事業承継とは?【わかりやすく】メリット・デメリット、種類

経営者の高齢化を背景に、ここ数年で日本の多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えるといわれています。

ここでは、

  • そもそも事業承継とは何なのか
  • 事業承継の目的と種類
  • 承継方法ごとのメリット・デメリット
  • 税制や各補助金

などについて紹介し、次世代へスムーズに事業承継がなされるためのノウハウを解説します。

1.事業承継とは?

事業承継とは、親族や従業員、または第三者の中から後継者を選び、会社の事業を承継して引き継いでもらうこと

単純に代表者を交代して株式を引き継ぐだけでなく、後継者は承継後に安定した企業経営を行うために、これまで経営者が培ってきたさまざまな資源を把握し、うまく活用していかなければなりません。

事業承継を英語で言うと?

「事業承継」は英語で「succession of a business」(事業の継承)と言い表します。

親族や従業員、または第三者に事業を承継して引き継いでもらうことを事業承継といい、英語では「succession of a business」と言い表します

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2.事業承継の目的

事業承継が行われる目的は大きく2つ。

  1. 後継者を確保し事業を継続させる
  2. 事業や企業を発展させる

平成28年12月に中小企業庁が発行した「事業承継ガイドライン」によると、日本における中小企業は全企業数の約99%(小規模事業者は約85%)を占めており、経済・社会を支え雇用の受け皿になる存在として重要な役割を担っています。

こうした中小企業をめぐる問題のひとつに、経営者の高齢化による業績の悪化や廃業などが挙げられるのです。

30代で事業承継をすると業績が向上しやすい?

東京商工会議所が2018年1月に発表した「事業承継の実態に関するアンケート調査」によると、事業承継により30代で事業を引き継いだ経営者は業況を好転させているそうです。さらに30~40代前半で引き継いだ企業は、事業承継のタイミングも「ちょうど良い」と回答していました。

これらから、経営者の年齢だけで事業承継のタイミングを判断するのではなく、後継者候補が30代の時期に、事業承継を検討することが望ましいとされています。

経営者の高齢化を背景に、早めに若い後継者を確保して事業を継続させること、さらに受け継いだ事業や企業を発展させることが中小企業に求められています

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3.事業承継をしないことで生じる問題

事業承継を行わないことで発生し得る問題点はどんなものが挙げられるでしょうか。大きく分けて「後継者が確保できる事業が継続できない」「事業や企業の発展が難しい」という2つの理由に分けられます。それぞれの課題点について解説していきましょう。

後継者不足による廃業

後継者が見つからないため、やむを得ず廃業してしまう中小企業の例は少なくなく、大きな損失として社会問題にもなっています。

「事業承継ガイドライン」によると、廃業を予定している企業の廃業理由のうち、後継者不足を挙げたのは28.6%。

主な内訳は、「子どもに継ぐ意思がない」12.8%、「子どもがいない」9.2%、「適当な後継者が見つからない」6.6%となっており、中小企業の存続をめぐって後継者の有無は大きな課題となっていることがうかがえます。

事業や企業の発展が難しい

さらに、ずっと同じ経営者のもとで事業や企業を継続させることで業績の悪化を招いたり、発展が止まってしまったりすることも問題視されているのです。

「事業承継ガイドライン」によると、経営者の交代があった中小企業は交代のなかった中小企業よりも経常利益率が2.13%高いというデータが明らかになりました。これらから事業承継が事業の成長と利益向上のきっかけになるという見方ができます。

事業承継のタイミングを間違うと、廃業や業績の悪化を招いてしまうことも。タイミングをうまく見極めることが重要です

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4.事業承継の特徴、タイプごとのメリット、デメリット、課題

次に、事業承継の特徴やメリットとデメリット、抱える課題について解説します。

親族内承継

親族内承継は、主に子どもなど親族に事業承継する方法のこと。中小企業の場合、経営者の手腕が存立基盤そのものになっていることが多く、その資源を活かせる人材を後継者に選ぶことが重要です。

