自律分散型組織(DAO)とは? 【わかりやすく解説】

自律分散型組織(DAO)とは、社員が自ら行動する、上下関係のない組織のこと。定義、注目される理由、種類、メリット、デメリット、作り方などを解説します。

1.自律分散型組織(DAO)とは?

自律分散型組織とは、社員それぞれが自らの意思や判断で行動する組織のこと。自律分散型組織には社長や管理職といった中央集権者、およびそれにともなう上下関係が存在しません。

英語では「Decentralized Autonomous Organization」と表記され、頭文字を略してDAOとも呼ばれます。

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2.自律分散型組織が注目される理由

自律分散型組織には柔軟性があり、変わりゆく現実に迅速に対応できるとして注目が集まっています。ここでは、自律分散型組織が注目される理由を説明しましょう。

ビジネス世界の変化に対応

自律分散型組織は、現場の課題に応じて柔軟かつ迅速に行動できる組織を目指す企業などからの注目が集まっています。

ワークライフバランスの重視やそれに伴う働き方の多様化、少子化やIT化など、現代のビジネス世界は目まぐるしく変化するようになりました。

こうした変化に一早く対応するには、管理者にその都度判断を仰ぐのではなく、現場が自らの裁量で行動を決めていかなければなりません。

自律分散型組織ではそれぞれの社員に裁量があるため、従来の階層型組織にはない柔軟性と迅速な対応が見込めます。

VUCA時代により高まるニーズ

自律分散型組織は、複雑で変化に富む現代を乗り切る手段として注目を集めています。

VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとった略語のこと。

VUCA時代とも呼ばれる現代は、先行きが不透明で将来の予測が難しいといわれています。これを乗り切るための手段として、自律分散型組織を導入する企業も増えてきました。

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3.自律分散型組織の種類

自律分散型組織の在り方は、いくつかの種類にわけられます。ここでは、自律分散型組織の代表的な3種類を説明しましょう。

  1. アジャイル型組織
  2. ティール組織
  3. ホラクラシー組織

①アジャイル型組織

小規模なPDCAを繰り返しながら、結果を生み出していく組織のこと。アジャイル(agile)には「素早い」「機敏な」といった意味の語で、もともとはシステム開発における手法の名称です。

アジャイル型組織では、計画ではなく「小規模なPDCAを素早く回す」「実行と改善を同時に行う」点に重きが置かれます。それを効率的に実現するためそれぞれの社員に一定の裁量を与え、組織内の上下関係をつくらないようにするのです。

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②ティール組織

全社員がフラットな関係にあり、マネジメントがなくとも結果を生み出せる組織のこと。もともとはフレデリック・ラルー氏が、著書「ティール組織」において、5段階に進化する組織の最終型として提唱しました。

ティール組織では、それぞれの社員が自らの意思や判断で行動を決め、結果を出します。従来の組織にあるような、階層やマネジメントといった要素は一切ありません。

社員の自主性や互いの尊重、組織目標の理解が必要です。しかしそのぶん各社員および組織全体のパフォーマンス向上が見込めます。

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③ホラクラシー組織

それぞれの社員が一定のルールに応じて自らの行動を決め、結果を生み出していく組織のこと。

ホラクラシー組織では「ホラクラシー憲法」「ホラクラシー文書」と呼ばれるルール、そして組織全体のまとめ役が設定されます。まとめ役といっても、従来のような上下関係はありません。社員はルールにのみ統制され、お互いの関係はあくまでフラットです。

ティール組織の一形態として良さを生かしながら、ルールによりある程度の統制が見込める点が強みでしょう。

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4.自律分散型組織のメリット

自律分散型組織のメリットは、業務効率化や責任転嫁の減少、社員のモチベーションアップ、個性の発揮などが挙げられます。ここでは、自律分散型組織を導入するメリットを説明しましょう。

