経営方針とは?【考え方をわかりやすく】中小企業、経営理念

経営方針とは、経営理念を実現するために取るべき行動や方向性を具体的に示したもの。企業の存在意義は経営理念に示されているものの、それを実現するには従業員に具体的な行動に落とし込んでもらう必要があります。

今回は経営方針について、経営理念との違いや考え方、経営方針を検討するポイントや具体例などをわかりやすくご紹介します。

1.経営方針とは?

経営方針とは、事業を展開するための目標であり、経営理念を実現するために取るべき行動や方向性を示すものです。

経営方針があると、経営戦略や従業員に求める行動に一貫性が持てるようになります。というのも、組織は考えが異なる多数の従業員が集まって形成されているため、そのままでは一致団結して事業展開に臨めず、生産性が高められないからです。

経営方針から共通の考えや目標を浸透させ、行動判断の基準に一貫性を持たせると、従業員は同じ方向に向かって進めるようになります。

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2.経営方針と経営理念の違い

経営理念とは、企業の存在意義やあり方を示すもの。一方経営方針は経営理念を実現するための行動目標です。

経営理念は企業が存在する目的や理由、経営方針は経営の進め方や方向性にフォーカスを当てたものですが、経営理念は経営方針の上位概念となり、経営方針は経営理念をベースに検討されます。

経営理念は経営者の考えに従って設定されるため基本的に変更されませんが、経営者が変われば経営理念も変わる可能性があります。

対して、経営方針は時代の変化によって柔軟な変更が必要であり、あくまでも経営理念をベースに時代に合わせた行動・手段を取り入れるものです。

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3.経営方針の考え方

経営方針は、組織が一体となって経営理念や経営目標を達成するために重要なものです。ここでは、組織が目的に向かって的確に進められる経営方針の考え方を解説します。

経営方針は、下記ポイントに従って自社に合った内容を設定するとよいでしょう。

企業理念にもとづいて検討する

経営方針は、経営理念を実現するための具体的な行動目標です。経営理念をベースに考えることが必須であり、経営理念に沿った内容を策定します。経営理念にもとづいて考えられないと、組織が一貫性を持った行動を取れなくなる恐れもあるのです。

そのためにも、軸が明確な経営理念があることも欠かせません。まずは経営理念に問題がないか、企業のあり方や存在意義をしっかり定義できているかをチェックしましょう。

具体的なチェックポイントは「企業が持つ価値観」「企業の将来像」「企業の使命」といった3つの軸が明確になっているかです。

経営理念は自社とのギャップが大きすぎても機能しなくなってしまうため、従業員が納得して行動に落とし込めるレベル感であるかも重要です。

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5つの視点から深掘りする

「会社」「商品・サービス」「顧客」「従業員」「社会(地域)」の5つの視点を明確にして、経営方針に落とし込みます。

  1. 会社 会社が大切にする考え方、価値観
  2. 商品 どういった商品・サービスを開発・提供したいか
  3. 顧客 会社が顧客にできること、提供したい価値は何か
  4. 従業員 従業員に求める行動・姿勢、会社が従業員に提供できる価値は何か
  5. 社会(地域) 社会にどのように貢献したいか

経営は上記5つの要素から成り立つものであり、明確にすると経営方針を考えやすくなります。

現状の課題と目標にリンクさせる

財務状況や従業員のパフォーマンスなどに着目し、現状を分析して組織や事業における課題を把握します。経営方針は企業をより良い方向へと進めていくためのものでもあるため、課題を解決していくことでパフォーマンス向上や利益最大化につながるもの。

従業員に期待する行動を示し、課題を解決していくことも重要であり、そのための指針となるのが経営方針です。

また、経営方針を具体化するにあたって目標を明確にするのも必要です。利益目標や生産目標、人事目標などテーマごとに目標を数値化しましょう。そして、達成のための戦略を策定し、経営方針に落とし込みます。

このとき利益に直結する「商品・サービス」「顧客」だけでなく、「社会」「取引先」への姿勢もくわえることがポイントです。従業員が具体的な行動に落とし込める内容かに着目しながら策定しましょう。

