キッティングとは? 作業内容、必要な知識、手順、注意点

キッティングとは、企業内で使用するPCを、エンドユーザーがすぐに使える状態にするセットアップ作業のことです。ここではキッティングについて、手順や注意点、マスターPCの作成やアウトソーシングなどから説明します。

1.キッティングとは?

キッティングとは、PCの導入時に、エンドユーザーが使えるようにする設定作業のこと。具体的な内容は、下記のとおりです。

  • OSのインストール
  • ネットワークの設定
  • プリンターなど各種ドライバーのインストール
  • 業務アプリケーションのインストール
  • ライセンス認証
  • OS・アプリケーションなどの各種設定
  • セキュリティパッチの適用
  • ドメイン参加
  • ラベル貼付

部署によって設定の内容が異なる、職種や階層によってシステムに使用制限をかけるなど、事前準備は広範囲におよびます。

キッティングとは、企業でPCを導入する際、エンドユーザーがすぐに使えるようにする設定作業のことです。事前準備は多岐にわたります

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2.キッティングの手順は?

PCのキッティングには、「手作業」「クローニング」といった2つの方法があります。

  1. 1台ずつ手作業で行う
  2. 事前にコピー元となるPCを用意しておき複数台にコピー(クローニング)

どちらの方法がよいかは、状況によります。それぞれの手順の詳細と、メリット・デメリットを見ていきましょう。

①手作業で行う場合

手作業でキッティングを行う場合の手順は、下記のとおりです。

  • PCを用意し、電源を入れる
  • ログインユーザーの作成
  • ホスト名やIPアドレスなどの設定
  • 必要な業務アプリケーションをインストール
  • ライセンス認証を実施
  • セキュリティ設定、省エネ設定、ブラウザ設定
  • セキュリティパッチの適用
  • ラベルの貼付

手作業のメリット

手作業のメリットは、PCが手元にあればすぐにキッティング作業ができる点です。台数が少なければ短期間でキッティングを完了できるため、小回りの利く方法といえます。

「PCの台数が少ない」「数台ずつ、複数機種のキッティングを行う」という条件で短納期作業の場合に、おすすめの方法です。

手作業のデメリット

手作業のデメリットは、1台ずつ手作業でキッティングするため、「人為的なミスにより品質にムラがある」「人件費が発生するので1台当たりのキッティング単価が高くなる」傾向にある点です。

キッティングするPCが数十台と多い場合、コスト・品質・設備面を考えると、手作業で行うメリットは少ないといえます。

②クローニングで行う場合

クローニングでキッティングを行う場合の手順は、下記のとおりです。

  • マスターPC(参照PC)の作成
  • SYSPREPコマンドによる一般化の実施
  • マスターイメージ(標準イメージ)の抽出
  • 各PCのブートオーダーの変更
  • クローニング
  • 個別キッティングの実施
  • 動作評価の実施

クローニングのメリット

クローニングのメリットは、下記のとおりです。

  • 大量のPCを一度にキッティングできる
  • 設備に余裕があれば、短期間で数百台も可能
  • 作業効率がよく品質を均一化できる
  • PCの故障時にはマスターイメージを使って代替機を用意できる

クローニングのデメリット

クローニングのデメリットは、下記のとおりです。

  • マスターPCの作成から検証作業までに数週間~1か月程度かかる
  • 作業者にある程度の知識や技術力、経験が必要となる
  • 導入するPCの機種が多い場合、機種ごとにマスターPCを作成するため作業量が増える

PCのキッティングには、手作業とクローニング、2つの方法があります。どちらもメリット・デメリットがあるので、状況に適したほうを選びましょう

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3.キッティングの注意点

企業で新しいPCを導入し、キッティングをする際、担当者は作業内容とスケジュールの確認が必須です。キッティング作業は煩雑で時間がかかるため、ミスなく設定したPCを、期日までにユーザーへ届けるには苦労が伴う場合もあります。

セキュリティ面

キッティングでは、セキュリティ対策も念入りに行いましょう。ウイルス感染やサイバー攻撃、情報漏えいなどの話をよく耳にしますが起こった場合、企業にとって大損失になります。

また従業員が私用で、業務に関係ないサイトを閲覧したり、ファイルをダウンロードしたりしたために何らかの事故が起きる可能性も。「うちの会社は大丈夫だろう」などと甘く考えず、きちんと対応しておきましょう。

キッティングの際には、「作業内容とスケジュールの確認」「十分なセキュリティ対策」を行いましょう

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4.マスターPCを作成するとき

コピー元となるマスターPC(参照コンピューター)を作成するときのポイントについて、詳しく見ていきましょう。

  1. ボリュームライセンスが必要不可欠
  2. プリインストールされたWindowsを用いて作成してはいけない
  3. ライセンスの認証回数の上限増加
  4. PCの情報重複に注意

①ボリュームライセンスが必要不可欠

マスターPCを作成する際、OSのボリュームライセンスの購入が必要となります。ボリュームライセンスに付随する「再イメージング権」が必要となるからです。

企業で大量のPCを導入する場合、マスターPCを作ってから複数台にコピーしていくという流れになりますが、その際、再イメージング権がないままOSをコピーしてしまうと、ライセンス違反となってしまいます。事前にボリュームライセンスを購入しましょう。

②プリインストールされたWindowsを用いて作成してはいけない

PCを購入したときにプリインストールされているWindows OSは、購入したそのPCに対してのみ使用が認められたOEMライセンスですので、ほかPCへのクローニングには使えません。

クローニングでマスターPCを作成する際は必ず、ボリュームライセンスメディア(ISO)を入手しましょう。

③ライセンスの認証回数の上限増加

ボリュームライセンスを使用してクローニングやキッティングを進めていく前に、ライセンス認証回数の上限値を必要数まで増やしておきましょう。上限値の変更は、マイクロソフト社またはライセンス購入元のベンダーに申請すれば可能です。

