人事コンサルタントは、人事課題の解決を支援するコンサルタントのこと。人事コンサルタントの定義や種類、仕事内容、依頼のメリット・デメリットなどを解説します。
目次
1.人事コンサルタントとは?
人事コンサルタントとは、顧客となった企業の人事課題を見出し、その解決を支援するコンサルタントのことです。経営課題のうち人事領域の課題を解決するので、経営コンサルタントの一部ともいえます。
請け負う業務は、人事制度や教育制度の構築や見直し、業務改革や意識改革など。近年では、グローバル化にともなって海外に特化した人事コンサルタントも増えています。
2.人事コンサルタントの種類
人事といっても専門分野によって細分化されているのです。ここでは下記の4種類についてそれぞれの仕事内容を説明します。
- 人事組織コンサルタント
- 採用コンサルタント
- 人材育成・研修コンサルタント
- グローバル人事コンサルタント
①人事組織コンサルタント
企業戦略に沿った人事組織を実現するために、以下の改革を行います。
- 組織診断
- 組織改革
- 評価基準の見直し
- 報酬体系の見直し
- 人事戦略の立案
人事組織領域の課題は、内側からは解決しにくいことも。人事組織コンサルタントは企業の外側から、そうした問題の効果的な解決を目指します。
②採用コンサルタント
企業が望む人材確保を実現するためにさまざまな業務を担います。主な役割は「採用プランや採用戦略の立案」や採用担当者不足を補うための「直接的な採用代行」です。
採用コンサルタントが実際の面接を行うことはありません。しかし「採用事務業務のアウトソーシング」を担当できる場合もあります。
③人材育成・研修コンサルタント
人材の能力や生産性の向上を目指し、人材育成や研修プログラムの立案や実施、導入支援などを行います。育成の対象は新入社員や管理職、経営層など全社におよぶのです。
研修テーマはビジネススキルやマネジメントスキルの習得、チームビルディングの向上や次世代経営者の育成などさまざま。講師の選定や派遣などを依頼できる場合もあります。
④グローバル人事コンサルタント
海外進出に必要な人材の確保を目指し、以下のような業務を請け負います。
- 人事制度の提案や導入
- グローバル人材の育成
- グローバル人材への経営理念浸透
- 国をまたぐ異動の支援
グローバル人事コンサルタントは、人事全般はもちろん進出先の言語や文化にも精通している必要があります。
3.人事コンサルタントの仕事内容
人事コンサルタントの仕事は、主に下記の3つ。それぞれの内容を詳しく説明します。
- 企業課題の解決
- 組織風土の改革
- 人事戦略の構築
①企業課題の解決
豊富な知識や経験から企業の人事課題を発見し、適切な解決策を提案します。また解決策の導入支援や効果測定、状況に即したアドバイスなども人事コンサルタントの仕事です。
人材は企業を左右する重要な要素で、人事課題の解決はそのまま企業課題の解決にもつながります。
②組織風土の改革
企業の人事制度や業務プロセス、管理職の言動や暗黙のルールなどを観察し、組織風土の改革を妨げる原因を見つけ出します。新しい企業理念が打ち出されても、組織風土が変わらなければ意味がないからです。
なお近年、インナーブランディング(企業理念や価値観を社員へ浸透させること)の一環として、人事コンサルタントによる組織風土改革を実施する企業も見られます。
③人事戦略の構築
人材の育成や配置、採用など人事業務全般の考案や改善を行います。人事戦略とは、企業に良い影響を与えられるよう、考えながら人事業務を行うこと。人事コンサルタントは専門的な知識・経験をもとに、より的確な人事戦略を実現します。

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4.人事コンサルタントに依頼するメリット
人事コンサルタントに依頼するメリットは、「第三者による客観的な問題提起」や「豊富な知識やノウハウによる課題解決」などです。ここでは3つのメリットを説明します。
- 企業に欠けているスキルや知識をカバー
- 有益な情報を入手
- すべての行程がスムーズに進行
①企業に欠けているスキルや知識をカバー
人事コンサルタントは専門的なスキルと知識を生かし、企業に欠けている部分をカバーしてくれます。たとえば人事業務では、労働法や個人情報保護法など関連法律の知識が欠かせません。
またその業界や業種の人事領域に明るくなければ、適切な人事課題の発見や解決、理想的な人材の確保は困難でしょう。幅広いスキルや知識を持つ人事コンサルタントは、自社にとって最適な解決策を提示してくれます。
