介護保険法とは、介護や支援の必要な人に、費用の一部を給付する制度です。ここでは、介護保険法について解説します。
目次
1.介護保険法とは?
介護保険法とは、介護や支援の必要な人に、介護にかかる費用の一部を給付する制度のこと。
- 40歳以上のすべての人が被保険者となる
- 要介護、要支援認定に応じ、定められた負担割合で介護、支援サービスを利用できる
といった特徴のある介護保険法について、法改正を含めて解説します。
介護保険法の改正について
介護保険法は、2000年に施行され、施行後3年ごとに改正が行われています。平成29年(2017年)の介護保険法改正では、「世代間・世代内の公平性確保」「介護保険制度の持続可能性」などから、高所得層の負担割合が3割に引き上げられました。
また高齢者と障がい児が、同一事業所でさまざまなサービスを受けやすくするため、 介護保険と障害福祉両方の制度に共生型サービスを新たに設けるなど、新たな取り組みも行っています。
2.[平成30年度]介護保険法が改正!そのポイントとは?
平成30年度に行われた介護保険法の改正に関するポイントについて、見ていきます。
- 介護納付金における総報酬割の導入
- 最大3割まで増加した自己負担額
- 福祉用具のレンタル価格の適正化
- 共生型サービスの位置付け
①介護納付金における総報酬割の導入
改正前後で、内容が異なります。
- 改正前…各医療保険者が納付する介護納付金は、医療保険に加入している第2号被保険者の人数で決定していた
- 改正後…介護納付金における総報酬割導入の結果、40~64歳の被保険者負担が収入に応じて設定されることになった
②自己負担額が最大3割まで増加
改正前後で、内容が異なります。
- 改正前…介護サービス利用料の自己負担額は、所得に応じて1割、もしくは2割負担だった
- 改正後…現役並み所得相当である340万円以上といった、特に所得の高い層の負担割合が3割に引き上げられた
また世帯の誰かが市区町村民税を納めている人の自己負担額の上限は、月額44,400円に設定されています。
③福祉用具のレンタル価格が適正化された
改正前までは、福祉用具のレンタル事業者がレンタル価格を自由に決定していました。
しかし介護保険法の改正により、「商品ごとの全国平均の貸与価格を公表する」「商品ごとの貸与価格の上限を設定する」「事業所には機能・価格の異なる複数商品の提示を義務付ける」といった対策を講じることになったのです。
④介護保険と障害福祉制度に共生型サービスが位置付けられた
介護保険法改正前までは、「高齢者は介護保険事業所」「障がい者は、障がい福祉サービス事業所など」にて、サービスの提供を受けていました。
しかし改正後は、「介護保険事業所」「障がい福祉サービス事業所など」が共生型サービス事業所となり、高齢者と障がい者双方へサービスを提供できるようになったのです。
共生型サービスについて
共生型サービスとは、高齢者と障がい者の双方が同一の事業所で必要とするサービスを受けやすくする新たなサービスのこと。
従来、高齢者と障がい者はそれぞれ別の事業所でしかサービスを受けられませんでした。それが共生型サービスにより、同一の事業所で高齢者と障害者双方にサービスを提供できるようになったのです。
3.介護保険法にもとづいた介護保険制度について
介護保険法にもとづいた介護保険制度について、さまざまなポイントを見ていきましょう。
- 介護保険制度の対象となる人
- 介護保険制度の目的
- 介護保険制度の沿革
①介護保険制度の対象となる人
介護保険制度の対象となるのは、40歳になったすべての人。介護保険制度には、「65歳以上の介護保険加入者である第1号被保険者」「40歳〜64歳までの介護保険加入者である第2号被保険者」の2種類があります。
介護保険制度の対象者は、「第2号被保険者は、40歳になる誕生日の前日が含まれる月から被保険者になる」「39歳以下の人が要介護状態になっても、介護保険は利用できない」点に注意してください。
②介護保険制度の目的
介護保険制度の目的は、「要介護者が適切なサービスを受けられる」「社会全体で支え合う」です。介護保険制度は、下記3つを柱としています。
