完璧主義とは、物事がすべて整うように努力する人の特徴や精神状態のことです。ここでは、完璧主義について解説します。
1.完璧主義とは?
完璧主義とは、「すべてが整うように努める」「過度な目標を設定する」「自分自身に厳しい評価を行う」「他人からの評価を常に気にする」といった特徴を持つ人、もしくはそのような精神状態のこと。
完璧主義の心理状態に置かれる人を、完璧主義者・完全主義者といいます。完璧主義が行き過ぎると、精神医学の精神疾患に該当する可能性も高いです。
2.完璧主義とはどのような特徴をいうのか?
完璧主義にはどのような特徴があるのでしょう。下記のポイントから解説します。
- 承認欲求
- 自意識過剰
- 頑固
- 責任感
- 他人への要求
- 理想
- 完璧
- 失敗
- こだわり
①承認欲求が強い
承認欲求とは、自分の価値を他人から認めて欲しいと思うこと。承認欲求が強い人は、他人から認めてもらえないと、自分自身に価値がないと思ってしまいます。
人に褒めてもらったり飲み会に誘ってもらったりSNSで「いいね!」を多くもらったりなどで心が満たされ、より完璧になろうと努力するのです。
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承認欲求とは、他人から認められ...
②自意識過剰で自己愛が強い
自意識過剰で自己愛が強い人は、自分が周囲の人からどのように思われているのか、過度に気になります。さらにそれが行き過ぎると、常に周囲の反応に神経を尖らせるようになっていくのです。
仕事で成果を出すことより、他人から良い評価を得ることが目的になれば、本末転倒でしょう。
③頑固
頑固な人は柔軟性に欠け、下記のような性質を持っています。
- 既定路線を外れることを極度に嫌がる
- 状況に応じて臨機応変に動けない
- 自分の理想に強いこだわりを持つ
いくら他人に説得されても軌道修正を嫌い、意志を変えないため、周囲から手に負えない人だと思われがちです。
④責任感が強い
責任感が強い人は、自分が引き受けた仕事には無理をしてでもベストを尽くして妥協しません。そのため、周囲からは、「○○さんに任せれば安心」「こんなときは〇〇さんに頼もう」などと思われるのです。
しかし、あまりに責任感が強すぎると完璧さを周囲に求めるようになり、扱いづらい人と思われてしまいます。
⑤他人への要求も高い
自分が物事を完璧に仕上げるため、周囲が仕事を適当にしていると、その様子が気になってしまいます。自分ならできる仕事を他人がやってミスをすると苛立ち、ストレスを溜めてしまうのです。
仕事ができない人に対して攻撃的になるケースもあるため、職場で人間関係のトラブルの発生源になりやすくなります。
⑥理想が高い
完璧主義の人は、努力を重ねるため、高いレベルの理想を次々に達成します。そのため、自然と理想が高くなるのです。しかし現実離れした理想を掲げてしまうと、自分自身に余計なプレッシャーをかけてしまい、自分自身を苦しめてしまうでしょう。
⑦完璧にできることしか実行しない
完璧主義の人は、結果にこだわるあまり、結果を早く出したいと急ぐ傾向にあります。
そのため、最初から成功する見込みがないことを避けたり、「成果がすぐに出ないと価値がない」と思ってチャレンジしなかったりしてしまうのです。
⑧失敗を過度に恐れる
完璧主義の人は、一度の失敗でも許せません。ミスや失敗、損失などを恐れるため、準備には余念がないのです。
しかし、一度ミスが発生すれば、そこから受ける精神的ダメージは大きく、激しく落ち込んでしまいます。完璧主義の人は、失敗を受け入れたくないのです。
⑨こだわりが強い
完璧主義の人は、自分の高い理想に必ず到達するという強い気持ちを持っているため、こだわりが強くなります。こだわりが強いと、時間に制限なく取り組んでしまうといった弊害が生じるでしょう。
時間制限を設けたり時間を細かく区切ったりして、時間をコントロールする方法がおすすめです。
3.完璧主義の原因とは?
