「中間的就労」は、さまざまな理由から一般就労ができない生活保護を受けている人の社会復帰を支援するために、2015年にスタートした制度です。この中間的就労と、就労者を受け入れるための就労訓練事業の認定についてご紹介します。
「中間的就労」とは?
中間的就労とは、さまざまな理由から長期間仕事に就けず生活保護などを受けている生活困窮者たちが、一般的な職業に就く前にその足掛かりとして、ボランティアや農作業、公的施設の清掃などの軽作業で就労訓練を受け、社会復帰の準備をする「就労訓練事業」のことです。
厚生労働省が、2015年、生活保護制度の見直しを含む「生活困窮者自立支援制度」の中で策定しました。中間的就労で社会に出て、自身の生活習慣を見直すことで少しずつ働く意欲を高め、最終的に一般的な労働に従事することを目指します。
一般的な労働と福祉の中間にあることから、中間的就労と呼んでいます。中間的就労の期間中は、賃金や生活保護費、食費、交通費なども提供されます。
中間的就労で大きな役割を果たす認定就労訓練事業とは?
生活困窮者自立支援制度がスタートし、就労訓練事業、いわゆる中間的就労の仕組みができたことにより、自治体から認定を受けた事業者が「認定就労訓練事業」を始めました。これは就労の機会を生活困窮者に提供するためのものです。
認定される事業所は、NPO法人や社会福祉法人、営利企業などで、各地域に設置されている相談窓口(自立相談支援機関)の斡旋(あっせん)に応じて、一般的な就労が難しい生活困窮者を受け入れ、生活面の支援をしながら就労の機会を与える自主事業となります。
長時間の就労は難しいものの短時間であれば就労が可能な人には、労働時間を短くしたり、集中力が必要な仕事が難しい人には、社員の仕事の一部を切り取って担当してもらったりするなど、徐々に仕事に慣れていけるようにその人に合った支援を行っています。
就労訓練には、雇用契約を結ばずに訓練として仕事を経験する非雇用型と、雇用契約を結んだ上で支援する月の仕事を行う雇用型の2つの就労方法があります。
認定就労訓事業の認定と就労支援担当者配置、認定企業の優遇措置について
企業などが就労訓練事業の認定を受ける場合、法人格を有し財政的基礎があり、就労訓練事業が正常に行える人員や施設があることなどの国が定める諸条件を満たさなければなりません。
また、就労訓練の責任者として、就労支援担当者の配置も定められています。就労支援担当者は、職場と就労訓練事業の職に就いている者との間に入り、第三者的な立場で調整を行うもので、主な業務としては、以下のものがあります。
- 1 就労支援プログラムを策定する
- 2 就労者の相談を受け、指導、助言を行う
- 3 自立相談支援機関との連絡調整を行う
- 4 対象者に必要な支援措置を実施する
認定就労訓練事業所となると、地方自治体との契約において、優先発注(随意契約)ができる場合があるほか、就労訓練を行う施設の事業所税が非課税となるなどの税制上の優遇措置も受けられます。
企業として中間的就労に携われば、社会貢献や自社のPRにもつながります。経営者や人事の担当者は、中間的就労について一度検討してみてはいかがでしょうか?