【一覧】人事の仕事内容とは? 総務労務との違い、やりがい

人事の仕事内容は、企業の重要な資産である「人」にかかわる業務全般です。ここでは人事の具体的な仕事内容や総務との違い、やりがいや必要なスキルなどについて解説します。

1.人事の仕事内容とは?

人事の仕事内容とは、企業の大切な資産である「人」にかかわり、事業目的の達成に必要な人材を採用、育成、サポートすること。

一般的に人事の仕事内容と聞くと採用業務に携わる点を想像するでしょう。しかしこれに限らず人材育成や評価、労働環境整備や退職業務など従業員に関わる幅広い業務を行っているのです。

採用から退職まで一連の流れを担当するため、従業員からの信頼、そして変化に応じた研修や配置転換などが実現できる柔軟さなど、さまざまな能力が求められます。

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人事の担う役割

人事には採用活動や制度作り、給与管理や労務厚生などさまざまな役割が求められます。具体的な業務範囲は多岐にわたり、人事がどの範囲までを担当するかは企業によって異なるのです。

また「大企業は、業務が細分化されているため縦割りの組織になりやすい」「中小企業は、担当者ひとりが関連教務を一手に抱えやすい」など、会社に規模による違いもあります。

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2.人事の具体的な仕事内容一覧

人事の仕事内容は多岐にわたり、その範囲は会社によって異なるものの次の5つにわけられます。いずれも目的は「人材を生かし、会社を発展させること」。この目的に向けて、社内外でさまざまな施策を提案、実行していくのが人事の仕事です。

  1. 採用管理
  2. 人材管理
  3. 評価管理
  4. 労務管理
  5. 安全衛生管理

①採用管理

求人情報の作成や面接、スケジュール調整や就活イベントの企画開催など採用活動全般にかかわる業務のこと。採用活動をはじめる前に、経営計画にもとづいて採用計画を立案したり、採用方針の策定を行ったりするのも人事の仕事です。

ただし採用活動すべての過程を人事担当者のみで行うとは限りません。

②人材管理

経営計画の実現に向けて、従業員が最大限の成果をあげられるような体制、ルールを策定する業務のこと。

これまで人材管理といえば労働時間の管理や給与計算など機械的な業務を指していました。しかし現代では、企業の成長に欠かせない重要な業務となっています。積極的な人材管理は従業員のモチベーションアップや効率的な人材発掘、育成にもつながるのです。

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③評価管理

従業員の実績や能力に応じて評価する業務のこと。すべての従業員には業務内容に対する正当な評価を得る権利があります。正当な評価を受けられなければ、人材の流出にもつながりかねません。

透明性のある評価制度を立案、運用して従業員のモチベーションアップ、企業全体としての生産性向上につなげる仕事です。

④労務管理

給与計算や勤怠管理など、とくに労働条件や労使関係にまつわる業務のこと。就業規則の改訂や安全衛生の管理、労働保険や社会保険の加入手続きなど、従業員が安心して働けるような環境を作るのも人事の仕事です。

長時間労働による過労死やうつ病などが社会問題として取り上げられることの多い昨今、従業員のメンタルヘルスケアに関する業務も欠かせません。

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⑤安全衛生管理

労働安全衛生法にもとづいて、従業員の安全と健康の確保、快適な職場環境づくりを促進する業務のこと。なお常時50人以上の労働者を使用する事業場では、労働者の危険や健康障害を防止する「衛生管理者」を各拠点で選任しなければなりません。

選任義務に反して衛生管理者を置かなかった場合、50万円以下の罰金が課される可能性もあります。

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3.人事の仕事内容は、総務、労務とどう違う?

人事の仕事内容は多岐にわたるため「総務」や「労務」と混同されがちです。しかし人事や総務、労務の業務範囲に法的な規格はありません。具体的な業務内容は各企業によって異なるものの、次のように区別されるのが一般的です。

総務の仕事内容

企業の「ヒト、モノ、カネ、情報」全般を管理します。総務が目指す最終目標は、企業全体がスムーズに活動できるよう管理、実行すること。具体的には施設管理や文書管理、社内行事の企画運営のほか、備品管理や来客対応などです。

サポート役としての立ち回りが求められながらも、それぞれの課題を見つけて解決に導きます。

労務の仕事内容

入退社の手続きや給与計算、従業員の健康管理や福利厚生の管理など、すべての従業員が安心して働ける労働環境を管理します。

人事の仕事内容が「従業員個人」をおもな対象とするのに対し、労務では「会社全体」をおもな対象として業務を進めます。働きやすい職場環境を実現して会社を成長させるには、労務の仕事が欠かせません。

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4.人事の仕事内容で覚えるやりがいは?