うっかり忘れてしまいライセンス数が不足すると、キッティングの最中にライセンス認証が通らず、エンドユーザーへのPC納品が遅れてしまいます。

④PCの情報重複に注意

資産管理ツールやウイルス対策製品など、管理サーバーで一元管理するタイプのアプリケーションを各PCにインストールする際は注意が必要です。

それは、アプリケーションベンダーに「ID初期化などの処理が必要か、そのままクローニングしても問題ないか」をあらかじめ確認すること。

アプリケーションには、インストール時にユニークなIDを生成し、各PCを識別しているものも。クローニングで大量展開する際、ユニークなIDまでコピーされてしまうと、管理サーバー上でデバイス情報が重複してしまい、混乱する場合があります。

キッティングのマスターPCを作成する際は、ライセンスの状態・必要数を満たしているかどうかに注意しましょう

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5.個別で作成するとき

マスターイメージを各PCにコピーしたらPC1台ずつ個別に、業務アプリケーションや各種設定をします。その際の作業について見ていきましょう。

  1. インベントリ情報収集
  2. 識別しやすいようラベルを貼付する
  3. 同梱する物を決めておく
  4. 設定の結果を保存

①インベントリ情報収集

もし資産管理ソフトを導入していなければ、キッティングしたPCをエンドユーザーに配布する前に、ホスト名・IPアドレス・シリアル番号・MACアドレスなどのインベントリ情報を収集しておきましょう。IT資産管理を行うために必要なものです。

ただし資産管理ソフトを導入するのであれば、PC展開後でもインベントリ情報の収集は可能です。

②識別しやすいようラベルを貼付する

ユーザーからPCの不具合の連絡があった場合に備え、資産管理番号やホスト名をラベルに記載し、見やすいところに貼り付けておきましょう。

ユーザーがラベルを見て管理番号を伝えれば、管理者は離れた場所にいても概要をつかめるのです。また資産の棚卸しの際、個体の識別がしやすくなります。ラベルに記載する内容や貼付位置についてのルールを決めておくのもよいでしょう。

③同梱する物を決めておく

ユーザーにPCを届ける際、同梱するものを決めておきます。企業のデスクトップPCであれば、セットで使用するモニターやキーボードなどが支給物として挙げられるでしょう。

マニュアルはPDFなどのデータで入手可能なため、共有ドライブに保存しておいて必要に応じて各自が参照する形など、同梱しない場合が多くなっています。

④設定の結果を保存

個別キッティングの設定の結果を保存しておきましょう。個別キッティングでは、ユーザーの職種や部署ごとに設定が異なったり、業務アプリケーションをインストールしたりと手作業に頼るケースが多くなります。

後になって設定もれがないか確認できるようバッチやスクリプトなどで確認し、結果を保存しておきましょう。

マスターイメージを各PCにコピーしたら、PC1台ずつに個別にキッティングしていきます。個別のPCに対し手作業が多くなります

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6.キッティングはアウトソーシングしよう

キッティングは、煩雑で手間がかかる作業なので、自社で行うと担当者の負担が多くなるためめ、外部専門企業へのアウトソーシングで行うのも一案です。キッティングをアウトソーシングした場合のメリットを解説しましょう。

  1. 社内の負担が軽減する
  2. 手順を決めて作業できる
  3. 専門知識を取り入れられる

①社内の負担が軽減する

キッティングをアウトソーシングすると、社内の担当者の負担が大幅に軽減します。設定作業・検証作業・スケジュール管理・初期不良への対応やアフターフォローなどを専門企業に任せると、作業が早く正確に行われ、PCの使用開始もスムーズに進むでしょう。

自社で行う場合、社員が別の業務を兼ねていて、支障をきたす場合があるかもしれません。アウトソーシングすると、重要な業務に集中できます。

②手順を決めて作業できる

定期的にキッティングのアウトソーシングを依頼すると、メリットが多くなります。

一般的に企業のPCは数年単位で交換しますがその際、新しいPCを設置する期日について決めると、アウトソーシング委託先の会社がスケジュールや流れを提示してくれるのです。つまりユーザーは、ミスなく無駄のない段取りで新しいPCを受け取れます。

③専門知識を取り入れられる

キッティングをアウトソーシングすると、正確な最新情報が手に入りやすくなります。ッティング専門会社は、コンサルティングを実施している場合も多いもの。

キッティングの依頼によって、最新の知識や情報などをもとに専門会社ならではの提案をしてもらえるでしょう。自社だけの知識ではおよばなかったセキュリティ対策やIT事情など、大切な課題に気付けるかもしれません。

キッティングを外部の専門企業にアウトソーシングすると、「社内の負担が軽減する」「手順を決めて作業できる」「専門知識を取り入れられる」といったメリットが得られます

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7.キッティングの落とし穴?

キッティング作業に詳しくない人から見れば単純な作業に見えるかもしれません。しかし社内で行うと、「キッティング作業担当者が残業して対応する」「ユーザーへの配布後に設定ミスが発覚し、業務に支障をきたす」場合もあるのです。

状況によってキッティング作業は、アウトソーシングにしたほうがよいでしょう。

キッティング作業の際に起きる問題

キッティング作業で設定するPCが数台程度の少数であれば、1台ずつOSとソフトウェアをインストールする方法で対応できます。しかし「PCの台数が数十台ある」「部署ごとで設定が異なる」場合、作業が煩雑になり、時間もかかってしまうでしょう。

キッティング作業を自社で行うと負担がかかります。状況によっては専門会社にアウトソーシングしましょう