紹介予定派遣とは? 通常の派遣との違い、採用の流れ

紹介予定派遣とは、直接雇用へ切り替えることを前提とした派遣形態です。ここでは紹介予定派遣のメリットやデメリット、活用するポイントなどについて解説します。

1.紹介予定派遣とは?

紹介予定派遣とは、一定期間内に直接雇用へ切り替えることを前提とした派遣形態のこと。派遣期間中に能力や適正などを見極めてから正社員や契約社員として採用できるため、自社にマッチする人材を確保する方法として注目を集めているのです。

まず適性や能力を見極めたのち、派遣社員と派遣先企業側の双方で、直接雇用へ切り替えても問題がないか確認します。派遣社員と派遣先企業の双方の合意が得られれば、派遣会社に人材紹介料を支払って直接雇用の社員として雇用するのです。

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2.紹介予定派遣と通常の派遣との違い

紹介予定派遣と通常の派遣の違いは、派遣後の契約や派遣期間、選考方法などです。これら3つの相違点について説明します。

  1. 直接雇用を前提としているか
  2. 選考方法
  3. 派遣期間

①直接雇用を前提としているか

紹介予定派遣では、契約期間中に直接雇用へ切り替えられます。通常の派遣社員では、契約満了後ならば直接雇用にできるでしょう。ただし契約期間中に切り替えるのは契約違反となるため注意が必要です。

また紹介予定派遣では、募集時に直接雇用を前提としている旨を明記しなくてはなりません。派遣社員が応募する際も、紹介予定派遣である点に同意が必要です。

②選考方法

紹介予定派遣では、派遣先企業への履歴書提出や直接面接が行われます。通常の派遣では基本、面接や履歴書の提出を行いません。これは労働者派遣法第26条で、派遣先企業が特定の派遣社員を選ぶことを禁止しているためです。

しかし紹介予定派遣では直接雇用をスムーズに進めるため、履歴書の提出や面接が認められています。

③派遣期間

通常の派遣では「抵触日」と呼ばれる期限が設けられています。抵触日は最長で受け入れ日から3年で、3年を超えた場合、通常の派遣での契約更新はできません。

一方紹介予定派遣の派遣期間は最長で6カ月となっており、それ以上期間は延長できません。なお6カ月以内なら、契約更新自体は可能です。たとえば「2カ月の契約を2回延長する」といった更新は問題ありません。

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3.紹介予定派遣のメリット

紹介予定派遣が注目されている理由は、そのメリットです。ここでは派遣会社に依頼して紹介予定派遣を利用するメリットについて説明します。

  1. 採用コストを抑えられる
  2. 教育コストを抑えられる
  3. 事前に面談できる
  4. ミスマッチを防げる

①採用コストを抑えられる

紹介予定派遣は、派遣社員が就業して初めて費用がかかる成功報酬型サービスです。そのため企業側は採用時のコストを抑えられます。一般的な募集では、求人媒体に記事を掲載する費用が発生しますし、募集が集まらなければさらに費用はかさむでしょう。

また選考や面接にかかる人的コストもあります。しかし紹介予定派遣では紹介から選考まで派遣元企業が行うため、人材確保にかかる採用コストと時間を削減できるのです。

②教育コストを抑えられる

紹介予定派遣であれば、すでに必要なスキルを持つ人材が派遣されるため、研修といったコストも抑えられます。また派遣会社の担当者に求める人物像や、業務就業にあたっての必要なスキルや経験などを伝えれば、最適な人材を探してくれるのです。

紹介予定派遣で受け入れた人材は即戦力となるのはもちろん、直接雇用に切り替えれば今後も長く活躍してくれるでしょう。

③事前に面談できる

通常の派遣では事前面談や面接が禁止されています。しかし紹介予定派遣では事前の面談や面接が可能です。紹介予定派遣は事前面談だけでなく履歴書の提出も認められているため、面談前に業務への適正やスキルなどを確認しておけます。

