自己管理能力とは、自分自身をコントロールし、高いパフォーマンスを保つ力のこと。本記事では、自己管理能力の種類や、自己管理能力が高い人の特徴、自己管理能力を高めるメリットなどについて解説します。
目次
1.自己管理能力とは?
自己管理能力とは、自分自身をコントロールし、高いパフォーマンスを保つ能力のこと。自己管理能力は、「セルフマネジメントスキル」と呼ばれることもあり、健康の管理や時間の管理、業務の進捗管理などにおける能力のことです。
個人の生活や仕事において必要な要素で、とりわけ仕事においては、成果を出すための生産性向上や目標達成にもかかわるものです。
2.自己管理能力の種類
自己管理能力は、いくつかの種類に分けられます。代表的なものは以下の通りです。
- 体調の管理
- ストレスの管理
- 時間の管理
- 感情の管理
- モチベーションの管理
①体調の管理
体調の管理は、自己管理能力の基礎とも言える重要な能力です。健康な状態であれば、集中力や判断力が向上し、最善のパフォーマンスを発揮できます。
そのためには、
- 健康的な食事をとる
- 睡眠時間を確保して疲れを癒すこ
- 運動する
- 風邪を予防する
ことなどを心がけないといけません。
②ストレスの管理
ストレスの管理とは、ストレスとうまく付き合って対処すること。ストレスの種類は、仕事のプレッシャーや人間関係などさまざまありますが、心身の健康を維持することで、仕事に集中し、落ち着いて業務に取り組めるようになります。
体調とストレスは密接に関係するため、体調を管理したうえで、ストレス要因の解消や、気分転換を取り入れるのが理想的です。
③時間の管理
時間の管理とは、自分の時間を効果的に使うことを指します。生活や仕事を円滑に進めるための基本的なスキルです。とりわけ仕事においては、時間を有効活用することで、より多くのことを達成できるようになります。
スケジュール化やタスクの優先順位の決定などは、仕事の中で培っていくことが多いですが、研修などで基本的なスキルや業務効率化につながるツールの使い方などを学ぶのもよいでしょう。
④感情の管理
感情の管理とは、感情に左右されず冷静な状態で意思決定をおこなうこと。感情の管理は、良好な人間関係を築くために重要です。イライラや不安など、周囲に伝わりやすいネガティブな感情をうまくコントロールする必要があります。
客観的な視点から状況を判断し、冷静な状態で他者と意見交換を行うことで改善につながります。
⑤モチベーションの管理
モチベーションの管理とは、仕事に対する自身の意欲ややる気を維持すること。成果を出したり目標を達成したりするために努力するときに必要になります。モチベーションが維持されていると、仕事に対する集中力が高まり、仕事の質や生産性、成果が高まります。
モチベーションの管理は、自身で目標を設定し、新しい知識やスキルを習得するなどして維持します。
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3.自己管理能力が高い人の特徴
続いて、自己管理能力が高い人の特徴を5つ挙げます。
- 理想や目標が明確
- 計画性があり時間を有効に使う
- 健康的な生活を送り体調を崩しづらい
- 自分の弱点を理解している
- 感情の起伏が少ない
①理想や目標が明確
自己管理能力が高い人は、明確な理想や目標を持っています。将来なりたい姿を具体的に描くことで、効率的に仕事に取り組むため、生産性や成果が上がります。
また、理想や目標を実現および達成する過程で、自己管理能力はさらに高まっていくこともあるでしょう。やるべきことを先送りしたり、誘惑に負けたりせず、生活や仕事に計画性があります。
②計画性があり時間を有効に使う
自己管理能力が高いと、計画性を持って時間を有効に使います。
無駄な時間を減らしつつ、効率的に仕事に取り組むため、スケジュールやタスクの管理を疎かにせず、会議の準備に早めに取り組んだり、翌日の仕事を整理してから帰宅したりするなどの行動をとります。
このように計画に取り組むことで、目標を達成できるようになります。
③健康的な生活を送り体調を崩しづらい
自己管理能力が高い人には、健康的な生活を送り体調を崩しづらいという特徴があります。十分な睡眠をとり、バランスの取れた食事や定期的な運動を取り入れる努力をしているためです。
また、生活リズムを保つことで安定した高いパフォーマンスを発揮します。肉体面だけでなく精神面の健康にも気を遣う必要があるでしょう。
④自分の弱点を理解している
