人事管理ファイルとは? 種類、保存期間、整理のポイント

人事管理ファイルとは、人事管理に関わる書類やデータのこと。法的に保管や提出が義務付けられているものも少なくありません。人事管理ファイルの種類や法律、保存期間や整理のポイントについて詳しく解説します。

1.人事管理ファイルの必要性

人事管理でファイルが必要とされる理由は、幅広い情報の効率的な管理が求められるようになった点です。

そもそも人事管理とは「企業の人材を適切にまとめること」。業務の性質から人事評価や業績、個人情報など多くの情報を必要とします。

このような情報は企業規模や勤続年数にともなって増えていくため、スムーズな業務進行のためには効率的な情報管理が欠かせません。そのため人事管理ファイルは、必要なときにすぐに取り出せるよう整理(ファイリング)しておく必要があります。

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2.人事管理ファイル(書類)の種類

人事管理ファイルに含まれる書類は、5種類です。それぞれの内容や具体例を説明します。

  1. 人事関係
  2. 雇用保険関係
  3. 社会保険関係
  4. 給与関係
  5. 労災関係

①人事関係

雇用や退職、労働時間などに関する書類が該当します。具体的には以下のようなファイルです。

  • 労働者名簿
  • 雇用契約書
  • 解雇通知
  • タイムカード
  • 残業命令書
  • 時間外・休日労働協定届(36協定)
  • 派遣元管理台帳
  • 派遣先管理台帳
  • 就業規則

なかでも重要なのが、従業員の個人情報を記した労働者名簿。「法定三帳簿」のひとつで、法律で整備が義務付けられているからです。

②雇用保険関係

雇用保険の被保険者に関する書類が該当します。具体的には以下のようなファイルです。

  • 離職票
  • 雇用契約書
  • 雇用保険被保険者資格取得確認通知書
  • 母子健康手帳の写し
  • 介護休業申請書
  • 60歳到達時等賃金月額証明書

雇用や退職に関する書類以外には、育児休暇や介護休暇に関する書類、高年齢者を継続雇用するための書類などが含まれます。

③社会保険関係

健康保険や厚生年金保険に関する書類が該当します。具体的には以下のようなファイルです。

  • 被保険者資格取得届
  • 被保険者資格喪失届
  • 健康保険被扶養者(異動)届
  • 被保険者住所変更届
  • 被保険者氏名変更届
  • 被保険者報酬月額算定基礎届
  • 被保険者賞与支払届
  • 健康個人診断表

被保険者資格の取得や喪失に関する書類以外には、扶養家族に関する書類や健康診断に関する書類などが含まれます。

④給与関係

給与の計算や実際の支払いに関する書類が該当します。具体的には以下のようなファイルです。

  • 賃金台帳
  • 出勤簿
  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 源泉徴収票

なかでもとくに重要なのが、労働者名簿と並んで「法定三帳簿」にも数えられる賃金台帳と出席簿です。

  • 賃金台帳:従業員の氏名や性別、基本給や賃金計算期間などを記録するファイル
  • 出勤簿:従業員の労働時間を記録するファイル

ただし出勤簿には賃金台帳のような厳密な内容の規定はありません。また従来、紙のタイムカードが主流だったものの昨今、クラウドの勤怠管理システムも増えています。

⑤労災関係

労災保険の加入や請求、保険料に関する書類が該当します。具体的には以下のようなファイルです。

  • 労働保険関係成立届
  • 概算保険料申告書
  • 療養補償給付たる療養の費用請求書
  • 休業補償給付支給請求書
  • 障害補償給付支給請求書
  • 遺族補償年金支給請求書
  • 葬祭料請求書
  • 傷病の状態等に関する届

労災保険の給付には療養給付や休業給付、傷病年金など7つあり、それらの請求に関する書類が幅広く含まれます。

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3.人事管理ファイルの保存に関する法律

法律で定められた人事管理ファイルは、一定期間保存しなければなりません。ここでは人事管理ファイルに関する法律を説明します。

保管と保存の違いとは?

