の把握
7つのプロセスがあります。ここでは、各プロセスがどのように行われるのか、その詳細について解説します。
①ビジネスの分析
どのようなゴールを目指すのか、現状分かっている人材のパフォーマンスがゴールにおいてどう関係するのかを分析します。パフォーマンスは、自社のビジネスによって規定され、HPIではビジネス分析から行います。
具体的に行う内容として挙げられるのは、下記のようなものです。
- 事業についてあるべき姿を分析する
- 事業について現状を明確化する
- 事業のあるべき姿と現状とのギャップを埋めるための施策を明確化する
②パフォーマンスの分析
パフォーマンス分析を行うにあたっては、理想の把握と現状の把握の2つの面から分析を行います。それぞれの詳細を見ていきましょう。
理想の把握
理想の把握とは、どのようなパフォーマンスが期待されるのかを把握すること。戦略を実行する上で、重要なポイントとなる職務のパフォーマンスについてのあるべき姿を明確化するのです。
営業職の例を取り上げてみましょう。あるべき姿である「売上10億円」「営業利益1億円」という目的達成に向け、手段としてのパフォーマンスである大型案件の提案を行う前に、顧客の潜在ニーズの発掘や顧客上層部との関係を構築する、などになります。
現状の把握
現状の把握とは、現状どのようなパフォーマンスになっているのかを把握すること。戦略を実行する上で重要なポイントとなる、職務の現状を明確化するのです。
営業職の例を取り上げてみましょう。目標に対して現状では「売上8億円」「営業利益5千万円」。その原因として考えられるのが、小型案件の提案を行っている、顧客の顕在ニーズへの対応や顧客担当者レベルでの折衝などです。
③原因の分析
原因の分析とは、理想と現実のギャップを生み出しているものは何か、プロセス、マネジメント、資源、コンプライアンスなどを分析すること。原因の分析を行わず、何らかの施策を実行しても本質的な解決にはなりません。
たとえば、担当者がソリューション営業を実行できていない際、なぜスキルが身に付いていないのかなどを深掘りする、などです。とりあえず研修というスタンスは空振りに終わる場合も多々あります。
④手法の選択
手法の選択とは、コーチング、ナレッジマネジメントなどの手法から何にするかを選ぶこと。
手法は多岐にわたり、設定した課題に応じた選択が必要となります。たとえば、担当者自身が抱える問題の場合は人材育成施策の検討が必要になり、上司に関する問題の場合は研修に代表される育成施策が必要です。
また、組織・制度に関する問題の場合は評価制度の見直しなどが必要となるでしょう。課題の全体像を捉えた上で、育成に関して他の施策との整合性も鑑み、立案することが大切です。
⑤手法の実施
適切な手法が選択されたら、その手法を実施します。実施の際、具体的にやるべきことは、下記の3つです。
- KGI(事業やビジネスに関するゴールの指標)/KPI(パフォーマンスを具体的に測定する指標)の設定
- 施策の推進
- 現場と連携を取る
KGI/KPIを設定し、施策を推進するための各種業務を遂行していきます。研修実施であれば、プログラム策定などになるでしょう。そして、施策が現場で活かされるように、現場との連携を行います。
⑥結果や成果を評価
手法が実施されたら、効果測定を行い、実施によって得られた結果や成果を評価します。一般的に行う評価には短期的なものと中期的なものがあります。
- 短期的評価:施策に対する理解度や満足度、そして行動の変化などを測定
- 中期的評価:設定したKGI/KPIへの影響、施策や行動の変化の定着度などを測定
研修を実施した場合の評価に、カークパトリックの4段階評価法を導入するのもよいでしょう。
⑦現状の把握
最後に、結果や成果の評価からパフォーマンスの分析に戻って、現状を把握します。そして、現実を理想と照らし合わせて原因の分析に戻るのです。施策の実施後にもかかわらず理想と現実にギャップがある場合、再度原因を分析し、施策の問題点を洗い出します。
これにより、施策が適切であったのかどうかなどが明確になるのです。このプロセスの繰り返しにより、組織の問題点が抽出され、パフォーマンスは向上していくでしょう。