人事の仕事はどのようなところにやりがいを感じるのでしょう。もちろん具体的なやりがいは業務ごとに異なります。ここでは下記3つのやりがいについて説明します。

  1. さまざまな人との信頼関係
  2. 将来を担う人材を育成
  3. 組織の構築に関与

①さまざまな人との信頼関係

人事の仕事は採用や昇給など、従業員のキャリアのなかでも重要な部分にかかわる業務が多いです。よって従業員一人ひとりとのかかわりは自然と深くなり、おのずと信頼関係が構築されていきます。

どれだけ革新的な人事制度を策定しても、従業員が人事を信頼して前向きにならなければ十分な効果を発揮できません。人事施策を進めるなかで、信頼関係は欠かせないのです。

②将来を担う人材を育成

社内研修やセミナー開催など人材育成にまつわる業務も人事の仕事です。どの従業員にどのような研修を実施するか、どのような課題を抱えていてどのような能力を高める必要があるのか、見極めなければなりません。

育成計画は企業の将来を担う人材の育成につながるため、間接的に企業の将来を担えるというのも人事という仕事のやりがいです。

③組織の構築に関与

組織の基盤を整えるのも、人事ならではのやりがいです。人事は時短制度の導入や評価制度の見直しなど、さまざまな制度に深く関与します。

各従業員の目標達成に向けたサポート、やる気を持って働ける仕組みづくりなども人事の仕事です。つまり人事は会社の基盤づくりに貢献している仕事でもあります。

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5.人事の仕事内容に向いている人の特徴

人事は部署や役職、年齢層を越えてさまざまな従業員とかかわる仕事です。そのため一般的には「サポート役が好きな人」「観察能力が高い人」「相手の立場に立って柔軟な対応ができる人」などが人事に向いているといわれています。

  1. 裏方やサポート役が好きな人
  2. 観察能力が高い人
  3. 秘密を守れる人
  4. 柔軟な対応ができる人
  5. 相手の立場に立って考えられる人
  6. 厳しい判断ができる人

①裏方やサポート役が好きな人

人事にとって、仕事の主役は「人」。しかし従業員の成長は基本、従業員本人に帰属するため、その成長にどれだけ効果的な育成制度や人財管理があったとしても、表立ってそれらの施策や人事の仕事内容が評価されることはありません。

このような状況を不満とせず従業員の成長を自分の喜びにつなげられるような人、裏方やサポートが好きな人は人事に向いているといえるでしょう。

②観察能力が高い人

人に興味、関心がある、従業員に対する観察能力が高い人も人事に向いています。たとえば従業員の異変をすばやく察知してメンタルヘルスケアに取り組めば、従業員の満足度や作業効率が下がる可能性を低くできるでしょう。

また従業員の得意、不得意を見極められれば、異動時に最適な部署を選択して生産性の高いチームを作れます。いずれも従業員に対する高い観察能力が必要です。

③秘密を守れる人

人事は口外厳禁の機密情報を多く取り扱います。会社の情報だけでなく、従業員一人ひとりの個人情報もかんたんに漏らすわけにはいきません。そのため口が堅いかどうか、秘密を守れるかどうかも、人事の向き不向きに大きく影響します。

万が一情報を口外し、企業や従業員が損害を被るようなことが起きてしまえば「うっかり」では済みません。情報の重要性を正しく理解して、機密情報を取り扱っているという自覚と責任を持つ必要があるのです。

④柔軟な対応ができる人

どれだけ素晴らしい評価制度や業務フローがあっても、イレギュラーはつきもの。「予想していた効果が出ない」「かえってマイナスの効果が出てしまった」場合は、従来の方法に固執せず、状況に合わせて柔軟に対応する必要が出てきます。

幅広い人事の業務を同時進行するなかで、内容や期限の変更が出てくるときもあるでしょう。そのようなときでも優先順位を考えて臨機応変に対応できる能力が必要です。

⑤相手の立場に立って考えられる人

従業員一人ひとりに異なる生活があり、異なる考え方があります。正社員になって長期間働き続けたい人もいれば、家庭環境に合わせて短時間で働きたい人もいます。すべての従業員に同じ働き方は求められません。

そこで必要なのが、相手の立場に立って考えられる能力。もちろんすべての従業員、すべての要求に100%応えられません。経営者の要求と合わせてバランスを読む力も求められます。

⑥厳しい判断ができる人

人事の仕事のなかには、厳しい判断をしなければならないもの。ときには正社員の解雇や派遣社員、契約社員の契約打ち切りなど、従業員にとって不利益となる決定をしなければなりません。

そのようなときにも「相手がかわいそうだから伝えたくない」「困るだろうからこの決定を避けたい」と事態から目を背けず、厳しい判断を下せる人も人事には必要なのです。

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6.人事の仕事内容に必要なスキル

従業員一人ひとりとかかわる人事の仕事には、さまざまなスキルが必要です。ここでは人事の仕事の内容に必要なスキル3点について、説明します。

  1. 事務処理能力
  2. コミュニケーション能力
  3. スケジュール管理能力

①事務処理能力

各事務処理で専用の管理ソフトやExcel、Accessなどを使用するため、PCスキルや事務処理能力が欠かせません。労務事務のなかには社会保険手続きのように正確性とスピードが求められる業務もあります。

万が一不備や遅れなどがあると不要なトラブルにつながるため、正確かつスピード感をもった事務処理能力が必要です。

②コミュニケーション能力

社内でのコミュニケーションはもちろん産業医や社会保険労務士などの専門家や転職希望者など、社内外の多くの人とかかわる仕事です。また人事制度を決める際、経営陣と意見を交わす場合もあります。人事の仕事にコミュニケーション能力は欠かせません。