②有益な情報を入手
人事コンサルタントに依頼すれば、高い専門性にもとづく有益な情報が手に入ります。多くの企業で人事領域の課題を見てきたプロフェッショナルだからです。同業他社の失敗例や成功例など、貴重かつ有益な情報を持っていることも少なくありません。
これら情報をもとに最適な改善策を提案してもらえるのはもちろん、共有された情報は自社のノウハウとして蓄積していけます。
③すべての行程がスムーズに進行
人事コンサルタントに依頼すれば、改革や改善の工程をスムーズに進行できます。ノウハウのない業務を企業内で行おうとすると、準備や手配などに必要以上の時間がかかってしまうでしょう。しかも成果が出るとも限りません。
豊富なノウハウを持つ人事コンサルタントに依頼すれば、調査や計画にかかる時間を短縮でき、成果や効果をより素早く確実に得られます。
5.人事コンサルタントに依頼するデメリット
人事コンサルタントに依頼するデメリットは、費用面と教育面の2つ。ここではそれぞれのデメリットを解説します。
費用が発生
人事コンサルタントに依頼すると、効果相応の費用が発生します。人事コンサルタントは専門性の高い仕事であり、相応の費用を払わなければ利用できません。
またコンサルタントへ依頼したあとで要望や別の課題が生じ、「見積もりを超えてしまった」「追加費用が発生した」というケースも見られます。
費用を無駄にしないためにも、範囲や得意領域、実績などを考慮し、自社にあった人事コンサルタントを選びましょう。
企業側のノウハウ不足
人事コンサルタントを頼りすぎると、社内のノウハウ不足を招きかねません。人事コンサルタントは企業に欠けているスキルや経験を補ってくれます。しかし頼りすぎてしまうと、自社の人事領域に精通した社員が育ちません。
人事コンサルタントへ依頼する際は自社の人材と一緒に仕事を進めさせるといった形で、社員が学べる環境や体制を整えるとよいでしょう。
6.人事コンサルタントが持つスキル
人事コンサルタントが持つのは人事領域の知識だけではありません。人事コンサルタントが持つスキルを説明します。
- ロジカルシンキング
- 課題解決
- コミュニケーション
- プレゼンテーション
①ロジカルシンキング
人事領域の課題解決策を見出すため、またそれを企業にわかりやすく伝えるためにロジカルシンキングのスキルを備えています。ロジカルに考えられなければ、課題の分析や効果的な解決策の立案はできません。
また企業に解決策を提示する際も、筋道立ててわかりやすく伝える必要があります。そのためロジカルシンキングは、あらゆるコンサルティング業で必須とされるスキルです。

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②課題解決
人事コンサルタントのゴールは課題解決。よって彼らの多くは課題解決能力(洞察力や計画力、実行力などをまとめたスキル)に優れています。
たとえば「社員のやる気が低下している」という課題があったとしましょう。原因には、休日や給与などの待遇、働きかたや人間関係などが考えられます。課題解決スキルを持つ人事コンサルタントは、重大な原因を特定して最適な解決策を考案できるのです。
③コミュニケーション
人事コンサルタントは職業柄、人とのかかわりが不可欠であり、彼らの多くはコミュニケーション能力に優れています。人事コンサルタントの仕事では、良好な人間関係の構築が欠かせません。
ここでいう人間関係とは、互いに正しく意見し、理解しあえる信頼関係のこと。人事コンサルタントの多くは、自分の考えを表現する力や、異なる考えを受け入れる素直さを備えています。

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④プレゼンテーション
人事コンサルタントの多くは、専門家としての意見をわかりやすく伝えるためにプレゼンテーション能力を備えています。人事領域の課題や解決策は、専門的で難しい内容になることも珍しくありません。
人事コンサルタントはそれをわかりやすく企業に伝え、理解と納得を得る必要があります。そのため人事コンサルタントは、構成力や表現力、説得力などのプレゼンテーション能力が必要となるのです。
7.人事コンサルタントが持つ資格
人事コンサルタントに資格は必要ありません。しかし資格を持つ人事コンサルタントを選べば、企業はより多くのメリットを得られます。ここでは人事コンサルタントが持つ資格を説明しましょう。
