介護保険料とは、介護保険制度の財源となる保険料のことです。ここでは介護保険料について、詳しく解説します。
1.介護保険料とは?
介護保険料とは、介護保険制度の財源となる保険料のこと。介護保険サービスを利用する際、利用者は所得に応じて1~3割の自己負担金を支払います。さて残りの割合はどうなるのでしょうか。それは介護保険料や公金で賄われているのです。
介護保険は、介護保険料・公金で賄われています。
2.介護保険料の計算
介護保険料の計算は、「第1号被保険者(65歳以上)」「第2号被保険者(40~64歳)」でそれぞれ算出方法が異なります。また同じ第2号被保険者でも、加入している医療保険によって異なる方法で算出されます。
第1号被保険者(65歳以上)の場合
第1号被保険者(65歳以上)の介護保険料は、「自治体ごとに計算される基準額」「本人と世帯の所得状況」をもとに決定します。
自治体ごとに計算される基準額とは、自治体の介護給付に必要な費用のなかで65歳以上の負担分を、その自治体に住む65歳以上の人数で割った金額です。所得が多いほどより多く介護保険料を納めることになります。
第2号被保険者(40~64歳)の場合
第2号被保険者(40~64歳)の介護保険料は、加入している医療保険によって異なります。例として「国民健康保険加入者」「そのほかの医療保険加入者」では、介護保険料の算定方法が異なるのです。
ここではそれぞれのケースでどのように介護保険料を算出していくのか、その方法について解説します。
国民健康保険加入者の場合
国民健康保険加入者の場合、40~64歳の第2号被保険者を対象とした医療保険になります。計算方法は加入している医療保険によって変わり、国民健康保険の場合、「所得割額」「均等割額」「平等割額」「資産割額」4つの項目をもとに算出されるのです。
所得割額とは?
所得割額とは、被保険者本人と世帯における前年の所得額に応じて決定される金額のこと。金額は、前年中の総所得金額などから控除額の33万円を差し引いた算定基礎所得金額に、介護保険料率を乗じて算出します。
均等割額とは?
均等割額とは、世帯における国民健康保険の被保険者数によって均等に負担する金額のこと。均等額割では所得とは無関係に、均等に保険料を負担します。負担金額は各自治体によって異なる点に、注意しましょう。
平等割額とは?
平等割額とは、国民健康保険に加入する全世帯が平等に負担するよう1世帯当たりの金額として算出される金額のこと。金額の決定に所得額は考慮されません。同じ国民健康保険加入者なら、同じ金額を負担する状況になります。
資産割額とは?
資産割額とは、世帯の資産すなわち固定資産の価値に応じて算定する負担金額のこと。金額は、「固定資産税×資産割率」で求めます。資産額割は、固定資産を保有して固定資産税を支払っている場合にのみ、負担するのです。
そのほかの医療保険加入者の場合
そのほかの医療保険加入者の例として、40~64歳の第2号被保険者のうち、会社経由で協会けんぽなどの健康保険に加入しているケースが挙げられます。
1ヵ月当たりの介護保険料は、「(標準報酬月額+標準賞与額)×介護保険料率」で計算します。準報酬月額とは、税金引前の給与額である報酬月額を健康保険が規定している段階ごとに区分した、金額です。
3.介護保険料の所得段階区分は16段階
介護保険料の所得段階区分は、1~16段階に分かれて設定されています。ここでは参考値として東京都渋谷区の例を挙げながら、介護保険料の所得段階区分の1~16段階までの対象者の条件について、それぞれ詳しく解説します。
所得段階が「第1段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第1段階」となります。
- 生活保護受給者、老齢福祉年金受給者で世帯全員が住民税非課税
- 世帯全員が住民税非課税
- 課税年金収入額と合計所得金額の合計が80万円以下
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×0.375」「年間保険料額は2万6,900円」となっています。
所得段階が「第2段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第2段階」となります。
- 本人が住民税非課税で世帯に住民税課税者がいる
- 課税年金収入額と合計所得金額の合計が80万円以下
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×0.70」「年間保険料額は5万100円」となっています。
所得段階が「第3段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第3段階」となります。
- 世帯全員が住民税非課税
- 課税年金収入額と合計所得金額の合計が120万円超
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×0.495」「年間保険料額は3万5,500円」となっています。
所得段階が「第4段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第4段階」となります。
