2018年4月からスタートしたキッズウィーク。地域ごとに連休を分散させることで、労働者の有給休暇取得や観光地の混雑回避、観光業界の活性化などさまざまな効果を期待する政府の新しい取組です。
ここでは、キッズウィークが生まれた背景や目的、今後取り組むべき課題、実際にキッズウィークを実施した地域の事例などについて解説します。
目次
1.キッズウィークとは?
キッズウィークとは、地域ごとに長期休暇の時期を分散することで、まとまった休暇にて家族が一緒に過ごす時間を増やす取組のこと。
親と子どもの夏休みが合わないことで、一緒に過ごせないといった経験をした人も多いのではないのでしょうか。政府の推進の下、2018年4月から一部の自治体で学校の休業日を新たに設定するなどしてキッズウィークの導入が開始されているのです。
言葉の意味
まず「キッズウィーク」という言葉の意味について解説しましょう。
キッズの意味
ご存じの通り「キッズ」(kids)は子どもを指します。このことから、キッズウィークは子どもに焦点を当てた取組であると分かります。
ウィークの意味
ウィーク(week)は週、平日などを指す言葉です。会社員の長期休暇である1週間の休みのことを指しています。
2.政府がキッズウィークを推進する背景
キッズウィークが生まれた背景にあるのは、政府が推進する「働き方改革」です。政府は、ワークライフバランスの充実を図るに、働き方だけでなく休暇の工夫も重要だとし、休み方に焦点を合わせた施策としてキッズウィークを打ち出しました。
キッズウィークが浸透することによって、有給休暇を取得しやすい環境の整備や、親子が向き合う時間の増加に加え、観光や旅行の消費需要の喚起などが期待されています。
3.キッズウィークに関する調査
続いて、キッズウィークの具体的な導入の方法について解説します。
学校休業日の設定における工夫
キッズウィークの施策では、親と子どもの休みを合わせるために学校の休業日の設定を工夫しています。
文部科学省が2018年に教育委員会を対象として実施した調査によると、9割以上の教育委員会が「学校休業日の設定について工夫している」「工夫する予定」と回答していました。
また、43.7%が「2日以上の連休になるよう工夫」しており、キッズウィークの導入のために何らかの取組を行っていることが分かったのです。
体験的学習活動等休業日の設定
具体的な方法として「体験的学習活動等休業日」の導入があります。
これは学校教育法施行令が定める「家庭及び地域における体験的な学習活動その他の学習活動のための休業日」の趣旨と合致する休業日、または一部の時間帯を休業とした授業日のこと。
地域行事に合わせた休業日や秋休み、土日祝日等と組み合わせた連休の設定などが該当します。同調査によると、「体験的学習活動等休業日を設定している」「設定する予定」といった教育委員会は都道府県で59.6%、市町村は37.9%となりました。
4.キッズウィークの目的とは?
