経営とは、事業を営んだり組織を運営したりする仕組みのこと。企業の継続的な成長・発展には経営の質が大きく関係し、経営がうまくいかなければ破綻(失敗)の末、倒産に追い込まれてしまいます。
今回は経営とは何かをふまえて、経営に必要な要素や経営が破綻する原因と対策、経営を成功させるためのポイントなどを詳しく解説します。
目次
1.経営とは?
経営とは、事業を営むための運営の仕組みを意味し、事業目的を達成するため継続的かつ計画的な意思決定を行い、事業を管理・遂行すること。しかし、ひとくちに経営を定義するのは難しいものです。
会社を経営させていくことは、会社を継続的な成長・発展へと導くことであり、そのために必要な要素は人事や営業などさまざまです。これらの業務をスムーズに進めるための組織マネジメントを行うことも経営のひとつといえます。
2.経営とマネジメントの違い
マネジメントには「管理」「経営」の意味もあるため、しばしば経営と混同される場合もあります。経営は組織の方向性や戦略を決定する役割を持ち、マネジメントはそれらを実行・実現するための手段として日々の業務で計画・実行していくものです。
つまりマネジメントは経営の一部で、マネジメント業務は経営を遂行するための手段といえます。経営で大枠を決定し、具体的な手段をマネジメントで策定・実行していくのです。
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3.経営者・経営層の役割
経営を進めていくのは、経営者・経営陣です。経営者と経営陣が自らの役割を自覚することは、経営を進めていくうえでも重要なこと。「マネジメントの父」とも呼ばれる経営学者ピーター・ドラッカーは経営者・経営層の役割として下記3つを挙げています。
- 事業の決定
- 資金配分の決定
- 人材配置の決定
ドラッカーは、事業内容から企業の信条・価値観、原則などを決定し、事業を進めていく上で必要な資金の配分や事業を実際に進めていく人材の采配を行うのが経営者・経営陣の役割と定義しています。
また、アメリカの経営学者ヘンリー・ミンツバーグが提示する役割は下記3つです。
- 対人関係の役割
- 情報伝達の役割
- 意思決定の役割
社内外の対人関係を構築するだけでなく、社外に自社のことを発信したり、社内のメンバーに有益な情報を提供したりするほか、経営における判断やトラブルなどがあった場合には意思決定を下す役割を持つと定義しています。
4.会社経営に必要な要素
ここでは、経営に必要な各要素5つを詳しく解説します。
- 経営理念
- 経営方針
- 経営計画
- 経営戦略
- 経営資源
①経営理念
経営を行う目的であり、経営で実現したいことです。企業が最終的に目指す理想像や従業員が体現すべき行動指針を示したもの。企業の存在意義・価値観ともいえます。
経営理念は経営の根本となるものであり、経営者の想いを明文化したものです。社是や社訓、ミッションやバリューなど、企業によって経営理念の呼び方はさまざま。想いを形にしたものであり、企業が経営を続けている間は受け継がれていく重要な要素です。
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②経営方針
経営理念をもとに事業を展開するために必要な行動や考え方を具体的に示したもの。経営理念を実現するための手段であり、基本方針とも呼ばれるものです。
経営者は経営方針に沿って経営戦略を策定し、環境の変化に応じて経営方針を柔軟に転換しながらその時代にあった経営を進めていくことが求められます。ただし、根底である経営理念を実現するといった目的は変わりません。
経営方針があると従業員に行動・考え方の方向性が浸透するため、組織が一体的に経営を進められるようになるのです。
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③経営計画
最終的なゴール(経営理念)や目標を明確にするための企業全体に向けた計画のこと。事業を継続・発展させて目標を達成するには、経営計画が必要です。
経営計画をもとに、各部門が達成のための具体的な計画である事業計画を策定します。経営計画があることで経営のロードマップが明確になり、組織が意思統一を図れるようになるのです。
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④経営戦略
経営していくうえでの戦略のこと。経営戦略には、経営目的を達成するための方針・計画、経営資源の分配、経営方針を体現するための体制づくりなどさまざまな要素が含まれます。
経営を進めていくうえで、やるべきことは山積みです。優先順位をつけ、どのように実行していくかを決めるのが経営戦略の役割であり、「企業戦略」「事業戦略」「機能別戦略」と、領域・レベルに応じて経営戦略は細分化されます。
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⑤経営資源
経営活動を進めるために必要なリソースのこと。主な経営資源は、ヒト・モノ・カネ・情報・時間・知的財産です。
ヒト | 従業員 |
モノ | 製品、設備 |
カネ | 経営資金 |
情報 | ノウハウ、顧客データ |
時間 | 事業にかかわるあらゆる時間 |
知的財産 | 技術、組織力、ネットワーク、ブランド、特許 |
経営資源はただ確保するだけでなく、管理・活用する体制が整っているかも重要です。
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5.主な経営課題一覧
経営を進めていくなかで、さまざまな課題に直面します。下記は、主な経営課題の一覧です。
- 収益性向上
- シェア拡大
- 生産性向上
- 人材確保
- 人材育成
- 技術力・開発力強化
- ブランド力の向上
