経営者視点とは? 具体例、持てない理由、養う方法を簡単に

従業員や部下に対して、経営者視点を持って欲しいと考える人事や管理職も多いのではないでしょうか。今回は、経営者視点の意味や具体例、また従業員が経営者視点を持てない理由や養う方法について解説します。

1.経営者視点とは?

経営者視点とは、従業員が持つべきとされる高い視座のこと。具体的には、経営者が目指す会社の方向性をきちんと理解し、利益を上げるために自ら考えたり行動したりすることを指します。また、経営者と同じように、会社を繁栄させ、株主などのステークホルダーに約束した成果をあげる重要性を理解することとも言い換えられるでしょう。

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2.経営者視点の具体例

経営者視点は、ビジネスに重要ないくつかの要素から成り立っています。ここでは、経営者視点の具体例を見てみましょう。

自社の経営状況

経営者は、売上高、利益率、債務、生産性、成長率など自社全体の経営状況を把握する視点を持っています。代表的な貸借対照表、損益計算書などの財務諸表だけでなく、さまざまな経営指標をもとに経営状況を把握します。

反対に、従業員視点にとどまっている場合は、チームや部署の成果のみに意識が向きやすいものです。従業員が全ての指標を把握する必要があるとは言えませんが、自社の経営状況に目を向けることは経営者視点を持つための初歩といえます。

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自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)

自社の経営資源を考慮することも、経営者視点のひとつです。経営資源とは、ヒト・モノ・カネ・情報を指しており、ヒトは人材、モノはオフィスや商品、カネは資金、情報はノウハウや顧客データ、などです。

なお、経営において最も重要な資源は「ヒト」だと考えられており、採用や社内体制の最適化、教育・育成、従業員同士の関係強化も含んでいます。

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業界全体の状況

経営者視点では、業界全体の状況を把握し「競争優位性」を常に意識します。企業を存続させるためには、自社と競合他社を比較したときに、自社が有利な立場に立っている状況を維持したいためです。

具体的には、自社が属する業界の景気や、競合他社の動向・戦略・製品などを把握し、必要に応じて、自社の商品やサービスの改善・開発に反映させます。環境の変化に対応しながら、持続的に優位性を獲得していくことが求められます。

景気・情勢

経営者視点では、自社の内部環境だけでなく外部環境である景気や情勢にも目を向けています。景気・情勢に影響する要素は、政治や経済、技術革新、法律の改正、環境、災害など、さまざまです。さらに、景気や情勢の変動による資源価格の高騰などは、経営に直接的な影響を与えます。

このように、景気や情勢から自社にとってのリスク、また反対にチャンスとなる動向を見極めるのです。

ビジョン

経営者は、未来に実現したいことを見通し、ビジョンを立てます。従業員や管理職であれば、今月の目標や今期の目標など、直近のことで視点が止まりやすいものの経営者は、3年後、5年後、10年後など長期の視点を持つもの。

いち従業員としては、目の前の目標を達成することで企業の利益に貢献できるでしょう。しかし自社のビジョンを意識することは、経営者視点に欠かせない要素のひとつです。

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経営計画

経営計画も、経営者視点のひとつに含まれるでしょう。経営者は、継続的に利益を上げ、人を雇用し、ステークホルダーとの約束を果たすため、経営計画を立案する必要があります。経営計画を作成するのは経営陣の仕事であり、従業員は関与しないことが多いものです。

しかし策定された経営計画を従業員も把握することで、いま与えられているミッションがどのような計画にもとづいたものなのか理解できます。

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3.経営者視点が重要な理由

従業員に経営者視点を持ってほしいと考える企業も多いでしょう。ここでは、経営者視点が重要な理由を企業視点で解説します。

労働人口減少を見据えた人材の採用と育成

経営資源のヒト・モノ・カネ・情報のうち、最も重要とされるヒトを確保するためには、経営者視点が不可欠です。労働人口が減り価値観も変化していくなか、人材を確保しづらい状況は、どの企業にとっても経営上の大きな課題となっています。

