自己顕示欲とは、周りの人々から注目を集めたい、認められたいという欲求のこと。自己顕示欲が強い人の特徴や、自己顕示欲が強い人との接し方を解説します。
1.自己顕示欲とは?
自己顕示欲(じこけんじよく)とは、周囲から注目を集めたい、自分をアピールしたいという欲求のことです。顕示の意味は「はっきりと示すこと」なので、自己顕示は「自分もっと目立たせること」や「自分を際立たせること」を指します。一般的には「第三者から見て度が過ぎる不自然な自己主張」というニュアンスが含まれます。
2.自己顕示欲が強くなる理由
仕事や人間関係など周囲環境によって自己顕示欲が強まる場合もあるので注意が必要です。自己顕示欲が強くなる原因や類似語について解説しましょう。
自己顕示欲が強くなる原因
自己顕示欲が強くなってしまう原因は、周囲環境と本人の意識の2種類でまたその原因によってその人の自己顕示の性質やタイプが異なるのです。ここでは自己顕示欲が強くなる原因を4つ説明します。
- 育ちのなかでの愛情不足
- 仕事やプライベートが順調でない
- 現実と理想とのギャップがある
- 自分自身に自信を持てない
①育ちのなかでの愛情不足
親や周囲の人々から愛情を受けず、欲求や寂しさを抑えた結果、それが反動となって自己顕示欲の強い大人になってしまうのです。
たとえば子供のころから、愛されたり、褒められたりするという経験が少なければ、「もっと愛されたい」や「もっと自分という存在を知ってほしい」という思いが強くなるでしょう。
このタイプの人は、育ちの中での愛情欠如の裏返しで自己顕示欲が強くなると考えられます。
②仕事やプライベートが順調でない
仕事や恋愛が上手くいかないと、「自分はこんなはずではない」や「もっと認められたい」という思いから自己顕示欲が高まります。その結果、「会社での自分の評判を異常に気にする」や「異性の前で過剰なアピールをする」などの行動に出てしまうのです。
仕事や恋愛が上手くいって何事にも満足できている人は、現状以上のものを得ようと躍起になることはありません。
③現実と理想とのギャップがある
仕事やプライベートにて、だれしも「こうありたい」という欲求があるものです。しかしこの理想と現実の差が大きすぎると自己顕示欲が強まります。
自分に自信がなく、コンプレックスが背景にある人は「自分はこんなもんじゃない」や「もっと輝く人生を歩みたい」という不安や野心、願望が大きくなり、理想が高くなってしまうのです。
理想が高くなると理想と現実とのギャップが大きくなり、その結果、自己顕示欲を強める原因になります。
④自分自身に自信を持てない
自信のなさというのは「自分は会社で優秀な人材だと思われていない」や「周囲の人々よりも下に見られている」といった思いのこと。
これが根底にあるため、「もっと評価されたい」や「もっと影響力のある人間になりたい」という思いが強まり、過剰な自己顕示欲となって表れるのです。これは自分自身に対して劣等感(コンプレックス)が強い人によく見られます。
自己顕示欲と類似する言葉
自己顕示欲と類似する言葉に「承認欲求」があります。しかし正しく使いわけられる人は少ないでしょう。承認欲求という言葉の意味を説明します。
承認欲求
「自分を評価してほしい」「自分自身を価値ある人間だと認めたい」という欲求のこと。周囲から自分を認めてほしい場合は「他者承認欲求」、自分で自分のことを認めたい場合は「自己承認欲求」と呼びます。
自己顕示欲と承認欲求との違い
承認欲求と自己顕示欲は、つきつめるとどちらも「自分が認められたい」という欲求です。まず「認められたい」という承認欲求があり、その中に「自分をアピールしたい」という自己顕示欲が含まれるといわれています。
承認欲求は「自分または他者に自分の存在を認めてほしい」という欲求で、自己顕示欲は「承認欲求を得るために他者へ自分をアピールしたい」という欲求なのです。
なお承認欲求はアメリカの心理学者マズロー氏が提唱した「欲求5段階」のひとつですが、自己顕示欲は心理学で使われる用語ではありません。
承認欲求とは? 強い人の特徴や満たし方、自己顕示欲との違い
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承認欲求とは、他人から認められ...
