解雇予告とは? 手続きや注意点、手当の計算法をわかりやすく

解雇予告とは、従業員を即時解雇せず、あらかじめ解雇日を伝える手続きのこと。本記事では、解雇予告と即時解雇との違いや解雇予告が必要ないケース、解雇予告手当などについて解説します。

1.解雇予告とは?

解雇予告とは、従業員を即時解雇せず、あらかじめ解雇日を伝える手続きのことです。労働基準法では、原則として解雇予告を解雇する最低30日前までに行うよう規定されており、通常は、解雇日や理由を記載した解雇予告通知書を交付することになっています。

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30日前の日数の数え方

解雇予告を行う30日前は、解雇日の前日から数えて計算します。

たとえば、9月30日に解雇する場合、8月31日までに解雇予告が必要です。30日前までに解雇予告がない場合、解雇予告手当の支払いが発生し、その金額は遅れた日数に応じて決められます。

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2.解雇予告と即時解雇との違い

解雇予告と即時解雇の大きな違いは、解雇通告が必要かどうかです。

即時解雇は、解雇を言い渡したその日に雇用関係が終了する解雇方法で、解雇通告がなくても解雇ができるようになっています。普通解雇や懲戒解雇、整理解雇のいずれにおいても即日解雇が可能です。

支払い義務の違い

即日解雇の場合、解雇予告手当として該当従業員の平均賃金30日分を支払う必要があります。ただし解雇日の30日以上前に解雇予告をしている場合は解雇予告手当の支払義務がありません

申請義務の違い

解雇予告なしで解雇する即日解雇を適用する場合、労働基準監督署に解雇予告除外認定申請を必ず行う必要があります。ただし解雇日の30日以上前に解雇予告をした、あるいは、解雇予告の日数に応じて正しく解雇予告手当を支払う場合、解雇予告除外認定申請は不要です。

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3.解雇予告が必要ないケース

次に、例外的に解雇予告が必要ないケースについて解説します。

解雇予告の適用除外(労働基準法21条)

労働基準法21条では、以下の就労形態にある従業員を解雇予告の適用除外と定めています。

  • 日雇いの従業員
  • 雇用期間が2か月以内の従業員
  • 季節業務に従事し、雇用期間が4か月以内の従業員
  • 試用期間中の従業員

解雇予告除外認定を受けた場合

必要書類をそろえて労働基準監督署に申請し、解雇予告除外認定を受けた場合、解雇予告なしで即日解雇できるうえ、解雇予告手当の支払いも不要です。

解雇予告除外認定の申請を行ってから、認定または不認定の結果が分かるまで、1~2週間ほどの時間を要し、その間に労基基準監督署による聞き取り調査などが行われます。

やむを得ない事由による除外

解雇予告の適用除外事由があり、天災などで事業の継続が不可能となった場合は、解雇予告の適用除外と定められています。

たとえば地震や火災による全壊や、大震災からの復旧に資金や時間を要する場合が該当します。経営の存続に向けた取り組みを実施しても、事業の継続が困難であるかどうかが判断基準となります。

従業員の責任による除外

従業員に重大な帰責性(責められるべき理由や落ち度)がある場合、労働基準監督署の認定を受けられれば、解雇通告は不要です。

「重大な帰責性」の行政解釈は、昭和23年11月11日基発第1637号と昭和31年3月1日基発第111号を基準として、以下のとおりだと定められています。

  • 窃盗、横領、傷害など刑法に該当する行為があった
  • 賭博など職場の風紀や規律を乱す行為があった
  • 採用条件に係る経歴詐称があった
  • ほかの事業へ転職した
  • 正当な理由なく2週間以上の無断欠勤が続き、出勤を命じても応じない
  • 複数回注意しても欠勤や遅刻が改善されない

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4.解雇予告手当とは?

解雇予告手当とは、解雇予告なしで従業員を解雇する際、会社が支払う義務のある手当のこと。解雇予告期間が30日未満の場合、不足する日数分の平均賃金が手当として支給されます。

計算方法

解雇予告手当の計算方法は、平均賃金に予告期間が30日に足りなかった日数をかけることで求められ、計算式は「解雇予告手当= 1日の平均賃金×(30-解雇予告日から解雇日までの日数)」です。

たとえば、1日の平均賃金が1万5,000円、解雇日の15日前に解雇予告をした場合、「1万5,000×(30-15)=18万円」となります。

平均賃金の求め方

1日の平均賃金は、通告日の前日、あるいは賃金締切日から遡った3か月の賃金総額を、その期間の総日数(暦日数)で割って算出します。計算式は「平均賃金=3か月の賃金総額(通勤手当含む)÷期間中の暦日数」で、1銭未満は切捨てです。

たとえば、月末締めで7月5日に解雇する場合、以下で算出した総日数「91日」と総給与額「76万円」を計算に用います。

  • 4月1日から4月30日(30日)/給与25万円
  • 5月1日から5月31日(31日)/給与24万円
  • 6月1日から6月30日(30日)/給与27万円

