【一覧】人事労務の業務・キャリアアップに役立つ資格とは?

人事労務の仕事にはさまざまな資格が役に立ちます。ここではスペシャリストになりたい人、キャリアアップしたい人、転職したい人向けの資格をそれぞれ解説します。

1.人事業務に資格は必要?

人事業務にあたって、法的に必要不可欠な資格はありません。資格の有無よりは、幅広い人事業務に対応できるスキルを保有しているかどうかが重視されます。

とはいえ、人事業務に資格取得がまったく必要ないわけでもありません。資格を持っていれば、人事業務に関するスキルを持っている人材だと対外的にアピールできます。

資格は人事職のスキルアップや転職に有利

人事の仕事は企業の大切な資産である「人」にかかわり、事業目標の達成に必要な人材を採用、育成、サポートすること。

具体的な業務内容の多くは実際の人事業務をとおして身につけていきます。もし関連する資格を所有していれば、スキルアップや転職に有利になるでしょう。

資格は知識習得の証。昇格を考えている、さらに重要な仕事を任せてもらいたいと考えている人は、資格取得を目指すのもひとつの目標になるでしょう。

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2.人事労務のスペシャリストになりたい人向けの資格

人事労務のスペシャリストになれば、転職の際にはもちろん今の会社でもプレゼンスを向上できます。「〇〇の資格を持っている」とアピールすれば、相手は「この人は〇〇について一定レベル以上の知識を持っているのだな」と解釈するからです。

ここでは人事労務のスペシャリストになりたい人にオススメの資格5点について説明します。

  1. 衛生管理者
  2. 社会保険労務士
  3. メンタルヘルス・マネジメント検定
  4. 人事総務検定
  5. 日商簿記

①衛生管理者

作業環境の整備や労働者の健康管理、労働衛生教育の実施などを通じて労働者の健康や安全を守るための取り組みを行う人のこと。

労働安全衛生法にて定められている国家資格で、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、その事業所にひとり以上の衛生管理者を置くと義務づけられているのです。

衛生管理者は第1種と第2種にわかれ、対応できる業種や難易度はそれぞれ異なります。人事職の基本ともいえる資格です。

②社会保険労務士

通称社労士は職務上の請求権が認められている8士業のひとつ。人事労務管理はもちろん、年金や医療、保健や雇用に関する分野でも活躍できます。社会保険労務士事務所で働いたり、社会保険の専門家として独立したりするのも可能です。

合格率平均は6~7%と難易度はやや高め。しかし保有していればキャリアアップはもちろん転職にも強力な武器となる資格です。

③メンタルヘルス・マネジメント検定

社内のメンタルヘルス対策を促進させるために必要な知識、対処法を学べる資格のこと。仕事のストレスから心の病気を抱え、休職や離職に追い込まれる労働者は少なくありません。

メンタルヘルスの未然防止、さらに早期発見と対処、そして治療と職場復帰の領域で、それぞれに必要な支援方法および専門知識を学びます。

④人事総務検定

人事総務の実務にあたって理解しておくべき法律知識を体系的に、かつ実践的に学べる検定のこと。下記の3段階にわかれています。すでに実務についている人、さらなるスキルアップを考えている人にオススメの資格検定です。

  • 幅広い知識と基本事項を確認する3級
  • 実務対応能力や労務管理能力などを主任レベルで取得する2級
  • 課長クラスの知識を取得する1級

⑤日商簿記

「簿記」の役割は企業のお金を記録、計算、整理して経営成績を可視化すること。

「日商簿記」には基本的な商業簿記である3級、会計実務につながる高度な商業簿記としての2級、経営管理や分析を行うために必要とされるきわめて高度な商業簿記としての1級があります。

の3段階で会計知識や経営管理に関する知識を身につけられるのです。

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3.人事職でキャリアアップしたい人向けの資格

「人事職としてより幅広く活躍したい」「基本知識からレベルを高めてキャリアアップしたい」と考える人には次のような資格がオススメです。いずれも人事労務に必要な知識が正しく習得できたと対外的に証明できます。

  1. 産業カウンセラー
  2. キャリアコンサルタント
  3. 中小企業診断士
  4. ビジネスキャリア検定

①産業カウンセラー

労働者やその家族を対象にカウンセリングを通じてキャリア形成の支援を行う資格のこと。カウンセリングの基本は「傾聴」、つまり耳だけでなく目や心も相手に向けて、真摯な姿勢で話を聞くコミュニケーションです。

キャリア形成支援だけでなく、メンタルヘルスケアやストレスチェック、良好な人間関係構築の分野からも注目されています。

②キャリアコンサルタント

労働者のキャリアコンサルティングに関するスキルを認定した資格のこと。一人ひとりに最適なキャリアプランを構築したり、従業員のキャリアプランについて適切にアドバイスしたりするのに役立ちます。

キャリア形成や能力開発に関する知識、スキルを客観的に証明できる国家資格です。

③中小企業診断士

「中小企業診断士」も国家資格のひとつです。中小企業の経営問題に対応するための診断、助言を行います。現状分析を踏まえた成長戦略のアドバイスから、適材適所の配置や運営管理判断まで、管理職に必要な業務に関する知識を身につけられるのです。

