中小企業が人事評価システム導入すべき理由とメリットとは?

中小企業にも人事評価システムを導入すべきなのでしょうか。人事評価システムの特徴や導入の注意点とともに、見ていきましょう。

1.中小企業が人事評価システムを導入すべき理由

中小企業における人事評価システムの導入効果は、評価の効率化に限りません。効率的な人材育成、評価の納得感向上によるモチベーション向上など、様々な効果が期待できます。昨今はクラウド型の評価システムの出現により、料金的にも導入しやすくなり、導入すべき理由が補強されつつあります。

しかし、中小企業の課題に対して、具体的にどんな効果を発揮するのかがわからなければ、導入を決定することはできません。そこで本記事では、中小企業の実態や課題を掘り下げつつ、人事評価システムを入れるべき理由やそのメリットをご紹介します。

中小企業の実態について

多くの中小企業では、社長自らが現場に出るという状況が見受けられます。その理由は「社長がそもそも現場好き」や「社長自身が現場のエース」などさまざまですが、「社長に代わる管理者層がいない」ことが原因と語る会社も少なくありません。

  • 社長の代わりを果たせる人材がいない
  • 社長が現場に出る状況が増える
  • 社長が経営に専念できない
  • 人材が育たない

など、負のスパイラルが発生しているのが中小企業の実態です。

人事評価システムとは?

そもそも「人事評価システム」とはどのようなシステムなのでしょうか。

人事評価システムとは、社員の評価や給与に紐づく人事評価を、効率よくかつ適切に行うためのシステム。「360度評価」「コンピテンシー評価」「MBO評価」などから得たデータを分析し、人事評価や人材育成、実績管理や企業成長に役立てます。

人事評価システムの機能は、次の4つに集約されます。

  1. 評価過程や評価結果を「見える化」する
  2. 紙やExcelで管理していた評価シートをシステム上に再現する
  3. システム上に再構築したデータを紙やExcelに出力する
  4. どんな場所でも評価できる(クラウドの場合)

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なぜ中小企業こそ人事評価システムが必要なのか?

中小企業が負のスパイラルから脱却するための手段は、「社外から優秀な人材を新規に採用する」「既存社員の育成を進める」の2つです。

国内企業の人手不足が深刻な課題として叫ばれる中、新規人材の採用はコストや巡り会いの運を考えても効率的とはいえません。

つまり中小企業が継続的に成長し続けるには、人事評価システムを活用して人材を育て、社長は現場を離れて次のステップに進み、経営業務に専念する必要があるのです。

中小企業は社員を一人残らず戦力にしなければ、厳しい時代の変化に勝ち残れません。中小企業にこそ、経営戦略や会社のビジョンに結びついた人事評価システムが必要なのです

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2.中小企業が人事評価システムを導入する4つのメリット

「指導者・ノウハウ・育成コストの不足」「社員定着率の低さ」など、中小企業ではさまざまな課題を抱えています。人事評価システムは、生産性の向上や社員モチベーションの維持などに課題を抱える中小企業にこそ、有効な手段といえるのです。

システム導入を検討する企業が増えているなか、改めて人事評価システム導入のメリットを整理しましょう。

  1. 公平な評価が可能に
  2. 社員のスキルレベルが鮮明になる
  3. 無駄の削減と生産性の向上
  4. 社員のモチベーション向上

①公平な評価が可能に

これまでの人事評価には、評価がブラックボックス化しているという問題がありました。

2019年にカオナビHRテクノロジー総研が発表した人事評価制度に関する調査によれば、自社の人事評価制度に満足している人は19%。満足していない人の41.3%の半数以下と非常に少数です。

人事評価に不満足を覚えるその最たる理由には「評価結果に納得感がない」が挙げられています。

人事評価システムを通じて評価基準やプロセスをオープンにすると、より客観性のある評価が可能になるでしょう。

参考 知っておきたい、人事評価の3つの現実~人事評価に関する調査結果より~カオナビHRテクノロジー総研

②社員のスキルレベルが鮮明になり、スキル管理が効率化する

人事評価システムでは、社員一人ひとりのスキルレベルが把握できます。新規事業の着手に必要な資格を持っている人材、グローバル化に必要な語学力のレベルが高い人材などを的確に抽出できるのです。

抽出した特性をもとに、人事異動が事業に与える影響をシミュレートすることも可能となります。人事情報(スキル情報)をうまく活用すれば、業務効率化だけでなく、経営戦略立案や事業計画に役立てられるのです。

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③無駄の削減と生産性の向上

紙やExcelを使った管理では、情報の一元化や抽出に多大なコストがかかります。評価シートの配布・回収にはじまりデータ入力に集計・分析と、場合によってはヒューマンエラーが生じる恐れもあるでしょう。

しかし人事評価システムを導入すれば、人的・時間的コストを大幅に削減できます。その結果、人事担当者はコア業務に集中できるため、生産性も向上できるのです。

④社員のモチベーション向上

勤続年数や上司の好き嫌いに左右されず、実績や成果などをもとした公平な評価になれば、社員の納得も増え、より意欲的に仕事に取り組むでしょう。

さらに適切なフィードバックが行われれば、社員は「自分の頑張りを認めてもらえた」と感じます。コミュニケーションの活性化やモチベーションのアップは、人事評価システム導入の大きなメリットです。

人事評価システムを導入するメリットは決して少なくありません。離職予防や採用力の強化にもつながるのです

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3.中小企業における人事評価システム活用法

人事評価システムの導入にはさまざまなメリットがあると分かりました。しかし実際のところ、どのように活用すれば効果があげられるのかイメージできない部分も少なからずあるでしょう。