親族内承継のメリット

親族(主に子)に事業承継する場合は以下のようなメリットが挙げられます。

  • 従業員承継や第三者承継に比べ、従業員や取引先の関係者に受け入れられやすく、銀行など資金提供者の支援を得やすい
  • 準備期間を長く確保できるため、長期的な後継者教育が可能
  • 財産や株式が分散しないため、所有と経営の一体的な承継が可能

親族内承継のデメリット、課題

一方デメリットは、

  • 後継者に経営者としての能力が不足している場合、後継者をどのように育てるか
  • 後継者以外の親族との間で資産や遺産をめぐるトラブルが起こる可能性がある

また、親族内承継の割合が落ち込んでいることも課題として挙げられるのです。これは子ども側の、職業選択の自由への意識の高まりや安定した生活の追求など、多様な価値観が浸透していることが少なからず影響していると考えられています。

従業員承継

自社の従業員や役員に事業承継を行う方法が「従業員承継」です。中小企業のうち中規模の企業では、親族であることより、リーダーシップがある、経営能力が優れているなどといった点を重視して後継者の選定を行っている傾向が見られます。

従業員承継のメリット

従業員承継のメリットとして、以下のようなことが考えられます。

  • 経営者としての実力があり、優秀な人材を社内から選んで後継者に据えることができる
  • 自社の事業や業界について精通している人物を選定でき、事業の利益好転も期待できる
  • 自社で長期間働いてきた人物であれば、現在の経営方針や人事制度などを大きく変更せずに引き継ぎが可能

従業員承継のデメリット、課題

従業員承継のデメリットとしては以下のようなものが挙げられます。

  • 親族や取引先などの関係者の理解と同意を得るために時間がかかることも
  • 社内で権力争いが起こる可能性が

東京商工会議所による「事業承継の実態に関するアンケート調査」によると、自社の従業員を後継者候補に想定している企業は、借入金・債務保証の引き継ぎや株式の譲渡を課題に抱えている場合が多いそうです。

第三者承継、M&A

株式譲渡や事業譲渡等(M&A)により承継を行う方法で、M&Aなどを活用して事業承継を行う事例は増加傾向にあります。その一因として考えられるのは下記のようなことです。

  • 中小企業における後継者確保の困難が背景にある
  • 中小企業のM&Aなどを専門に扱う民間仲介業者が増えた
  • 国の事業引継ぎ支援センターが全国に設置された

第三者承継、M&Aのメリット

第三者承継、M&Aのメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • 親族や社内に適任者がいない場合でも、候補者を広く外部に求められる
  • 買い手は資金力のある企業なので、経営の安定が見込める
  • 現経営者は会社売却の利益を得られる

「事業承継の実態に関するアンケート調査」によると、従業員承継できなかった場合、5割を超える企業がM&Aなどを検討しているそうです。

第三者承継、M&Aのデメリット、課題

第三者承継、M&Aのデメリットは以下のようなものが挙げられます。

  • 労働環境など希望の条件を満たす売却先を見つけるのが困難
  • 経営の一体性を保つのが難しい

その他、内部統制が取れていないなど問題のある企業の場合、相手と同意まで至ることが難しくなります。社外への引き継ぎを成功させるには、本業の強化や内部統制体制の構築により、企業価値を十分に高めておく必要があるでしょう。

事業承継のタイプごとにメリットとデメリットがあります。自社の状況をよく見極めて、誰に承継するのか慎重な選択が必要です

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5.事業承継の事例

続いて、実際に事業承継を行った企業の事例を紹介します。

たかはし式典(親族内承継)

東京都墨田区で葬儀総合サービス業を営む「たかはし式典」は、親族内承継を行ったケースです。この企業では、後継者が同業他社で修業を積んだ後、後継者が39歳の時に事業承継を実施しました。

承継後は昔からのやり方を見直し、見積もりの細かい算出や接客態度の見直しなど、新しい価値観を投入して社長業に専念。さらに「企業健康診断」を受診し、既存事業を磨き上げて、時代に合ったこれからの事業改善を洗い出し、実施しているそうです。

イーグルメンテナンス(従業員承継)

東京都中野区でビルメンテナンス業を営む「イーグルメンテナンス」では従業員承継を実施しています。

1988年に先代が創業した同社に、紹介で学生アルバイトとして現社長が入社。2016年に先代が倒れた際、資金繰りから従業員への給与支払いまで経理処理がすべてストップするという事態が起こりました。

