ジョブ型雇用のメリットは、即戦力人材の確保や採用時のミスマッチ防止などで、デメリットには、職務変更の困難さが挙げられます。このようなメリットとデメリットを把握すると、ジョブ型雇用が自社に適しているか、見極めやすくなるでしょう。
目次
1.ジョブ型雇用のメリット・デメリットをなぜ知る必要があるのか?
ジョブ型雇用が自社に適した雇用制度かを見極めるためには、メリットとデメリットを知らなくてはなりません。
ジョブ型雇用には従業員と企業、それぞれにメリットとデメリットが存在し、企業によってはデメリットが影響する恐れもあるのです。
2013年、政府はジョブ型雇用の推進を提言。それを機に、日本でも多くの企業がジョブ型雇用を導入するようになりました。しかし一部の企業からは、この雇用スタイル自体が自社に不向きだったという声も報告されているのです。
2020年ごろから、経団連も推進し始め、ジョブ型雇用が注目されています。しかしジョブ型雇用のメリットとデメリットを考慮したうえで、導入するかを決めたほうがよいでしょう。

ジョブ型雇用とは?【メンバーシップ型との違い】メリデメ
ジョブ型雇用とは、従事する職務を限定し、成果によって報酬を決める雇用制度。
スペシャリストを確保したい企業を中心に導入が進められています。
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2.ジョブ型雇用のメリット
ジョブ型雇用には、企業だけでなく従業員にもメリットがあります。それぞれについて見ていきましょう。
企業側のメリット
ジョブ型雇用で企業側に生じるメリットは主に3つです。
- 即戦力の確保と育成
- 採用後のミスマッチ防止
- 組織の生産率向上
①即戦力の確保と育成
ジョブ型雇用では、即戦力となる人材の確保と育成がしやすくなります。スキルを条件として採用活動を行えるため、特定の職務や分野を得意とする人材を採用できるからです。
一方メンバーシップ型雇用では、職務を明確せずさまざまな部門を経験させます。そのため専門性の高い従業員が育ちにくいのです。またジョブ型雇用では職務の難易度に応じて給与を設定できるため、求人市場において競争力が高まります。
②採用後のミスマッチ防止
ジョブ型雇用で採用すると、企業と従業員の間にミスマッチが生じにくくなります。ジョブ型雇用では前提として、職務内容や勤務地などを明確にした状態で募集を行うからです。
メンバーシップ型雇用では、職務内容だけでなく、勤務地や勤務時間なども明確になっていない場合があります。そのため採用後に従業員が「想定していない業務をやらされた」「希望していないのに地方へ異動させられた」などの不満を持つ恐れもあるのです。
ジョブ型雇用であれば、このような不満が発生する心配がありません。
③組織の生産率向上
ジョブ型雇用を導入すると、組織の生産率も向上します。ジョブ型雇用では、職務遂行に必要なスキルをあらかじめ提示するからです。ジョブ型雇用で採用した各従業員が持つスキルを業務で最大限に生かせるため、業務効率と生産性が高まっていきます。
また高いスキルを持った人材を採用するため、短期間で効率が上がりやすくなるのです。従業員の育成にかかるコストや時間も削減できます。
従業員・求職者側のメリット
ジョブ型雇用は、従業員や求職者側にもメリットをもたらします。
- 職務範囲や報酬の明確化
- スキルを最大限に活用
- 勤務場所の固定
①職務範囲や報酬の明確化
ジョブ型雇用は職務範囲や報酬が最初から明確になっているため、職務を遂行できれば年齢や学歴にかかわらず採用されやすくなります。業界未経験者や新入社員であっても専門性の高い業務を担当でき、その分高い報酬を得られるでしょう。
評価基準も職種や地位、仕事内容が中心となり、成果を上げれば昇給も可能。仕事へのモチベーションを維持しやすくなります。一方メンバーシップ型では、勤続年数や年齢などを重視する傾向にあり、成長意欲を保てなくなる恐れがあるのです。