とくに人事部門が経営者視点を持ち、目の前の課題の対処だけではなく、長期を見据えた人材の確保・育成を行う重要性が高まっています

採用における経営者視点

人材を確保しづらい状況のなかで、人事部門が経営者視点を持つ重要性はより高まっています。これからの時代に活躍する人材を見極める「必要性」も「難易度」も高まり、今までどおりの戦略が成り立たなくなっているためです。

中長期の経営方針に沿って自社が求める人材を把握し、組織全体の状況や市場の動向に沿って、競争力のある新たな採用戦略の立案が求められています。

育成における経営者視点

人材の流動性が上昇しており、確保した人材を育成する必要性・難易度も高まっています。人事部門が経営層と視点を合わせ、経営層のイメージに一致する人材をしっかりと引き上げていくことが今まで以上に求められるでしょう。

そのためにも、キャリア開発や流出の防止策を早めに講じていく必要があるといえます。

意思決定の迅速化

従業員が経営者視点を持つことで、経営陣と部門ごとの意思疎通が円滑になり、意思決定が迅速になります。従業員や管理職が経営の意向を汲み取れるようになると、戦略設計がスピーディーになるためです。

また、各従業員が自社を取り巻く環境変化や、経営方針を理解すると、自分の立ち位置における役割や責任が明確になります。その結果成果に対する責任感も生まれ、パフォーマンスの向上につながる点もメリットです。

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4.経営者視点と現場(従業員)視点の違い

経営者視点と引き合いに出される単語に、「現場(従業員)視点」があります。ビジネスにおいて、2つの視点にどのような違いがあるか見てみましょう。

利益に関する視点

経営者視点と従業員視点では、「利益を考慮する範囲」に違いがあります。

  • 経営者:自社や従業員の利益だけではなく、ステークホルダーや社会へ還元する利益まで重視するもの
  • 現場:自部門の売り上げや目標達成、各メンバーの給与に見合う仕事量の調整など、主に身の回りの利益を重要視

組織に関する視点

経営者視点と従業員視点では、「組織として捉える範囲」に違いがあります。

  • 経営者:会社全体を組織として成長させることに専念するのが役割
  • 現場:部門やチームで成果を上げること、また個人のマネジメントなど、より狭い範囲の組織に向き合う性質がある

責任に関する視点

責任に関しては、「責任を負う範囲」に違いがあります。

  • 経営者:従業員の雇用を守るのみならず、ステークホルダーや社会に与える影響にも責任を負うもの
  • 現場:企業の一員として会社の利益や損失に対して責任を負う

計画に関する視点

計画に関しては、いつまでを見据えて計画を立てるかといった「計画の期間」に違いがあります。

  • 経営者:社会の変化なども見据えて3年後、5年後、10年後といった中期〜長期の計画を立てる
  • 現場:今月、3ヶ月後、1年後、といった短期〜中期の計画を立てる

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5.従業員が経営者視点を持てない理由

従業員に経営者視点を持って欲しいと伝えていても、なかなかうまくいかないことも多いでしょう。なぜ従業員が経営者視点を持てないのか、その理由は主に以下の5つです。

従業員と経営者では立場が異なるから

従業員は、経営に関する責任や権限・影響力がなく、経営者の立場とは異なることが一番の理由です。従業員はどこかの部署に所属しているため、経営者と同じ視点を持ったとしても、企業を横断した働きをしたり権限を持つことが難しくなっています。

求められた成果を上げることが従業員の仕事である点が、経営者視点を持ちづらい大きな理由でしょう。

経営者視点の定義があいまいだから

経営者視点という言葉が何を指すのか、明確な定義がなく、あいまいになりやすいことも理由のひとつです。一般的に、経営者・経営陣・管理職から部下に対して「経営者視点を持つように」と使うケースが多いものですが、明確な定義がないため言う人によって意図する内容が異なってしまうのです。

たとえば単純に利益につながる新しいアイデアを出して欲しいという場合もあれば、財務状況を把握してほしい、育成に力を入れて欲しい、もしくは管理職候補として育てていきたいので高い視座を持って欲しい、といった場合もあるでしょう。現場で使用する際は、認識のズレが生じないようにするのがポイントです。

