勘定項目とは、分かりやすく記録するために必要な項目の総称です。ここでは項目の種類や具体例、分類する際の注意点などについて解説します。
目次
1.勘定科目とは?
勘定科目とは、費用・収益の発生について分かりやすく記録するために必要な項目の総称。「出入りする金銭の流れに見出しやインデックスを付けて分かりやすくしたもの」とイメージするとピンときやすいかもしれません。
勘定科目では、何にいくら使ったのかがすぐに分かるようになっています。内容をかんたんに把握できるよう整理したものが勘定科目です。
勘定科目では、会社を運営していくうえで必要不可欠となる以下の性質を分かりやすく記録します。
- 会社の取引による資産、負債、資本の増減
- 費用および収益の発生
担当者は、勘定科目を使って仕訳(金銭や物品の増減が伴ったりサービスに対価を支払ったりするといった取引を帳簿に記録すること)をし、貸借対照表や損益計算書などを作成します。
勘定科目に明確な決まりはありません。仕訳の詳細は会社で使用しているソフトや独自のルールによって異なります。
勘定科目が必要な理由
なぜ勘定科目が必要なのでしょうか。その理由は次の3つです。
- 経営判断の材料にするため
- 銀行や顧客、株主など自社以外の利害関係者に経費の動きを見せるため
- 確定申告の際に必要な消費税や事業税、固定資産税などの税金を計算するため
勘定科目は、取引の動きを誰が見ても同じ理解ができるよう整理したもの。勘定科目を参照すると、会社の財政状況を読み取れるため経営判断の材料にできます。
勘定科目の設定は自由
勘定科目は法律で明確に定義されていないため、事業主ごとで自由に設定できます。極端な話、その取引が収益なのか費用なのか資産なのか負債なのか、といった大まかなカテゴリさえ間違えなければ基本、自由に勘定科目を決められるのです。
帳簿を分かりやすくするために新たな勘定科目を作るというのも可能となります。青色申告決算書の科目に当てはまらない費用や、自分の事業にかかる特徴的な費用などを新しい勘定項目とするのも可能です。
2.勘定科目の種類でもある貸借科目とは?
勘定科目は「貸借科目」と「損益科目」の2つに分類されます。まずはそのうちの「貸借科目」について見ていきましょう。貸借科目を構成するのは以下の3つです。
- 資産
- 負債
- 純資産
これらを整理し、調達した資本をどんな財産に運用したのかを表した決算書が「貸借対照表」です。実務上では「B/S(バランスシート)」とも呼ばれます。
①資産
資産とは、換金できる財産のことで、個人も事業主も同じです。保有するプラスの財産をまとめて資産といい、次の3つに分類されます。
流動資産
流動資産とは、個人もしくは事業主が保有する資産のうち、主に1年以内に現金として回収されるもの。たとえば現金や預金、製品や売掛金、受取手形などです。
流動資産が流動負債(短期間で返済しなければならない負債のこと)より大きければ、それだけ余裕のある会社だと判断できます。
固定資産
固定資産とは、取引で発生した資産のうち、1年以上経過しても現金に換えられない資産のこと。「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」3つから構成されています。
- 有形固定資産:土地や建物、車両など目に見える資産
- 無形固定資産:借地権や特許権など目に見えない資産
- 投資その他の資産:長期貸付金や投資有価証券など
繰延資産
繰延資産とは、支出効果が1年以上におよび、数年にわたって経費に計上できる資産のことで、有形・無形を問いません。また繰延資産は「会社法上の繰延資産」と「税務上の繰延資産」に分類されます。
- 会社法上の繰延資産:創立費・開業費・株式交付費・社債発行費・開発費
- 税務上の繰延資産:広告宣伝用資産・公共的施設の負担金・役務の提供の権利金・資産を賃借するための権利金
②負債
負債とは、個人もしくは事業主が保有するマイナスの財産のこと。銀行から受けた融資や物の仕入れに使用した未払の代金など、返済の義務が生じたものをまとめて「負債」といいます。
同じ負債でも、支払期限によって「流動負債」と「固定負債」の2つに分かれるのです。
流動負債
流動負債とは、取引で発生した負債のうち、1年以内に支払期限がくる負債のこと。次のようなものが流動負債にあたります。
- 支払手形
- 買掛金
- 前受金
- 預り金
- 未払金
- 仮受金
流動負債と先に説明した流動資金の比率を見ると、企業の短期的な支払い能力や経営状況などを分析できます。
固定負債
取引で発生した負債のなかでも、1年以上経過して支払期限がくる負債は「固定負債」になります。なお1年基準を「ワン・イヤー・ルール」と呼び、企業会計原則において決算日の翌日から起算して計算すると定められているのです。
固定負債には社債や長期借入金、退職給付引当金や受入保証金(預り保証金)などが含まれます。
利害関係者は、貸借対照表から資金繰りの状況を判断するもの。一般的に、流動負債よりも固定負債が大きいと資金繰りが安定しています。また固定負債よりも後述する純資産が多い場合、よりよい状態だとされているのです。
③純資産
純資産とは、株主によって出資された資金と企業活動で得た利益を合算した資産のこと。返済義務があるかないかで純資金と負債を区別するため、純資金は「自己資本」、負債は「他人資本、外部資本」とも呼ばれます。
3..勘定科目の種類でもある損益科目とは?
