労働災害が起こると、企業は労災保険の対応を行ったり、従業員への補償を行ったりする必要があります。さらには、安全管理に問題がなかったか問われることもあるため、労働災害による損失について知り、労働災害が起こらないようあらかじめ対策をとるようにしましょう。
「強度率」とは?
強度率とは、1,000延べ実労働時間あたり、労働災害が起こったことでどの程度の損失が起こったかの割合を求める計算式です。これを知ることで、労働災害がどの程度の重さで起こったのかが明確になります。
例えば、労働災害が1件起こった企業AとBがあったとします。件数は同じ1件ですが、Aでは労働災害によって従業員5名が10日間就業できなくなり、Bでは従業員1名が1日就業できなかったとします。この場合、労働災害の強度は同じではありません。
強度率は、このように、起こった労働災害の重さを知るための目安となるものです。厚生労働省の「平成27年労働災害動向調査」によると、主な産業の強度率は、「製造業」が0.06、「運輸業、郵便業」が0.16などとなっています。
強度率の計算方法
強度率の求め方は、下記の通りです。
・延労働損失日数÷延実労働時間数×1,000
延労働損失日数は、労働災害によって働けなくなった日数のことです。死亡及び永久全労働不能の場合は7,500日、身体障害等級4~14級に該当し、永久一部労働不能となる場合は、等級に応じて5,500日(4級)~50日(14級)、一時的に働けなくなったものの障害等級の障害が残ることなく治癒した場合は暦日の休業日数×300÷365日と定められています。
また、延実労働時間数とは、その月やその年(率を求めたい期間による)の延労働時間です。これは、延時間ですから、災害を起こした従業員だけではなく、全従業員の労働時間の合計を利用します。
度数率と年千人率とは
度数率と年千人率も、労働災害の指針として利用されるものです。
度数率とは、労働災害による死傷者の数を表すもので、強度率が労働災害の程度を表すものであったのに対し、こちらは労働災害の件数を知るのに役立ちます。計算方法は、労働災害による死傷者数÷延実労働時間数×1,000,000です。強度率とは最後に掛ける数字が異なるので注意しましょう。
厚生労働省の「平成27年労働災害動向調査」の事業所調査(事業所規模100人以上)では、度数率は1.61となっています。
年千人率とは、在籍労働者千人あたり、年間でどのくらい死傷者が発生しているかという割合を示すもので、年間死傷者数÷年間平均労働者数×1,000で求められます。
これも、年間の労働災害数を知るのに役立ちます。
自社の労働災害状況の把握と公表
強度率や年度率、年千人率などを求めることによって、同業種の労働災害に対する自社の労働災害の多寡を計ることができます。こうした比較をすることによって、自社の労働災害対策を見直すきっかけを作ることができます。
また、割合を具体的に示すことで、現場で働く職員の安全意識を高め、より一層の注意を払うよう呼びかけることもできるでしょう。
さらに、強度率や年度率を求職者に対して公表することで、職場の安全性が高いことをアピールすることもできます。特に、工場や工事現場での業務が主となる職場の場合、安全管理がどの程度なされているのかは求職者にとって重要なポイントとなります。自社の安全管理をアピールして、人材獲得に活かしましょう。