経理とは、企業や行政機関などのお金を管理する仕事です。ここでは、経理についてさまざまなポイントから解説します。
目次
1.経理とは?
経理とは、企業や行政機関のお金を管理する仕事のこと。3点から経理について解説しましょう。
- 経理業務について
- 会計との違い
- 財務との違い
①経理業務について
経理業務は、お金やお金の流れを記録・管理する業務です。具体的には、「日常的に発生するお金の流れを簿記のルールにもとづいて起票、記帳する」「起票、記帳した経理データをもとに、決算書を作成する」という作業になります。
経理は、過去の取引や経費などの記録を管理する仕事なのです。
②会計との違い
会計とは、お金や品物のやり取りを記録する業務です。会計業務には、「外部への情報開示のため財務諸表を作成する財務会計」「経営者など企業内部へ有益な情報を提供する管理会計」の2つがあります。
経理と会計の違いは、下記のとおりです。
- 経理は、日々のお金の流れを管理する
- 会計は、企業内外に対する情報提供
③財務との違い
財務とは、経理業務でとりまとめた帳簿や決算書などをもとに予算管理や資金調達、余裕資金の計画などを行う仕事のこと。経理と財務の違いは、下記のとおりです。
- 経理:日々の取引を帳簿に記帳して、それをもとに損益計算書や貸借対照表などを作成する
- 財務:経理が作成した帳簿や決算書をもとに、予算管理や銀行融資などの資金調達を行う
2.経理の仕事内容
経理の仕事内容は、一体どのようなものなのでしょう。多岐にわたる経理の仕事内容を5種類に分類して解説します。
- 現預金出納管理
- 経費精算業務
- 売掛金・買掛金の管理
- 月次決算
- 年次決算
①現預金出納管理
現預金出納管理とは、日々の現金預金について入金や出金、残高を確認する仕事のこと。
日々の処理は、現金取引から始まります。そして「領収書へ明細を記入」「入出金伝票へ記入」「現金出納帳へ記帳」「仕訳、振替伝票を作成」「総勘定元帳に転記」と続くのです。
②経費精算業務
経費精算業務とは、業務に関係する活動にかかった必要経費を領収書などの書類と引き換えに精算する仕事のこと。経費精算業務は、「小口精算・交通費精算・旅費精算」に分類されているのです。
仕事の流れは、「従業員が申請する・上司といった管理者や経理が承認する・経理が経費の精算、支払を進める」となります。
③売掛金・買掛金の管理
売掛金・買掛金の管理とは、商品や原料などを売買する際、一定期間経過後に代金の精算を行う掛取引の管理をすること。
たとえば「商品を仕入れは終わったが、代金が未払いである買掛金」「商品を販売したが、代金の受け取りが済んでいない売掛金」などです。「毎月末締め翌月末払い」といった定めに従い、処理をします。
④月次決算
月次決算とは、事業年度末に行う年次決算とは別に、毎月の財政状況を進捗・把握するために行う決算のこと。
月次決算は、「現金預金残高の確認・月次棚卸高の確定・仮払金といった仮勘定の整理・経過勘定の計上・期末に確定した費用の計上・月次試算表の作成・月次業績報告の作成」となっています。
⑤年次決算
年次決算とは、財務諸表である決算書を作成する仕事のこと。1年に1度行うもので会社法や法人税法などにより、すべての企業に義務付けられています。
年次決算を受け、「経営者は、次年度の経営戦略や資金繰りなどを設計」「外部関係者は、当該企業への投資や受発注などを決定する」ことになるのです。
3.企業規模別の経理業務
企業規模ごとに、経理業務の内容が異なる場合もあります。ここではそれぞれの違いについて解説しましょう。
- 大手企業の場合
- 中小企業の場合
- スタートアップ企業の場合
①大手企業の場合
大手企業の経理業務には、「経理部が独立して存在する」「分業化されている」といった特徴があるのです。
上場企業の場合、有価証券報告書や決算短信といった書類を迅速に作成する業務があります。そのため「専門的知識」「ほか部署とのコミュニケーション」「正確で迅速な処理」「部署間の調整能力」などが求められるのです。
②中小企業の場合
中小企業の経理業務には、「経理部が人事部や総務部に併設されている」「経営者や役員が経理担当者を兼務する」というケースが多くあります。
このような場合、経理業務以外にも「給与計算」「勤怠管理」「備品管理」「福利厚生」などの知識が求められるのです。中小企業の経理業務には、オールラウンドに仕事をこなす力が必要となります。
③スタートアップ企業の場合
スタートアップ企業の経理業務には、「雇用が進んでいない」「本業の事業展開に人が割かれ、経理にまで手が回らない」場合も多いです。よって経理を担当する専任の人材が不在になるケースが生じます。
経理の知識はさまざまなビジネスに活用、応用できるもの。一般社員も経理の知識を身に付け、社内で協力して経理業務を遂行していきましょう。
