仮説思考とは、ビジネスシーンで問題解決の際に利用できるツールです。
重要とされる理由、身につけるメリット、やり方のコツ、トレーニング方法、おすすめ書籍などを詳しく紹介します。
1.仮説思考とは?
仮説思考とは、限られた情報から最も可能性の高い結論を「仮の結論=仮説」として設定し、その仮説に基づいて仮説の実行・検証・修正を行っていくことです。
ビジネスの現場における問題解決ツールとして利用されています。
仮説を設定することで、考慮・調査すべきことを大幅に絞り込めるので、効率よく問題解決を進めていくことができます。
仮説が間違っていたとしても、検証をし、すぐに修正することができるので、少ない情報を利用して限られた時間内で仮説を出すことが重要です。
クリティカルシンキングとの違い
仮説思考は、課題への答えの仮説を設定することを目的としています。
一方のクリティカルシンキングは、仮説思考が本当に正しいかをチェックするのが目的です。
日本語でクリティカルシンキングは批判的思考という意味があり、批判的に考える思考法ともいわれています。
クリティカルシンキングを使いこなすためには、仮説思考を把握している必要があります。
クリティカルシンキング/批判的思考とは?【鍛え方・具体例】
クリティカルシンキングを直訳すると「批判的思考」。この批判的思考をビジネスの世界でポジティブに活用すると、直訳とは違った側面が発見できるのです。
ここでは、
ビジネス界におけるクリティカルシンキング...
2.仮説思考がビジネスシーンで重要とされる理由
仮説思考を身につけることで、
- 仕事の質やスピードが上がる
- リーダーとしての能力が高まる
といわれており、重要視されています。
以下で詳しく説明していきましょう。
限られた時間で成果を上げるため
変化の激しいビジネスシーンでは、限られた時間の中で課題を解決していくことが求められます。
仮説思考が身についていれば、課題の本質を即座に見きわめ、課題や問題を分析してすみやかに整理できます。
仮説を立てることで無駄な選択肢がなくなり、無駄な仕事をすることもなくなります。その分、意思決定の十分な時間が確保でき質の高い仕事ができるでしょう。
少ない情報で判断することが求められるため
限られた情報で論理的な思考が可能となり、最適な意思決定ができるようになります。
膨大な情報があっても、
- 実際の行動につながるのは少ない
- 報告書をつくる際に手間がかかるうえ、内容のない報告書になる
- 迅速な意思決定のじゃまになる
といった弊害があります。
限られた情報をもとに仮説思考によって最良の意思決定をすることが大切なのです。
リーダーになれる人材が求められるため
- 業務マネジメント
- 時間マネジメント
の観点からも仮説思考を実践できるリーダーが求められています。
仮説を立てることで、その仮設を検証するためだけの情報を収集する技術が身につき、チーム全体をつかむ力がつきます。
もし、網羅的に情報を集めると、情報を判断する時間と工数がかかります。リーダーに必要な決断力やリーダーシップが欠落するでしょう。
めまぐるしい変化に適合するため
情報量も集めた情報も刻々と変化する、激しい昨今のビジネス環境に適合していくためのツールとして、仮説思考は注目されています。
膨大な情報からではなく、手もとにある限られた情報から最適な仮説を立ててスピーディーに動き、余分な情報に振り回されず仮説や行動を修正していくことが大切です。
仮説が間違っていることがわかったら、随時修正し新たな仮説を立てます。
3.仮説思考を身につけるメリット
仮説思考を身につけることで、
- 問題解決のスピードアップ
- 生産性が向上する
- 大局的に物事を判断できる
- リーダーシップの向上
といったメリットがあります。
問題解決のスピードが上がる
仮説思考を身につけることで、問題解決にかかる時間を大幅に短縮することができます。
- 問題解決の方法に試行錯誤するムダな作業がないため、スピーディーで質の高い仕事が実現
- 仮説を立ててから動くことで余計な工数がなくなり、仕事も早く終わる
- 問題の本質を見きわめる力、情報を整理して問題を解決する力が身につく
生産性が向上する
仮説を立てることで仕事がスピーディーになるだけでなく、仕事のクオリティが向上し業務効率化にもつながります。
仮説を立てながら問題解決に取り組むことで、本質的な課題を見きわめられます。解決策が具体的となり、生産性が向上します。
具体的な行動にもつながり、仕事のやり直しが激減し、仕事も効率的にスピードアップします。
大局的に物事を判断できる
仮説思考を行うことで、初めてのプロジェクトでも全体を俯瞰しながら行動することができます。
経験のある仕事と違い、初めての仕事は全容がわからず、進め方に試行錯誤します。
作業途中に間違いに気づいても修正する時間がないこともあるかもしれませんが、仮説を立てておくことで、新たな情報を集めながら途中で軌道修正し仕事を進めることもできます。
リーダーシップが磨かれる
下記の点から、提案や企画立案など、リーダーに求められる仕事で役に立ちます。
- 収集した情報を仮説という全体像から入り、検証のために必要な部分にのみ、細部にこだわるような思考法を身につければ、全体をつかむ力がつく
- 部下や上司に業務の説明や、仕事を依頼する際の大まかな流れを無駄なく説明することができる。リーダーに必要な先を読む力、決断力につながる
4.仮説思考のやり方のコツ
仮説思考で問題に取り組む際のプロセスが決められています。進め方、やり方のコツを詳しく解説します。
現状を観察・分析する
状況をよく観察し、課題の背景にあるものが何かを推測します。
たとえば、
- 目的は何か
- 市場の動向
- 競合はどこの企業か