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4.経営方針検討のポイント

効果的な経営方針を策定するには、下記ポイントを重視することが大切です。

  1. わかりやすく具体的に作る
  2. ストーリー性を持たせる
  3. 従業員の納得と共感を得る
  4. SDGsにも考慮する

組織、そして事業を理想の方向へと進めるため、従業員に期待する行動を促して経営理念を体現してもらうための経営方針を策定するためにも、上記ポイントをしっかりと押さえましょう。

①わかりやすく具体的に作る

経営理念が抽象的なケースは多く、その状態では経営理念から従業員が具体的な行動につなげられません。経営理念で求める姿を具現化するのが、経営方針の役割です。「経営理念を具体化・解像度を上げたもの=経営方針」とも考えられ本来の役割を発揮するには当事者意識を持てるような経営方針を作成することが重要です。

客観的に見ても具体的な行動がイメージできる経営方針がベストですが、具体化するあまり経営方針の数が大きくなりすぎないよう注意しましょう。内容が重複していたり、かえって理解しにくい内容になったりする恐れがあります。

②ストーリー性を持たせる

経営方針の考え方で紹介した5つの視点をつなぎ合わせ、1つのストーリーになる状態が理想です。たとえば経営理念が「お客様と地域の利便性向上に貢献し、従業員の幸せを実現する」なら、経営方針は下記のようになります。

  • 商品・サービス 生活が便利で豊かになる商品を開発・提供し続け
  • 顧客 お客様の豊かで便利な生活を実現し
  • 従業員 同時に従業員の成長と未来を支え
  • 社会(地域) 地域の皆様に愛されながら、なくてはならない存在を目指し
  • 会社 お客様と地域の利便性向上に貢献し、従業員の幸せを実現できる企業へと近づいていきます。
    明確にした5つの視点をつなげ、目的やあり方に一貫性とストーリー性があるかを確認しながら経営方針を策定しましょう。

③従業員の納得と共感を得る

従業員が納得・共感できないと、経営方針に則った行動を促すことは難しいでしょう。経営方針の作成者の意志や意図が伝わるよう、経営者自らの言葉で経営方針を策定することがポイントです。

どんなに良い内容でも、経営者の行動と矛盾している、他者の経営方針をそのまま利用しているような当事者意識の持てない経営方針では、従業員の心には響かず、経営方針を体現しようと思えなくなってしまいます。

そのため、内容だけでなく、言葉遣いや心に響く要素があるかを確認しながら経営方針を策定することが大切です。

くわえて、従業員だけでなく、顧客や投資家などのステークホルダーが読んでも納得・共感できる内容であると、なお理想的といえます。企業がどういった想いで行動しているかが伝わり、企業イメージの向上にもつながるでしょう。

④SDGsにも考慮する

SDGsとは、貧困撲滅や環境保護を目的とした世界共通の17の目標のこと。テーマとなるのは貧困や飢餓、教育やジェンダー、水・衛生やエネルギーなど社会・地球にかかわるさまざまな要素です。

SDGsを意識した経営ができているかは、ステークホルダーからも着目されているポイントです。

とくに投資家が重視している項目であり、SDGsに取り組んでいない企業は持続可能性に期待できないとしてリスクがあると判断される恐れもあり、投資面で不利になるほか、消費者からのイメージ低下などさまざまなリスクが発生します。

SDGsに取り組む姿勢を醸成するためにも、経営方針にSDGsを考慮し、関与させることがポイントです。事業から社会問題の解決に関与できるポイントを洗い出し、経営方針に落とし込んでみましょう。

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5.経営方針を組織に浸透させる方法

経営方針はただ作成しただけでは効果を発揮せず、組織に浸透させてこそ経営理念の実現につながります。ここでは、経営方針を組織に浸透させる4つの方法を解説します。

経営方針発表の機会を設ける

経営方針の発表をイベントと位置づけ、改めて伝達の機会を設けましょう。社長自らの言葉で発表することによって経営方針がより伝わりやすくなり、従業員への共感や納得が得られやすく、かつ理解してもらいやすくなる効果に期待できます。

社長が経営方針と関連し、企業の将来像や抱負を伝えることで経営方針の解像度も上がり、具体的な行動に落とし込みやすくなるのです。くわえて、組織の士気を上げられる点でもメリットでしょう。

発表会では資料を用いて視覚的にも経営方針が理解しやすいよう準備しておくことがポイントです。

個人目標と連動させる

個人目標と連動させると、目標の達成が経営方針の実現につながり、実感が得られやすくなります。そのため、目標設定の際は経営方針にもとづき、目標達成度合いを適切に評価した上で経営方針が実現できているかを確認しましょう。