4.経理業務で役立つ資格
経理業務で役立つ資格とはなんでしょうか。ここでは5つの資格について解説します。
- 日商簿記検定
- ビジネス会計検定
- FASS検定(経理・財務スキル検定)
- BATIC(国際会計検定)
- 給与計算実務能力検定
①日商簿記検定
日商簿記検定は、商工会議所の検定試験。企業規模や業種、業態を問わず、「日々の経営活動を記録・計算・整理する」「経営成績と財政状態を明らかにする」ための技能資格です。
「1級・2級・3級・初級・原価計算初級」に分かれており、ネット試験なども含め日本全国で受験できます。
②ビジネス会計検定
ビジネス会計検定は、商工会議所の検定試験。財務諸表に関する知識や財務諸表の分析力を問うことで、財務諸表を理解しながらビジネスを展開していくための資格です。
「1級・2級・3級」に分かれています。また財務経理担当者だけでなく、営業や企画担当者、経営者・学生などの受験も多い注目の資格です。
③FASS検定(経理・財務スキル検定)
FASS検定(経理・財務スキル検定)は、日本CFO協会が経済産業省の委託事業として行っている検定試験。
経済産業省が開発した「経理・財務サービス・スキルスタンダード」や米国テスト理論
により、経理や財務の分野について、客観的な実務知識やスキルの習得度を測定できる検定です。
④BATIC(国際会計検定)
BATIC(国際会計検定)は、東京商工会議所が実施している検定試験。
「外資系企業との取引・外資系企業との競合や提携・海外からの資金調達・国際的なM&A」など、グローバルなビジネスシーンで求められる、英語力や会計取引と国際会計理論に関する知識を同時に測定できます。BATICは、IFRS対策としても注目されているのです。
⑤給与計算実務能力検定
給与計算実務能力検定とは、企業や団体における「給与計算業務に対する知識・明確な評価尺度による実務遂行力」を測る検定のこと。一般財団法人職業技能振興会と一般社団法人実務能力開発支援協会が実施する検定です。
取得すれば、「給与計算実務の確かな知識とスキルの証明」「労務コンプライアンスの向上」などを実現できます。
5.経理アウトソーシングについて
経理アウトソーシングとは、経理業務の一部またはすべてを代行してくれるサービスです。経理アウトソーシングについて2つのポイントから解説しましょう。
- 注目される背景
- 経理アウトソーシングのメリット
①注目される背景
経理アウトソーシングが注目される背景にあるのは、「経理業務の効率化・IFRS(国際財務報告基準)や軽減税率への対応・電子帳簿保存法による経理データ化への対応・人材不足」などです。
複雑化する経理業務をアウトソーシングして、本業に力を注ぎたいという企業の思惑が背景にあります。
②経理アウトソーシングのメリット
経理アウトソーシングをするとどんなメリットが得られるのでしょうか。3つ解説します。
人手不足の解消
少子高齢化による労働力不足は、経理業務にも影響しているのです。人材の確保が難しい場合、経理アウトソーシングを活用すれば、経理業務の停滞を回避できるでしょう。人材が確保できれば、いつでもアウトソーシングを終了できる手軽さもメリットです。
属人化を無くす
ジョブローテーションが機能しない職場では、少数精鋭の経理部門のブラックボックス化・属人化が進みます。
経理のアウトソーシングで経理業務を第三者に委託すれば、このような現象を減らせるのです。また業務の標準化も進められます。
コア業務に専念できる
経理業務には、「業績や予算の管理・決算業務といったコア業務」「立替経費精算・現金出納管理・請求書発送といったノンコア業務」があります。ノンコア業務を外部に委託すれば、企業の経理部門は本業であるコア業務のみに専念できるでしょう。
6.経理のテレワーク導入について
経理業務にも、テレワークが導入されています。経理業務のテレワークの推進方法を3つ解説しましょう。
- ペーパーレス化を進める
- ICT環境の整備
- クラウド会計ソフトを使う
①ペーパーレス化を進める
経理業務のテレワーク推進を阻むものとして挙げられるのが、承認印と紙。経理業務は、膨大なデータの保存やスムーズな閲覧が求められる業務です。テレワークで脱はんこやペーパーレスを実現し、効率化を進めていきましょう。
②ICT環境の整備
テレワークには、「ICTすなわちパソコンやネットワーク」「机や椅子、空間などの執務環境」「テレワーク専用の勤怠管理」の整備が必要です。テレワークを導入するためにも助成金やクラウドサービスなどを活用して、環境整備に取り組みましょう。
③クラウド会計ソフトを使う
クラウド型会計ソフトには、「データをクラウド上で保存・ネット環境があればどこでも作業できる・つねにデータが最新版としてアップデートされている」といったメリットがあります。税理士などとの情報共有もしやすいため、便利でしょう。