イノベーションとは? 意味や使い方、具体例をわかりやすく

イノベーションは、企業が成長を続ける上で欠かせないものです。革新を起こすようなアイデアや技術、手法について常に思考を巡らせていなければ、新たな製品やサービスは生まれず、市場がマンネリ化してしまい、企業自体の魅力も失われてしまうでしょう。

ここでは、イノベーションが注目されるようになった背景や特徴などについて説明します。

1.イノベーションとは?

イノベーション(innovation)とは、「革新」や「新機軸」を意味する言葉です。ビジネスでは主に「技術革新」の意味で使用され、モノ、仕組み、サービス、組織、ビジネスモデルなどに新たな考え方や技術を取り入れることで新しい価値を生み出し、社会に大きな変革をもたらす取り組みを指します。

イノベーションの提唱者

イノベーションという概念を提唱したのは、オーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーター(1883~1950)。シュンペーターは著書『経済発展の理論』(1912年)で、イノベーションを核とした経済発展理論を展開しています。

シュンペーターは、経済の発展には企業家(アントレプレナー)によるイノベーションが重要だと説いています

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2.イノベーションの種類と具体例

イノベーションは、市場と技術に与えるインパクトによって4つに分類されるという考え方があります。それぞれの特徴を確認しましょう。

  1. 構築的革新
  2. 革命的革新
  3. 間隙創造的革新
  4. 通常的革新

①構築的革新

構築的革新(Architectural innovation)は、斬新な技術を用いてこれまでの体系を破壊し、新たな製品の開発・発明によって全く新しい市場を生み出すものです。たとえば、以下のような製品が挙げられます。

  • 電気(トーマス・エジソン)
  • 蒸気機関(トーマス・ニューコメン)
  • 飛行機(ライト兄弟など諸説あり)
  • 一般大衆向け自家用車「T型フォード」(米フォード社)
  • パーソナルコンピューター(スティーブ・ジョブズ、スティーブ・ウォズニアック)など

②革命的革新

革命的革新(Revolutionary innovation)は、既存の製品に新しい技術や生産体系を用いて生み出した新たな製品のこと。たとえば以下のようなものが挙げられます。

  • 自動車の駆動システムが、マニュアルからオートマチックへ移行
  • オーディオの音声信号が、アナログからデジタルへ移行
  • 既存のものより少ない量で汚れが落ちる洗剤
  • モバイル通信システムが、4Gから5Gへ移行
  • 高齢者介護ロボット(将来的に期待されるもの)など

③間隙創造的革新

間隙(かんげき)創造的革新(Niche creation)は、既存の技術を用いて新たな市場を生み出すイノベーションのことで、ニッチ創造とも呼ばれます。たとえば以下のような製品が挙げられます。

  • ヘッドフォンステレオ
  • 家庭用ゲーム機
  • ウォークマン(ソニー)
  • スマートフォン
  • iPhone、iPad、iPod(アップル社)
  • カップヌードル(日清)

また、創業時から変化して間隙創造的革新に至ったものもあるのです。たとえばYouTubeは、創業時には動画ビジネス市場の先駆者として革命的革新に分類されていました。しかしGoogleによる買収によって新たなビジネス的価値(広告モデル)を生み出し、新たな客層を獲得したのです。

④通常的革新

通常的革新(Regular innovation)とは、技術やプロセスを改善し、安くて高品質なコストパフォーマンスの良い製品・サービスを創出するもののこと。既存の技術と既存の市場の中で生まれるイノベーションです。

既存製品の性能を向上させ、価格競争によって対応するものがこれに当たり、1980年代の日本企業ではこうした形のイノベーションが主流でした。

ただし、価格競争に陥ると失敗する場合も。競争の激しい市場で争うことを「レッドオーシャン」といいますが、その状況で通常的革新を続けていては企業が疲弊しやすいのです。

イノベーションの類型にはいくつかのパターンがあり、シュンペーターは5つに分類しました。しかしOECD策定の国際基準「オスロ・マニュアル」では、プロダクト・プロセス・組織・マーケティングの4つに分類されています。

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3.イノベーションのジレンマとは?