  1. 業務効率化
  2. 個性の発揮
  3. 社員のモチベーションアップ
  4. 責任転嫁が減少

①業務効率化

自律分散型組織を導入すると、現場に応じた迅速な対応が可能となり、業務の効率化が見込めます。

自律分散型組織では、仕事の方針を決めるため上司の承諾を得る必要がありません。現場の社員の意見や判断が直接反映されるため、柔軟かつタイムリーな対応が行えます。意思決定から行動までの時間が短縮され、業務の効率化につながるのです。

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②個性の発揮

自律分散型組織では上下関係による支配や同調圧力が発生しないため、それぞれの社員がより個性を発揮できます。

従来のように上下関係のある組織では、上の社員の意見がとおりやすく、下の社員の才能やスキルが生かされない場合も少なくありません。

自律分散型組織では、それぞれの社員に裁量が与えられ、下の社員でも存分に可能性を発揮できます。若い世代の感覚や意見が活かされやすく、変化が激しい現代にも適切に対応できるでしょう。

③社員のモチベーションアップ

自律分散型組織の社員は、自らの仕事を自らの意思で決められるため、モチベーションアップが見込めます。上からの指示がない自律分散型組織では、誰かにやらされているというマイナスの感情が湧かないからです。

モチベーションの向上はもちろん、企業に貢献したいというエンゲージメントの向上も期待できます。

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④責任転嫁が減少

社員が自らの仕事を自らの意思で決める自律分散型組織では、業務に対する責任も明確になり、責任転嫁を防げます。

従来のように上下関係のある組織では、上の社員からの判断にもとづき、下の社員が仕事を実行するのが一般的です。判断と実行がわかれるため、トラブル時に相手へ責任転嫁するのも可能になってしまいます。

自律分散型組織では、判断と実行がそれぞれの社員に一任されており、責任範囲が明確です。「自らの仕事に対する責任を自らで負う」という健全な文化を作りやすい組織モデルだといえます。

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5.自律分散型組織のデメリット

自律分散型組織を導入する際には、メリットだけでなくデメリットも理解しておく必要があります。ここでは、自律分散型組織を導入するデメリットを説明しましょう。

  1. リーダーシップの欠如
  2. 情報の一元化や共有が困難
  3. 組織としてのリスク管理が困難

①リーダーシップの欠如

自律分散型組織を導入すると、組織内のリーダーシップが生まれにくくなり、かえって仕事が遅滞する可能性があります。

自律分散型組織のリーダーは、指示を出すのではなく、社員に権限を与えて意思決定を促す存在です。しかし自律分散型組織でリーダーシップが上下関係の一部と認識されると、社員がリーダーシップを認めず、業務が遅滞する事態が起こりえます。

社員にはリーダーシップの本質的な理解、また自らを導くセルフマネジメント力の向上が必要でしょう。

②情報の一元化や共有が困難

自律分散型組織を導入すると、情報の一元化や共有の必要性が下がり、業務が滞る恐れがあります。

従来の上下関係のある組織では、上の社員がさまざまな判断や意思決定を行うため、情報の一元化や共有が欠かせません。

しかし自律分散型組織では、それぞれの社員が判断できるため、その必要が薄れるのです。そのため業務や情報の属人化も起こりやすいといわれています。自律分散型組織の導入前に、情報共有のための仕組みやツールなど、適切な対策を講じておきましょう。

③組織としてのリスク管理が困難

自律分散型組織を導入すると、エラーやリスクの見逃しが増える可能性があります。

従来の上下関係のある組織では、上の社員に判断を仰ぐという、明確な承認過程がありました。しかし自律分散型組織にはそれがなく、エラーやリスクが見逃される可能性が増すのです。

自律分散型組織を導入する際は、定期的なチームミーティングといった、エラーやリスクをチェックする体制作りが必要でしょう。

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6.自律分散型組織のつくり方

自律分散型組織を作る際、従来のような上下関係のある組織との違いを把握し、実際の業務に沿った体制や仕組みを構築する必要があります。ここでは、自律分散型組織の作り方を説明しましょう。

