会社が金銭以外の物品などで従業員に支払うことを現物支給と言います。経営困難に陥った家電メーカーが賞与を現物支給したケースが過去に注目されました。今回は現物支給が認められるケース、支給できる物品の内容や課税について解説します。
現物支給とは?
現物支給とは、金銭以外によって賃金などを支払うことです。具体的には金銭的な価値のある物品や、金券・自社商品などです。
自社商品を割引価格で購入できる権利やその他の経済的利益で支給することも可能です。家電メーカーなどでは、製品を賞与として現物支給するケースも過去に見られました。労働基準法では、賃金を現物支給によって支払うことは原則認められていません。
しかし、労働協約などにより現物支給を行う記載があれば、例外として現物支給が認可される可能性があるのです。また、賞与については労働基準法の定めがないので可能ですが、会社の就業規定などに賞与に関する取り決めがない場合のみです。
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現物支給では何を支給すべきなのか
労働協約などで現物給与に関する記載があれば認められる可能性があるといっても、その支給内容は何でもよいというわけではありません。現物支給を行う場合には、人事はその内容について良く検討する必要があります。
まず、換金性がないものや金銭的価値の判定が困難なものは対象外です。支給されても従業員が換金・売却することができないので、経済的に困難な状況に陥る可能性があります。
次に、業務で欠かせないものによって支給することも認められていません。例えば業務で必要なPCを現物支給で利用することは不可能です。
また、現物支給では受け取る側に選択の余地が一切ない状況は認められません。会社側が強制的に物品を指定する形式によって現物支給を行うことはできないのです。
まとめると、業務の必要性がなく換金・売却が可能な物品を複数用意し、従業員が選べる形式でなくてはなりません。現物支給は原則認められていないので、例外措置を取るには色々と制約があります。実施することはそれほど容易ではありません。
現物支給は課税対象になるのか
現物支給も所属税の課税対象になります。受給者の給与明細には控除欄で控除額を記載する必要があります。
しかし、従業員は通常現物支給も課税されるということは想定していないのが普通でしょう。現物支給の後に給与明細を見て、どういうことなのかと問い合わせがくる可能性があります。
そこで、人事は現物支給の課税についてもあらかじめ対象者にアナウンスする必要があります。金銭でなくても換金性のある物品である以上、課税される旨を伝えてください。
現物支給にもさまざまなケースがあり、経営困難のため全社員の賞与を現物支給することもあれば、特別な成果を上げたチームのメンバーにだけ現物支給をするというケースもあります。
特に後者のケースでは受給者がごく一部なのでアナウンスを忘れがちですが、人事としてしっかり伝えておくようにしてください。