イノベーションのジレンマとは、業界シェアトップの企業が、自社製品に対する顧客の意見などに耳を傾けすぎてイノベーションを起こす機会を失い、新興の企業などに負けてしまうことで、クレイトン・クリステンセンが提唱した概念です。

クリステンセンはイノベーションを、下記の2つに分けて説明しています。

  1. 持続型イノベーション:顧客の意見やニーズに合わせて製品を改良していく
  2. 破壊型イノベーション:既存の製品(概念)にとらわれず、新たな発想で新たな製品(価値)を生み出す

どちらか一方だけでは失敗を招くこともあるため、ビジネスではどちらも重要と考えられます。

イノベーションのジレンマが起きる3つの理由

  • 性能が低い
  • 市場と現況の差
  • イノベーションからの遅れ

①性能が低い

破壊的イノベーションは、実施が難しい上、必ず良い結果がもたらされるとも限りません。不確定要素も多いのです。そうなると成功している企業は、破壊的イノベーションに対して躊躇してしまうでしょう。

そのため、市場にイノベーションが起こり新たな製品が生み出されても、自社製品の品質を高めることに集中してしまいやすいのです。

また、新しく創出された製品については最初は性能が低いものも多く、競争相手にはならないだろうと目を向けないことがほとんど。そしてそのうち、改良を重ねた企業に追い抜かれ、市場を奪われてしまうのです。

②市場と現況の差

業界のトップランナーの企業は、成功体験をもとにさらに高みを目指して製品・サービスの改良を続けるでしょう。しかし、いつの間にか市場のニーズを上回り、本来の目的からかけ離れてしまうこともあるのです。

たとえば改良を重ねて高品質・高性能・高価格な製品ができたとしても、顧客が本当に欲しているものとは限りません。ターゲットを見誤ってハイエンド商品を提供し続ければ、最新技術が採用された製品でも関心を引くのは難しいでしょう。

その間に、多少性能が落ちても顧客が求めるものを生み出す新規企業に市場を奪われかねません。

③イノベーションからの遅れ

破壊的イノベーション技術によって生み出された製品は、低価格で利益率も低い場合が多いです。市場規模が小さければ、成功を続けている企業は魅力を感じないでしょう。

成功企業は、成功モデルの財務構造や顧客構造を基準にするため、安定した顧客のいる市場で利益率が高い既存の製品に投資を続けたほうがよい、と判断してしまいます。そのうち参入するタイミングを逃して、イノベーションから遅れ、取り残されてしまうのです。

何らかを理由にイノベーションの機会を失い、新興企業などに市場で負けてしまうことをイノベーションのジレンマといいます

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4.イノベーションが広まった背景、理由

かつては「クローズドイノベーション」と呼ばれる、自社の経営資源だけを用いて研究開発から製品開発までを行う自前主義が主流でした。

しかし1990年代に入りインターネットやテクノロジーが飛躍的に発展すると、グローバル化や産業構造の変化、人材の流動化が進み、市場競争が激化します。

大企業でも自社のリソースだけでイノベーションを起こすことは難しくなり、次第に外部資源やノウハウを活用する「オープンイノベーション」が注目され始めました。

現在はオープンイノベーションが主流ですが、新興国や発展途上国に研究所などを設けて新たな価値を創造する「リバースイノベーション」にも注目が集まっています。

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オープンイノベーションは、アメリカのヘンリー・チェスブロウ博士が自著『Open Innovation』(2003)で初めて提唱した概念です

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5.イノベーションとリノベーションの違い

「リノベーション(renovation)」は日本語で「革新」「刷新」「修復」などと訳されます。訳語だけを見るとイノベーションに似ていますが、その意味合いは異なるのです。

  • イノベーション:革新的技術などによって新たなものを生み出す
  • リノベーション:既存のものを修復し、性能を上げたり、新たな価値を加えたりする

近年、リノベーションはビジネス用語ではなく建築用語として使われることが増えています。

リフォームとは?

「リフォーム(reform)」は日本語で、「改革する」「改善する」などと訳されます。「マイナスの状態から改良する」といったニュアンスを持ち、建築用語としては、古くなった建物を修繕し、元の状態に近づけるという意味で使われます。

イノベーションとリノベーションは似ている言葉でも全く意味が異なります。混同しないように気を付けましょう