  1. 職場環境の整備
  2. 目標と成果指標を設定
  3. 部分的な部署への導入も検討

①職場環境の整備

自律分散型組織に着手する際、社員にとって理想的な職場環境を整備しましょう。自律分散型組織の結果は、良くも悪くもそれぞれの社員のモチベーションに大きく左右されるからです。職場環境の整備が充分でいなければ、大きな結果は期待できません。

コミュニケーションを促進する環境作りや、多様な働き方の導入などを積極的に検討しましょう。社員にアンケートを取り、その結果を反映させるのも効果的です。

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②目標と成果指標を設定

自律分散型組織を運用する際、目標と成果指標の設定方法を決めておく必要があります。

自律分散型組織は従来の上下関係のある組織とは異なり、目標や成果指標などは自分で設定しなければなりません。

それぞれの社員の力を同じ方向に最大化するには、自社の方向性に沿った目標と成果指標を設定しやすい仕組み作りが必要でしょう。たとえば各社員が成果を発表するミーティングといったものです。

③部分的な部署への導入も検討

全社的に自律分散型組織を導入するのが難しければ、部分的な部署への導入から始めるのもひとつの方法です。

自律分散型組織の目的はあくまで柔軟性や迅速な対応で、上下関係の廃止ではありません。また全社的に導入すると、混乱や反発などのリスクがより大きくなります。

必要性や期待される結果を充分に考慮したうえで、効果が見込める部署のみに導入するといった柔軟な対応も検討しましょう。

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7.自律分散型組織をつくる際の注意点

自律分散型組織には決まった正解がなく、またすぐに構築できるものでもありません。注意点を考慮しながら社員を巻き込み、自社にとって最適な形を作り上げましょう。ここでは、自律分散型組織を作る際の注意点を説明します。

情報共有できる環境づくりが必要

自律分散型組織は情報の一元化や共有がおろそかになりやすいです。

構築時は、業務の遅延や情報の属人化を防いで業務を効率化する環境を作りましょう。たとえば定期的なミーティングの開催や社内SNSの導入といった、コミュニケーションの活性化に重きを置く環境です。

秩序を保つためのルール決定

自律分散型組織は、フラットで自由な印象が強いです。しかしルールがないと誰もが好き勝手に行動してしまい、組織の崩壊を招きかねません。このような事態を避けるためにも最低限のルールは制定しておくべきです。

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8.自律分散型組織の導入事例

自社において自律分散型組織の導入を検討する際には、すでに導入した企業の事例を参考にしていけます。ここでは、3社の導入事例を説明しましょう。

  1. ビットコイン
  2. UNCHAIN
  3. Gaudiy

①ビットコイン

ビットコイン(BTC)は、同名の仮想通貨取引所を運営する企業。世界で初めて自律分散型組織を導入した例としても知られています。

「ブロックチェーン」というシステムにてビットコインの管理や発行、不正のチェックなどが自動的に行われるため、ビットコインの社内に「運営管理者」は存在しません。

またこのブロックチェーンのルールに従い、サービスの利用者がシステムの維持や管理に参加しています。

②UNCHAIN

UNCHAINは、shiftbaseが提供するWeb3.0エンジニア向けの学習サービスおよびコミュニティ。国内企業が運営する自律分散型組織として注目を集めました。

具体的には、参加者へコミュニティへの貢献度に応じた報酬が支払われる「ソーシャルトークン」という仕組みを活用したDAO型のコミュニティです。

学習のみならずユーザー同士の共同開発やプロジェクト発足なども可能。報酬の支払いや学習修了時の証明書発行なども、ソーシャルトークンを介して自動的に行われます。

③Gaudiy

新しいコミュニティ作りを手掛けるGaudiyは、中央集権型と自律分散型の特徴を併せ持つ組織を目指して「Gaudiy Protocol」という取り組みを始めています。

Gaudiy Protocolとは、同社における社内の意思決定システムのこと。リーダーシップによるイノベーションの可能性も保持しつつ、今までよりも柔軟で公正な意思決定を実現するために開発されました。

誰でも組織の文化や制度を作れる環境を整備しており、入社して日が浅い社員からも提案などが寄せられています。