続いて勘定科目を構成するもう1つの要素「損益科目」について見ていきましょう。損益科目は「収益」と「費用」、2つから構成されています。
会社の収益と費用を分析し、経営成績や純利益を明確にしたのがP/L(Profit and Loss Statement)とも呼ばれる「損益計算書」。1年間にどのような収入(収益)があり、どのような支出(費用)、いくらの利益/損失が出たのかを明らかにします。
- 収益とは?
- 費用とは?
①収益とは?
収益とは、商品やサービス提供の対価として受け取る金額のこと。企業活動により実現した資産の増減を総じて収益と呼びます。
対して利益とは収益からさまざまな費用を差し引いた額のこと。端的にいえば、どれだけ儲かったかを示すのが利益で、どれだけ売上があったかを示すのが収益です。
売上高
収益は、売上高・営業外収益・特別収益の3つに分かれます。なかでももっともイメージしやすいのが、売上の合計金額を示した売上高でしょう。売上高では、企業の商品やサービスなどの営業活動を提供することで得られた金額を合計します。
売上高には、商品を仕入れるためにかかった費用が含まれません。売上高から仕入れ値、費用を差し引き、結果としていくら儲かったかを表したのが利益になります。
営業外での収益
営業外収益とは、預貯金や貸付金の利子である受取利息や株式配当金に代表される配当金、持分法による投資利益や不動産賃貸収入など、本業以外で経常的に発生する費用のこと。
なお経営成績を示す損益計算書上において、営業外収益は経常利益(営業利益+営業外収益の額から支払利息や社債利息などの営業外費用を差し引いた利益)に区分されます。
特別収益
特別収益とは、その名のとおり通常の経営活動とは直接かかわりのない、特別な要因によって発生した収益のこと。不動産などの固定資産売却益や、長期間保有している株式/証券売却による売却益などが該当します。
特別収益は通常の企業活動とは直接かかわりがなく、またその期にだけ臨時的に発生した収益を指します。先に触れた経常利益と合算してしまうと企業の収益力が的確に評価できないため、それぞれ別の区分としているのです。
②費用とは?
費用とは、企業活動に伴って発生したコストのこと。たとえば100万円で車を買い入れ、130万円で売り上げた場合、この130万円は「売上」に、30万円の「利益」を得るために使用した100万円が「費用」になります。
売上の原価
売上原価とは、製品やサービスなどを生み出すために直接必要とした経費のこと。小売業や製造業、建築業やサービス業など、業種によって売上原価に含める範囲が変わるのです。一般的に、売上原価は「売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高」にて算出できます。
小売業を例に見てみましょう。販売価格1,000円の商品を500円で仕入れた場合、売上原価は500円。売上原価では仕入れにかかった金額ではなく、実際に売れた商品の原価のみを計上します。
販売費と一般管理費
販売費および一般管理費とは、商品販売にかかる費用(販売費)と企業業務の活動にかかる費用(一般管理費)を合計した金額のこと。企業活動にかかる費用から売上原価を引いて算出し、「営業費」や省略して「販売管理費」などと呼ばれます。
- 販売費に含まれるもの:販売手数料や広告宣伝費、法定福利費など
- 一般管理費に含まれるもの:間接部門にかかる人件費や減価償却費、旅費交通費など
実務上、販売費と一般管理費を分けた計上はほぼありません。2つをまとめて表示するのが一般的です。
営業外費用
事業を継続している限り、必ず発生するのが「営業外費用」です。損益計算書にて経常損益の部に区分される営業外費用は、売上に直結しない費用を指します。具体的には次のような項目です。
- 支払利息
- 手形売却損
- 社債利息
- 売上割引
- 為替差損
売上に直結しない費用という意味では後述する「特別損失」も同じですが、日頃から発生するものは「営業外費用」、発生するかどうか分からない費用は「特別損失」として区別できます。