3.自己顕示欲が強い人に見られる特徴
自己顕示欲が強い人は自分本位な考え方や言動をする場合も多いため、周囲に受け入れられない状況も多々あります。仕事やプライベートで問題や軋轢(あつれき)を生む原因ともなりえるのです。ここでは自己顕示欲が強い人に見られる特徴を解説します。
- まず相手を否定する
- 服装など見た目が派手
- 自分の話ばかりする
- SNSの更新頻度が高い
- マウンティングで自分の態度を決める
- 偽りが多い
- 他人の評価が気になる
- 数に執着する
- 負けることが嫌い
①まず相手を否定する
自己顕示欲が強い人は、最初から相手を否定する傾向にあります。たとえば相手が何か言った際に、「いや、それは違う」や「そうではなく」などと頭ごなしに伝えてくる人です。
このとき自己顕示欲が強い人のなかでは、相手を否定して「自分は相手よりも優れている」や「自分のほうが正しい」といった優位性を得ようという心理が働いています。
②服装など見た目が派手
服装や髪の色が個性的で派手な人は、自己顕示欲が強い傾向にあります。服装や髪の色というのは自己アピールのひとつ。服装を個性的にしたり、髪の色を派手にしたりすることで周囲の目を引こうとしているのです。
見た目が派手な人は「こんな私を見てほしい」という強い欲求があり、周囲から注目を集めて自己顕示欲を満たそうとしています。
③自分の話ばかりする
自分のことをたくさん話したがる人は自己顕示欲の強い人の典型です。過度に自分のことを話すのは、自分を知ってもらいたいという気持ちが隠れています。
「こないだ○○をした」や「仕事で評価された」といった内容の話を自慢げに語り、相手の話は聞こうとしません。自慢話をたくさん話す人ほど、「相手から褒められたい」という欲求が働いています。
④SNSの更新頻度が高い
SNSをひんぱんに更新したがるのも自己顕示欲の強い人の特徴です。SNS自体が「自己発信のツール」や「自己表現の場」であるので、SNSの更新頻度が高い人はそれだけ「自分が注目されたい」という意識が強い傾向にあります。
フォロー数や「いいね」の数が自分のステータスとなり、自己満足感や自己肯定感が得られるのです。
⑤マウンティングで自分の態度を決める
マウンティングを取りたがる人は、自己顕示欲が強い人といえます。人間社会におけるマウンティングとは、学歴や年収、人間関係などにおいて相手より自分の方が優れているとアピールすること。
自己顕示欲の強い人は自己優位性に執着している場合が多く、自分が相手よりも下に見られるのを嫌います。そこで生じる「自分のほうが格上だ」や「自分のほうが偉い」という強い気持ちが、他者へのマウンティング言動という形で表れるのです。
⑥偽りが多い
自己顕示欲が強い人は嘘をつくことも多い傾向にあります。嘘をついたり真実ではないことを語ったりして、本来の自分以上のものを相手や周囲に見せつけようとするのです。
その言動の背景には「もっと自分を大きく見せたい」や「過小評価されたくない」などの心理が働いており、嘘をつくことで相手に偽りの自分のイメージを植え付けようとします。
⑦他人の評価が気になる
周囲や他人の評価を異常に気にするのも、自己顕示欲が強い人の特徴です。自己顕示欲が強い人は、他人から褒められたり評価されたりすると「自分は認められている」や「肯定された」と感じます。
このような人は他人の評価を拠り所としているため、自身の評価が落ちるような否定的な言葉やアドバイスを受け入れません。改善につながらないため評価も上がらないという悪循環が生じるでしょう。
⑧数に執着する
数への執着は自己顕示欲の強い人によく見られます。これは「数の多さ=自分は他者より優れている」という意識が強いからです。たとえばSNSのフォロワーの数や「いいね」の数にやたらとこだわる人や、友達の数や案件の数を誇る人などが挙げられるでしょう。
一般的な人でもこうした意識は少なからずあるもの。しかし自己顕示欲が強い人はそれが過剰に現れるのです。
⑨負けることが嫌い
自己顕示欲が強い人はプライドが高く、だれかに負けることが許せません。自分がつねに一番でないと満足できず、二番手になるのを嫌うのです。二番手になると「一番になった人が自分よりも注目を集めている」や「自分は劣っている」と考えてしまいます。
ときには相手の足を引っ張ってでも自分が一番になろうとすることもあるでしょう。
4.自己顕示欲が強い人への接し方
自己顕示欲の強い人が自分の上司や部下、あるいは同僚になると、軋轢(あつれき)が生まれ業務に支障が出る恐れもあります。しかし接し方を知っておけば、大きな問題やトラブルに発展するのを防げるでしょう。自己顕示欲が強い人との接し方のポイントを解説します。
- 話を聞いて、ほめる
- 聞き流す、聴いているふりをする
- 頼りにしてあげる
- 距離をとる
- SNSで間接的にかかわる
- ライバルにならないようにする
①話を聞いて、ほめる
否定や反対するのではなく徹底して聞き役に回り、褒めましょう。
自己顕示欲が強い人は、「認められたい」や「褒められたい」という欲求が強いので、とかく自分のことを自慢げに話したがるもの。そこで否定や批判をしてしまうと軋轢(あつれき)が生まれてしまうでしょう。
