若者の非正規雇用率、若年無業者の増加などが問題となる日本では、早いうちからのキャリア形成教育の必要性が問われています。そんな中で注目を集めているのが、子供が体験するジョブシャドウイングです。人事担当者がおさえておきたいジョブシャドウイングについて紹介します。
「ジョブシャドウイング」とは? 子供に職場で観察させる職業体験プログラム
ジョブシャドウイングとは、児童、生徒、大学生が、企業の社員に半日か1日、影のように張りついて同行し、彼らがどのような仕事をしているかを観察して学ぶ取り組みです。もともとはアメリカで子供達の職業体験プログラムとして誕生したものです。
インターンは実際に仕事をしますが、ジョブシャドウイングは、仕事はせず観察に徹するので、インターンの前段階という位置づけも成り立ちます。日本では中学校や高校のキャリア教育として採用されることが多く、また大学生の早い段階で行われることもあります。
ジョブシャドウイングで実際の労働を身近に観察することで、子供達の就労への意識が明確になる機会となります。
ジョブシャドウイングによる職業体験の実例
1 埼玉県のジョブシャドウイング
埼玉県では県内の高校生を対象としたジョブシャドウイングを2014年より実施しています。2018年は県立高等学校41校から133名の生徒が参加し、県内の企業及び埼玉県庁など、計19団体が受け入れ先となりました。全体による事前学習会の後、夏季休暇期間中の半日ほどのジョブシャドウイングを体験、その後また全体での事後学習会を開きます。
実習先の例としては、本川越の株式会社プリンスホテルでのフロント業務、東武鉄道株式会社でのレール切断・穿孔・架線作業車、設備検査、子育て支援サービスの株式会社コマームでの保育ルームや児童館等で保育にかかわる仕事などのジョブシャドウイングが行われました。
2 秋田県立大学のジョブシャドウイング
大学生のジョブシャドウイングの一例ですが、秋田県立大学では、2016年3月8日にシステム科学技術学部1年生、2年生から計8名が、秋田県由利本荘市にある航空機機体製造などを行う株式会社三栄機械でのジョブシャドウイングを実施しました。
会社内での加工、組み立てや技術・品質保証部門などでのジョブシャドウイングを行い、工場長との意見交換なども行いました。
ジョブシャドウイングで子供の職業体験を受け入れる企業のメリットとは?
ジョブシャドウイングは、子供達を受け入れる企業側にもメリットがあります。まず、そばに子供がいて、子供に観察されることで、自分の仕事の意味に気づき、仕事の意義を明確にする機会となります。
子供の新鮮な視線や素朴な質問を受けることで、新たな気づきを得てフレッシュな気持ちで仕事にむかえるようになります。
また、子供という第三者が入ることで、ジョブシャドウイングに関係ない社員も含めて職場全体が活性化される効果もあります。職場で“新人”扱いから一段階進む頃の若手社員にジョブシャドウイングを任せることで、若手社員自身が自分のキャリアを見直す機会ともなり、若手社員育成のひとつの手段としても活用できるでしょう。