- 被介護者の自立をサポートする「自立支援」
- 被介護者本人が介護サービスを自由に選択し、総合的にサービスを受けられる「利用者本位」
- 保険料に応じサービスや給付金を受ける「社会保険方式」
また基本理念は、「すべての高齢者が人間としての尊厳を保ち、自立した生活を送れる」「地域社会で支え合いながら介護サービスの充実を目指す」です。
③介護保険制度の沿革
介護保険制度は、「介護を必要とする高齢者の急速な増加」「核家族化の進行」「介護により余儀なくされる離職」といった社会問題に対して、「家族負担の軽減」「介護を社会全体で支援する」などを目的に2000年、創設されました。
社会全体で高齢者を支える考え方
介護保険制度は、社会全体で高齢者を支えるという考え方にもとづいているのです。この考え方が生まれた経緯を大まかに分けると、以下のようになります。
- 1980年代、社会的入院や寝たきり老人といった問題からも分かるとおり、介護サービスが十分に提供されていなかった
- 1990年代、高齢化が急速に進み、要介護者の増加や介護期間の長期化が大きな問題になった
- 2000年に施行された介護保険制度により、家族だけに介護を負わせるのではなく、社会全体で高齢者を支える体制が構築された
利用者本位でサービスが選べるように
介護保険制度は、利用者本位でサービスを選べるようにするという考え方にもとづいています。介護保険制度ができる前は、要介護状態の高齢者が受けるサービスを自治体が措置として決定していました。
そのため「本人が受けたいサービスを受けられない」「サービスが個々の利用者に適しておらず、画一的」といった問題があったのです。
介護保険制度では、ケアマネジャーのサポートを受けるケアマネジメントが取り入れられ、利用者本位でサービスを選択できるようになりました。
個人の生活に合った介護保険制度
介護保険制度は、個人の生活に合わせた制度の構築を目指しています。下記のように、要介護者個人の生活に見合った介護が基本となっているのです。
- 要介護状態になっても、利用者が自分に合った介護サービスを選択し、自分らしい生活を送る
- 要介護状態の改善のため、また介護状態の悪化を防ぐために、医療との連携を行う
- 要介護者の身体状況や生活環境に応じ、介護事業者が総合的、効率的にサービスを提供する
4.介護保険制度と保険料について
介護保険制度は、「介護保険料」や「国や市区町村の公費」で賄われています。このうち、介護保険料と支払い方法について、「第1号被保険者」「第2号被保険者」それぞれから解説します。
保険料と支払い方法
介護保険料は、国民が40歳になった月から支払い義務が発生し、その後、一生涯続きます。介護保険料の支払い方法は、第1号被保険者と第2号被保険者で異なるので、注意が必要です。
第1号被保険者の場合
第1号被保険者とは、65歳以上の人のこと。原因を問わず、要介護認定や要支援認定を受ければ、介護サービスを利用できます。
第1号被保険者の場合、介護保険料の支払い方法は、特別徴収(老齢年金・遺族年金・障害年金を年額18万円以上受給している人が対象で、各種年金から介護保険料を自動的に天引きする徴収方法)が基本です。
第2号被保険者の場合
第2号被保険者とは、40 歳から64歳までの年齢で、「健保組合」「全国健康保険協会」「市町村国保」などの医療保険に加入している人のこと。
加齢に伴う特定疾病が原因で認定を受けたときに、介護サービスを受けられます。介護保険料は、医療保険と一体で給与から天引きされるため、特別な手続きは必要ありません。
5.介護保険法で定められている主な介護サービス
介護保険法で定められている介護サービスには、いくつかの種類があります。ここでは、下記4つのケースから解説します。
- 予防給付サービス
- 地域で生活しながら介護を受ける
- 施設に入所して介護を受ける
- 自宅に住みながら介護を受ける
①予防給付サービス
予防給付サービスとは、要支援1~2と認定された場合に受けられるサービスのこと。要支援対象者は、支援によって自立した生活を送れると判定されています。また今以上に、身体機能の低下によって要介護状態に陥ることを防ぐという一面もあります。
