失業手当をもらえない求職者が“無料の職業訓練と月10万円の給付金”をセットで受けることができる「求職者支援制度」。未就職者やブランクがある場合に役立つ制度なので、受給のための手続きの方法などを紹介します。
「求職者支援制度」とは?
求職者支援制度とは、「雇用保険の資格がない」、または「受給期間が終了した求職者」を対象として、給付金の支給や無料の職業訓練受講を勧めることで、早期の就職を支援する制度のことです。
具体的には、“パート”や“短期派遣”といった、非正規雇用であるため雇用保険の受給資格がない人や、加入期間が足りず雇用保険の給付を受けられなかった人、雇用保険を受給中に再就職ができなかったため、無職のまま受給期間が終了してしまった人、“学卒未就職者”や“自営廃業者”の人などへの救済措置です。
職業訓練の受講料は無料で、テキスト代のみ実費負担となります。さらに、本人収入および、世帯収入・資産要件などの一定の支給要件を満たす場合には、3ヵ月~6ヵ月間の訓練受講中も、月10万円の職業訓練受講給付金の支給に加えて交通費(実費)が支給されます。ただし、支援制度実施中はハローワークへの高い出席率が必要で、これをクリアできない場合は支援制度の打ち切りなどの処分もあります。
求職者支援制度では、「公共職業訓練」か、民間の教育訓練機関で行われる「求職者支援訓練」の受講が可能です。求職者支援訓練の認定基準、給付金の支給要件や支給額などは、審議会での議論および所要の手続きを経て定められています。
求職者支援制度の利用条件
「求職者支援訓練」は、以下の条件をクリアした「特定求職者」でなければ受講できません。
■雇用保険の被保険者(受給者)ではない
自営業を廃業した人、雇用保険未加入のフリーター(短時間就労者や短期就労者)、学校を卒業してから一度も就職していない人、雇用保険の加入期間が足りずに失業給付を受けられない人などが対象です。(雇用保険の受給資格がある人は、求職者支援訓練よりメリットの大きい「公共職業訓練」があります)
■ハローワークで求職申し込み中
実際にハローワークに行って求職申込みの手続きをとっていることが条件のひとつとなっています。
■仕事への意欲があり、すぐに働ける状態である
まずやる気があること。しかしケガや病気をしてすぐに働けない場合などは、条件を満たすことが出来ません。
■在職中の場合「週20時間未満の就労」であること
パートやアルバイトなどで、週所定労働時間が20時間未満であれば受講が可能です。その際の収入は考慮されません。
■フルタイム希望である
そもそも短時間就労や短期就労を希望される場合は対象外です。
■年金受給者ではない
老齢年金の受給者(65歳以上)は対象外です。
■ハローワークによる認定
上記の6つの条件を全てクリアしていれば、認定されることがほとんどです。ただし、希望している職種と無関係の支援訓練を希望したり、支援訓練を受けても就職できそうもないと判断された場合は認められない場合があります。
以上ですが、各ハローワークによって対応が異なる場合もあるため、詳しくは自分の居住する地域を管轄するハローワークで確認してみましょう。
さらに、受講中に毎月10万円の「職業訓練受講給付金」を受ける場合には、以下の条件が加えられます。
- 本人収入が月8万円以下である
- 世帯全体の収入が月 25 万円以下である
- 世帯全体の金融資産が 300 万円以下である
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していないこと
- 全ての訓練実施日に出席していること
- 同世帯の中に同時に給付金を受給して訓練を受けている人がいないこと
- 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けたことがないこと
上記に該当せず給付金が受けられない場合でも、職業訓練だけを無料で受講することも可能です。
なお、上記の通り「職業訓練受講給付金」受給のためには、全ての訓練実施日への出席が求められます。民間の資格講座などとは違って、遅刻・欠席のチェックは厳しくなっているため注意が必要です。ただし、病欠や被災などのやむを得ない場合は欠席を許可されますので、以下の条件も確認しておきましょう。
【欠席許可の要件】
- インフルエンザなどの感染症に感染した
- 家族がインフルエンザなどの感染症に感染し、看病の必要があると医師に判断された
- 企業実習先にインフルエンザなどの感染症にかかった人が出て、訓練を受講できなかった
- 大規模な災害が起こったなどで訓練に行けなくなった
- 裁判員に選ばれた
- ハローワークの指定来所日と訓練がかぶった
- 就職活動の試験や面接と訓練がかぶった
求職者支援制度とバイト
「求職者支援制度」の最大のメリットは、雇用保険の受給資格がなくとも、条件さえ満たせば受講給付金月額10万円を受けながら、スキルアップできる点にあります。
しかし、扶養家族を養いながら、あるいは単身者でも家賃を差し引いてしまえば、生活するには厳しい金額です。
そこで、受講給付金以外にも生活費を融資してもらえる「求職者支援資金融資」という制度もあります。ただし、金利付きで全額返済が必要となり、労働金庫の審査が通らないこともあるかもしれません。
生活費の足りない分はアルバイトなどで稼ぐことになりますが、「求職者支援訓練」期間中に働くことは、べつに禁止されているわけではないのです。ただし、注意する点があります。
■訓練の申し込み時点で「週所定労働時間が20時間以上の在職中の人」は特定求職者とは認められず、申し込むことができない
■「前月の収入が8万円以下」であったかどうか
(8万円を超えて、支給要件を満たさず受給が止まっても、再度8万円未満になった月は支給されます)