人事管理ファイルにおける「保管」とは、頻繁に使う文書を「扱いやすい状況で管理すること」を指します。利便性を保ちつつ、いかに紛失や汚損を防ぐかが重要です。

一方、人事管理ファイルにおける「保存」とは、あまり使わない文書を「劣化させないように管理すること」。法律によって求められているのは「保存」であり、対象の文書や期間がそれぞれ定められています。

雇用保険法施行規則第143条

雇用保険法施行規則の第143条では、「事業主は雇用保険に関する書類を2年間保存しなければならない」と定めています。雇用保険に関する書類とは、以下のような書類です。

  • 雇用保険被保険者届出事務等代理人選任、解任届
  • 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書

とくに被保険者に関する書類については、特例として4年間の保管が義務付けられているのです。

労働基準法109条

労働基準法の109条では、「事業主は労働者名簿や賃金台帳、そのほか労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならない」と定めています。そのほか労働関係に関する重要な書類には、以下のような書類が該当するのです。

  • 出勤簿
  • タイムカード
  • 労使協定
  • 残業申請指示書
  • 残業報告書

従来、保存期間は3年間でした。しかし2020年の法改正で、5年間に延長されたのです。

健康保険法施行規則第34条

健康保険法施行規則の第34条では、「事業主は健康保険に関する書類を2年間保存しなければならない」と定めています。健康保険に関する書類の具体例は以下です。

  • 資格取得確認通知書
  • 資格喪失確認通知書
  • 被保険者標準報酬決定通知書

健康保険に関する書類には、厚生年金保険に関するものも含まれます。

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4.人事管理ファイルの保存期間

人事管理ファイルの保存期間は書類によって異なり、最短2年から永久保存までとさまざまです。ここでは人事管理ファイルの保存期間を説明します。

  1. 保存期間2年
  2. 保存期間3年
  3. 保存期間4年
  4. 保存期間7年
  5. 保存期間30年
  6. 永久保存

①保存期間2年

以下の書類は、2年間の保存が法律で義務付けられています。

・雇用保険に関する書類(資格取得等確認通知書など)
・健康保険に関する書類(離職票、資格取得等確認通知書など)
・厚生年金保険に関する書類(離職票、資格取得等確認通知書など)

②保存期間3年

以下の書類は、3年間の保存が法律で義務付けられています。

  • 労働者名簿
  • 雇入れまたは退職に関する書類(雇用契約書、解雇通知書など)
  • 賃金台帳
  • 労働時間の記録に関する重要な書類(タイムカード、残業命令書など)
  • 災害補償に関する書類
  • 労災保険に関する書類
  • 労働保険の徴収・納付等に関する書類
  • 派遣元管理台帳
  • 派遣先管理台帳
  • 安全・衛生委員会議事録

③保存期間4年

以下の書類は、4年間の保存が法律で義務付けられています。

  • 雇用保険の被保険者に関する書類(雇用保険被保険者資格取得確認通知書といったもの)

④保存期間5年

以下の書類は、5年間の保存が法律で義務付けられています。

  • 健康診断個人票
  • 従業員の身元保証書
  • 誓約書

⑤保存期間7年

以下の書類は、7年間の保存が法律で義務付けられています。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 源泉徴収票

⑥保存期間30年

以下の書類は、30年間の保存が法律で義務付けられています。

  • 労働者に関する作業概要などの定期記録
  • 焼却施設等作業の記録
  • 常時焼却施設等のダイオキシン類の濃度の定期測定記録
  • 特定化学物質等健康診断個人票
  • 放射線業務従事者の健康診断記録

⑦永久保存

法律で永久保存するよう定められた書類はありません。しかし企業にとって重要かつ永久保存しておくべき書類として挙げられるものがあります。それは以下のとおりです。

  • 定款
  • 就業規則の作成
  • 就業規則の届出
  • 就業規則の変更
  • そのほか規定関係
  • 重要な人事に関する書類
  • 表彰や懲戒に関する書類

こうした書類を電子化して保存できるよう、2005年にはe文書法も施行されました。

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5.人事管理ファイルの保管法

人事管理ファイルの保管方法は、主に紙と電子化の2つ。ここでは具体的な人事管理ファイルの保管法について説明します。

紙で保管する

紙で人事管理ファイルを保管する方法としては、以下の3つが知られています。

  1. バーティカル
  2. バインダー
  3. ボックス

①バーティカル

クリアファイルに書類を綴じずに分類し、引き出しやファイルボックスへ入れて保管する方法です。「バーティカル」は「垂直」という意味で、ファイルを垂直に並べることを表しています。

綴じていないため出し入れしやすく、こまめに廃棄しやすいです。ただしそのぶん、ほかの方法より紛失の可能性は高まります。また書類が増えてくると、引き出しやファイルボックスもその都度増やさなければなりません。

②バインダー

2穴式のバインダーや厚型ファイルなどに書類を綴じて分類し、棚に本のように並べて保管する方法です。背表紙に種類や年代、重要度などを記入できるため、目的の書類が探しやすいというメリットがあります。

一方、書類の量が少ないときも一定の置き場所を要するのはデメリットでしょう。また書類に穴を空けて一定規則に沿って適切な位置に挟み込むため、ほかの方法に比べて書類を綴じる手間がかかりやすいです。

