形式知とは|暗黙知との違い、具体例、変換方法などを紹介

形式知とは、言語化できる明示的知識のこと。ここでは、形式知を使ったナレッジマネジメントについて解説します。

1.形式知とは?

形式知とは、文章や計算式、図表などで説明できる知識のこと。大きな特徴は、「客観的に捉えられる知識」「言葉や数式などの論理的構造で説明できる知識」で、別名、明示的知識とも呼ばれます。

形式知と反対の知識は、経験や勘といった言語化が難しい主観的な知識である暗黙知です。経営学者の野中郁次郎氏が組織的知識創造について語った際、形式知と暗黙知をセットにして説明したことをきっかけに、これらの言葉が社会に広まりました。

形式知とは、文章・計算式・図表などにより、客観的、論理的に言葉で説明ができる知識のことです

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2.形式知の定義と暗黙知との違い

形式知と暗黙知は、相反します。「形式知を正しく理解するために暗黙知を知る」「暗黙知を正しく理解するために形式知を知る」ことを目的に、形式知と暗黙知について詳しく知ってみましょう。

形式知の定義

形式知とは、「言語化された知識」「客観的な知識」のことで、可能な限り文章・計算式・図表などで説明できるものでなくてはなりません。

個人的な体験や知識、勘でも、それらをマニュアル化することは可能です。マニュアル化すると、個人的な体験に限定されていた事柄が、他人も理解できるように言語化され、客観的な知識として共有されます。

このように個人的な事柄でも、客観的に言語化された知識に変換できれば、立派な形式知となり得るのです。

暗黙知との違い

暗黙知とは、個人的な経験や勘などに基づいており、他人に説明することが難しい知識のことで、経験や勘、ノウハウや思いなどがあります。職人技や職人気質などに象徴される通り、極めて個人的な要素が強いため、他人に説明して理解を得るのは困難でしょう。

しかし、個人が保有している暗黙知を、マニュアル化したり数値や公式、図表へ落とし込んだりして形式知化することは可能です。ビジネスの世界では、形式知化された暗黙知により、業務効率化や生産性向上が実現できると注目されています。

形式知の具体的な事例

形式知の具体的事例を自動車の運転を例から見てみましょう。

自動車の運転を、初心者とベテランドライバーとで比較した場合、勘や経験、感覚などに大きな差があることは言うまでもありません。これらはすなわち暗黙知、つまり言語化して他者に説明することが難しい知識です。

一方、たとえば自動車の運転で「アクセルを踏む」「ブレーキを踏む」といったマニュアル化された運転方法は、言語化によって他者に説明できる知識ですので、形式知だと判断できます。

形式知とは、言語化された客観的な知識です。一方、暗黙知は、個人的なもので言語化しにくい知識となります

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3.ナレッジマネジメントと実施するポイント

ナレッジマネジメントとは、経営学者の野中郁次郎氏が提唱した経営理論です。日本語では「知識経営」と訳され、知識を経営に活かす手法のひとつして多くの企業で取り組みが進められています。そんなナレッジマネジメントについて解説しましょう。

ナレッジマネジメントとは?

ナレッジマネジメントとは、「従業員個人が持つ有益な知識や経験、ノウハウなどを言語化する」「言語化したものを組織内で共有して、業務効率化を図る」ための手法で、活用すれば、優秀な人材が持っているノウハウを組織全体で共有できるのです。

たとえば、優秀な成績を誇る営業部の人材が長年の経験に基づく勘やノウハウをマニュアルに落とし込むケースです。実績のある人材の営業手法をマニュアル化できれば、その手法を他の従業員も共有できるでしょう。

極めて個人的な経験を言語化し、形式知として全社的に活用する、これがナレッジマネジメントの本質です。

SECIモデルを利用する

暗黙知を形式知に変換する際は、「共同化」「表出化」「結合化」「内面化」という4つのフェーズで構成されるSECI(セキ)モデルというフレームワークを使用します。その際のステップは、下記の通りです。

  • 共同化:暗黙知を暗黙知として伝え、経験を共有していく
  • 表出化:暗黙知の共有後、それを言葉や図など明確なものに変換していく
  • 結合化:すでにある形式知と形式知を結び付け新しい知識を形成して、個人的で潜在的な暗黙知を組織財産として活かす
  • 内面化:形式知が従業員の内面に知識として蓄積され、新たな暗黙知を創り出し、再び新しい形式知を構築していく

場のデザインを考える

ナレッジマネジメントでは、場のデザインを考えることが重要です。「場」とは、暗黙知と形式知の双方が、「新たに創り出される」「組織で共有される」「積極的に活用される」場のこと。

ナレッジマネジメントでは、暗黙知や形式知が使われる場を、どうデザインするかが鍵となります。場のデザインで問われる場として挙げられるのは、通常業務を行うオフィスフロアのほか、休憩スペースや喫煙所、社内SNSなどです。

ナレッジマネジメントで成功の鍵を握るのは、「共同化、表出化、結合化、内面化の4つのフェーズに合わせた場をデザインする」「暗黙知や形式知に応じた場をデザインする」
だといえるでしょう。

知的財産を引き継ぐ仕組みを作る

ナレッジマネジメントを効率化するには、知的財産を引き継ぐ仕組み作りも重要です。ナレッジマネジメントを一時的なもので終わらせないためにも、下記のような知的財産を社内で引き継ぐためのくシステムを作りましょう。

  • 明確化した企業理念を、組織や企業全体で共有する
  • 暗黙知や形式知などの知識を提供するための仕組みを整備する
  • 知識を継承できる仕組みを構築する

個人としては他人との知識やノウハウの共有に消極的でも、組織や会社全体として理念や経験、勘、ノウハウ、知識などを共有するような仕組みを構築すれば知的財産を引き継ぐことができます。