これらは採用のミスマッチを防ぐのに効果的です。また派遣会社ですでに人選を行っているので、面談の相手は採用の可能性が高い候補者に絞られます。採用業務の人件費削減と効率化にもつながるでしょう。

④ミスマッチを防げる

派遣期間中に能力や適性を見極められるため、人材採用にて懸念されるミスマッチを防げます。

一般的な採用では、入社する前に応募者が職場の雰囲気や実際の業務を把握するのは難しいもの。そのため「入社したが面接で思っていた企業と違う」と退職してしまうのも少なくありません。

紹介予定派遣では、期間中に派遣先企業と派遣社員がお互いを見極められるので、ミスマッチが起こりにくくなるのです。

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4.紹介予定派遣のデメリット

さまざまなメリットを得られる紹介予定派遣には、デメリットもあります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 応募者が減る
  2. 紹介手数料が発生する
  3. 辞退される場合もある

①応募者が減る

通常の派遣として派遣会社に人材を依頼するよりも、人材の確保が難しくなります。派遣会社に登録している人材は正社員や契約社員での長期就業より、短期間の定まった期間限定の就業を希望する傾向にあるからです。

1日数時間の案件や週3日から勤務可という案件には、空いた時間で副業したい人や決まった曜日だけ働きたい人など幅広い人材が応募します。しかし紹介予定派遣の多くはフルタイムで就業できる人材を求めているため、どうしても募集人数が減ってしまうのです。

②紹介手数料が発生する

紹介予定派遣から直接雇用に切り替える際、人材紹介手数料が発生します。これは求人媒体を使った採用ではかからない費用です。相場は派遣元企業によって異なるものの、一般的にスキルや経験が高い人材ほど紹介手数料が高まる傾向にあります。

自社で一から採用する際のコストと、紹介手数料を含めた紹介予定派遣の採用コストを事前に比較しておくとよいでしょう。

手数料の相場

一般的な相場は、就業する紹介予定派遣社員の理論年収(正規雇用した場合の想定年収)の15%から30%です。もちろんその人材のスキルや就業する業界、業務内容によって異なります。

年収400万円を想定した派遣社員の場合、60万円から120万円の紹介手数料がかかる可能性もあるのです。

③辞退される場合もある

紹介予定派遣では、受け入れる派遣先企業と紹介予定派遣社員の双方の合意があって、初めて直接雇用へ切り替えられます。よって派遣先企業が直接雇用へ切り替えたいと打診しても、派遣社員が直接雇用への切り替えを辞退する場合もあるのです。

辞退されてしまえば人材が確保できないため、新しく採用活動を行わなければなりません。派遣社員が「この企業で長く働きたい」と思えるよう社内規定や制度、体制などを整備しておきましょう。

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5.紹介予定派遣の流れ

紹介予定派遣の受け入れは、通常の派遣の受け入れと異なります。紹介予定派遣の社員を募集して実際に就業するまでの流れについて、説明しましょう。

STEP.1
面談
派遣元企業に求める人材を伝えると、派遣元企業によって候補者の選定が行われます。候補者が見つかったら、派遣元企業を通じて面談日を調整。このとき、直接派遣社員へ連絡しないよう注意しましょう。

面談では就業にあたって必要なスキルや希望勤務時間、希望条件や年齢などを確認します。役職者を交えた面談が必要であれば、1人の派遣社員と面談を2回行うのも可能です。

STEP.2
マッチング
面談が終わったら採用の可否を決定し、派遣元企業へ伝えます。もちろん直接派遣社員へ連絡してはいけません。面談の結果、自社にマッチしない人材と判断する場合もあれば、派遣社員から辞退が伝えられる場合もあるでしょう。

その際は、再度人材の選定や面談を行います。面談で採用したい人材であった場合、次の職場見学へ進みましょう。

STEP.3
職場見学
契約前に、多くの企業で職場見学を実施します。入社後に「面談(あるいは面接)で聞いていたことと違う」というギャップは、早期退職につながる可能性も高いです。

