会計とは? 経理・財務・簿記との違い、仕事内容や流れを簡単に

会計は、企業や公的機関の経済活動を数値化し、整理・記録後、利害関係者に報告する業務です。会計結果は、経営者が事業計画や経営戦略を立てたり、投資家がその会社に投資するかどうかを決めたりする際に非常に重要です。

また、「会計」という言葉は経理や財務、簿記とよく混同されますが、これらは異なる意味を持っています。

そこでこの記事では、会計の基本的な意味や、経理・財務・簿記とどう違うのか、また会計業務がどのように進められるのかをわかりやすく説明します。会計ソフトを使うことのメリットや、仕事を効率化するコツも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1.会計とは?

会計とは、企業や公的機関などがどのようにお金を使っているかを数字で示し、その情報を整理・記録し、利害関係者など必要な人々に報告する業務のこと。会計の主な目的は、すべての金銭的な動きを正しく記録して報告することで、企業の透明性と責任を確保することです。

これによって、経営者や投資家、政府機関などが企業の健全性や効率を評価できるようになります。また、この会計情報は、新しい経営計画を立てたり、資源をどこにどう使うかを決めたり、リスクを管理したりする際にも利用されます。

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2.会計業務の種類

企業などが行う会計業務には3つの種類に分類されます。ここでは、各会計業務の種類とその主な役割について解説します。

  1. 財務会計
  2. 税務会計
  3. 管理会計

①財務会計

財務会計は、企業の財政状態や業績を外部の利害関係者に報告するための会計です。財務会計の目的は、透明性を保ち、信頼できる情報を提供することにあります。

公開された財務情報をもとに、投資家や銀行、取引先などが企業の経済状況を評価し、投資や融資の決定を行います。財務会計は、法令にもとづく規則に従い、企業の活動内容を財務諸表に整理し、有価証券報告書や投資関連情報を通じて情報を提供します。

②税務会計

税務会計は、企業が支払うべき税金を計算、申告し、支払うプロセスを管理する会計です。この業務は財務会計のデータを利用するものの、税法にもとづいた特定の調整を行う点で異なります。

たとえば、資産の使用状況にもとづく減価償却などがあります。財務会計では、企業の具体的な資産利用状況を反映するため、使用状況に応じた耐用年数で減価償却を行います。

しかし、この方法では企業によって同一の資産に対して異なる耐用年数を設定することがあり、税務上の公平性が損なわれることがあります。このため、税務会計では法令で規定された統一された耐用年数をもとに減価償却を再計算します。

③管理会計

管理会計は、経営層に会社の状況を理解し、適切な判断を下すための情報を提供するための会計です。主に、予算の設定、業績評価、コスト管理、経営戦略の立案に役立てられ、企業の収益向上を支援します。

管理会計は社内用で、財務会計が提供する外部向けの公式報告書とは異なり、特定の法的な規制は伴わず、会社ごとにカスタマイズされた情報を社内で使用します。

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3.会計と経理・財務・簿記との違い

会計と混同されやすい用語に、「経理」「財務」「簿記」があります。ここでは、日常的な例や比較を通じて、それぞれの意味や違いについて詳しくご紹介します。

会計と経理の違い

会計は企業の経済活動全般のお金の流れを記録、分析し、報告する役割があります。これを家庭で例えるなら、家計簿をつけて年間の収支をまとめ、どこにどれだけお金が使われているかを把握し、将来の計画を立てるようなものです。

これに対し経理は、企業の日々のお金の流れや取引の詳細を管理する仕事です。家庭で言えば、毎日の出費を記録し、領収書を整理し、支払いを管理することに相当します。

経理は「経営管理」を指す略語であり、具体的な業務には、伝票や請求書の作成、入出金の管理、各種帳簿への記入、固定資産の台帳管理、経営関連の資料作成などがあります。

経理担当者によって作成された帳簿をもとに、会計担当者が財務会計や管理会計に不可欠な決算書を作成します。そのため、経理は、会計の報告のために必要な帳簿や資料を整理する仕事と考えるとわかりやすいでしょう。

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会計と財務の違い

会計が全ての金銭的な活動を記録し、財務諸表を作成して組織の財務状態を報告するのに対し、財務は会計情報をもとに具体的な資金調達や投資の決定を行います

これを個人でたとえるなら、会計が家計簿で収支を確認すること、財務はその情報をもとにして住宅ローンを組むか、車を購入するかといった具体的な資金計画を立てることです。