ただ聞き役に徹し、褒めて相手の欲求を満たしてあげるのが上手な接し方のひとつです。
②聞き流す、聴いているふりをする
ときには聞き流すか聞いているふりをして、心のなかで真剣に相手をしないようにしましょう。自己顕示欲が強い人の話を毎回真面目に聞くと、自分にストレスが溜まるからです。
自己顕示欲が強い人の話に対して、そのつど真面目に対応するのではなく、ときには「そうだよね」や「うんうん」など、相手の気分を害さない程度に相槌をしてサラッとやり過ごしましょう。
③頼りにしてあげる
自己顕示欲の強い人は、頼りにされると喜ぶ傾向にあります。自己顕示欲が強い人は「自分はすごい人間だ」「自分は偉い」という気持ちが強く、頼られると自尊心が満たされるからです。
こういうタイプの人には、「どうか力になってくれませんか?」や「ここが分からないので教えていただけますか?」という具合に頼りにしてあげましょう。
④距離をとる
必要なとき以外はかかわらない、距離を取って近寄らないのも大切です。毎日のように自己顕示欲の強い人と近い距離でかかわっていると、精神的に参ってしまいかねません。
相手のほうから積極的にアプローチされても一定の距離感を保っていれば、相手は「この人は私に構ってくれない」とわかって自然と離れていきます。
⑤SNSで間接的にかかわる
相手と距離を置いてばかりいると人間関係や仕事に支障が出る可能性もあるので、SNSで間接的にかかわりましょう。自己顕示欲の強い人とはできるだけかかわりたくないと思っていても、仕事上どうしても付き合わなければならない場合もあります。
直接会わなくても、SNSでコメントや「いいね」をつけておけば良好なつながりを保てるでしょう。
⑥ライバルにならないようにする
自己顕示欲が強い人とはライバルにならない、またライバル視されても相手にしないのが鉄則です。自己顕示欲が強い人は「他者に負けたくない」という思いが強すぎるので、だれかをライバル視するとすぐに敵意を持ち、ときには攻撃的な態度でぶつかってきます。
相手の挑発に乗ってしまうとマウンティングや否定の機会を与えてしまうので、このようなときは相手にしないのです。
5.自己顕示欲診断チェック
自分の自己顕示欲が強いかどうかを知りたいのであれば、セルフチェックをしてみるとよいでしょう。「自己顕示欲チェックリスト」を使った自己診断方法を紹介します。
3つ以上当てはまれば、自己顕示欲が強いかも
自己顕示欲の強い人の特徴が、どれくらい自分にあてはまるかをチェックしてみましょう。3つ以上あてはまると、自己顕示欲が強い傾向にあるといえます。
- 目立ちたがり屋で派手な服装を好む
- SNSで頻繁に投稿する、投稿に自分の顔を出すことを好む
- 「私は……」「私だったら……」と自分の話ばかりする
- 長々と説教をすることが多い
- 声が大きくて迷惑がられることが多い
- 自分よりも目立っている人がいると不快になる
- 批判に強く、人からのアドバイスを素直に聞かない
- 自分中心で物事が進んでいると感じる
6.自己顕示欲が強いとわかったら、どうすればいい?
自分は自己顕示欲が強いタイプだと判明したら、まずは素直に受け入れましょう。自己顕示欲を抑える方法を4つ説明します。
- ありのままの自分を受け入れる
- クールダウンする時間を設ける
- 自己顕示欲を出すのは恥ずかしいことだと理解する
- SNSを使う時間を減らす
①ありのままの自分を受け入れる
「あるべき自分」から離れ「ありのままの自分」を受け入れることが大切です。自己顕示欲が強い人は自分に自信がないため、理想やセルフイメージばかりを追いかけ、それに固執します。
「自分はこうあるべきだ」や「こうでなくてはならない」という思いが強くなってしまうのです。「ありのままの自分でいいんだ」とわかれば肩の力が抜け、自己顕示欲を抑えられるでしょう。
②クールダウンする時間を設ける
自己顕示欲が強くて怒りっぽい人は、クールダウンする時間を設けるのがおすすめです。脳科学において怒りの感情は6秒でピークをすぎ、その後は理性が働くとされています。
怒りの感情が湧き上がって爆発しそうになったら、6秒間じっと静止してみましょう。これは「6秒ルール」と呼ばれ、怒りの感情をコントロールする「アンガーマネジメント」のひとつです。
③自己顕示欲を出すのは恥ずかしいことだと理解する
過剰な自己アピールや自己顕示は恥ずかしい行動であると認識しましょう。
自己アピールは子どもから大人になるにつれて表面に出さなくなる傾向にあります。つまり必要以上に自分をアピールする人は、「自分は成熟している大人ではない」と自らアピールしていることになるのです。
周囲の人に未熟なイメージを与えてしまうと、信頼関係や人間関係に影響するおそれもあります。
④SNSを使う時間を減らす
できるだけSNSを利用する時間を減らしましょう。自己顕示欲が強い人にとってSNSは、自己アピールができる格好の場所。SNSを見る時間が減れば、他者と自分を比べる機会も減り、自己顕示欲も抑えられるでしょう。
まずは自分がSNSに依存しているかを認識し、そこから離れる努力をすることが大切です。