完璧主義の原因は3つあるといわれています。完璧主義の原因3つについて解説しましょう。
- 幼少期の環境
- 個人の性格
- トラウマ
①幼少期の環境
「三つ子の魂百まで」といわれるとおり、幼少期に過ごした家庭環境は、子どもの性格に大きな影響を与えると考えられています。
たとえば努力を評価されず、結果や成果のみで評価されるような家庭環境で育った子どもは、ちょっとしたミスにも過敏に反応してしまうといった完璧主義になりやすいとされているのです。
②個人の性格
「自尊心が強い」「真面目」「自意識過剰」「承認欲求が強い」「負けず嫌い」「理想が高い」といったもともと持っていた個人的な性格が原因となる場合もあります。
真面目
真面目とは、「体調が悪くても手を抜かない」「休憩をとらずに必死に取り組む」「人の助けを借りない」といった性格のこと。つねに愚直に完璧にこなそうとするため、場合によっては、燃え尽き症候群やうつといった神経症に陥る人もいます。
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負けず嫌い
つねに人と競争し、勝ち負けを気にする人も完璧主義に陥りやすい傾向があります。
負けないためには、つねに物事を完璧に高いレベルで取り組まなければなりません。このようなことから、負けず嫌いが完璧主義にも影響をおよぼすと考えられるようになりました。
常に褒められ、認められていたい
常に褒められ、認められていたいという、承認欲求の強さも完璧主義に陥りやすい性格です。他人から認められないと自分自身に価値がないと思い込んでしまう性格は、完全主義になりやすいようです。
このような性格の人は、周囲の人に褒めてもらうため、頑張ってより完璧な状態を維持しようと努めます。
③トラウマ
精神的外傷のこと。完璧主義になってしまう人のなかには過去、「自分の失敗を人に笑われた」「自分の行動を馬鹿にされた」といった経験をした人もいます。
そのため、「人前で二度と失敗したくない」という思いが強まり自分を追い込んで完璧主義になってしまうのです。
4.完璧主義の長所
完璧主義の長所4つについて、解説しましょう。
- 仕事が丁寧
- 強い責任感で最後までやり抜く
- 周囲からの信頼が厚い
- クオリティの高い結果を生み出す
①仕事が丁寧
完璧主義の人は、与えられたミッションに対して、より高いレベルの完成を目指して取り組みます。下記のようなことが特徴です。
- 注意深く取り組む
- 慎重に取り組む
- 人の気が付かないところにまで気を配る
- 丁寧に仕事を進める
- 確実に一歩一歩進んでいく
②強い責任感で最後までやり抜く
完璧主義の人は責任感が強いため、一度始めたことは最後までやりとおします。一人でこなすことを繰り返して、自分自身に自信を持っていくのです。また成功体験を重ねるため、強い責任感ややり遂げる強い意志が育まれます。
③周囲からの信頼が厚い
完璧主義の人は、非常に強い責任感を持っています。妥協せず最後までやり抜く姿勢を見た周囲は、厚い信頼を寄せるでしょう。完璧主義の人がリーダーに抜擢されることが多いのは、周囲からの厚い信頼があるからです。
④クオリティの高い結果を生み出す
完璧主義の人には、「丁寧に仕事をする」「より高いレベルを求めて仕事をする」「他人が気づかない細部へ神経を使う」といった特徴があります。
手を抜かずに極限まで自分を追い込み、できる限りの力をふり絞って取り組むため、仕事の質も高くなるのです。
5.完璧主義の短所
完璧主義にはどのような短所があるのでしょう。下記の6つについて解説します。
- 自己嫌悪に陥りやすい
- 満足感を得られない
- 物事を大枠で考えられない
- 円滑な人間関係が築けない
- 作業が遅い
- ストレスをためやすく、それを引きずりやすい
①自己嫌悪に陥りやすい
完璧主義の人は、すべてのことをパーフェクトに行おうとします。そのため、一度でもミスをしたり、結果が理想と離れたりすると、落ち込んでしまうのです。
そしてそれを自分のせいにして自己嫌悪に陥ります。失敗を取り返そうと焦りまたミスをする悪循環を繰り返すケースもあるのです。
②満足感を得られない
完璧主義の人は、完璧な状況を作れるまで満足しません。そのため、周囲から「もうその程度で十分である」と思われる状況でも、「もっとやらなければならない」と思ってしまいます。満足感を得られないため、自信喪失するケースもあるのです。
③物事を大枠で考えられない
完璧主義の人は、細部を気にします。なぜなら緻密な仕事を積み重ね、すべての工程で完璧を目指すからです。しかし細かい部分に気を取られるあまり、木を見て森を見ずといった状況に陥ります。その結果、大きなミスをするときもあるのです。
④円滑な人間関係が築けない
完璧主義の人は、自分の価値観を相手にも強要するときがあります。「自分の考えにそぐわない人を許せない」「自分のルールに沿わない人に厳しく接する」側面があるのです。結果、組織での円滑な人間関係に支障をききたすときも多くあります。
⑤作業が遅い
完璧を目指すあまり、細部にまでこだわって高い理想を持ち、失敗やミスを極度に恐れてしまいます。高い理想を実現するまで作業を終わりにせず、余計な作業をしてしまうため、作業時間が他の人より長くなる傾向にあるのです。
⑥ストレスをためやすく、それを引きずりやすい
完璧主義の人は、自分の力で完璧にやり遂げるという強い責任感を持っています。そのため、周囲の人を頼れず、一人でストレスをため込んでしまうのです。抱えている仕事量も多く、ストレスを引きずりやすくなってしまいます。
6.完璧主義の治し方
完璧主義はどうしたら治せるのでしょうか。下記5つの治し方を見ていきます。
- 物事を加点で考える
- 物事の細部から目を離し、目的を意識する
- 優先順位をつける
- あらゆる角度から自分を客観的に見る
- 合格点や時間制限を設ける
①物事を加点式で考える
「物事を完璧に仕上げるために何が足りないか」を考えるより、「現在できていることは何か」を考えるのです。未完成、未熟な部分に焦点を当てず、加点式にて自分ができたことをポジティブに認めていくと完璧主義を改めていけます。
②物事の細部から目を離し、目的を意識する
完璧主義の人は、失敗を気にするあまり細部に意識が向いて大局を見失うときがあります。最終的なゴールや目的を再確認すると、完璧主義を脱していけるでしょう。また、ゴールや目的の質について大局的な視点を持つのも重要です。
③優先順位をつける
緊急性や重要性が高いものから取り掛かる習慣をつけるとよいでしょう。最初は難しいかもしれません。しかし期間を区切ってタスク管理をすればできるようになっていきます。また予定通りにいかなかったら、修正も可能です。
④あらゆる角度から自分を客観的に見る
自分の基準や価値観、行動が、一般的・会社・周囲の基準と比較してどうなのか、客観的に見つめ直します。そうすれば自分が目指したものは、過剰な目標・達成困難な基準であると認識できるからです。
⑤合格点や時間制限を設ける
完璧主義の人は、ミスを認めず高い理想を掲げる傾向にあります。しかし誰でもミスはするもの。「このくらいできれば合格」「この時間で仕上げられる程度のものにする」といった意識を持てば、際限なく理想を追い求めることも減るでしょう。