従業員も経営方針にもとづいて意義のある目標設定ができるほか、経営方針にもとづいた評価が行われることで評価への納得感も高まります。

評価制度や報酬制度と関連づける

経営方針を評価制度や報酬制度に関連づけると、経営方針に従った行動や成果を促せ、報酬面からモチベーションを高められるのです。

経営方針の実践がよい評価や報酬につながるという意識づけがなされれば、自然と経営方針に基づいた行動を起こせるようになるでしょう。

こうした外的要因によって、従業員の行動を促すことも経営方針を浸透させるためには重要なポイントです。

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研修に取り入れる

とくに、新入社員や中途社員に向けた研修で経営方針を学ぶ機会を設けることも大切です。新入社員や中途社員が目標設定などに経営方針を落とし込むには、まず経営方針を理解するステップが必要となります。

企業への理解や働くことへの意味づけを行うためにも、経営方針を学ぶことは欠かせません。

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6.経営方針の具体例

経営方針は、企業によって表現方法もさまざま。下記は、誰もが知る大企業の経営方針です。

Amazon

地球上で最もお客様を大切にする企業、そして地球上で最高の雇用主となり、地球上で最も安全な職場を提供することを目指しています。

Amazonでは、お客様を起点にすることや創造への情熱、そして優れた運営へのこだわりや長期的な発想といった、4つの理念を指針に経営方針を策定しています。

参考 AmazonについてAmazon

Google

またGoogleは会社設立から数年後、「10の事実」として下記の経営方針を策定。随時リストを見直し、時代の変化に即して事実に変わりがないかを確認しています。

  1. ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
  2. 1つのことをとことん極めてうまくやるのが一番。
  3. 遅いより速いほうがいい。
  4. ウェブ上の民主主義は機能する。
  5. 情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない。
  6. 悪事を働かなくてもお金は稼げる。
  7. 世の中にはまだまだ情報があふれている。
  8. 情報のニーズはすべての国境を越える。
  9. スーツがなくても真剣に仕事はできる。
  10. 「すばらしい」では足りない。
参考 Google が掲げる 10 の事実Google

中小企業の例

ここでは、中小企業における経営方針の例をご紹介します。

森永エンジニアリング株式会社

経営理念

顧客満足と信頼を大切にし、安全で高品質な設備とサービスを提供することで、広く社会に貢献します。

経営方針(行動指針)
  1. 誠実に対応し、信頼されるもの、価値あるものを提供します。
  2. 創意工夫を持って、技術力及び商品力を磨きます。
  3. 各自が当事者意識を持ち、能力を結集して組織力を高めます。
  4. 高い倫理観を持って、仕事に取り組みます。
  5. 森永グループの一員として自覚し、行動します。
参考 コーポレートミッション森永エンジニアリング

日本インシュレーション株式会社

社是

「信頼を高め付加価値を創造し人間を豊かにする」

経営方針(行動指針)
  1. 私たちは、生活の基盤を支える都市インフラの防耐火にこだわり、高品質な耐火建材の普及促進、機能向上を通して、人命の保護と社会資本の保全に貢献する
  2. 私たちは、地球温暖化など世界規模で深刻化する環境問題への解決に向け、工業設備分野等の断熱技術の高度化を通して、産業施設の安全・安定運用に寄与し、より一層の省エネルギー、温室効果ガス排出削減の推進に貢献する
  3.  私たちは、近年、発展を続ける世界の国々や地域においても、防耐火や省エネルギーに対する要求が高まっていることに鑑み、企業活動のグローバル化を積極的に推し進め、全世界の持続可能な成長に貢献する
  4.  私たちは、これまで事業基盤としてきたゾノトライト系けい酸カルシウムの枠にとらわれず、多様化する顧客ニーズに応えるべく、オープン・イノベーションを通して、新しい事業分野に果敢に挑戦し、社会に対して新しい付加価値を提供する

社是とは、経営方針をわかりやすい言葉で表したスローガンのようなもの。経営方針で具体的な内容を策定し、社是を用いてその内容を端的に伝えるのも、経営方針の浸透や理解の促進に効果的です。

参考 経営方針日本インシュレーション株式会社