- 顧客満足度の向上
- コスト改善
- 営業力強化
- 事業基盤の強化・再編、リスク管理
一般社団法人日本能率協会「日本企業の経営課題2022」によると、現在・3年後・5年後に直面すると考えられる経営課題は下記のとおりです。
現在 | 3年後 | 5年後 | |
1. | 収益性向上 | 人材の強化(採用・育成・多様化への対応) | 事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築 |
2. | 人材の強化 (採用・育成・多様化への対応) |
収益性向上 | 人材の強化 (採用・育成・多様化への対応) |
3. | 売上・シェア拡大 | 売上・シェア拡大 | 売上・シェア拡大 |
4. | 事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築 | 新製品・新サービス・新事業の開発 | 収益性向上 |
5. | 新製品・新サービス・新事業の開発 | 事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築 | 新製品・新サービス・新事業の開発 |
経営課題はしっかりと把握して改善を図るとよりよい経営ができ、最終的には企業の成長・発展につながります。
6.経営が破綻(失敗)する原因と対策
中小企業庁「倒産の状況」によると、令和5年7月分の原因別倒産状況における倒産理由TOP3は下記のとおりです。
- 販売不振
- 既往のしわよせ
- 連鎖倒産
過去6年のデータを見ても、TOP3には基本的に同様の理由がランクインしています。ここでは、経営が破綻(失敗)する原因と対策をみていきましょう。
①販売不振
商品やサービスが売れず、利益が得られない状態です。利益がないと支出が上回り、経営難を引き起こします。販売不振を引き起こす原因は、内部要因から外部要因までさまざま。下記で、主な原因と対策をみていきます。
主な原因 | 対策 |
競合他社による新たな商品の登場 | ・確固たるシェアを確立する ・競合他社に劣らない魅力を強化する |
社会環境の変化による業界自体の衰退 | ・環境やニーズの変化に柔軟に対応する ・別市場で新たな戦略を策定する |
取引先の方針転換 | ・1つの取引先に依存しない ・複数の収益の柱を確保しておく |
企業の信用損失やイメージの低下 | ・従業員のリスク管理を徹底する |
②既往のしわよせ
販売不振に次いで多い倒産理由が、既往のしわよせです。既往のしわよせとは「ゆでガエル状態」であり、徐々に悪化している経営状態であるにもかかわらず、対処せずに倒産に追い込まれることを指します。
内部留保やキャッシュが徐々に減った結果、資金繰りが悪化して倒産するケースがほとんどです。
主な原因には、経営状態を把握していない、または把握していても悪化を放置することが挙げられます。経営状態を常に把握し、悪化している分野(原因)を明確にして、早期に対処を講じることが主な対策です。
③連鎖倒産
取引先の倒産によって連鎖的に経営難に陥った結果、倒産することです。取引先の倒産により売掛金が回収できずに資金繰りが悪化した結果、倒産に追い込まれてしまいます。
下記は、主な原因と対策です。
主な原因 | 対策 |
大口の取引先、特定の取引先に依存している | ・つねに取引先の経営状態を把握する ・倒産サインを見逃さない ・取引先を分散させる |
支払いサイクルが長い | ・現金取引に変える・支払いサイクルを変更する |
7.経営を成功させるためのポイント
経営を成功させるためには、さまざまな工夫と努力が欠かせません。ここでは、経営を成功させるためのポイントをお伝えします。
経営に必要な知識・スキルを身につける
下記は、経営に必要な知識・スキルの一例です。
- 経営に関する基礎知識
- 財務会計の知識
- マネジメントスキル
- 意思決定力
- 課題解決スキル
- 適応力
知識・スキルがないと経営状態を把握できず、原因を究明できても解決へと導けないでしょう。先見性やリーダーシップなど、その人の資質も関係してきます。身につけられる知識やスキルが多いほど、それらを生かしてよい経営が行えるようになります。
広い視野で組織を管理する
経営は、各部門の業務がひとつになって実現するものです。経営者は経営方針や戦略を策定して終わらせず、その後も組織を広い視野で見わたし、現状を把握して課題を解決したり、方向性を見直したりと組織の行先を安全な道へと整えることが求められます。
経営状況はつねに変化しているといっても過言ではありません。適時、組織を適切に管理することが成功のポイントです。
的確な意思決定を迅速に行う
経営に関する最終決定を下すのは経営者・経営陣の役割です。適切なタイミングで的確な意思決定が行えないと、最悪のケースで経営難に陥ってしまうことも。そうならないためにも、判断を誤らないための状況把握力や先見性が欠かせません。
意思決定が今後の経営に大きな影響を与える自覚を持ち、意思決定に必要なスキルや知識を身につけることも大切です。
人材戦略を徹底する
経営は、経営者と経営陣だけでは成り立たず、従業員がいてこそ実現します。なぜなら、企業の価値を体現し、利益を創出するのは従業員であるからです。
ポイント派「従業員=資本」と考え、経営を成功させるためにも人材戦略を徹底すること。人材戦略には、人材育成や人材配置、採用や代謝とさまざまな分野があるため、これらをバランスよく実行して経営の安定化を図ることが求められます。
人材戦略とは?【フレームワーク・事例】戦略の立て方
人材戦略は抽象的な言葉であるため、何を目的に行われるのか、具体的にどのようなことを実施するのか明確に理解できていないという方も多いでしょう。
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