具体的には、経理が作成した貸借対照表や損益計算書を使って、長期間の資金計画を立て、資金の確保と管理をします。また、銀行との交渉も財務の重要な業務の一つです。

会計と簿記の違い

簿記は会計の一部であり、「帳簿記入」という日々の取引を適切な勘定科目に分類し、帳簿に記録する作業を指します

これは、レシートや支払いの詳細を家計簿に記録する行為に似ています。簿記は、すべての財務取引を正確に追跡し、記録するもので、会計の基盤となります。

一方で会計は、この簿記データを利用して企業の財務状況を分析し、財務諸表を作成し、企業の経営成績を評価し、これを外部の利害関係者に報告します。

家庭での例でいうと、年末に一年間の家計簿をもとに貯蓄の増減を分析し、将来の財政計画を考えることに相当します。

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4. 会計業務の流れ

会計業務の流れは日々の基本的な作業から年末の大規模な処理までさまざまです。ここでは、日次、月次、年次の会計業務について具体的に解説します。

日次の会計業務

日次の会計業務は、現金の出納、売上の記録、支払いの管理など、毎日行う基本的な会計処理です。日次の会計作業は、具体的には次のようなものがあります。

  • 受け取った請求書や領収書の処理
  • 販売やサービスの提供による収入の記帳
  • 売上および仕入れのデータ入力
  • 現金出納帳の更新
  • 未払い金額処理
  • 立替経費の精算

日々の会計業務の段階で正確な記録を行うことが、月次、年次の会計処理の正確性に直結します。

月次の会計業務

月次の会計業務は、その月に発生したすべての経済活動をまとめて、月末に月次決算書(財務諸表や資金繰り表等)を作成する業務です。月次会計業務で行われる主な作業には、以下があります。

  • 取引先への請求書の作成と送付
  • 売上や費用の集計
  • 仕入れや諸経費の支払い処理
  • 従業員の給与の計算と支払い
  • 月次決算書の作成

月次の会計業務は、企業の短期的な財務状態を把握するうえで重要であり、このデータをもとに経営判断が行われることも多いです。

年次の会計業務

年次会計業務は、会計年度の終わりに行われ、1年間のすべての取引をまとめて年次の財務報告書などを作成します。年次会計業務には、具体的に次のような業務を行います。

  • 決算調整のための仕訳入力
  • 決算報告書の作成
  • 減価償却費の計上
  • 未収入収益などの経過勘定処理
  • 法人税および消費税の算出
  • 確定申告書の準備

決算日から2か月以内には、決算を完了させて税務申告を行い、必要な税金を納付する必要があります。

また、決算と申告が完了しても、会計業務はそこで終わりではありません。そのあとは、領収書や請求書を整理し、次の会計年度の準備として帳簿の繰越作業を行います。そして新たな会計年度においても、日々の取引を積み重ねていくのが会計業務の流れになります。

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5.会計業務のポイント

会計業務の正しい管理は、企業の財務透明性と信頼性を維持する上でも重要です。ここでは、会計業務を適切に進めるための重要なポイントを紹介します。

会計処理をルールに従い正確に実施する

会計処理は、すべての金銭取引をきちんと記録して、間違いがないようにすることが大切です。これにより、信頼できる財務報告ができ、投資家や他の関係者に対して透明性を保つことができます。

故意に財務諸表を歪曲する「不正会計」は、企業の信頼を損ない、法的な問題を引き起こすこともあります。そのため、会計業務では常に高い倫理観を持ち、国内外の会計基準や法規に従い、透明性を確保することが不可欠です。

書類は適切に保管する

会計業務を行うために必要な書類として、請求書、領収書、契約書、税関連文書などがあります。これらの文書を適切に保管することで、必要な時にすぐにアクセスできるだけでなく、監査や法的調査があったときもすぐに対応できます。