現社長は会社が潰れないよう1株1円で株を買い取るなど奔走したそうです。この経験から、自ら先代に事業承継を申し出て、先代が亡くなる前に社長に就任し、企業の危機を救いました。

日伸運輸(第三者承継、M&A)

自動車運送事業を営む「日伸運輸」は、事業承継に悩む先代が、2015年夏に東京商工会議所杉並支部の会合にて紹介された事業引継ぎ支援センターを利用したことを機に、M&Aによる第三者承継を実施しました。

譲受側の東亜物流は、日伸運輸が事業承継を前提に借入金を完済し、無借金経営を行っていた点を高く評価。同業者としての信頼感と、コンサルタントや支援センターなど第三者を適切に介したことで交渉は和やかかつスムーズに進み、M&Aが成立したのです。

親族内承継、従業員承継、M&A、さまざまなケースがありますが、スムーズに事業承継を行うためには余裕を持った準備が必要だと分かります

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6.事業承継税制とは?

事業承継税制とは、後継者が事業用資産や株式などを先代から相続や贈与で譲り受けた際に、一定の要件の下でその納税を猶予できる制度のこと。

中小企業の事業承継を早期に実施することが日本経済における課題という点から創設されました。

適用を受けるには、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づく認定などが必要です。また後継者の死亡などにより、将来的に免除されることを前提としています。

平成30年度の税制改正

これまでの措置でも、相続税の80%が免除されるということで大きな注目を集めていた事業承継税制ですが、平成30年度の税制改正においては、深刻な問題を抱える中小企業の事業承継を後押しする目的で大きく改正されました。

これまでの措置のほか、10年間の措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の3分の2まで)の撤廃、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)などが新たな措置として加わったのです。

事業承継税制を適用するための要件

事業承継税制の特例措置の適用を受けるためには、いくつかの要件があります。

中小企業

中小企業庁の定義における「中小企業者」に該当していることが必要です。中小企業の定義について、中小企業庁は以下のように定義しています。

  1. 製造業、建設業、運輸業 その他以下の②~④を除く:資本金の額が3億円以下もしくは、常時使用する従業員の数が300人以下
  2. 卸売業:資本金の額が1億円以下もしくは、常時使用する従業員の数が100人以下
  3. サービス業:資本金の額が5,000万円以下もしくは、常時使用する従業員の数が100人以下
  4. 小売業:資本金の額が5,000万円以下もしくは、常時使用する従業員の数が50人以下

特例承継計画

特例措置の適用を受けるために必要な、会社の後継者や承継時までの経営見通しなどについてまとめた「特例承継計画」を策定します。

さらに、中小企業に対して専門性の高い支援を行うために、国から認定された税理士や弁護士等の専門家の所見を記載した上で、平成30年(2018年)4月1日から2023年3月31日までに都道府県知事に提出し、その確認を受ける必要があるのです。

承継計画を提出しない場合は、従来の事業承継税制(一般措置)の適用となります。

事業承継税制のメリット

事業承継税制の具体的なメリットを解説しましょう。

  1. 税の免除
  2. 税額の再計算と免除
  3. 雇用と納税猶予
  4. 相続時精算課税

①税の免除

平成30年の事業承継税制の特例措置では、これまでの一般措置と比較してさまざまなメリットがあります。

最大のメリットは、「特例承継計画」を提出して一定の要件を満たすことができれば、相続税も贈与税も100%免除になるという点。

一般措置では、対象株数および納税猶予割合は、総株式数の3分の2までで、贈与については100%、相続税の80%が免除されるという制度でしたが特例措置では対象株数は全株式となり、相続税も贈与税も100%免除されます。

②税額の再計算と免除

平成30年の税制改正で経営状況の悪化や正当な理由があれば相続(贈与)の税額などを再計算し、再計算した税額と直前配当等の金額との合計額が当初の納税猶予税額を下回る場合には、その差額が免除されることとなったのです。

一般措置では5年間事業を継続する必要があり、継続できなければ承継時の株価をもとに贈与・相続税を納税するというルールがありましたが、特例措置が適用されれば後継者の不安を軽減できます。