- 本人が住民税非課税で世帯に住民税課税者がいる
- 課税年金収入額と合計所得金額の合計が80万円以下
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×0.70」「年間保険料額は5万100円」となっています。
所得段階が「第5段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第5段階」となります。
- 本人が住民税非課税で世帯に住民税課税者がいる
- 課税年金収入額と合計所得金額の合計が80万円超
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×0.80」「年間保険料額は5万7,200円」となっています。
所得段階が「第6段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第6段階」となります。
- 本人が住民税課税
- 合計所得金額が125万円未満
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×1.06」「年間保険料額は7万5,800円」となっています。
所得段階が「第7段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第7段階」となります。
- 本人が住民税課税
- 合計所得金額が125万円以上250万円未満
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×1.60」「年間保険料額は11万4,400円」となっています。
所得段階が「第8段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第8段階」となります。
- 本人が住民税課税
- 合計所得金額が250万円以上375万円未満
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×1.60」「年間保険料額は11万4,400円」となっています。
所得段階が「第9段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第9段階」となります。
- 本人が住民税課税
- 合計所得金額が375万円以上500万円未満
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×1.70」「年間保険料額は12万1,600円」となっています。
所得段階が「第10段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第10段階」となります。
- 本人が住民税課税
- 合計所得金額が500万円以上750万円未満
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×1.95」「年間保険料額は13万9,500円」となっています。
所得段階が「第11段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第11段階」となります。
- 本人が住民税課税
- 合計所得金額が750万円以上1,000万円未満
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×2.10」「年間保険料額は15万200円」となっています。
所得段階が「第12段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第12段階」となります。
- 本人が住民税課税
- 合計所得金額が1,000万円以上1,500万円未満
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×2.50」「年間保険料額は17万8,800円」となっています。
所得段階が「第13段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第13段階」となります。
- 本人が住民税課税
- 合計所得金額が1,500万円以上2,500万円未満
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万71,520円)×2.80」「年間保険料額は20万300円」となっています。
所得段階が「第14段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第14段階」となります。
- 本人が住民税課税
- 合計所得金額が2,500万円以上5,000万円未満
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×3.30」「年間保険料額は23万6,000円」となっています。
所得段階が「第15段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第15段階」となります。
- 本人が住民税課税
- 合計所得金額が5,000万円以上1億円未満