自己管理能力が高い人は、自分の弱点を理解しています。たとえば業務スピードが遅いという弱点がある場合、その改善に向けて自発的に取り組むなど、自分の能力や行動パターンを客観的に評価し、より良くしようと努めています。
理想や目標に向かって、自己を高めていこうとする意識があるのは重要なことです。
⑤感情の起伏が少ない
自己管理能力が高い人には、感情の起伏が少ないという特徴があります。時間や健康と同様に、感情のコントロールは大切な要素です。トラブル時も、感情的にならず、自身と周囲の状況を客観的に観察する冷静さがあります。
こういった行動を取るためには、計画性や健康的な生活習慣の余裕が必要なため、突発的なアクシデントや変化にも柔軟に対応できるように備えておく姿勢も必要でしょう。
4.自己管理能力が低い人の特徴
対して、自己管理能力が低い人の特徴も挙げてみます。ポイントは以下の5つです。
- 目標や継続力がない
- 時間にルーズで計画性がない
- 心身の健康に無関心
- こだわりが強い
- ネガティブな感情が表に出やすい
①目標や継続力がない
自己管理能力が低い人は、モチベーションの根源となるような目標を持っていません。そういった人は、たとえ目標を立てたとしても、目標達成に向けて自己を規律する意欲や責任感が不足し、途中で挫折してしまいます。
仕事における成長意欲だけでなく、生活面ではダイエットや勉強なども継続しづらいでしょう。さらに、達成したい目標がないため、困難に直面した際に、諦めやすい傾向があります。
②時間にルーズで計画性がない
自己管理能力が低いと、時間にルーズになり計画性がないことが多くなってしまいます。
たとえば、不健康な生活習慣が影響して、寝坊や遅刻を繰り返すこともあるでしょう。業務においては、準備時間の不足やタスク管理の不十分さといった計画性の欠如が目立ちます。
これらは、締め切りを守ることに対する意識が薄いことが原因とも言えます。
③心身の健康に無関心
自己管理能力が低いと、自身の心身の健康に無関心になることもあります。
たとえば、疲労やストレスの蓄積に気が付かず、体調を崩したり、イライラして他人に当たったりすることも。
こういった人は、生活習慣の改善やリフレッシュ方法への興味なども薄いですが、体調とメンタルは密接につながっているため、心身の不調に気を配る必要があります。
④こだわりが強い
自己管理能力が低い人の特徴として、こだわりの強さを挙げることもできます。
たとえば、完璧主義タイプのため、効率性よりこだわりを優先してしまうこともあるでしょう。そういった場合、締め切りを守れないといった影響が出ることも。
また、感情面の切り替えについても、ミスに対して落ち込んだときに立ち直りに時間がかかることもあります。
⑤ネガティブな感情が表に出やすい
自己管理能力が低い場合、ネガティブな感情が表に出やすくなります。それは、ストレスや疲れが蓄積しており、感情のコントロールが難しいためです。
日常生活でのささいなトラブルやプレッシャーに対して、過剰な反応を示すようになったら、ストレスの原因や発散方法を探る対処が必要です。
5.自己管理能力を高めるメリット
自己管理能力を高めるメリットは以下の3つです。
- 良好な人間関係の構築
- 生活の質の向上
- 業務の効率化
①良好な人間関係の構築
自己管理能力を高めると、良好な人間関係を構築できます。感情に任せた言動がなく、衝突や対立を適切に回避できるためです。
また、感情のコントロールができることで、相手の意見や感情に意識を向ける余裕が生まれるでしょう。感情の安定性は周囲に信頼感を与え、良好な人間関係の構築につながります。
②生活の質の向上
自己管理能力を高めると、生活の質を向上できます。睡眠不足を招く誘惑や、偏った食生活などを避け、健康的な生活習慣を確立できるようになるためです。
心身の健康が改善して生活の質が向上すると、仕事のモチベーションにも良い影響を与え、全体的な満足度が向上することも少なくありません。
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③業務の効率化
自己管理能力が高まることで、業務が効率化します。締め切りや計画性に対する意識の高まりによって、時間やタスクの管理、計画に則った進行が容易になるためです。
効率的な仕事によって、周囲からの信頼を得たり、職場全体の生産性がアップしたりするなど、得られるメリットは大きいと言えるでしょう。
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6.自己管理能力が低いことによるリスク
