激しく移り変わるビジネス環境に対応するため、俊敏に動ける組織作りが求められています。経営層の交代や組織の活性化を目指す企業にとって、効果的なマネジメント手法となるジュニアボード制度。ここではジュニアボード制度の効果と導入事例について詳しく紹介します。
ジュニアボードとは?
ジュニアボード(Junior Board of Directors)とは、若手社員による企業経営の「疑似役員会」のことを指します。
ジュニアボード制度の目的は、「1.若手社員の経営への参画意識を高める 2.組織内の壁を越え、部署を横断したメンバーで活動を行う 3.意思決定を経験させることで後継者を育成する 4.組織を活性化させる 5.社内の課題を認識する」などが挙げられます。
若手社員が経営に接する機会が少ない企業では、若手のやる気を引き出すためにジュニアボード制度を用いています。
ジュニアボード制度の歴史は古く、1930年代にアメリカのマコーミック社で考案された疑似委員会が起源だとされています。マコーミック社では、本来の役員会のほかに、従業員が参加する疑似役員会や各種委員会を設けて、従業員の意見を経営に反映しようとしました。この経営スタイルを「複合経営制(Multiple Management)」と呼び、擬似役員会をジュニアボード(Junior Board of Directors)と称しています。
後継者育成の切り札として注目されるジュニアボード制度
帝国データバンクの「全国『休廃業・解散』動向調査(2015年)」によると、2015年に休廃業・解散を選択した企業のうち76.8%は後継者がいない、または未定の状態でした。このように、後継者不足が原因で自主廃業する企業が増える中、後継者育成の切り札として注目されているのがジュニアボード制度です。
ジュニアボード制度を作る手順は、まず、自薦や他薦によりメンバーを選出し、疑似役員会を結成します。次に、経営に関わる課題を選び、調査と分析などを重ねた上で、結果を経営陣にプレゼンテーションします。提案が経営陣に承認されたら、メンバーは実際にプロジェクトを立ち上げ活動を開始することになります。
ジュニアボード制度の事例
レナウン
レナウンのレポート「“人材開発”のための施策 『レナウン元気塾』」スタート」によると、入社 3 ~10 年前後の若手・中堅社員9 名(男性8名、女性1名)を選抜し、「会社力(商品力&販売力)」を向上させるためのグループワークを重ね、経営層へのプレゼンテーションを実施しました。
ベネフィット・ワン
福利厚生アウトソーシング企業のベネフィット・ワンは、2005年からジュニアボード制度を導入。選抜された約10名の若手社員は、社長直轄で経営課題に取り組んでいます。
日本総合研究所
日本総合研究所では、2004年度よりジュニアボード制度を開始。メンバーは、自薦・他薦で募集し、論文と社長面談によって選抜されました。結果、30代の社員10名が選抜され、その後1年間にわたり活動。2005年4月からは第2期メンバーが 活動を開始しています。
若手社員の意欲を引き出すジュニアボード制度
通常業務は実際に働くことで経験して学べますが、一般社員は、経営は経験することができません。経営センスは勉強だけで学べるものではなく、実体験によって養われるものです。そのため、後継者候補の人材が経営能力を身に付けるには、ジュニアボード制度を早い段階から導入することが大切です。
また、ジュニアボード制度の導入のメリットは、後継者の育成だけではありません。経営上の課題を考え解決策を提案する体験を通じて、社員一人ひとりの意識が高まり、自主的に仕事に取り組む意欲を引き出すことができるのです。