委嘱(いしょく)という言葉があります。
- 委嘱とはどのような意味を持つ言葉なのか
- 委嘱状の書き方
- 委嘱状、辞令書、委任状の違い
- 委嘱状のテンプレート
- 委嘱に類似していると誤解されやすい言葉
といった項目に沿って、委嘱とはどのような場面で用いられ、どのような意味を持った言葉なのかを見ていきましょう。
目次
1.委嘱とは?
委嘱(いしょく)とは、特定の仕事を一定機関、外部の人間に任せることを意味する言葉です。基本的には、専門的な知識を有する外部の人間に対して、一時的に仕事を依頼する場合に使用します。具体的には監査や、社内の勉強会のために大学教授に講師を依頼するといった場合に委嘱という言葉が使用されます。
委嘱の使い方
委嘱という言葉を正しく使うためには、委嘱しようとしている仕事が次の条件を満たす必要があります。それぞれ具体的に見ていきましょう。
- 外部に依頼する仕事
- 臨時で発生する仕事
- 専門的な知識が求められる仕事
外部に依頼する仕事
委嘱という言葉は、自社の人間ではなく、外部の人に仕事を依頼する際に使用されます。内部の人間に仕事を任せる際には、「依頼する」「アサインする」といった言葉になります。また外部の人の仕事を依頼する場合でも、特定のポジションを用意する場合は「就任」という表現になります。
臨時で発生する仕事
委嘱はあくまでも臨時で発生する仕事に対して使われる言葉で、対象の仕事が常時発生している場合には使用しません。臨時で発生する仕事とは、たとえば大学教授など専門的な知識を有する人に、プロジェクトに関する意見を伺ったり、研修を依頼したりすることなどを指します。
専門的な知識が求められる仕事
委嘱という言葉を使用する際には、専門的な知識が求められる仕事かどうかも判断材料となります。専門的な知識を求められる仕事とは、たとえば社労士や大学教授にその専門性を活かした意見をもらうといった仕事が当てはまります。
2.委嘱と受嘱、解嘱の意味の違い
委嘱と密接に関係する2つの言葉について確認しておきましょう。
受嘱=委嘱を受けること
受嘱(じゅしょく)とは、委嘱を受けるという意味の言葉。
- 一定期間、特定の仕事を任せられたとき
- 部外の人が研究などの業務を任せられたとき
- 審議会や調査会のメンバーにその行政機関に属していない公務員や民間人が任命されたとき
このような状況で受嘱という言葉を使用します。
解嘱=委嘱の反対語
解嘱(かいしょく)とは、委嘱と反対の意味を持つ言葉です。
- 一定期間、特定の仕事の担当から解任するとき
- 研究などの業務の担当を解任するとき
- 審議会や調査会のメンバーとして、その行政機関に属していない公務員や民間人を解任するとき
に解嘱という言葉を用います。
3.委嘱状とは?
委嘱状とは、どのような仕事を部外者に任せるのかが記載されている書類のことで、委嘱の際、委嘱を依頼する側が発行します。
業務については、実務の詳細を記載するというより、その業務がどのようなカテゴリーに分類されているかといった大枠で記載されるケースが多いようです。委嘱状のテンプレートを持っていると便利でしょう。
委嘱状と辞令書の違い
辞令書とは、行政機関内部の人物を任命する際に用いられる書式のこと。
- 辞令書:行政機関の内部の人材に仕事を任せる場合
- 委嘱状:外部の有識者などを任命する場合
このような違いからも分かるとおり、業務を任される人物の所属が行政機関内部の者か否かで言葉の選択が変わってくるのです。
委嘱状と委任状の違い
委任状とは、本人が何らかの理由で都合がつかない場合に、本人の代わりに代理人を立てる際に用いられる書式のこと。
- 総会の委任状を早めに提出した
- 委員会へ委任状を提出する
といった文面で使用します。一方、委嘱状は会社などの団体組織から特定の個人に対して指示を送る命令書と解釈できます。委任状と委嘱状は、書式の意味が異なるのです。
4.委嘱状の書き方・例文・テンプレート
委嘱状と辞令書は、業務を任される人物の所属が異なるだけで、特定の業務を任せるという書面の目的は同じになります。よって、委嘱状のテンプレートを作成する際、辞令書と同様のテンプレートを活用できるのです。
5.委嘱との意味の違いを知っておきたい語句一覧
委嘱という言葉は、主に「人に~を委嘱する」という文面で使用されます。そして委嘱や受嘱、解嘱に類似するカテゴリーの言葉には、
- 嘱託
- 管掌
- 兼務
- 就任
- 委託
- 任命
- 指名
- 担当
などがあります。これらの言葉と委嘱とは、意味や使い方が異なる場合も。それぞれの言葉の持つ意味を考えながら、委嘱という言葉との違いを考えてみましょう。
委嘱と嘱託(しょくたく)の違い
嘱託とは、ある一定の業務を正規の職員や社員以外の人物に頼んで任せること。また、一定の業務を依頼された人物のことを嘱託ということもあります。
嘱託は委嘱のように、「審議会や調査会のメンバーにその行政機関に属していない公務員や民間人を任命すること」といった行政に関して用いられることは少ないようです。
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管掌とは、自ら管轄している職務に関して、自らが責任を持って取り扱うということ。対して委嘱は他者に特定の業務を任せるという意味を持ちます。委嘱と管掌は、言葉も持つ意味も正反対。そのため言葉の用途も異なるのです。
委嘱と兼務の違い
兼務とは、自らが本業とする職務とそれ以外の職務をかけもちすること。本業以外にかけもちしている業務そのものを指す場合もあります。
委嘱が特定の業務を他人に任せるという意味なのに対して兼務は、同一人物が2つ以上の職務をかけもちすることを指しています。
委嘱と就任の違い
就任とは、新しくある職務や任務に就くことを意味するもの。就任は、委嘱した結果、「ある特定の職務に就任した」といったような文面で用います。
委嘱と委託の違い
委託とは、契約などの法律的行為や事務的な処理などを他者に依頼すること。委託では一般的な業務だけでなく、契約など法律的な行為を他者に依頼することもあるという違いがあります。しかし委嘱と委託は、ほぼ同義として用いられることが多いです。
委嘱と任命の違い
任命とは、公務員でない特定の人に対して公務員の身分を与えたり、公務員の昇任、後任、転任といった行為を示したりする言葉。
任命は、公務員の身分や立場に関係する言葉です。それに対して、委嘱は公務員に限定しないで用いられることもあります。この点は、委嘱と任命の違いを理解するポイントとなるでしょう。
委嘱と指名の違い
指名とは、特定の人物の名前を具体的に挙げて人物を指定すること。指名により委嘱のメンバーを選任した、委託メンバーを指名したいといった文面で使用します。人物を選ぶ方法を意味する言葉と理解するとよいでしょう。
委嘱と担当の違い
委嘱という言葉を用いる際、担当といったイメージを持つ人もいるかもしれません。担当とは、一定の事柄や職務、役職を受け持つことを意味する言葉です。
- 委嘱により、○○といった職務を担当することになった
- 委嘱する際の担当者を決めたい
といった使い方をすることもあるようです。その場合、委嘱によってその仕事を任せられるという意味となります。