②地域生活しながら介護を受ける
地域で生活しながら介護を受ける場合、地域密着型サービスを利用ができます。地域密着型サービスは、2005年に新しく設けられたサービスで、介護が必要になったとき、住み慣れた身近な地域で生活し続けられるよう支援してくれるのです。
利用できるサービスは、原則、住んでいる市区町村のサービスに限定されます。
地域密着型サービス
地域密着型サービスには、次のようなサービスがあります。
- 日常生活上の支援や機能訓練、療養上の世話を行う特定施設入居者生活介護
- 日常生活の自立を助けるための福祉用具貸与
- 入浴や排泄などに使用する福祉用具の購入費7~9割分が支給される、特定福祉用具販売
- 最大20万円の改修費のうち、7~9割が支給される住宅改修
③施設に入所して介護を受ける
介護保険施設には、「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」などがあります。
特徴は、「特別養護老人ホームは主に介護が提供される」「それ以外の介護保険施設では、医学管理下で介護やリハビリ、看護などのサービスが提供される」などです。
④自宅に住みながら介護を受ける
介護や支援を必要とする高齢者が、自宅に住みながら介護サービスを利用するケースもあり、こうした介護サービスを、「居宅サービス」といいます。
通所サービス
通所サービスのタイプは、下記のとおりです。
- 利用者が日中のみ施設に通い、日常生活上の支援、機能訓練、レクリエーションを行う通所介護。デイサービスとも呼ばれる
- 安定した病状の利用者が日中、医療機関や介護老人保健施設などに通うもので、食事の介護や入浴などの日常生活上の支援やリハビリテーションを行う通所リハビリテーションなどがあり、デイケアとも呼ばれる
短期入所サービス
短期入所サービスとは、普段は自宅で生活している高齢者が一定の期間を定めて、「介護老人福祉施設」「介護老人保健施設」「病院」「診療所」などに、短期間だけ入所するサービスのこと。
家族の介護負担軽減を目的として利用される場合が多く、「食事などの介護」「健康管理などの看護」「リハビリ」「入浴」などのサービスが提供されています。
訪問サービス
訪問サービスとは、自宅で暮らす要介護者や要支援者に対し、訪問して行うサービスのこと。以下に挙げるような、さまざまなタイプのサービスがあります。
- 買い物や掃除、食事などの介助を行う訪問介護
- 入浴などを行う訪問入浴介護
- 看護師などが医師の指示にもとづく療養上の世話などを行う訪問看護
- 理学療法士などがリハビリテーションの指導、支援などを行う訪問リハビリサービス
- 医師などが療養上の管理や指導を行う居宅得療養管理指導
6.介護保険法における要介護認定について
介護保険法に定められている介護サービスを受けるためには、要介護認定を受ける必要があるのです。ここでは、要介護認定について、下記2つから解説します。
- 認定を受けるまで
- 要介護認定の目的
①認定を受けるまで
要介護認定を受けるには、いくつかのステップを踏む必要があります。
- 要介護認定の申請
- 全国共通の認定調査書による訪問調査
- コンピューターによる一次判定
- 一次判定結果をもとにした保険・医療・福祉の専門家による介護認定審査会が実施する二次審査
- 市区町村への判定結果の通知
- 要介護認定後、各市区町村指定の事業者の介護支援専門家が介護サービス計画書を作成
以上のステップを経て、サービスを受けられるのです。
②要介護認定の目的
要介護認定の目的は、介護保険の利用者一人ひとりが、自身の要介護度に応じて適切なサービスを受けられるようにすること。
そのため、「全国共通の認定調査書を使用した訪問調査による一次判定」「介護などの専門家による介護認定審査会が実施する二次審査」によって、保険者となる各市区町村が要介護判定を行うのです。
要介護認定は、「第1号被保険者」「第2号被保険者の中で特定疾病に該当する人」が受けられます。