③雇用と納税猶予

一般措置では、事業承継後に雇用確保条件を満たさなければ、猶予されていた贈与税・相続税の全額を納付する必要があります。

しかし特例措置では、雇用確保要件を満たせない場合でもその理由を記載した書類を提出すれば、納税猶予が継続されるのです。この書類には、認定経営革新等支援機関の意見が記載されていることが必要となります。

④相続時精算課税

一般措置では相続時精算課税の適用について、60歳以上の者から20歳以上の者への贈与しか適用されませんでしたが特例措置では、推定相続人・孫への贈与にも適用することが可能となり、子・孫以外でも適用が可能となりました。

ただし、一度相続時精算課税制度を選択すると、その後同一の贈与者からの贈与については同制度が強制適用されてしまいます。

平成30年度の税制改正を経て、事業承継税制にメリットが増えました。適用の要点に当てはまるか確認し、必要なら申請しましょう

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7.事業承継の補助金、助成金

続いて、事業承継の補助金や助成金はどのようなものがあるか紹介しましょう。

事業承継補助金

事業承継補助金は、事業を引き継いだ中小企業・小規模事業者等が行う事業承継後の新しい取り組みを支援する制度です。補助上限は150万円から1,200万円で、交付申請期間内に申請する必要があります。

後継者承継支援型

事業承継補助金のうち、「後継者承継支援型」(Ⅰ型)と呼ばれるもので、経営者交代による事業承継後、新しい取り組みを行った後継者を補助するもの。

中小企業者などであることに加え、

  • 地域経済に貢献している中小企業者などである
  • 承継者が、次のいずれかを満たす(事業)者である
  • 経営経験がある
  • 同業種に関する知識などがある
  • 創業・承継に関する研修等を受講した者

上記の要件を満たすと、外注費や原材料費などの経費が150~500万円を上限に補助金が支給されます。

事業再編・事業統合支援型

「事業再編・事業統合支援型」(Ⅱ型)は、事業再編・事業統合の後に新しい取り組みを行ったときに補助金が出るというもの。

  • 本補助金の対象事業となる事業再編・事業統合に関わるすべての被承継者と承継者が、日本国内で事業を営む中小企業・小規模企業者等、個人事業主、特定非営利活動法人(以下、「中小企業者等」という)である
  • 地域経済に貢献している中小企業者などである
  • 承継者が現在経営を行っていない、または、事業を営んでいない場合、次のいずれかを満たす者である
  • 経営経験がある
  • 同業種に関する知識などがある
  • 創業・承継に関する研修等を受講した者

上記の要件を満たすと、設備投資、販路拡大、既存事業などに必要な経費のうち450~1,200万円を上限に補助金が支給されます。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)等の小規模事業者を対象に実施される補助金のこと。小規模事業者の販路開拓などの取り組みに対し、原則50万円を上限に補助金が支給される制度です。

申請においては、地域の商工会議所へ「事業支援計画書」(すべての事業者)、「事業承継診断票」(代表者が60歳以上のすべての事業者)の作成・交付を依頼する必要があります。なお、作成の際は商工会議所の指導・助言を受けられるのです。

事業承継を行った後継者に与えられるさまざまな種類の補助金は、その後の企業運営を円滑に進めるための大きな手助けとなるでしょう

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8.事業承継の流れ、ステップ

ここでは事業承継を効率的に進めるための一連の流れを解説します。

  • ①準備について認識
  • ②現況を可視化
  • ③企業価値の向上
  • ④事業承継の方法を策定
  • ⑤-1. 親族内承継、従業員承継の場合
  • ⑤-2. 第三者承継(M&A)

①準備について認識

最初に、事業承継に向けた準備の必要性について関係者間で認識し、「事業承継診断」や経営者と支援機関との事業承継に関する対話・相談に取り組みます。

親族内承継を考えている企業の場合、事業承継問題を気軽に外部に相談しにくい経営者も少なくありません。そのせいで事業承継の準備に着手し、専門家のもとを訪れたときには手遅れになっていたという例も実際にあるのです。