②スキルを最大限に活用
従業員や求職者は、自分のスキルを最大限に生かせる、あるいはさらにスキルアップできる仕事に就きやすくなります。職務記述書で職務上求められるスキルが明確になっているため、求職者は自身のスキルを生かせる職場を選べるからです。
就業後もそのスキルをさらに磨く、あるいは関連スキルを習得するといった成長の機会を得られるでしょう。
一方メンバーシップ型雇用では、採用した従業員は働きながら必要なスキルを身につける傾向にあります。よって配属先で保有スキルを発揮できるとは限りません。
③勤務場所の固定
ジョブ型雇用では一般的に、従業員の勤務場所を固定します。そのため基本、異動や転勤がないのです。家庭の事情で転勤が難しい、あるいはワークライフバランスを重視したい従業員にとっては、働きやすい雇用形態となるでしょう。
メンバーシップ型雇用の場合、従業員は異動や転勤の辞令に従わなければなりません。転居をともなう異動を命じられると、本人だけでなく同居している家族も大きなストレスを感じるでしょう。
3.ジョブ型雇用のデメリット
ジョブ型雇用は、企業側と従業員側にとってデメリットともなりえます。たとえば「限定的な採用」「職務の固定」などは双方に影響するでしょう。
企業側のデメリット
ジョブ型雇用の企業側のデメリットは主に3つです。
- 職務の変更が困難
- 採用の難易度が上昇
- 帰属意識の低下
①職務の変更が困難
ジョブ型雇用は、一度決定した個々の従業員の職務を変更しにくくなります。企業も従業員も、職務記述書に書かれた職務への配置を前提に、雇用契約を締結させているからです。
たとえば業務上どうしても発生してしまう雑務や、閑散期のみ発生する業務について、ジョブ型雇用で採用した従業員は原則、対応できません。
やむを得ず職務を変更する際は、新たな職務記述書を作成し、本人の同意を得たうえで労働条件を変更する書面を提示する必要があります。
②採用の難易度が上昇
ジョブ型雇用は高度かつ専門的なスキルをもった人材の採用を目的とするため、採用そのものの難易度が上昇してしまいます。
優秀な人材は他社と争奪戦になる場合も多く、企業が望むスキルを持った人材をすぐに採用できるとは限りません。そのため急な休職や退職が発生しても、人材確保が間に合わなくなるリスクがあるのです。
理想的な人材を獲得するには、勤務時間や報酬、福利厚生など待遇面はもちろん、企業イメージなどでも他社と差別化する必要があります。
③帰属意識の低下
ジョブ型雇用では、帰属意識が低下しやすくなる恐れもあります。特定の仕事に従業員を適応させる雇用スタイルなので、従業員は目の前の職務をまっとうすることを優先してしまい、企業に属しているという意識が低下してしまうのです。
また職務範囲から外れた仕事は請け負わないため、困っているほかチームやほか部署へのフォローやサポートも行いません。よってチームワークが希薄になり、従業員エンゲージメントも低下しやすくなるのです。
従業員・求職者側のデメリット
従業員や求職者側にも、3つのデメリットが挙げられます。
- メンバーシップ型と比べて、職を失うリスクが増大
- メンバーシップ型と比べ自主的なスキルアップが必要
- メンバーシップ型と比べ新卒の採用率が低下
①メンバーシップ型と比べて、職を失うリスクが増大
メンバーシップ型雇用と比較した場合、ジョブ型雇用には職を失うリスクが増大します。ジョブ型雇用では、業務を遂行する能力を有するかで雇用契約を結ぶため、「業務が遂行できない」「その職務自体がなくなった」などでは雇用を継続できなくなるのです。
一方メンバーシップ型雇用では、終身雇用が前提とされています。割り当てられた職務を遂行できない、あるいは職務そのものがなくなっても、配置転換や人材育成などで雇用を継続します。
②メンバーシップ型と比べ自主的なスキルアップが必要