職場見学を実施すれば、職場環境や業務内容などで感じるギャップを減らせるでしょう。一般的には、職場見学に派遣元企業のコーディネーターも同席します。

STEP.4
契約
派遣社員と派遣先企業の双方が合意し、紹介予定派遣の社員の採用が決定したら、契約関係の手続きを進めます。必要書類は下記の2つです。

  • 労働者派遣基本契約書…企業間で派遣取引を行うための書類
  • 労働者派遣個別契約書…派遣社員の労働条件を定めた書類
STEP.5
勤務開始
契約が完了したら勤務開始です。最大6カ月の派遣期間のなかで、直接雇用に切り替えるかどうか、判断しなければなりません。

派遣社員の就業態度や勤怠状況、習熟度などを見極めて、派遣期間の1カ月前までには正規雇用するかどうか、決めましょう。

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6.紹介予定派遣を活用するポイントと注意点

紹介予定派遣を活用する際、いくつかの注意点があります。紹介予定派遣での人材採用を円滑に進めるため、注意点を確認しておきましょう。

  1. 人材派遣会社との関係の構築
  2. 評価ポイントを確認しておく
  3. 受け入れ態勢を整える
  4. 直接雇用後は試験期間を設定できない
  5. 不採用理由の通知義務
  6. 禁止されている職種がある

①人材派遣会社との関係の構築

紹介予定派遣で希望する人材を確保するには、派遣会社のサポートが欠かせません。そのため派遣会社との関係を良好にしておくことが重要です。派遣会社は候補者の人選から契約まではもちろん、入社後も派遣先企業と派遣社員の間を取り持ちます。

良好な関係が構築できていればそれぞれのステップにて、細かいサポートを受けられる可能性が高まるでしょう。

②評価ポイントを確認しておく

派遣の延長や直接雇用へ切り替え時の指標となる評価ポイントを、事前に決めておきましょう。たとえば候補者の業務への適正やスキル、勤怠状況や勤務態度、成果や目標達成度などです。

評価ポイントは直接雇用へ切り替えたあとも参照するため現在運用している評価制度に則した項目や基準を取り入れるとよいでしょう。

③受け入れ態勢を整える

派遣社員に「長く働きたい」と思ってもらえるような環境を整える必要もあります。職場の環境が整っていないと、直接雇用への切り替えを打診しても辞退されてしまうでしょう。

評価制度や給与形態、社会保険や福利厚生、健康診断や研修の実施など安心して働ける社内環境を整備します。派遣社員とのトラブルを避けるためにも、派遣を受け入れる部署に労働者派遣法に関する研修を実施するとよいでしょう。

④直接雇用後は試用期間を設定できない

派遣期間を満了して直接雇用に切り替えたあと、試用期間を設定してはいけません。紹介予定派遣の派遣期間が試用期間と見なされるからです。

これに法的な罰則はありません。しかし2021年4月の「労働者派遣事業関係業務取扱要領」には、試用期間を設けることは望ましくないと記載されています。そのため行政指導を受ける可能性もゼロではないのです。

⑤不採用理由の通知義務

派遣期間の満了後に直接雇用しない場合、派遣元企業に不採用理由を通知しなければいけません。「派遣期間が終われば直接雇用へ切り替わり、社員として働く」という前提で派遣しているからです。

直接雇用への切り替えに至らなかった場合、その理由を書面で派遣会社へ通知します。もちろん理由は合理的で納得のいくものでなければなりません。

⑥禁止されている職種がある

労働者派遣法では、人材派遣を禁止している職種があります。危険がともなうと想定される建築業務や港湾運送業務、重大な責任が問われる警備業務、弁護士や会計士などの士業です。これらの職種は紹介予定派遣も受けられないため注意しましょう。

ただし医師や看護師などの医療業務は、通常の派遣は不可とされているものの、紹介予定派遣は認められています。