後継者教育などの準備に要する期間を視野に入れて行動に移しましょう。

②現況を可視化

次に、自社の経営状況や経営課題を決算書やツールを用いて可視化し、現状を正確に把握します。

自社の経営状況や経営課題等をもとに、現在の事業がどれくらい持続し成長するのか、商品力・開発力の有無、利益を確保する仕組みになっているかなどを見直して自社の強みと弱みを把握します。

ここで、強みをいかに伸ばすか、弱みをいかに改善するか方向性を見出すことも重要です。現状の見える化・把握を行う際は、身近な専門家や金融機関などに協力を仰ぐと、効率がよくなります。

③企業価値の向上

次に事業承継に向けて、企業価値の向上を目指します。

事業承継は、経営者交代をきっかけに事業を発展させる好機ですが、「後継者になりたい」と思う人物がいなければ実現はできません。後継者候補が後を継ぎたくなるような経営状態まで引き上げておいたり、魅力を引きだしたりすることが大切です。

これらを踏まえると、現状の経営者は、引き継ぎまでのあいだ事業の維持と発展に努め、より良い状態で後継者に事業を引き継ぐことが求められると分かるでしょう。

④事業承継の方法を策定

上記のステップで、具体的に事業承継を進めていくにあたって、自社や自社を取り巻く状況を整理しました。

経営者は、過去から現在までを振り返りながら、経営に対する想い、価値観、信条を再確認してみましょう。これらのプロセスは、事業承継の根幹のひとつとして、自社の経営理念を承継する点で非常に重要です。

後継者や従業員と共有すれば、事業承継後も企業の軸をブレなく保てます。そして、親族内承継、従業員承継、第三者承継(M&A)、どれによって事業承継を実施するのがベストなのかが見えてくるはずです。

⑤-1. 親族内承継、従業員承継の場合

親族内承継、従業員承継を行う場合の流れを解説します。

事業承継計画の策定

事業承継を円滑に進めるため、会社の10年後を見据え、いつ、どのように、何を、誰に承継するのかについて事業承継計画を策定します。事業承継計画は、後継者や親族と共同で策定しましょう。

完成後は、取引先や従業員、取引金融機関などと共有すると信頼関係の維持が期待できます。さらに、後継者や従業員が事業承継に向けて必要なノウハウを習得したり、組織体制の整備といった準備を実行できたりといった事柄も見込めるでしょう。

事業承継の実行

実行段階では、状況の変化等を踏まえて随時事業承継計画を見直したりブラッシュアップしたりしながら、経営権や株式などを譲渡し、事業を承継しましょう。

その際、税負担や法的な手続きが必要となる場合が多いため、弁護士、税理士、公認会計士など専門家の協力を得て修正を加えます。

事業承継実行後は、後継者が新しい視点を持って従来の事業の見直しを行い、先代経営者が行ってきた既存の事業に、時代に合ったサービスを追加するなどの中長期目標を策定しましょう。

⑤-2. 第三者承継(M&A)

次に第三者承継の場合の流れを解説します。

マッチング

M&Aの場合、企業を買い取ってくれる相手を探しながら売却条件を検討します。自力で一連の作業を行うことが困難なら、専門的なノウハウを有する仲介機関に相談しましょう。仲介機関の候補としては、公的機関である事業引継ぎ支援センターが考えられます。

ほかにもM&A専門業者や取引金融機関、士業等専門家なども考えられるので、日頃の付き合いやセミナーなどへの参加を通じて、信頼できる仲介機関を見つけていきましょう。

M&Aなどによる事業承継

売却条件に合った譲受相手が見つかったら、M&Aにおける手続きを踏まえて相手企業に自社を譲り渡します。

親族内承継の場合と同様、M&Aによる事業承継も、中小企業の成長・発展の大きなきっかけになり得るのです。統合先企業の事業における相乗効果で、承継前よりも大きな利益を生むことも期待できるでしょう。

近年では事業承継をきっかけに2つ以上の会社が統合し、経営資源の集中や管理機能、マーケットの集約を通じた競争力の強化などを行い、経営の効率化でより強い企業として発展する事例も見られます。

事業承継を行う際は、今後の会社経営の成長につながるようしっかり準備を行い、ステップを踏んで承継を目指しましょう