情報共有に対する評価制度を整える、データベースやイントラネットを活用する、なども並行してみるとよいでしょう。

知識ビジョンを策定する

ナレッジマネジメントを企業文化にしっかり浸透させるには、知識ビジョンの策定が欠かせません。

策定には、リーダーによる全社的な知識ビジョンの提示が鍵を握ります。ナレッジマネジメントで効果を出すためには、ナレッジリーダーと呼ばれる経営トップのリーダーシップが欠かせないからです。

知識統轄役員といったナレッジマネジメントにおける最高責任者を選定し、知識ビジョンを策定していきます。そして、選定されたリーダーがSECIモデルに沿って、知識ビジョンの作成や場のデザインなどのマネジメントを推進し、知識を活性化させるのです。

最高責任者を中心として、全社的な知識ビジョンを策定して、ナレッジマネジメントを新たな企業文化として定着させていきます。

ナレッジマネジメントは、「共同化」「表出化」「結合化」「内面化」という4つのフェーズで構成されるSECI(セキ)モデルのもと推進していきます

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4.暗黙知を形式知化するときの注意点

ナレッジマネジメントでは、暗黙知を形式知化するときにいくつか注意したい点があります。暗黙知を適切に形式知化できなければ、ナレッジマネジメントそのものが意味をなさなくなるからです。ここではそんな注意点を3つに絞って解説しましょう。

  1. 紙以外の形式知化も考える必要がある
  2. 音声や動画を活用する
  3. IT化を検討してみる

①紙以外の形式知化も考える必要がある

従来、暗黙知を形式知化する際、紙ベースに落とし込んでいく形式が多く用いられていました。多くの従業員の手元に置かれ、各々が必要なときに開いてその中に記載されている形式知を活用するマニュアルです。

しかし文書が多くなると、必要なときに必要な文書を自由に取り出し、閲覧することが困難になります。つまり、形式知を紙ベースで保管しておく方法には限界があるのです。形式知化を紙の文書に落とし込む以外の方法を採用したほうがよいでしょう。

②音声や動画を活用する

暗黙知を形式知化した知識やノウハウを共有保管する際、音声や動画を活用する方法があります。たとえば、文書化されている形式知を読む際、個人の理解力の程度によってマニュアルの解釈が異なる場合があるでしょう。

それではナレッジマネジメントは機能しません。そこで、「音声での解説」「動画での実演を含めた説明」をプラスすると、目や耳をもとに情報を追加できます。つまり多くの人に理解してもらえて管理がしやすいナレッジマネジメントを展開できるのです。

③IT化を検討してみる

形式知化した知識やノウハウを紙以外の方法にて管理することを考えた場合、形式知のIT化にも積極的に取り組むべきでしょう。その方法は、下記の通りです。

  • 社内共有化できるイントラネット
  • 単語検索が可能なデータマイニングツール
  • ノウハウを提供し合うFAQシステム

システムの導入に際しては費用も必要となるため、軽々に事を進めるわけにはいきません。しかし形式知のIT化は業務の効率化の一助になります。どの段階で形式知のIT化に踏み切ればよいのか、タイミングを計って適切に導入するとよいでしょう。

暗黙知を形式知化する際は、紙の文書以外に、音声・動画・ITツールなども活用してナレッジマネジメントを推進しましょう

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5.ナレッジマネジメントの具体例とアウトソーシング化

最後に、ナレッジマネジメントを導入した企業の具体例とナレッジのアウトソーシング化やITのクラウド化について解説します。

P&Gの事例

P&Gは、米国最大の家庭用消費財メーカーとして世界的に有名な企業です。しかし、P&Gも、1990年代後半、非効率な投資が原因となって業績悪化に陥りました。

2000年に就任したCEO、Alan Lafleyは、オープンイノベーションの活性化だけでなく、実践コミュニティ活動に取り組みます。実践コミュニティとは、ナレッジマネジメントが機能している集団のこと。

「知識や情報、スキルやノウハウを共有する」「組織の枠を超えて相互交流を持続的に行い、相互理解を深めていく」、これらができる集団から100以上の「実践コミュニティ」を作成し、効率的経営を実現して業績を大きく改善したのです。

ナレッジのアウトソーシング化

ナレッジのアウトソーシング化とは、ナレッジに関わるワークを、外部のナレッジ専門家に委託すること。

ナレッジマネジメントを運用する際、マネジメントを上手に活用できないといった問題に直面する場合がありますが、その際は、ナレッジのアウトソーシング化を検討するとよいでしょう。それにより、下記を適切に実行できます。

  • モニタリングアセスメントや情報資産棚卸といった管理業務
  • 専門業務の問い合わせ受付、回答業務の代行、問い合わせ履歴のFAQ化、業務改善提案といった社内のヘルプデスク機能
  • マニュアルの編集、提案書の作成代行、現場の知識の体系化といったドキュメンテーション

ITのクラウド化

ITのクラウド化とは、ネットワークで外部のクラウドサービスを活用し、自社のサービスを運用していくこと。ナレッジのアウトソーシングだけでなく、ITのクラウド化にも取り組むことでより効率よく効果的なマネジメントを実現できます。

  • データを送信するだけで分析結果がフィードバックされる情報解析サービス
  • スケジュールソフトと連動し、リアルタイムでアポイント調整を実施するセクレタリーサービス

などはITのクラウド化を象徴した特徴です。リアルタイムに高品質なナレッジマネジメントに取り組む際、暗黙知を形式知化するナレッジマネジメントに特化したクラウドを賢く活用してみましょう。

ナレッジマネジメントは、「ナレッジのアウトソーシング化」「ITのクラウド化」により、さらに進化します