従業員満足度向上に必要なことは? 3つのメリットと5つの方法

従業員満足度を向上させるには、「動機づけ要因の充足」と「衛生要因の改善」2つ面から働きかける必要があります。

1.従業員満足度の向上とは?

はじめに、従業員満足度という言葉の意味から見ていきましょう。従業員満足度とは、文字通り従業員側の利益に焦点をあてた施策なのでしょうか。

「従業員満足度」の定義とは?

従属員満足度(ES:Employee Satisfaction)とは、従業員が働く際に感じる満足度を測る指標で、高めるとパフォーマンスや生産性の向上につながるのです。

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2.従業員満足度と関係する要因

次に、従業員満足度に関係するさまざまな要因について見ていきます。

従業員満足度に影響する要因

従業員満足度に影響する要因は、「金銭報酬」と「非金銭報酬」に分かれます。

  • 金銭報酬:給与や各種手当に代表される「直接的報酬」と休暇や社内部活動などの「間接的報酬(福利厚生)」
  • 非金銭報酬:スキルアップや自己成長機会などの「技能的報酬」、業務を行う仲間や他部署との連携による「人間関係」、職場環境やオープンな人事制度からなる「環境づくり」、働きがいや自己実現、達成感などの「精神的報酬」など

従業員満足度を低下させてしまう要因

2017年、アメリカの調査会社・ギャラップ社が発表した調査によれば、日本企業の「熱意あふれる社員」の割合はわずか6%。139か国中132位と最低に近いランクだと明らかになっています。従業員満足度の低下には、どのような要因が影響しているのでしょうか。

職場環境・モチベーション・人間関係などには注意

従業員満足度を低下させる要因として分かりやすいものが、次の3つです。

  1. 職場環境:業務上必要な設備が整っていない、空調換気システムが不十分なため、業務上のミスや体調不良が増える
  2. モチベーション:クリエイティブな業務内容を希望するも、ルーティンワークが中心の部署に配属される、オーバーコンプライアンスによる挑戦しづらさがある、年功序列な人事制度による意欲喪失
  3. 人間関係:本音を言いにくい空気がある、同調圧力が強く、上司や同僚が仕事をしている中で休暇を取りにくいなど

労働力人口の減少が叫ばれるなか、労働力の確保は急務の課題です。従業員満足度の低下=人材の流出=経営上の機会損失とも考えられます

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3.従業員満足度を可視化するには?

従業員満足度は、従業員が会社に対してどの程度満足しているかを可視化した指標でもあります。従業員の意識をより具体化するには、アンケートなどによる「従業員満足度調査」が有効です。

従業員満足度調査のポイント

一般的に従業員満足度を把握する際は、アンケートを利用した調査が行われます。アンケート調査を実施する目的は、次の2つです。

  • 従業員は「今、何を、どのように考えているのか」把握する
  • 「今、何が起きているのか」という現状の課題を認識する

従業員満足度調査は、あくまで一過性のものに過ぎません。調査結果にもとづいた施策を実施してもすぐに効果が表れなかったり、新たな問題が生じたりする可能性もあるのです。次項のポイントを踏まえて、計画的かつ継続的な調査を行いましょう。

調査手順

まず、従業員満足度調査全体の流れを確認しましょう。

  • 調査を行う目的を明確にする:正確な状況把握のため、調査の目的を経営層、従業員双方に明示する
  • 目的にあった質問項目を検討する:要点を絞ったシンブルな質問を用意する
  • 調査を実施して、従業員からの回答を集める
  • 回答から得られるデータを分析する
  • 分析結果にもとづいた施策を検討する

ビジネス口調を避けて回答しやすい雰囲気をつくったり、アンケートを無記名方式にしたりして、従業員の具体的な意見を引き出しましょう。

アンケートの構成

調査内容を複雑にしすぎると、調査側・回答者側ともに負担がかかり、状況把握が複雑になります。質問内容は以下6つの観点から構成するとよいでしょう。

  1. 仕事内容
  2. 業務負担
  3. 総合的な評価
  4. その他職場環境
  5. 待遇
  6. 企業風土や戦略など会社全体に対して

また回答は、「満足度」と「重要度」の2つの側面から評価してもらいます。下記は、評価尺度の例です。

  1. 現在の満足度は?(低いから高いまで5段階評価)
  2. 現在の重要度は?(低いから高いまで5段階評価)

アンケートをもとに分析

従業員の本音を回収したら、それらを分析していきましょう。フレームワークを用いて、重要度、満足度の2軸から分析します。「従業員満足度ポートフォリオ分析」では縦軸に満足度、横軸に重要度を置いて、回答を4つに分類するのです。

