クラウド型人事管理ソフトとは、一体何でしょうか。ここでは、その機能や効果、導入メリット、そして選び方・比較のポイントについて解説します。
目次
1.クラウド型人事管理ソフトとは?
クラウド型人事管理ソフトとは、人事情報をクラウド上で一元管理するソフトのことで、現在、導入する企業は増加傾向にあります。
クラウド型のソフト
クラウド型ソフトとは、インターネット上のサーバーを通してソフトウェアを利用する形態のこと。利用者はインターネット環境があればどこでも利用可能です。
特別なハードウェアを用意したりソフトウェアをインストールしたりする必要は、ありません。社員数に応じて必要な分だけ課金して利用できるため、大企業から中小企業まで利用しやすいでしょう。
クラウド型だけでなくオンプレミス型もある
人事管理ソフトには、自社でサーバーの用意をし、構築して運用するオンプレミス型もあります。自社に合わせてカスタマイズできるうえ、自社サーバーなのでセキュリティも強固という点がメリットです。
デメリットには、コストの高さやアップデートを自社でしなければならない点、社外からの利用において、別途設定が必要となります。
2.クラウド型人事管理ソフトの人事管理とは?
人事管理とは人材の管理体制のことで、「働き方のルールや処遇を決めて適切に運用」「人材を効果的に活用」することが求められます。ここからは、人事管理の内容にはどのようなものがあるのか、解説します。
「成果」「能力」「人間性」など人材を評価する
人事評価制度は、業績評価、能力評価、情意評価の3つに分類されます。
- 業績評価:仕事の成果に対する評価
- 能力評価:仕事に用いる能力に対する評価
- 情意評価:仕事を行う姿勢に対する評価
採用情報
人事管理では、求職者の応募から採用までのプロセスを採用情報として管理します。自社で行ってきた採用活動における求職者のデータを蓄積すると、傾向を分析できるのです。
たとえば、「この求職者は以前辞退した求職者と同じような傾向があるから面談を多く設けよう」といった内定辞退防止策を立てられます。
社員の育成
新卒や中途採用の社員に研修の場を設けると、教育体制を整えられるのです。
先輩社員に直接指導してもらう機会を作ったり外部講師などに依頼したりし、社員一人ひとりの能力を高めるための土台作りをしていきます。人材育成の仕組みがしっかりと構築されていれば、会社全体の業務効率化にもつながるのです。
モチベーション管理
社員のモチベーションを高め、組織内の生産性向上や社員満足度、働きがいの創出などにつながる施策を打ち出します。たとえば、成果還元のための表彰制度や個人の目標管理制度などです。
またマネジメント層と社員とのコミュニケーションを促進する施策に、1on1ミーティングがあります。
3.クラウド型人事管理ソフトが持つ5つの機能
クラウド型人事管理ソフトには、5つの機能があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
- クラウド機能
- 人事情報管理
- 人事評価
- 人材配置
- 人事データの可視化
①クラウド機能
クラウド型人事管理ソフトの最大の特徴は、ネット環境さえあればどこでもサービスが利用できる点。クラウド型を導入すると、出張先などの社外でも変わらず業務を進められます。
昨今のリモートワーク推進にも向いているでしょう。またワークライフバランスの充実を図りたい企業にも最適です。
②人事情報管理
人事管理ソフトでは社員の個人情報や勤怠情報を管理できます。たとえば、下記のような情報です。
- 個人情報:社員の生年月日や入社年度、職歴など
- スキル情報:保有している公的資格やスキル、研修受講歴など
- 勤務状況:遅刻や欠勤の回数、産休や育休、病気による休業歴など
③人事評価
人事評価機能も主要な機能の一つです。人事ソフトでは、業種や職種に従って作成された評価基準をもとに、管理者が社員を評価できます。
その際、社員一人ひとりの能力などに応じた目標値の設定も可能です。この機能を有効活用すると、各社員の目標管理を行いながら、PDCAサイクルを適切に運用できます。
④人材配置
データを分析すると、社員一人ひとりのポテンシャルを考慮した人材配置が実施できます。企業内では日々さまざまなプロジェクトが並行して稼働しているもの。進捗状況によって、メンバーを増減したり、入れ替えを行ったりする必要があるでしょう。
人事管理ソフトで各種データを参考に、社員を最適なプロジェクトや部署に配置するとこのような課題に応えられるのです。
⑤人事データの可視化
人事データの一元化により人事情報の可視化が実現します。それにより、現在の人事などの課題を分析し、管理者が組織の現状を把握できます。
また、「優秀な人材の採用」「適材適所の人材配置」「即戦力となる人材を育成」といったタレントマネジメントも実施できるのです。
4.クラウド型人事管理ソフトを導入するメリット7つ
クラウド型人事管理ソフトを導入するメリットは、何でしょうか。ここでは、メリットを7つ解説します。
- 新機能をすぐに使える
- カスタマイズが可能
- 運用がラク
- 人事部門の業務の効率化
- ミスの減少
- 経費削減
- 平等に評価できる
①新機能をすぐに使える