続いて、自己管理能力が低いことによるリスクについて紹介します。具体的なリスクは以下の3つです。
- 本来の能力を発揮できない
- 周囲から信頼を得づらい
- 心身の不調による長期離脱
①本来の能力を発揮できない
自己管理能力が低いことで、本来の能力を発揮できなくなります。自己管理能力は仕事のパフォーマンスに直結するもので、時間的な余裕の無さや、睡眠不足などのコンディションにより、仕事への集中力や生産性が低くなってしまいます。
本来の能力を発揮できないことで、期待された成果を出せないといったことは、企業にとってのリスクにもなります。
②周囲から信頼を得づらい
自己管理能力が低いと、周囲から信頼を得づらくなってしまいます。たとえば、時間の管理不足によるスケジュールの遅れや提出物の不備、感情の管理不足による衝突など、周囲との連携やチームワークを乱す原因にもなってしまうためです。
ミスや不注意をたびたび繰り返してしまった場合は、改善に向けて動きましょう。
③心身の不調による長期離脱
心身の健康は完全にコントロールできるものではないものの、自己管理能力が低いと、心身の不調による長期離脱の可能性が高くなってしまいます。なぜなら、不健康な生活習慣やストレスの蓄積により、長期的な不調を引き起こすことが多いためです。
生活習慣の改善や自身の心身の不調に気が付く意識を持つようにして、きちんと対策を取りましょう。
7.自己管理ができない原因
自己管理ができない原因を3つ挙げます。
- 目標を定めていない
- 周囲に頼ることが苦手
- 不規則な生活を送っている
①目標を定めていない
まず、仕事やプライベートにおいて、目標を定めていないという原因があります。自身の達成したいことやなりたい姿に対する関心が薄く、さらにはチームの目標に対しても達成意欲が低いことが原因になっています。
そのため、計画性のある行動やモチベーションの維持が難しいといえるでしょう。ただし、目標とする人物や理想の生活およびキャリアを設定し、行動を起こすことで変化することもあります。
②周囲に頼ることが苦手
周囲に頼ることが苦手であると、自己管理ができない原因となります。
タスクをひとりで処理しようとすることで、時間的および精神的な余裕が生まれづらく、そのほかの不安や心配事を抱え込むと、大きなストレスとなり、結果として自己管理が疎かになってしまいます。
周囲を頼って、自身の負担を軽減することで、メンタルも安定しやすくなるでしょう。
③不規則な生活を送っている
不規則な生活が、自己管理ができない原因となることも少なくありません。
たとえば、食事や睡眠時間が不規則になると、心身のバランスが乱れやすくなります。とりわけ睡眠時間が不足すると、意欲や意思のコントロールが難しくなるでしょう。
判断力が低下した状態で自己管理をすることは非常に難しいため、まずは十分な睡眠時間を確保し、負のサイクルを断ち切ることが必要です。
8.自己管理能力を高める方法
自己管理能力を高める方法を10個紹介します。それぞれについて解説します。
- 自身の役割を理解する
- 具体的な目標を設定する
- 自身を客観的に評価する
- 自身の業務スピードを把握する
- 生活リズムを一定にする
- 自分の強みと弱みを見極める
- 業務に集中できる環境を整える
- 日々の成果を振り返る
- 自分で判断する習慣をつける
- 忍耐強さを身につける
①自身の役割を理解する
組織の中で、自身の役割を理解してください。やるべきことが不明確であると、自己管理能力を発揮することが難しいためです。
前提として、組織においては成果を出すことが求められるものの、そのうえで、自身に期待される具体的な役割を確認しましょう。目標や達成すべき成果を明確にして、具体的な行動に落とし込みます。
②具体的な目標を設定する
自身のなりたい姿や達成したいことを具体的な目標として設定してください。目標設定によってモチベーションを維持できるようになります。
まずは、大きな目標を設定し、その目標達成のための小さな行動(マイルストーン)を設定します。やるべきことを細かく明確にすることで、途中で挫折せず、目的意識を持つことができるでしょう。
目標設定とは?【設定のコツを一覧で】重要な理由、具体例
目標設定は、経営目標達成や個人のレベルアップのために重要なもの。適切な目標設定ができないと、最終的なゴールが達成されないだけでなく、達成のためにやるべきことも洗い出せなくなってしまうでしょう。
今回は...