  1. 満足度、重要度ともに高い場合の強み強化項目:従業員満足度の強みともいえる要因
  2. 満足度が低く、重要度が高い場合の重点改善項目:ニーズが高い一方、実際の満足度は低い要因。従業員満足度向上のために最優先で取り組む必要がある
  3. 満足度、重要度ともに低い場合の改善検討項目:優先順位は高くないものの、改善を検討することが求められている要因
  4. 満足度が高く、重要度が低い場合の現状維持項目:これ以上の改善に取り組んでも効果が期待できない要因。現状維持ができればよい

満足度調査は計画的・定期的に行う

前述のとおり、従業員満足度調査は一過性にすぎず、調査を実施したものの1回の分析と報告で終わってしまう会社も少なくないのです。

従業員満足度調査で大切なのは、結果を踏まえて課題を対処、改善していくこと。そのためにも定期的な調査実施と効果測定を行いましょう。

また次回以降の調査と比較できるよう、管理方法やシステム利用についてもあらかじめ検討しておきます。経営層を巻き込んでアクション力やスピード感を持たせることも効果的です。

従業員満足度の調査は一般的に社内活動として行われますが、外部調査会社に依頼することも可能です。それにより客観性が増し、調査会社が持つノウハウからより具体的な結論を導き出せるでしょう

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4.従業員満足度を向上させるには?

従業員満足度を向上させるための具体的な方法について、見ていきましょう。従業員満足度を上げるアプローチは、大きく分けて2つあります。

  • 動機づけ要因の充足:満足度がプラスに働く要因を充実させる
  • 衛生要因の改善:満足度がマイナスに働く要因を改善する

これらの点をもとにしたポイントを5つ解説しましょう。

  1. 職場環境を整える
  2. 適切な目標設定
  3. スキル・経験に応じた責任ある仕事を与える
  4. 福利厚生の充実
  5. インセンティブの支給

①職場環境を整える

従業員満足度の高い会社は得てして、従業員が働きやすい、モチベーションを維持しやすい職場環境が整っています。以下の観点から自社の職場環境を見直してみましょう。

  • 柔軟な働き方が推奨されているか
  • 福利厚生など働きやすい環境が整っているか
  • 会社の戦略や方向性と従業員の目的が一致しているか
  • 研修やセミナーなど従業員のスキルアップ、キャリアアップをサポートする体制が整っているか

②適切な目標設定

従業員満足度を高めるには、高すぎず低すぎない目標の設定も必要です。目標を具現化して進捗管理、フィードバックを行い、従業員の承認欲求を満たします。

昨今、日本企業には年功序列的な考え方も色濃く残っており、実績に応じた評価がされない点に不満を抱く社員も少なからず存在するのです。

身の丈に合った個人目標や部署課題の設定、目標に対するフィードバック、適正な評価が行われれば従業員のモチベーションが高まり、従業員満足度も向上するでしょう。

③スキル・経験に応じた責任ある仕事を与える

従業員一人ひとりの特性を見極め、スキルや経験に応じて責任のある仕事を与えるのもよいでしょう。責任のある仕事を任された従業員は、上司や会社から認められていると感じます。

転職サイト・dodaが発表した「転職理由ランキング2019」によれば、転職理由の第一位は「ほかにやりたい仕事がある」でした。

スキルや経験、意欲に沿った仕事を与えると、更なるスキルアップやモチベーションアップが期待できるだけでなく、人材の流出も防げるのです。

④福利厚生の充実

福利厚生の充実も、従業員満足度の高低を分ける要因となります。例は、下記のとおりです。

  • 通勤費補助や住宅手当などを拡充させる
  • 食事補助の導入や、スポーツジム、保育所の設置など会社独自の福利厚生を取り入れる
  • 福利厚生サービスのアウトソーシングを行う

せっかく導入しても、実際に使用されなければ意味がありません。従業員が真に求める福利厚生を見極めましょう。

⑤インセンティブの支給

目標に対して正当な評価を行い、それに見合ったインセンティブを支給するのもよいでしょう。

インセンティブの支給対象は、実務や業績に限定しません。なかには定期的にコンテストを開催して、意見を出した従業員にインセンティブを支給する制度を確立した企業も。

努力次第でインセンティブを受け取れる風土ができれば自社の強みとなり、他社との差別化もはかれます。

従業員満足度を向上させる方法は、すぐに実践できるものから経営層の判断が必要なものまで多岐にわたります

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5.従業員満足度の向上がもたらす3つのメリットとは?