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×4.00」「年間保険料額は28万6,100円」となっています。
所得段階が「第16段階」の人
以下の条件に当てはまる人は、所得段階が「第16段階」となります。
- 本人が住民税課税
- 合計所得金額が1億円以上
年間保険料などは、「負担割合(基準額:7万1,520円)×6.00」「年間保険料額は42万9,100円」となっています。
4.介護保険料の支払い方法
介護保険料の支払い方法は、被保険者の年齢や加入している医療保険によって異なります。ここでは、下記2つそれぞれの支払い方法について解説しましょう。
- 第1号被保険者(65歳以上)
- 第2号被保険者(40歳~64歳の方)
①第1号被保険者(65歳以上)の支払い方法
第1号被保険者(65歳以上)場合は原則、年金からの天引きとなります。しかし年金額が年18万円に満たない場合、納入書で支払う方法になるのです。
65歳以上の方(第1号被保険者)の保険料
65歳以上の第1号被保険者の保険料は、住んでいる市区町村で必要な介護保険のサービス費用などを用いて算出された基準額をもとに、それぞれの所得に応じて決定します。
ただし市区町村によって、「必要とされる介護保険サービスの量」「65歳以上の第1号被保険者の人数」が異なるため、基準額も市区町村で異なるのです。
②第2号被保険者(40歳~64歳の方)の支払い方法
第2号被保険者(40歳~64歳の方)の場合、健康保険の支払いとともに介護保険料も合算されます。そのため特別に支払いについて気に掛ける必要はありません。
40歳から64歳までの方(第2号被保険者)の保険料
40歳から64歳までの第2号被保険者の保険料は、被保険者の加入する医療保険が設定する算定方法によって決まります。ただし実際の算定方法は、個々の医療保険で異なるのです。自分の加入している医療保険があったら、算定方法を確認しておきましょう。
保険料の納付が困難な場合
介護保険料の支払いが困難な場合、そのまま放置しないようにしてください。すぐに住んでいる地域を管轄する市区町村の介護保険担当窓口に相談しましょう。具体的な支払い方法について相談に乗ってくれます。
5.介護保険料の支払開始時期
介護保険料の支払開始時期についても、介護保険法で定められているのです。ここでは下記2つについて、それぞれのポイントを解説します。
- 年齢到達による資格取得
- すでに65歳以上の方で転入による資格取得
①年齢到達による資格取得
年齢到達による資格取得の時期は、65歳誕生日の前日です。第1号被保険者の保険料は、資格取得月から支払うと定められています。
資格取得日が令和2年4月30日(誕生日の前日)の場合、介護保険料徴収対象月は令和2年4月となるので、令和2年4月分から徴収されるのです。
②すでに65歳以上の方で転入による資格取得の場合
すでに65歳以上の方で転入による資格取得の時期は、転入日当日です。この場合、資格取得月から支払うと定められています。資格取得日が転入日当日である令和2年4月1日だった場合、介護保険料徴収対象月である令和2年4月分から徴収されるのです。
6.介護保険料を滞納すると介護サービスが受けられない
介護保険料を滞納すると介護サービスが受けられなくなってしまうのです。ここでは、介護保険料に関する納付期限や滞納ペナルティについて解説します。
介護保険料には納付期限と滞納ペナルティがある
保険料を1年以上滞納している場合、通常なら1~3割負担で介護サービスが受けられるところを、いったん全額となる10割を支払う状況になります。
もし滞納分を納付した場合、市区町村の介護保険窓口に領収書を提出し、返還申請を行うと、支払った料金のうち7~9割が返還されるのです。
【ペナルティ】滞納金を日割で計算する
介護保険料を滞納した場合、「滞納期間に応じた延滞金」「督促手数料」を請求されます。滞納期間に応じた延滞金は、日割りで計算されるので覚えておきましょう。また以下のような点に注意してください。
- 延滞金は年々増加している
- 滞納期間が長くなれば、延滞金も高くなる
【ペナルティ】保険料を1年以上滞納している場合
保険料を1年以上滞納している場合、通常なら1~3割負担で介護サービスが受けられるところを、いったん全額となる10割を支払います。しかし納付して市区町村の介護保険窓口に領収書を提出し、返還申請を行うと支払った料金のうち7~9割が返還されるのです。
【ペナルティ】保険料を1年半以上滞納した場合
保険料を1年半以上滞納した場合も、いったん全額となる10割を支払います。しかし滞納期間が1年半以上になると、返還請求をしてもお金は返ってきません。差し止められた介護保険給付額は、介護保険料として滞納分に充当されるのです。
【ペナルティ】保険料を2年以上滞納した場合
保険料を2年以上滞納した場合、「2年を超えた分は以後、追納できない」「追納できなかった部分は未納として確定」「自己負担割合が、3~4割に引き上げられる」「高額介護サービス費の払い戻しも受けられなくなる」などのペナルティが科せられます。
このような事態に陥らないためにも、期限までに納付しましょう。