- 使える資金はどのくらいあるのか
- 人員は何名か
といったことです。
状況も情報も刻一刻と変わる時代なので、今後の変化を考慮しながら仮説を立てていきます。必要であればデータで裏づけを取ります。
仮説を設定する
観察した状況を分析し、それぞれの要素から判断した仮の結論を導き出します。
その際、仮説を構築するために使用した状況の観察、分析の結果を明確にしておくことで他人を説得するための材料にもなります。
仮説の設定は、目的や状況を念頭に置きつつ、相対的に正しいと思われる仮説を構築します。
自分自身の固定観念を持ち込まないように注意しましょう。
仮説を実行・検証する
設定された仮説が正しいかどうかを検証していきます。検証の方法は、実際に行動してみるのが最適な方法です。
リスクがともなう場合は、
- さらなる情報収集やリサーチ
- ミーティングによる意見の交換
- 専門家の意見を聞く
などを行います。
仮説を掘り下げるための情報収集などによって、仮説が正しいかどうか検証を行います。
仮説を修正する
仮説に基づいて実行した結果と比較して、間違っていれば修正を行います。
修正を加えた仮説にそって再び実行し、正しかった場合には計画を進めていきます。
仮説思考の進め方のポイントとしては、
- 仮説を実行し間違いが発見
- 仮説を設定するプロセスに戻る
- 仮説を検証し修正して再実行する
を繰り返し行っていくことです。
5.仮説思考を鍛えるトレーニング方法
仮説思考を鍛えるトレーニングにはさまざまな方法があります。
日常生活の中で意識していればいつでも身につけられるトレーニング法を紹介します。
引き出しを増やす
ビジネスや物事を見る知識や経験(引き出し)を増やしておくと、仮説を導き出しやすくなります。
幅広い知識をある程度深く考え、情報を立体化しておくことで仮説の構築につながります。
具体的には、日ごろからなぜそんなことが起こったのだろう、今後はこんなふうになるのかな、など物事への思考を意識してみることです。
使える仮説を立てる
仕事でのあらゆる課題について仮説を立ててみましょう。
たとえば、
- 営業力強化に関する提案を出さなければならない状況での仮説
- 顧客クレームが発生した際の仮説、業績が悪化した際の対応策の仮説
などです。
実際に行動して解決につながるような仮説にするのがポイントです。データ検証ができたとしても、それは行動にはつながりません。
「So What?(だから何なのか?)」を繰り返す
具体的に行動し成果に結びつく仮説を立てることが大切です。
そのためのトレーニング方法には、自分が導き出した仮説に、
- だからどうした
- なぜそうなるのか
を常に繰り返し問いかけることが効果的です。
日ごろから、このように考える習慣を身につけることで、具体的な行動に結びつく、よい仮説が立てられるようになってくるでしょう。
事業を予測してみる
今担当している事業についての仮説を立ててみます。
たとえば事業を企画する際には、
- いつまで続くのか
- 定番として定着するのか
- 顧客がなぜそのサービスを使いたくなるのか
などを考えてみます。
そして仮説を想定した条件で実験して、その結果からまた次の仮説を立てていくのです。こうした仮説検証を重ねていくことで仮説思考が鍛えられます。
興味・関心のある分野を題材にする
自分が興味や関心を持った物事に対して、「どうしてそうなんだろう?」といった疑問を持つことも仮説思考を鍛えるトレーニングになります。
好きな映画やドラマ、音楽やファッションなどを題材にし、
- なぜ流行っているのか
- なぜこのセリフは視聴者の心にひびくのだろうか
- なぜヒットしたのだろう
など考えてみるのもよいでしょう。
株価を予測する
株式投資に興味がある人は、株価の予測でトレーニングする方法がおすすめです。
興味のある企業の株を決めたら、その株価が一定期間後に上がっているのか、下がっているのかを仮説を立ててみましょう。
ある程度の長期間の株価を予測するのがよいトレーニングになるでしょう。
日経平均株価の予測もトレーニングなります。
6.仮説思考を学ぶおすすめの本
仮説思考を鍛える方法として、書籍を活用することで体系的に学ぶことができます。仮説思考を学ぶおすすめの本を紹介します。
『仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法』
業務の効率化が図れる仮説思考について体系的に解説した本です。
仕事の速さや出来ばえを決めるのは何か、それは「分析力ではなく、仮説である」と著者は説きます。
ボストン・コンサルティング・グループでの20年の経験から解説します。
『正解が見えない課題を圧倒的に解決する 超仮説思考』
コーン・フェリー・ヘイグループ株式会社の代表取締役社長が、実際の企業を題材に仮説思考の方法を解説します。
アップルやグーグルなど名経営者の事例を読み解きながら、自由自在に最適解をたぐり寄せる頭の使い方を紹介しています。
『天才脳ドリル』
5歳児から小学校全学年向けの「物事を正しく理解し、思考し、自分で答えを導く力」を磨く本です。
これらの力は、子どもにとって、人生を生き抜くために必要なものです。
初級・中級・上級のうち合ったレベルから取り組み、段階を踏んでいくことができます。
『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』
質の高いアウトプットを出すための問題のとらえ方とその実践方法について紹介しています。
- コンサルタント
- 研究者
- プランナー
など変化を生み出すことで稼ぐ、プロフェッショナルのための思考術がわかります。圧倒的に生産性の高い人に共通する問題設定と解決法を解説します。