情報が不足しているから

部下が経営者視点を持ってくれない、という場合、経営者視点を持つための情報が不足している可能性もあります。

たとえば、自社の主要な商品や特徴などの基本的な情報を従業員が把握していないケースもあれば、従業員数や利益・損失の状況、経営資源、経営戦略などの情報がそもそも公開されていないケースもあるでしょう。

経営者と同じように高い視座を持って判断・行動するためには、判断材料となる情報が開示されていることが必要です。

危機感が生まれにくいから

従業員には、経営に対する危機感が生まれにくいことも、経営者視点を持てない理由と言えます。従業員は雇用が守られる立場であり、毎月決まった給料をもらうことが前提になっているため、経営者と違い、自社の経営が自身の人生や生活に与える影響を体感する機会が少ないものです。

また社員の雇用や企業の存続といった点に責任を負わないため、経営者視点で危機感を持つことが難しいといえます。

トップダウンの風土があるから

トップダウンの風土があると、従業員が経営者視点を持てない理由になります。トップダウンの風土は、「重要なことは上が決める」という心理を生み出しやすく、従業員は指示待ちの状態になりやすいためです。従業員の能動的な行動が引き出されず、経営に関与しているという意識や積極的な行動も生まれにくくなります。

現場にある程度の裁量を持たせるなどして、組織の変革が必要な場合もあるでしょう。

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6.従業員に経営者視点を持ってもらう方法

ここでは、従業員に経営者視点を持ってもらう方法を紹介します。自社ですべて実施できているか、現状を振り返ってみるのがポイントです。

情報を開示する

まずは、従業員に向けて十分な情報を開示しましょう。従業員が経営者視点を持ってくれないと感じる場合、情報が不足しているケースが多々あります。たとえば、自社の状況を把握できる経営指標のデータなどを従業員に開示します。経営指標を通して自社の強みや課題を知ることで、当事者意識が生まれるでしょう。

このときデータを開示するだけでなく、経営陣による説明なども合わせて行い、データの解釈に齟齬が生まれないようにするのが理想的です。

経営戦略や目標を浸透させる

自社の経営戦略や目標を社内に浸透させます。従業員に経営者視点を持ってもらうためには、データの開示と同様に、まずは経営者の考えを共有する必要があるためです。浸透させるステップでは、経営陣や管理職が主体となり、積極的に社内に発信し続けることが重要になります。

経営戦略や目標を経営者・従業員の間で共有すると、経営者視点の解像度が高まり、従業員の仕事に対する責任感もアップするでしょう。一度や二度で伝えたと満足するのではなく、しっかりと浸透するまで何度も繰り返し伝えることが重要です。

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数値を意識してもらう

従業員に経営者視点を持ってもらうためには、従業員に数値を意識してもらう必要があります。経営者視点では、「いくら売り上げたのか」「来年は何%改善するのか」のように収益や資源の動きを数値で話すものです。

数値を意識してもらうことは、経営者視点を持つための近道。従業員に意識してもらうためには、管理職とメンバーの間で、定量的な報告を徹底するなどが効果的です。

仕事を任せて責任を与える

仕事を任せて責任を与えることも必要です。その際、いきなり大きな仕事を任せるのではなく、現在よりもひとつ上の仕事を任せるなど段階を踏むのがよいでしょう。

従業員は、仕事を任され責任を持つことによって、影響力や当事者意識が生まれるため、受動的な状態から能動的な状態に切り替えられます。提案や改善を積極的に発信するようになり、結果的に組織の競争力を高めることにもつながります。

経営業務を経験してもらう

経営計画の策定への関与、新規事業への参加、子会社の経営など実際に経営業務を経験してもらうことは、効果的な方法のひとつ。すべてを任せるのではなく、従業員のレベルに合わせて、まずは会議に同席させるなどの小さな経験でも経営者視点を持つきっかけになるでしょう。

いかなる仕事を任せる場合でも、丸投げしてはならず、段階的に育成していく心持ちが上司や人事部門に必要です。