③自身を客観的に評価する
自身の行動や感情を客観的に評価することは大切です。これは、「メタ認知」とも言われ、自身と周囲の関わりを観察したり、感情やストレスの動きを自分自身で認知したりすることを指します。
ものごとを冷静に判断する力が身に付き、結果として、外部のストレス要因や誘惑に影響されづらくなります。
④自身の業務スピードを把握する
自身の業務スピードを把握することで、期日の遅れなどを防ぐことも必要です。タスクの分量や内容によって、実際にどのくらいの時間がかかるか洗い出します。
いつも締め切りギリギリになるなら、どのくらいの作業時間がかかるか正しく把握できていないと言えます。余裕を持って完了までのスケジュールを組み、計画性を持って進める必要があるでしょう。
⑤生活リズムを一定にする
生活リズムを一定にすることで、心身のコンディションを整えやすくなります。なぜなら、睡眠不足や体調不良はパフォーマンスの低下に直結するためです。
なるべく同じ時間に食事や睡眠をとることで、生活リズムを整えられ、仕事の時間も確保しやすくなり、パフォーマンスの安定化につながります。
⑥自分の強みと弱みを見極める
自分の強みと弱みを見極めることも、自己管理能力を高める上で重要です。
自分の強みが生かされるとモチベーションの維持にもつながりますが、反対に弱みはほかの人よりも時間がかかったり、負担がかかったりすることを把握しておきます。
自分自身で評価したり、周囲からのフィードバックを受けたりして、自身の強みと弱みを見極めましょう。
⑦業務に集中できる環境を整える
自己管理能力を高めるためには、業務に集中できる環境を整えることが重要です。
日々のタスクを完了させるためには、計画性だけでなく、集中力が大切で、注意散漫にならないような環境を作り、ひとつの作業に集中できるようにします。集中してひとつずつこなしていくことで、時間や労力を効率的に使えます。
⑧日々の成果を振り返る
日々の成果を振り返ることで、自己管理能力を高めましょう。今日1日で完了したタスクや自身の行動を振り返り、目標達成までの進捗などを確認することで、日々振り返ることができ、細かな改善につなげられます。望ましくない行動があればすぐに修正できるため、成果につながりやすいでしょう。
⑨自分で判断する習慣をつける
自己管理能力は、自分で判断する習慣をつけることで高められます。自身で決定したことに対して責任感が生まれ、規律のある行動につなげやすいためです。
大きな判断をする必要はなく、たとえば世間のニュースに対して自分の意見を持つといった小さな行動でも構いません。少しずつ試すことで判断力が身に付くでしょう。
⑩忍耐強さを身につける
自己管理能力を高めるうえで、忍耐強さがあるとさらによいとされています。業務において、計画を完遂したり期限を守ったりするなど、忍耐強さが求められる場面が多くあるためです。
途中で諦めず、自律させて行動することは自己管理能力が非常に高いといえます。
また、周囲の話に耳を傾けて共感したり、トラブルを解決したりするなどの忍耐強さは、リーダーとしての資質にもつながる要素になります。