前述の通り、キッズウィークを導入することによってさまざまな効果が期待できます。有給休暇取得の促進に拍車をかけ、休日の在り方の多様化により観光需要の平準化とそれによる雇用の拡大、地域の活性化などが考えられているのです。
また、旅行業界・宿泊業界と連携して大人と子どもが一緒に楽しめる旅行商品や子ども歓迎の宿泊商品が生まれることで、家族旅行の促進など、さまざまな波及効果が生まれると想定されています。
5.キッズウィークの実態、事例
次に実際にキッズウィークを導入している自治体の事例を見てみましょう。
岐阜県羽島郡岐南町・笠松町
これまでも2学期制において前後期の間5日間の秋季休業日を設けてきた羽島郡岐南町・笠松町。2018年はさらに2日間を加え、2018年10月6日(土)~14日(日)にてキッズウィークを実施しました。
その際、町民運動会や羽島郡健康ウォークを開催し、親と子や地域の方がふれ合う機会を提供。また、会社を休めない親に合わせた子ども教室も20以上開催しました。2019年も10月5日(土)~10月14日(祝)にキッズウィークを実施し、導入に力を入れています。
佐賀県武雄市
佐賀県武雄市では、たけおキッズウィークと命名した休暇を実施。夏休みの1日を10月の3連休と合わせて4日間のキッズウィークを開催したのです。
この間、職場体験バスツアーや図書館1周年記念イベントなどさまざまなイベントを行い、さらに会社を休めない親のために放課後児童クラブを朝から開所するなど工夫をこらしました。
2019年は、10月の3連休直前の10月11日(金)を休みとして4連休とした「たけおキッズウィーク」を開催し、保護者や地域住民協力の下、取組の周知を行っています。
6.キッズウィークに対する声、課題
このようにキッズウィークに対して積極的な対応や好意的な反応が見られる一方、インターネットを中心にさまざまな疑問の声も上がっています。
たとえば、キッズウィークとしたものの、実際は会社を休めず子どもを預ける親が多いといった現状を課題とする声や、こうした連休が増えることでサービス業に従事する親はますます休みが取りづらくなるといった指摘もあるのです。
実際にキッズウィークを導入し期待した成果を出すには、今後もさまざまな工夫が必要だといえるでしょう。
7.キッズウィークに対する今後の取組
このような課題がある中で、今後キッズウィークはどのような展開を見せていくのか、予定されている取組の内容を見ていきましょう。
- 周知の徹底
- アクティビティの提供
- 先行実施地域の調査
- 宿泊や旅行業界からの情報発信
- 有給休暇取得の促進
①周知の徹底
キッズウィークを一般に浸透させ、さらに企業の協力を得るにはまず各都道府県や市町村、実際の教育現場の協力が不可欠です。国は関係省庁との協議、有識者で構成される会議を開催し、意見交換などを行い、地域に共有することを予定しています。
また、地域は自治体・学校・商工会や商工会議所、NPOなど、実際にキッズウィークを行う際の関係者との協議を行い、キッズウィークの周知や普及、共有に向けて積極的に推進する方針を定めています。
②アクティビティの提供
キッズウィーク中は、子どもたちの学びや健やかな成長を目的として、さまざまな体験を提供する必要があります。
地方の公共団体、社会教育・スポーツ・文化関係団体などは多彩なアクティビティを実施し、保護者が仕事を休めない家庭にも配慮しつつ、休業日に子どもたちが大人と一緒に多種多様な学習・体験活動を行えるよう工夫をこらす取組を行っていく予定です。
また、地域における子どもの受け入れ環境が整備されるよう促す必要もあります。
③先行実施地域の調査
ご紹介した岐阜県羽島郡笠松町や佐賀県武雄市のように、すでにキッズウィークを実施している市町村も少なくありません。今後は、そのような地域で行われた取組を調査することが重要でしょう。
先行実施地域で行われたキッズウィークの結果をもとに、現状や課題を分析して、これからキッズウィークの実施を予定している地域に共有し役立てる取組が進んでいます。
また、文部科学省が主導して「キッズウィーク先行実施地域」を増加させていくことも課題とされているのです。
④宿泊や旅行業界からの情報発信
キッズウィークが生まれた背景には観光や旅行の消費需要の喚起といった側面があります。キッズウィークの浸透には旅行業界・宿泊業界との連携が不可欠でしょう。
政府は今後、このような企業の商品として親子で楽しめる旅行商品や宿泊ツアーなど、「キッズウィーク」に関連した商品販売の促進を目標としているのです。
これによって情報発信、さらにキッズウィークに取り組んでいる地域の動向について情報収集や共有ができるといった狙いもあります。
⑤有給休暇取得の促進
大人と子どもの向き合う時間を増やすことが目的のキッズウィークは、企業の理解や協力があって成り立つもの。
政府は有給休暇取得率70%を目指すと発表しており、キッズウィークに合わせて有給休暇が取得できるよう取組を進めることを今後の方針に加えています。
具体的には、キッズウィークが実施される市町村と都道府県、さらに近隣都道府県などにも周知し、子どもたちの親だけではなくすべての労働者が年次有給休暇を取得できるよう取り組むとしているのです。