つまり、「平均賃金=76万円÷91日=8,681円」となります。

除外される期間と賃金

基本的に平均賃金は、通告日の前日、あるいは賃金締切日から遡った3か月の賃金総額を、その期間の総日数(暦日数)で割って算出するものの、雇用形態別によって平均賃金の計算方法が少し異なります。

一定の条件を満たす場合、除外される期間や除外される賃金があります。除外される期間は、以下のとおりです。

  • 傷病、産前産後、育児による休業期間
  • 業績悪化など会社都合による休業期間
  • 試用期間

また、除外される賃金は、以下のとおりです。

  • 私傷病手当や退職金など臨時に支払われた賃金
  • ボーナスなど3か月を超えて定期的に支払われる賃金
  • 通貨以外のもので支払われた賃金(法令、労働協約、労使協定で認めていない現物支給など)

最低保障額

平均賃金については、最低保障額が定められています。なぜなら時給制により労働時間が少ない場合、1日あたりの平均賃金が極端に少なくなる可能性があるためです。

平均賃金の最低保証額の計算額は、「解雇予告日の直前3か月間の賃金の総額÷解雇予告日の直前の3ヵ月間の勤務日数×0.6」で算出されます。

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5.解雇予告通知書とは?

解雇予告通知書とは、解雇年月日と解雇事由とともに、解雇の意思を示す書面のこと。法的には解雇予告を書面で行う必要はありません。しかし、トラブルを避けるために解雇予告と同時に交付するのが一般的です。

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6.従業員の解雇に必要な手続き

解雇を行う場合は、法的に定められた手順通りに進める必要があります。主な手順は、以下の7つ。

  1. 手順1:退職勧奨
  2. 手順2:解雇要件を満たすかを検討
  3. 手順3:解雇理由をまとめた書面を作成
  4. 手順4:解雇予告通知書を作成
  5. 手順5:解雇予告を告知
  6. 手順6:解雇予告通知書の交付
  7. 手順7:解雇予告手当の支払い

①手順1:退職勧奨

まずは、退職勧奨です。注意や指導なしに直ちに解雇すると不当解雇になり得るため、改善の機会を与える必要があります。状況が改善されない場合は、自主的に退職するように促す退職勧奨を実施。なお退職勧奨による退職は会社都合退職となります。

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②手順2:解雇要件を満たすかを検討

次は、解雇要件を満たすかどうかの検討です。解雇要件を満たさない解雇は不当解雇になりかねないため注意が必要だと言えます。解雇に至る前に要件を満たしているか、慎重に検討しなければいけません。

③手順3:解雇理由をまとめた書面を作成

続いては、解雇理由をまとめた書面の作成です。

解雇の要件を満たすかどうかが問題となる可能性があるため、解雇理由をまとめた書面を作成します。従業員からの質問に対して誠実に回答し、解雇を円滑に進めるための解雇理由を整理しておくと今後に役立ちます。

④手順4:解雇予告通知書を作成

次は、解雇予告通知書の作成。形式や書き方は法律で定められておらず、必要事項が記載されていれば解雇予告通知書として認められます。記載すべき必要事項は、以下のとおりです。

  • 日付
  • 解雇する従業員氏名
  • 会社名や代表者氏名
  • 解雇する日
  • 解雇する理由

⑤手順5:解雇予告を告知

続いて、解雇予告を告知します。従業員を解雇する場合、解雇予告は少なくとも30日前に従業員に伝えなければいけません。解雇の意思を明確にする際は書面による通知が望まれ、トラブルを回避する効果があります。

⑥手順6:解雇予告通知書の交付

その後は、解雇予告通知書の交付。

解雇通知を有効とさせるために、解雇予告通知書は必ず従業員の手元に届ける必要があります。手渡したと証明するために、受領証を作成したり押印してもらったりして、確実な証拠を残すことが重要です。

郵送する場合

手渡し困難な場合や面談後に解雇通知書の署名を得られない場合は、解雇予告通知書を郵送することが考えられます。

郵送の場合は、普通郵便ではなく、配達証明付きの内容証明郵便を使用し、受取り拒否や内容の異議申し立てのリスクを回避しましょう。

メール等で送信する場合

メール等で送信して解雇予告通知書を交付する方法もあり、PDFデータを添付するのが一般的となっています。

ただしメールは、迷惑フォルダに振りわけられたり従業員が確認していなかったりする可能性もあるなど受信確認が難しいため、クラウドを利用して解雇予告通知書を送り、受領の電子署名を得る方法も活用されています。

⑦手順7:解雇予告手当の支払い

最後は、解雇予告手当の支払いです。

解雇予告手当の支払いがある場合は、解雇の申し渡しと同時に行うため、解雇を言い渡す日に支払うことになります。支払いが遅れると従業員とのトラブルが生じ、不当解雇の問題に発展する可能性があるため、慎重に対応してください。