社会保険労務士
人事労務に関連する独占業務が認められた、社会保険労務士法にもとづく国家資格です。取得すれば、人事労務関連の書類作成や提出手続代行業務が行えます。
合格率一桁台の難関資格で、取得は言わば「人事労務のプロ」であることの証明。人事コンサルタントに必要な知識も広く含まれており、取得者にはあらゆる課題解決能力が期待できます。
キャリアコンサルタント
個人の能力や関心にもとづいて、最適なキャリアアドバイスができると証明する国家資格です。試験には学科以外にもロールプレイングが含まれ、実践的なカウンセリングスキルが求められます。
この資格を取得している人事コンサルタントであれば、個人の能力開発やキャリア形成についてのアドバイス、心理面のアシストなどが期待できるでしょう。
中小企業診断士
中小企業の経営課題を発見し、解決に向けた助言が行えると証明する国家資格です。合格するには経営や会計、運営や法務など幅広い知識が求められるので、経営コンサルタントならば必須ともいえます。
中小企業診断士は「経営」という視点で課題を見いだせるので、戦略人事を達成したい場合は、中小企業診断士を取得しているコンサルタントを探してみましょう。
8.人事コンサルタントの選び方
人事コンサルタントを選ぶ際は、コンサルティングの範囲や得意領域、実績、費用対効果などに注目しましょう。ここでは人事コンサルタントの選び方を説明します。
- コンサルタントの実績
- コンサルティングの範囲や得意領域
- 費用対効果
①コンサルタントの実績
依頼先を決める際に信頼できる企業や担当者であるか、判断するための重要な材料となるのがコンサルタントの実績。担当してきた業種やどのような成功を収めたのかなど、客観的なデータを確認しましょう。
自社と類似する企業の実績があれば、有効なノウハウを持っている可能性が高まります。くわえて確認しておきたいのが、口コミや評判。人柄や対応力がわかれば、より自社にあった担当者を選べます。
②コンサルティングの範囲や得意領域
人事コンサルタントを選ぶ際は、相手の得意領域を確認したり、具体的な目的を提示したりしましょう。コンサルティングを行う企業や担当者によって、範囲や得意領域は異なるからです。特定の業界や業種を専門とするコンサルタントも少なくありません。
あらかじめ依頼の目的を明確にしておき、それに対応した企業や担当者を選びましょう。
③費用対効果
人事コンサルタントの仕事内容と費用は、企業や担当者によって大きく異なるもの。費用対効果を検討し、釣り合いがとれたコンサルタントを選びましょう。
費用対効果を考える際、見積りの時点で自社の規模と近い事例や実績を見せてもらう方法があります。自社の予算や規模、コンサルタントとの契約年数などから予測される費用と、期待される効果(利益額)を見比べましょう。
9.人事コンサルタントを抱える主な会社
人事コンサルティングを提供する企業では、人事領域のコンサルタントを多数抱えています。ここでは主要なコンサル企業を紹介しましょう。
マーサージャパン
ニューヨークに本社を置くマーサージャパンは、人事組織コンサルタントやグローバルコンサルタントなどが在籍するコンサル企業。44カ国をベースに130カ国以上の顧客を持ち、人事組織や福利厚生、年金、資産運用などのコンサルティングを提供しています。
日本でも40年以上サービスを提供しており、人事組織や企業合併、国際人事などに強いコンサル企業のひとつです。
パーソル総合研究所
人事組織コンサルティングを主業務とするパーソル総合研究所は、人事組織コンサルタントが多い傾向にあります。パーソル総合研究所が提供するサービスは、人事組織戦略の立案や企業合併に伴う人事組織の統合、人事制度の設計や導入、組織開発など。
人事とコンサルティング双方に明るい人材が多く、NTTコミュニケーションズ、舞浜リゾートラインなどの豊富な実績を残しています。
グロービス
人材教育業も手掛けているグロービスは人材育成や研修、人事組織などのコンサルタントがそろっています。グロービスの事業の柱は、経営ノウハウの情報発信、ベンチャー企業への投資、人材教育の3つ。
なかでもとくに力を入れているのが人材教育事業で、人事コンサルティングのほかにビジネススクールの運営も行っています。組織や制度の改革にて育成研修が必要になった際、アジアで2,000社が利用したグロービスの研修サービスを活用できる点もメリットです。
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