従業員満足度が向上すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは社内と社外、それぞれの立場から従業員満足度の向上で得られるメリットを3つ紹介します。

  1. 「やらされている感」がなく、生産性が向上する
  2. 顧客満足度の向上
  3. 優秀な人材の確保・流出防止

①「やらされている感」がなく、生産性が向上する

まずは社内、従業員にとってのメリットを見てみましょう。従業員満足度が高い企業は従業員一人ひとりのモチベーションが高く、積極的に業務を行っている傾向にあります。

当事者意識が強く、自分の仕事が目標達成や報酬に結び付いていると実感しているため「やらされている感」が少ない状態なのです。

「上司から強要されている」「頑張っても成長が見込めない」「出る杭は打たれる風潮にある」そんな会社と比べてどちらの生産性が高いかは、火を見るより明らかです。

②顧客満足度の向上

従業員満足度が高まると、会社への帰属意識が高まり、顧客への対応レベルが上がります。

「これだけの報酬があるならもっと会社に貢献しよう」「従業員の意欲が品質や生産性向上につながる」「自信を持って自社製品やサービスを顧客に提供できる」といった、好循環を生むのです。

厚生労働省の調査では「顧客満足度」と「従業員満足度」の両方を追求すると、業績や生産性の向上、目標達成に対する効果が高くなると分かっています。従業員満足度の向上が、会社全体に大きなメリットをもたらすのです。

③優秀な人材の確保・流出防止

従業員満足度の高い企業には、従業員にとって長く働きたい、自社を周囲にも紹介したいと感じさせる環境が整っており、これには既存人材の確保や流出防止の効果があります。

価値観の多様化や急速なグローバル化など、さまざまな理由による人材確保はどの企業にとっても大きな課題。新規採用活動や離職に伴う引継ぎには多大なコストがかかりますがが、従業員満足度を高めて人材が定着すれば、コストを最小限に抑えられるのです。

従業員満足度を高めると従業員と企業の双方にメリットがもたらされ、「生産性の向上」「顧客満足度の向上」「人材の定着」といった好循環が生まれます

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6.従業員満足度を向上させた企業の事例を紹介

従業員満足度を向上させるには、さまざまな方法があります。ここでは、従業員満足度の向上に成功した企業の事例を紹介しましょう。

ラクーン

ネット上の流通サービスや保証事業を手掛けるラクーンでは、長距離通勤からの脱出をサポートする「近距離通勤支援」を実施して従業員満足度を高めました。これは会社から3キロ以内に住む社員に対して、月2万の住宅補助を支給する制度です。

同社では朝の長距離通勤による疲れが仕事のモチベーション、ワークライフバランスに影響すると考えていました。本制度の導入により従業員は満員電車のストレスから解放され、ワークライフバランスの改善に成功したという事例です。

社長自ら「自分が社長である限り本社を移転しない」と宣言したことも、本制度を成功させた要因といえるでしょう。

ジヤトコ

自動車部品の製造・開発を手掛ける日産自動車グループの部品開発メーカー、ジヤトコでは、会議面積を「参加人数×時間」で算出するユニークな取り組みを導入しました。

制度導入の背景にあったのは、「会議の参加が形骸化している」「会議中にまったく別のことをしている」「ただ座っているだけの参加者がいる」といった課題です。

限られた時間を縫って会議に参加しても、こういった参加者がいてはモチベーションや生産性が下がります。会議面積を削減したところ参加の重要度が上がり、生産性の向上、従業員満足度の向上につながりました。

経営会議のレベルから参加者の議論参加を必須とし、情報提示目的の会議を取りやめたことも、成功を後押ししています。

ユーザーベース

ユーザーベースは「経済情報で、世界をかえる」をミッションに掲げるグローバル企業です。

同社では、従業員一人ひとりが会社の方向性に共感できるよう、バリューを明文化した冊子を作成しました。全社的な行動指針を噛み砕き、イラストを加えて分かりやすくまとめて、共通の価値観を浸透させたのです。

一般的に、会社が拡大するにつれてバリューは浸透しづらくなります。そこで同社はバリューを体現する7つのルールを制定し「DO(すべきこと)」と「DON’T(すべきでないこと)」の線引きを明文化し、行動指針を浸透させ、方向性のズレを削減したのです。

メルカリ

フリマアプリを運営するメルカリにはユニークな福利厚生制度があります。

  • シックリーブ(本人の病気やケガを事由とした休暇を有給休暇とは別に付与する)
  • 副業の推奨
  • 社内自販機の利用が無料
  • 妊活のサポート(所得や年齢の制限なく、不妊治療にかかる費用を一部負担するなど)
  • 産休、育休、介護休業の支援(復職する際は一時金を支給し、安心して出産育児、介護に専念できるような環境を整えて提供する)

これらの制度は、いずれもライフステージのターニングポイントをサポートするべく考えられたものです。この充実した福利厚生が、従業員にとって安心して働ける環境を支えています。

従業員満足度を向上させた企業から学べる点は多々あります。自社で導入を検討する際は、その取り組みが本当に従業員から必要とされているか見直しましょう