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7.解雇予告ができないケース

労働基準法19条にて、従業員を解雇できない時期である「解雇制限」が定められており、原則この期間は解雇予告を行えません。

休養における解雇制限

従業員が業務上負傷または病気で休業する期間、およびその後30日間は解雇が禁止されています。ただし、業務中に生じた傷病が適用対象であり、通勤災害は含まれません。

休業していない場合や、治療が終了してから30日を経過しても休業が続く場合は、解雇制限の対象外となります。詳しくは後述するため、読み進めてください。

産休の場合は法定休業期間に準拠

労働基準法第65条によれば、女性には産前に6週間、産後に8週間の休暇が原則として認められており、休業期間も解雇制限にあたるため、解雇制限期間は通算14週+30日間となります。

産後6週間経過後は、医師に支障がないと認められた業務に従事でき、その後30日間の起算日は産後8週間経過した日またはその請求により就労を開始した日となります。

解雇制限の除外要件

解雇制限の除外要件があり、以下のうちいずれかに該当すれば、解雇制限期間中であっても解雇ができるようになっています。

  • 療養開始後3年を超えても傷病が治らない
  • 天災事変などやむを得ない理由がある

療養開始後3年を超えても傷病が治らない場合、平均賃金の1,200日分を打切補償として支払うと解雇できます。また天災事変などやむを得ない理由がある場合、労働基準監督署の解雇制限除外認定が必要です。

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8.解雇予告の注意点

解雇予告は労働基準法第20条にて規定されているため、規定を守らずに解雇、および解雇予告した場合、法律違反となり懲罰が科せられる可能性があります。

口頭ではなく文書での提示がベター

解雇予告は、口頭でも効力がありますが、記録が残らず、日時や理由などが不明確になりやすいため、トラブルの原因となる可能性もあるでしょう。

そのためできるだけ口頭ではなく書面で行うべきだとされています。受領の署名や捺印、内容証明郵便などでも証拠を残せます。

正当な理由を提示

従業員は会社と比べて弱い立場にあるため、解雇には正当な理由が必要です。納得していない従業員との争いが生じる可能性があるため、解雇予告の要件を満たしているか慎重に検討しなければいけません。

解雇相当の証拠を収集

争いが起こる可能性を考慮して、客観的で合理的な理由と手続きの相当性を示す証拠を収集すべきで、指示書や指導書、データ、試験結果なども重要な証拠となります。

社内外への影響がある場合は、社外からの書面やメールも収集することが重要です。

不当解雇になりえるパターン

やむを得ない理由以外で解雇すると、不当解雇と見なされて解雇を認められないこともあります。たとえば通院による数回の欠勤、妊娠、人員の充足、上司との不仲などは、争点になりがちです。

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9.解雇予告されたらどうする?【従業員向け】

自分が解雇予約された場合、本人がすべき手続きなどについて紹介します。

  1. 就業規則および解雇日を確認
  2. 解雇理由証明書を請求
  3. 【解雇を受け入れる場合】必要に応じて解雇予告手当を請求→失業保険の申請→年金および健康保険の手続き
  4. 【解雇を受け入れない場合】解雇の撤回を要求

①就業規則および解雇日を確認

まず、就業規則および解雇日を確認するため、解雇手続きの正確さを確認してください。

解雇通知書に記載されている就業規則の条文により、解雇の根拠を確認しましょう。解雇日の確認により、有給休暇の消化や転職先のスケジュールの調整、解雇予告手当の受給などを検討するとよいでしょう。

②解雇理由証明書を請求

次は、解雇理由証明書を請求します。

不当な解雇か確認し、承諾できる理由であるか判断するため解雇理由を求めてください。異議がある場合、この解雇理由証明書が重要となります。雇用保険給付や退職扱いに大きな影響を与えるため、しっかり確認しましょう。

③解雇を受け入れる場合

解雇を受け入れる場合、会社都合退職にできるかを確認します。倒産、あるいは、業績不振による整理解雇の場合は会社都合と見なされます。

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必要に応じて解雇予告手当を請求

必要に応じて解雇予告手当を請求してください。解雇予告手当の支給額は解雇予告日から解雇日までの期間に応じて変動します。

解雇予告が法定予告期間の30日未満の場合、差し引いた期間分に応じて解雇予告手当が支払われます。

失業保険の申請

次の職が決まっていない場合、ハローワークで失業保険の申請手続きを行います。

受給資格が認められた後は、定期的に失業の認定を受けて手当を受給しましょう。解雇の場合、一般離職者より給付日数が優遇される可能性が高いため、早めに手続きしてください。

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年金および健康保険の手続き

続いて、年金および健康保険の手続きです。

  • 年金:手続きが2通りあり、市区役所または町村役場で手続きが必要
  • 健康保険:手続きは3通りあり、それぞれ異なる手続きが必要

日が開かず転職する場合は、入社時に必要書類を提出し、切り替えしてもらいましょう。

④解雇を受け入れない場合

不当な解雇である場合は解雇が無効となり、働き続けることも可能です。

解雇の撤回を要求

解雇理由が不合理である場合、解雇の撤回を要求すると同時に、解雇日以降の業務を指示してもらうよう求めましょう。裁判で解雇の有効性を争う場合は、労働問題に強い弁護士に相談しましょう。