人事評価システムは、会社全体に成長を促す重要な役割を担うもの。ここでは、人事評価システムを活用するための具体的な方法について解説します。

部署の目標明確化と達成

この場合は、部署への貢献度が高い社員の行動特性からパターンをモデル化し、それに沿って社員を評価する「コンピテンシー評価」を用います。コンピテンシー(competency)とは、高い業績を上げる人材に共通した行動特性のこと。

「仕事の進め方を周囲に分かりやすく共有している」「数年先を見据えた戦略を立てている」など具体的な行動を示し、目標達成に向けてどのような行動をすればよいのかを明確にして、部署の目標達成につなげます。

社員の成長

対して、社員個人の成長に重きを置いた場合はどうでしょう。会社全体が成長するためには、個人と部署の方向性が合致するといったように、双方がかみ合った状態を必要とします。

資格取得や語学レベルのアップなど社員個人のスキルが上がっても、それが部署の業績につながらなければ当然、会社の成長には結び付きません。

双方のベクトルが同じ方向を向いているかを常に確認しながら、目標を管理していく方法を「MBO(目標管理制度)」といいます。個人の成長が企業そのものにも貢献していると実感できれば、モチベーションもさらに高まるでしょう。

「人材が定着しない」「期待する人材が育たない」など、中小企業が抱える課題の多くは人事評価システムの活用によって解決できます

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4.中小企業が人事評価システムを選ぶ前に確認すべきポイント

一口に人事評価システムといっても、使い勝手やカスタマイズ性、幅広い料金体系や適応可能な会社の規模などさまざまな特徴があります。

国内サービスだけでも多くの人事評価システムが存在するため、どのシステムを選べばよいのか迷う担当者も少なくありません。人事評価システムを選ぶ際は、次のポイントを確認しましょう。

目的を明確にする

自社が抱える課題はコストの削減でしょうか、時間の無駄を省くことでしょうか。人事評価システムの役割を知るためには、導入の目的を明らかにしなければなりません。

導入後、何をもって目的達成なのか明らかになっていれば、投入後、活用方法に迷わずスムーズに人事評価を進められるでしょう。

自社の規模に合わせる

人事評価システムを導入する際は、自社の規模に合わせたシステムを選びます。社員数が数年人規模の大企業には、工数削減ため評価フローを自動化したものや、進捗状況を一括に管理・確認できるシステムがおすすめです。

対する中小企業は個人の行動が組織の結果に大きく影響します。そのため個人のマネジメントが重要になるのです。個人目標を設定する機能や、フィードバックに生かせる多角的な評価機能をパッケージしたシステムを選ぶとよいでしょう。

評価方法はどれが合っているか

人事評価の手法にはさまざまな種類があります。人事評価システムを導入する際は、どの評価方法が自社にあっているか、検討しておきましょう。

  • 360度評価(多面評価):上司だけでなく部下や同僚、顧客などから多角的な評価を得られる制度
  • OKR:高い頻度で設定、追跡、再評価を行える目標管理方法
  • MBO:目標に対する達成度で評価を決められる制度

中小企業が人事評価システムを選ぶ際は、目的と機能、会社の規模や評価方法を照らし合わせてミスマッチのないシステムを選びましょう

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4.中小企業が人事評価システム導入する際の注意点

人事評価システムを導入する目的や、自社で活用したい評価方法が明確になったら、システム導入にかかる費用や設置スタイルなどを絞ります。

導入前に決めておく内容はいくつかありますが、中小企業が人事評価システムを導入する際の注意事項は、次の4つです。

  1. 無料で使える場合の注意点
  2. 評価基準が変わる恐れも
  3. 人事担当者の負担はどうなるか
  4. クラウド型がオンプレミス型か

①無料で使える場合の注意点

人事評価システムの導入を検討しても、費用面がネックになり実用に踏み切れない状況も考えられます。人事評価システムには有料のサービスと無料のサービスがありますが、無料といっても、以下の点には注意が必要です。

  • 無料で使える機能がほとんどない、もしくは制限されている
  • 初期費用は無料でも、別途月額の利用料が発生する
  • 無料トライアル期間終了後に自動継続となり有料になる

②評価基準が変わる恐れも

人事評価システムを導入し、ヒューマンエラー撲滅や工数削減を優先しすぎた結果、評価基準が変わる恐れもあります。

失敗談として特に多いのが、システム導入前の評価方法を考慮せずに効率優先で実施した結果、公平性に欠ける評価になってしまったという事態。

人事評価を行う際は、必ず全部署に評価基準の変更点を確認してもらいましょう。従来の評価基準からあまりにかけ離れた評価になると、社員から不満の声が上がる恐れもあります。

③人事担当者の負担はどうなるか

これまで紙やExcelなどで半手動的に人事評価を行っていた中小企業の場合、システム化によって現場が混乱し、人事担当者の負担が増える恐れもあるのです。

システムは直感的に操作できるものが多いため、すぐ使いこなせるように見えます。しかし新システムに慣れるまでは時間と労力がかかるものです。

人事評価システムの導入には余裕のあるスケジュールを組み、人事担当者にも十分な説明を行いましょう。

④クラウド型がオンプレミス型か

人事評価システムの提供形態にはクラウド型とオンプレミス型の2種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。会社の規模やデータ共有の必要性を見直しながら、提供形態を選びましょう。

  • クラウド型:ネットワーク環境があれば端末、場所を選ばずに利用できる。短期間で導入でき、初期費用が安く抑えられる反面、カスタマイズ性は低い
  • オンプレミス型:自社サーバーにシステムを構築する必要があるため導入コストが高い。カスタマイズ性、安全性が高く、複雑な評価基準や独自基準にも対応できる

「費用や人的コストをかけて導入したのに定着しなかった」「ただのデータバンクとなってしまった」といった事態を防ぐためにも、上記の注意事項をしっかりと確認しておきましょう