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③スケジュール管理能力

直近一週間や一か月のスケジュール管理だけではありません。採用業務や人財育成などでは、年単位でスケジュールを立てる場合もあります。無理のないスケジュールを組んで、適切に管理するのも人事の仕事です。

また給与計算や人事評価などでは、自分自身のスケジュール管理だけでなく他人をスケジュールどおり動かすスキルが必要になります。

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7.人事の仕事内容に役立つ資格

人事の仕事にあたって、法的に必要不可欠とされる資格はありません。資格の有無よりは、多岐にわたるスキルを保持しているかどうかが重要です。ここでは人事の仕事内容に役立つ3つの資格、試験について説明します。

  1. キャリアコンサルタント試験
  2. 社会保険労務士
  3. メンタルヘルス・マネジメント検定試験

①キャリアコンサルタント試験

キャリアコンサルティングに関するスキルを認定する資格のこと。従業員のキャリアプランについてアドバイスしたり、一人ひとりに最適なキャリアプランの構築をしたりします。

2016年から国家資格になった資格で、学科試験と実技試験に合格すれば、人事はもちろん教育機関やキャリアセンターなどでも活躍できます。

参考 国家資格 キャリアコンサルタント試験日本キャリア開発協会

②社会保険労務士

労働や社会保険に関する法律の専門家のことで、通称社労士です。職務上請求権が認められている8士業のひとつで、資格取得の難易度はやや高め。

しかし転職時に社会保険労務士の資格は強力な武器となります。資格に有効期限や更新はないため、一度資格を取得すれば生涯活躍可能です。

参考 社会保険労務士試験オフィシャルサイト社会保険労務士試験オフィシャルサイト

③メンタルヘルス・マネジメント検定試験

メンタルヘルスに関する基礎知識を持っていると証明する資格のこと。従業員一人ひとりが精神的な健康を維持して心地よく働ける環境を整備するのも、人事の仕事。

産業カウンセラーの資格取得に向けた入門的な試験としても知られており、最上位のI種(マスターコース)は合格率19.8%(2021年11月)と難易度の高い試験でもあります。

参考 メンタルヘルス・マネジメント検定試験大阪商工会議所

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8.人事の仕事に役立つ知識

幅広い業務に携わる人事には、法律や各種制度のさまざまな知識が求められるのです。ここでは人事の仕事に役立つ知識を「法律」「評価制度」「コンプライアンス」の3つに絞って説明します。

  1. 関連法律の知識
  2. 人事評価制度の知識
  3. コンプライアンスに関する知識

①関連法律の知識

人事業務の多くはそれぞれに策定された法律にのっとって処理します。高度な法律知識は不要ではあるものの、最低限の知識は必要です。具体的な関連法律としては以下が挙げられます。

  • 労働三法(労働基準法、労働組合法、労働関係調整法)
  • 労働者派遣法
  • 障害者雇用促進法
  • 高年齢者雇用安定法
  • 男女雇用機会均等法
  • 最低賃金法
  • 育児介護休業法
  • マイナンバー法

②人事評価制度の知識

「評価制度」「報酬制度」「等級制度」という3つの制度から成り立つ「人事評価制度」の知識も必要です。

人事評価制度を策定せずに人事評価や給与などを決定してしまうと、仕事と能力、報酬のバランスが取れず、会社として期待する利益は生み出せません。

このほか、働き方の多様化や価値観の変化など社会情勢の変化に合わせて最新の人事制度を取り入れていくのも重要です。

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③コンプライアンスに関する知識

現代にはコンプライアンスに関する知識も必要不可欠です。コンプライアンス違反は社会的信用をなくすばかりか、業績を悪化させ、最悪の場合企業を倒産に追いやる可能性もあります。

社会的評価を高めて企業ブランドを作るのには年単位の時間がかかるものの、崩すのは一瞬です。従業員と幅広く接する人事にとって、社内規定や就業規則の徹底、コンプライアンスの遵守は最低条件ともいえるでしょう。

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9.人事の仕事内容を理解するのに役立つ本

より具体的に人事の仕事内容を理解するためには、実際に第一線で働いている人事担当者やコンサルタントなどが手がける書籍を参考にしてみましょう。

ビジネス環境や社会情勢は日々変化します。変化に応じて臨機応変に対応できるよう、人事には日々学び続ける姿勢が必要です。

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社内コミュニケーションをよくする施策やこれからの人事についても述べられており、まさに人事の入門書ともいえる一冊です。

参考 はじめて人事担当者になったとき知っておくべき、7の基本。8つの主な役割。Amazon

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実務の解説を中心に「あらゆる人事業務を自力で遂行できるようになってほしい」という願いにもとづいて出版されたのが本書です。法律の詳しい解説を最小限にとどめ、図表を取り入れながら人事、労務の仕事についてわかりやすく解説しています。

実務のスキルアップはもちろん、キャリア形成やマインド向上にも活用できる一冊となっているのです。

参考 「人事・労務」の実務がまるごとわかる本Amazon