ジョブ型雇用の従業員側は、メンバーシップ型雇用と比較して自主的なスキルアップが不可欠です。
そもそもジョブ型雇用では従業員に特定のスキルや能力が備わっていることが前提になります。業務を遂行し続けるには、業務に関連するスキルや能力の取得および向上が必要になるのです。
企業側が提供している研修やトレーニングなどを活用してスキルアップする方法もあります。しかしすべての企業で研修やトレーニングを行っているわけではありません。そのため従業員は、自主的にスキルアップを進める必要があるのです。
③メンバーシップ型と比べ新卒の採用率が低下
ジョブ型雇用は、メンバーシップ型雇用に比べ、新卒の採用率が低くなります。
業務上必要なスキルが備わっていることを重視するジョブ型雇用では、新卒者よりも同様の業務の経験者を採用する傾向が強くなるからです。新卒の求職者はどうしても不利になってしまうでしょう。
一方、メンバーシップ型雇用の新卒採用では、職務や求めるスキルを特定しません。入社後に従業員の適性やスキルなどから、割り当てる職務を決定します。
4.ジョブ型雇用のメリデメを知ったうえで導入前に検討すべきこと
ジョブ型雇用の採用が自社に適しているかだけでなく、そもそもジョブ型雇用が必要かも考えなければなりません。
ジョブ型雇用では専門性の高い人材を狙います。しかし日本市場は欧米と比較して転職しにくい傾向にあり、自社が望む人材が転職市場に出てくるとは限りません。
またジョブ型雇用の導入前には、社内制度の整備が不可欠です。このような点を事前に検討したうえで、導入すべきかを決めましょう。
- 導入の必要性
- 職場環境の整備
- 評価制度の見直し
①導入の必要性
ジョブ型雇用を導入する理由や必要性を十分に検討すべきです。自社の規模や経営戦略、職務などに、ジョブ型雇用が合うとは限りません。たとえば異なる専門分野の職務をいくつか兼任している従業員が退職する場合、ジョブ型雇用では複数人の従業員が必要です。
このような場合、メンバーシップ型雇用が適しているでしょう。転勤が多い場合も同様です。ジョブ型雇用のメリットとデメリットを理解したうえで、自社とジョブ型雇用の相性を見極めましょう。
②職場環境の整備
ジョブ型雇用を導入する際、職務範囲を明確化し、業務を遂行できる環境を整える必要もあります。たとえば新たなツールの導入や業務プロセスの見直し、アクセスできるデータ範囲の限定などです。整備は、新たな人材の採用に先だって行わなければなりません。
またジョブ型雇用向けの雇用契約書や職務記述書を作成し、就業規則や社内規程、研修カリキュラムなどを見直す必要もあります。研修では、ジョブ型雇用で採用された従業員のみならず、その従業員を部下に持つ上司に向けた内容も用意しましょう。
③評価制度の見直し
ジョブ型雇用の導入に際しては、評価制度の見直しも行わなければなりません。
ジョブ型雇用では職務の成果や職務の難易度、本人のスキルレベルなどが評価の中心となり、それにともなって報酬が計算されます。よってこのような基準を新たに整備しなければならないのです。
また評価基準に公平性や透明性がなければ、従業員は不満や不安を感じ、モチベーションが下がってしまうでしょう。評価基準の公平性や透明性を高めるには、ジョブ型雇用の評価基準には定量的な指標を設けたうえで、全従業員へ公表する必要があります。

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5.ジョブ型雇用のメリデメをより理解する方法
ジョブ型雇用のメリットデメリットをより理解する方法としてオススメなのは、経営者向けのジョブ型雇用研修やセミナーへの参加です。
このような場では、メリットとデメリットにくわえて採用や労働契約、人材管理や評価、昇給の実践方法やジョブ型雇用への切り替え方、導入事例などが学べます。
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