また、帳簿書類は保存期間が定められています。例えば、青色申告の場合は、下記となります。

出典:国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告

保存期間を守って、適切に書類を管理することが重要です。

会計業務を効率化する

会計業務を効率的に行うことで、時間と労力を節約できます。手作業で行っている反復的なタスクを自動化することで、人的ミスを減らすことにもつながります。

会計ソフトを使用することで、日常の会計処理を簡素化し、データの即時アクセスや迅速な報告が可能になります。

また、データの一元管理により、月末や年末の決算処理もスムーズに進みます。会計業務を効率化することで、業務担当者はより重要な業務に集中でき、生産性が向上します。

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6.会計業務の注意点

会計業務は正確性が求められるため、特有の課題と注意点があります。ここでは、会計業務における主な注意点や対処法を紹介します。

属人化しやすい

会計業務は専門的な知識と経験が必要なため、特定の担当者に依存しやすい傾向があります。会計業務の属人化は、その担当者が不在の際に業務が滞る原因となり得ます。

このような状況を防ぐためには、業務の手順を明確にすること、適切な研修と知識の共有、会計ソフトの導入などが効果的です。

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心理的負担により作業遅延が発生する

会計業務では小さなミスも許されないため、担当者には大きなストレスがかかることがあります。慎重に業務を行うため、作業の遅延につながることもあります。

この問題を解消するには、作業を自動化したり、負担を分散させたりすることが有効です。また、定期的な休息と心理的サポートも大切です。

法改正への対応が必要

会計基準や税法は定期的に改正されるため、常に最新の法律に従って業務を行う必要があります。法改正への対応を怠ると、法的な問題や罰則のリスクが生じます。これに対処するためには、常に最新の情報をチェックし、適宜研修を受けることが重要です。

また、専門の法律顧問を雇うのも一つの手段となります。

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7.会計ソフトとは?

会計ソフトは、企業の会計業務をスムーズかつ正確に行うために開発されたツールです。日々の会計処理から決算報告まで、幅広い会計作業がサポートされます。

会計ソフトの機能とできること

会計ソフトには、以下のような便利な機能があります。

  • 取引データの自動取り込みと自動仕訳
  • 財務報告の自動生成
  • 税務申告の支援
  • 予算管理と経営分析

ここからは、それぞれの機能の詳細や、会計業務にどのように役立つかを説明します。

取引データの自動取り込みと自動仕訳

会計ソフトは、銀行口座、クレジットカード、電子決済サービスなどの取引データを自動で取り込んで、適切な会計項目に分類して記録してくれます。たとえば、入金があれば「売上高」として、支出があれば「経費」として自動的に記録されます。

自動化により、経理担当者は毎回の取引を手動で入力する手間が省け、仕訳の正確性を保ちつつ、複雑な会計知識がなくても効率的に業務を進められます。

財務報告の自動生成

必要な財務報告書(たとえば、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など)を自動で作成し、いつでも最新の財務状況を確認できるようになります。

税務申告の支援

会計ソフトは、法人税、消費税、所得税などの税務申告に必要な計算を自動で行い、申告書の作成をサポートします。

過去の申告データを保存し、次回の申告時に以前のデータを参照できるため、正確性を保ちながら、迅速かつ簡単に毎年の税務処理を行えるようになります。

また、正確に計算された税額をもとに、税務申告に必要なフォームを自動で生成します。その結果、複雑な申告書の作成にかかる時間と労力が削減されます。

さらに、多くの会計ソフトは電子申告(e-Tax)にも対応しているため、オンラインで直接税務当局に提出することが可能です。

予算管理と経営分析

会計ソフトを利用することで、企業の予算計画を簡単に設定し管理できます。予定された予算と実際の支出を比較し、予算に沿って支出が行われているかリアルタイムでチェックできます。

予算超過が発生した場合、即座に対応策を講じることが可能となり、財務の健全性を保つ助けとなります。

会計ソフトを導入するメリット

会計ソフトを導入することで、以下のようなメリットがあります。

会計業務の自動化による効率化

会計ソフトを使用する一番のメリットは、会計業務を自動で行えること。自動化により、日々の取引の記録から決算の準備までの工程が早くなり、手間が大幅に削減されます。とくに繁忙期には、会計担当者の作業負担を減らし、ほかの業務にも集中できるようになります。

リアルタイムでの情報共有

最新の会計ソフトは、多くがクラウドベースであり、どこからでもアクセス可能です。そのため、会社の担当者や経営者がリアルタイムで財務データを確認でき、迅速な意思決定が可能となります。

また、税理士や顧問との情報共有もスムーズになり、より効率的なコミュニケーションが行えるようになります。

人的ミスの減少

会計ソフトは取引を自動で正しい科目に振り分けるため、手入力時のミスや計算間違いが大きく減ります。これにより、財務報告の正確性が高まり、外部の監査時にも信頼できるデータを提供できます。さらに、会計担当者のストレスも軽減されます。