クラウド型は、インストールの必要がないため、新しい機能をすぐに使えます。オンプレミス型では新しいバージョンを検証したりインストールしたりしますが、クラウド型では一切不要です。
バージョンアップはすべてメーカー側でやるため、ユーザーに負担はありません。
②カスタマイズが可能
利用期間や利用人数、実際に使用する機能を必要なものだけに絞れます。自社に合ったカスタマイズができれば、無駄なコストを削減できるでしょう。
オンプレミス型のほうが、自由にカスタマイズできるイメージを持つ人も多いでしょう。しかし現在、大きな差はなくなっています。なぜならば多機能なクラウド型が増えており、柔軟なカスタマイズにも対応可能となったからです。
③運用がラク
クラウド型では、ハードウェアや設置スペース、電力などをすべてメーカーが負担します。オンプレミス型のように、社内サーバーは不要でメンテナンスの必要もありません。
そのため運用が楽でコストも削減できます。プロが運用を請け負うため、障害も少なく稼働率も高いです。
④人事部門の業務の効率化
情報を一元管理するため、効率的な業務が実現します。異動や評価などにおいても、管理しやすい設計となっているのです。特に人事部門に業務が集中する採用の時期、その負担の軽減に効果を発揮するでしょう。
Excelでは、人事データの管理に限界が生じます。採用や人材育成などの確実な管理にはやはり、人事管理ソフトが必須でしょう。
⑤ミスの減少
手作業で複雑な計算をすると人的ミスが増えます。しかしソフトを導入すると、ミスが減少し、業務効率化につながるのです。派遣社員やパート・アルバイトなどさまざまな雇用形態を取り入れている場合、対応した自動計算機能を搭載していると大変便利でしょう。
また人事異動なども正確に把握できる機能を搭載しているソフトであれば、人事担当者の負担が軽減します。
⑥経費削減
クラウド型はすべてインターネット上で人事データを管理するため、ペーパーレスといった経費削減につながります。
たとえば給与明細をスマートフォンで見られるようになったり、シフト管理をわざわざ紙で配る必要がなくなったりです。結果、印刷にかかっていた雑費を抑えられるため、その時間も大幅に削減できます。
⑦平等に評価できる
採用や人事評価についてシステム内に統一基準を登録するため、それをもとにした選定や評価を行えます。そのため個人の感情が入ることなく、正確かつ平等に評価できるのです。
ハロー効果などの人的エラーを防げるだけでなく、業績のいい社員との相対評価も防げます。さらに各社員によりよいインセンティブを与えられるでしょう。
5.クラウド型人事管理ソフトの選び方
クラウド型人事管理ソフトの導入を決めても、どのソフトを選べばよいのか分からない人も存在するでしょう。ここからは、ソフトを選ぶ際のポイントを6つご紹介します。参考に自社に最適なものを探してください。
- 目的に合っているか
- ほかのシステムと連携できるか
- サポート体制はどうなっているのか
- 柔軟性はあるのか
- 全体でどのくらいの費用感になるのか
- セキュリティ面は問題ないか
①目的に合っているか
まず、導入する目的を明確にします。現在どのような課題があるのか、効率化させたい業務はどのようなものかを明確にしましょう。
最初の段階で目的をはっきりさせれば、「実際に使用する際になって実態に合わないと気付いた」といった事態を防げます。目的を明確にしたうえで、必要な機能やコストに合ったシステム内容を検討しましょう。
②ほかのシステムと連携できるか
ほかのシステムと連携できるかどうかも、選ぶ際の重要なポイントです。すでに社内でシステムを導入している場合、新しいシステムにデータを移行する必要があります。
またカスタマイズの一環としてほかのシステムを利用する場合、外部と連携しなければなりません。システムが連携でき、かつ導入のプロセスが複雑でないものを選びましょう。
③サポート体制はどうなっているのか
社員の個人情報などのデータを取り扱うため、慎重な管理が必要です。またいくら便利なツールでも、慣れるまでに苦労する可能性があるでしょう。
カスタマーサポートや利用インストラクターの充実度などを目安に、自社に合わせた提案・運用をサポートしてくれるスタッフが存在する事業者を選ぶとよいでしょう。
④柔軟性はあるのか
変更や修正が必要な際、柔軟に対応できるかどうかも確認しなければなりません。たとえば、法律の改正や社内の新しい制度の導入により、ソフトを変更する場合もあるでしょう。
自由度の高いシステムなら、容易に管理項目が追加・削除できたり、グループ会社も合わせて管理できたりします。将来の機能拡張も見据えて導入を検討しましょう。
⑤全体でどのくらいの費用感になるのか
費用は導入時だけでなく、カスタマイズする際にも必要です。人事管理ソフトの特性として、法改正ごとにカスタマイズが必要となる場合もあります。
事前にその予算について、事業者と話し合っておきましょう。自社の人事制度が変更となった場合の機能追加などについて、あらかじめ把握しておくとよいでしょう。
⑥セキュリティ面は問題ないか
最後に、どのような仕組みでセキュリティを担保しているのか、どのようにデータを保持しているのか確認しましょう。膨大な個人情報を含む人事データが外部に漏えいしない強固なセキュリティは、必須条件です。
外部からのハッキングや不正アクセスなどを防止できる仕組みがあるかどうかは、重要な要素となります。