特別損失
「特別損失」とは営業や財務、投資などさまざまな企業活動にて、経常的に発生しない損失のことで、略して「特損」とも呼ばれます。台風や火事など、発生前に予期できない外的要因による突発的な損失を、この特別損失として計上するのです。
特別損失の勘定科目には次のようなものが挙げられます。
- 災害損失:自然災害などによって生じた損失
- 子会社株式売却損:子会社株式の売却による損失
- 投資有価証券売却損:企業が保有する有価証券を売却した際に生じる損失
4.勘定科目を分類する際、注意すべきこと
「資産・負債・純資産・収益・費用」5つからなる勘定科目。仕訳を行う際は、あらかじめそれぞれの項目の定義を確認しておくとスムーズに処理できます。ここでは勘定科目を分類する際の注意点を3つ解説しましょう。
- 勘定科目には「経理自由の原則」がある
- 一般的な勘定科目を用いる
- 同じ勘定科目を継続して使用する
①勘定科目には「経理自由の原則」がある
先に述べたとおり、勘定科目には法律で明確に定められた定義がありません。ボールペン一本を買うという同じ行為でも、消耗品費として計上するか備品として計上するかは、企業によって異なります。企業会計において、これを「経理自由の原則」と呼ぶのです。
会社のために支払ったという事実が証明できれば、勘定科目名は企業によって自由に選べます。悩んだ際は、自社の過去事例を参照したりほか担当者に確認したりして、自社のルールに沿った仕訳を進めましょう。
②一般的な勘定科目を用いる
帳簿を見るのは、なにも自社の担当者だけではありません。必要に応じて社外の税理士や会計事務所が見る場合もあります。誰が見ても仕訳基準や金額の推移が分かるよう、基本的な勘定科目を使用しましょう。
既存の会計ソフトや青色申告決算書に記載された勘定科目を選ぶのが無難です。また経費の動きを正確に把握するためにも、一旦選択した処理方法は変更せず、毎期継続的に適用しましょう。
③同じ勘定科目を継続して使用する
同じ勘定科目を継続して使うと、経費の動きが正確に判断できるため、経営状況を的確に分析できます。企業会計原則内では、これを「継続性の原則」といいます。勘定科目を途中で変更するのは基本、避けましょう。
もなかには例外もあります。業態や取引状況の変化により回数・金額が増減した場合は、機を見て勘定科目の修正や削除、新規作成などを検討してみましょう。その際も、株主や金融機関など社外の人が理解しやすいように一般的な勘定科目を選びます。
5.具体的な分類例
勘定項目は、お金の動きをチェックできるため、今後の経営方針の決定に役立てられます。しかし勘定項目に明確な定義がない以上、なかには仕訳に悩む取引もあるでしょう。ここでは具体的な例を挙げて分類の例を見ていきます。
ガソリン費用
車両を運転した際に必ず発生するガソリン代は、主に「車両費・旅費交通費・消耗品費」といった勘定科目に仕訳されます。
必ずこの科目に分けなければならないという決まりはありません。車両の使用頻度が低い場合は「車両費」や「消耗品費」に、頻度が高い場合は「メンテナンス代」や「燃料費」などに分けるとよいでしょう。
駐車場料金
車両を停める駐車料金も、仕訳に悩む取引のひとつ。月極駐車場のように、恒常的に駐車料金を計上する場合は「地代家賃」に、時間貸しのタイムパーキングなどは「旅行交通費」として処理するのが一般的です。
経費精算の際は、領収書の提出のみではなく、何の目的で現地を訪れたのかもあわせて確認しておくとスムーズに仕訳できます。
コピー機のコピー代
役所やコンビニなどに設置されているプリンターを使用してコピーを行った場合、勘定科目は何に分類されるでしょうか。判断に悩んだ際、便利なのが「消耗品費」です。
消耗品費では、耐用年数が1年未満のもので、取得価格が10万円未満の取引を計上できます。ボールペンやコピー用紙、便箋や洗剤などもこの消耗品費に分類されるのです。