合格すれば経営コンサルタントのスペシャリストとして企業で働くのはもちろん、コンサルタントとしても独立可能です。

④ビジネスキャリア検定

ビジネスに必要な知識を幅広く学べる資格検定のこと。試験内容は厚生労働省が定める8分野43試験から選択でき、なかには人事や人材開発、労務管理の分野もあります。

BASIC級は入社して間もない労働者を対象としているため、「基礎的な実務を学習したい」「まずは基礎知識を身につけてゆくゆくは人事職を経験したい」人にも最適です。

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4.人事に転職したい人向けの資格

人材採用や評価に研修、労務管理や人財育成など、人事の仕事は多岐にわたります。人事業務に必須の資格はないものの、次の資格を持っていると転職活動を有利に進められるのです。ここでは人事への転職を考えている人にオススメの資格を説明します。

  1. MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)
  2. マイナンバー実務検定
  3. 日商簿記2級
  4. 採用コンサルタント資格

①MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)

マイクロソフトが提供しているWordやExcel、PowerPointなどの熟練度を証明する世界共通の資格試験です。資格試験のなかでもとくに知名度が高く、一般レベルの合格者は約80%、上級レベルの合格者は約60%といわれています。

これらのソフトは今も多くの企業で人事業務や会計経理などに使用されているため、幅広く活用できるのが強みです。

②マイナンバー実務検定

マイナンバー制度の導入にともなって必要性も高まっているのが「マイナンバー実務検定」。目的は、特定個人情報を保護して適切に取り扱うことです。

マイナンバー制度自体が比較的まだ新しいため、自社内に詳しい人がおらず、専門家に外注している企業もあります。しかしマイナンバーは個人情報の管理であるため、自社内管理が望ましいとされているのです。

そこでマイナンバーに関する法律や正しい保管方法などを熟知した「マイナンバー実務検定」の資格保持者が求められています。

③日商簿記2級

前述した「日商簿記」のなかでも企業活動や会計実務につながる2級、さらに経営管理や分析を行うために必要な1級はさまざまな企業で重宝される資格です。経理への転職には必須、総務への転職には持っていて損のない資格ともいわれています。

実は、3級よりさらに初歩的な初級も設定されているのです、しかし一般的には実務レベルで役立つのは2級以上と考えられています。

④採用コンサルタント資格

人材採用の意義や重要性などを明確にして、経営の視点から人事、採用のあり方を学ぶ資格のこと。オンライン受講が可能な資格試験といえます。

人事業務のなかでもとくに人材採用の分野に焦点をあてた資格です。採用にかかわるさまざまな法律や基礎知識を学び、採用計画の実践的な理解による採用フローやスキーム構築のスキルなどを身につけられます。

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5.人事向けの資格を取得する際に活用できる制度

国や民間、各自治体などさまざまな団体が人事向け資格取得の支援制度を設けています。資格取得の際に活用できる制度を社員側、企業側それぞれの立場から説明しましょう。

社員側

現代では多くの企業が社員の自己啓発支援を実施しており、その割合は8割を超えるともいわれています。社員が活用できるおもな制度は以下の2つです。

  1. 自己啓発援助制度
  2. 教育訓練給付金

①自己啓発援助制度

さまざまな企業が独自の「自己啓発援助制度」を設定しており、おおむね次の4つにわかれます。

  • 時間の面から支援:資格試験直前には休みを取りやすくする、勤務時間内社外講習会参加を認めるなど
  • 費用の面から支援:書籍購入費や通信教育費、教育機関への通学費などを補助する
  • 活動場所の面から支援:勉強会に自社会議室の利用を認める、自社以外を利用する際は会社が予約サポートするなど
  • 情報や教材の面から支援:資格関連の情報を提供する、自己啓発に役立つ書籍やDVDなどを配布、貸出するなど

②教育訓練給付金

教育訓練受講に支払った費用の一部を国が補助する制度のこと。目的は、能力開発に向けた社員の主体的な取り組み、さらに中長期的なキャリア形成を支援して雇用の安定、再就職の促進を図ることです。

一定の条件を満たす雇用保険の被保険者が、厚生労働大臣指定の専門実践教育訓練を受講、修了したとき、教育訓練経費の一定割合額がハローワークから支給されます。訓練期間は最大3年間、支給額は50%(年間上限40万円)です。

教育訓練給付金とは? 種類、条件、対象者、申請書の書き方
教育訓練給付金とは、再就職やスキルアップのために学んだ人へ、負担した費用の一部を支給するものです。教育訓練給付金について、制度の仕組みや申請方法などについて説明します。 1.教育訓練給付金とは? 教...

企業側

資格取得に対して援助、補助を受けられるのは社員だけではありません。社員の資格取得を支援した企業に対して助成金を支給する制度もあります。

  1. 人材開発支援助成金(一般訓練コース)
  2. 市区町村の助成金制度

①人材開発支援助成金(一般訓練コース)

社員に専門的な知識、技能を習得させる訓練を受講した事業主を支援する制度のこと。「特定訓練コース」や「障害者職業能力開発コース」など、複数のコースで研修経費や研修期間中の一部賃金などを助成しています。

このうち「一般訓練コース」は中小企業や事業主団体の社員研修、企業研修などに利用できるコースです。助成内容は賃金助成と経費助成の2種類。生産性要件をクリアすれば、各助成費を引き上げるのも可能です。

②市区町村の助成金制度

さまざまな地方自治体が独自の人材育成助成金、補助金制度を設けています。

たとえば東京都が実施している「社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金」では、都内の中小企業、あるいは中小企業の団体が実施する短時間の職業訓練に対して最大100万円(社内型スキルアップ助成金、民間派遣型スキルアップ助成金の合計)を助成しています。

要件を満たしやすく、申請もかんたんなため多くの中小企業が注目している制度です。