③ボックス

ボックスファイル(縦型の書類箱)に保管する方法です。

中身をさらにフォルダわけできるため目的の書類が探しやすく、持ち運びもしやすいです。

一方、バインダーと同じく、書類の量が少ないときも一定の置き場所を要してしまいます。また最初にボックスファイルをそろえなければならないため、ある程度の初期費用も必要です。

電子化して保管する

電子化して人事管理ファイルを保管する方法としては、以下の2つが知られています。

  1. オンラインストレージ
  2. 文書管理システム

①オンラインストレージ

文書を電子化し、オンラインストレージに保管する方法です。

あくまで「書類を保管すること」のみを目的としているため、管理や検索、アクセス制御といった機能はついていない場合もあります。そのぶん書類を保管する以外の用途にも幅広く活用でき、導入にもさほど手間や費用がかかりません。

ITに詳しい人材がいない企業や、安く電子保管したい企業におすすめの方法です。

②文書管理システム

文書の作成から廃棄まで幅広く一元管理できるシステムを導入し、その機能の一部として電子化した書類を保管する方法です。

「書類を管理すること」全体を目的としているため、管理や検索、アクセス制御やバージョン管理、自動削除などの機能が充実しています。書類にかかわる業務全般が大幅に効率化されますが、導入費用や月額料金などで一定の費用がかかるでしょう。

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6.人事管理ファイルを整理するポイント

書類整理を苦手とするビジネスパーソンも多いようです。とくに人事管理ファイルといった、膨大な紙の書類整理はたやすくありません。ここでは紙の書類を整理するコツについて、説明します。

  1. 保管場所の確保
  2. 見出しと色で分類
  3. 不要なファイルは処分

①保管場所の確保

書類を整理する時間がなかなかとれない場合でも、保管場所だけは確保しておきましょう。一時的に書類を置いておける場所があれば、紛失や棄損といったミスが防げるからです。温度や湿度、出し入れのしやすさなどを考慮して適切な保管場所を選びましょう。

ただし重要度の高い書類や個人情報が記載された書類は、セキュリティも考慮する必要があります。誰でも入れる場所は避けたほうが安心です。

②見出しと色で分類

どこにどのような書類があるのかが一目でわかるように、見出しや色で適切に分類しましょう。人事関連の書類は種類も枚数も多くなるので、目的の書類をすぐに取り出せなければ作業効率は下がります。

書類の種類や年代はもちろん、重要度や保存期間なども記載してわかるようにしておくのがおすすめです。分類に使えるアイテムにはシールやラベル、付箋、クリップなどがあり、貼って剥がせるものならファイルを何度でも再利用できます。

③不要なファイルは処分

保存期間の過ぎたものからすぐに処分・破棄する習慣をつけましょう。保存期間の過ぎたファイルをいつまでも取っておくと、余分な場所が取られるのはもちろん、人事にかかわるファイル全体の管理が難しくなるからです。

保管期間が定められていない書類については、新しいものを入れて古いものを捨てる「玉突き方式」を選ぶとよいでしょう。

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7.人事管理ファイル「履歴書」の保管方法

人事管理ファイルのひとつに履歴書があります。採用した従業員の履歴書は管理方法が定められており、個人情報として慎重に取り扱わねばなりません。ここでは履歴書の保管方法について、人材の種別にポイントを解説します。

  1. 採用者の履歴書
  2. 不採用者の履歴書
  3. 退職者の履歴

①採用者の履歴書

採用した従業員の履歴書は、労働基準法の第109条で定める「労働関係に関する重要な書類」に該当し、2020年の改正以降は雇用開始日から5年間の保管が義務付けられています。

また従業員の情報や経歴を確認するためにも必要です。たとえば勤務中にケガや病気が発生したら、従業員の緊急連絡先を確認するため、履歴書を閲覧する場合があります。また経歴詐称が発覚した際は、履歴書が証拠になるのです。

②不採用者の履歴書

不採用者は自社の従業員ではないため、履歴書の返却や破棄といった書類管理に関する法的義務がありません。しかし採用活動が終わったあとは、できる限り早急に処分したほうがよいでしょう。

応募者から返却を求められる可能性を考慮すると、6カ月から1年程度保管してから処分するのがよいといえます。履歴書の取り扱いについてあらかじめ応募者へ了承を得ておけば、不必要なトラブルも回避できるでしょう。

③退職者の履歴書

退職者の履歴書においても採用者と同様、退職日から5年間の保管が義務付けられています。5年経過したのちは、返却あるいは破棄しても問題ありません。

なかには訴訟や再雇用の可能性を考慮し、5年以上保管するケースもあるようです。保管年数の上限は定められていないものの、個人情報流出のリスクが懸念されます。保管期間が過ぎたらすみやかに処分したほうがよいでしょう。