行動指針とは? 作り方、決めるメリット、具体例をわかりやすく

行動指針とは、行動の基本方針、行動基準のことです。ここでは行動指針について具体的事例を交え解説します。

1.行動指針とは?

行動指針とは、行動するための基本方針のこと。ビジネスにおいては、行動を起こす際の判断の基準として用いられます。行動指針を決めることで、従業員ごとに行動がバラバラにならず、同じ価値観のもと働けるなどのメリットがあります。

英語では、「guidelines for action」や「guiding principle for operations」と表現します。

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2.行動指針を掲げる目的

行動指針を掲げる目的は、理念を実現するために構成員が取るべき行動基準を明確化すること。行動指針を掲げると、組織の理念実現に向けてどのような基準をもとにアクションを起こしていくのかが、構成員に分かりやすく提示できます。

行動理念と行動指針をかんたんにまとめると、以下のように説明できるのです。

  • 行動理念…進むべき道の先にある概念
  • 行動指針…道の先にある概念を実現させるためのアクション

行動指針とは、行動するための基本方針です。行動理念を実現させるためのアクションと位置付けられています

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3.行動指針と似た言葉

行動指針と似た言葉には次の2つがあります。

行動規範

行動規範は、「道徳・規範・倫理・法令・慣行・集団規則」などの言葉の総称として使用されているのです。英語で「Code of conduct」といい、次に挙げるような行動や特性を表した基準だといえます。

  • 行動するに値する行動
  • 望ましい人格特性
  • 本来あるべき姿
  • 避けるべき言動
  • 好ましくない特性

企業理念

企業理念は、企業の存在意義やあり方を言語化したもの

「企業が何のために存在しているのか、といった思想」「企業がどこに向かって活動しているのか、といった使命」「企業の強みは何か、といったあり方」をコンパクトにまとめており、英語で「Corporate philosophy」といいます。

こうした点から、行動基準である行動指針とは、用途が異なるのです。

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4.行動指針に必要な要素

行動指針に必要な要素とは、それがないと行動指針として成り立たなくなってしまうという側面を持つもの。ここでは、行動指針に組み込むべき内容について、企業活動における行動指針をイメージしながら解説します。

行動指針に組み込むべき内容とは?

行動指針に組み込むべき内容は、下記のとおりです。

  • 具体的な行動目標
  • 企業活動や企業構成員の行動に直結している内容
  • 厳しい言葉を用い、ポイントを押さえた記述

抽象的な行動目標では、とるべきアクションプランがぼやけてしまいます。また実際の企業活動や社員の行動に直結しない場合、行動の基準になりません。

叱咤に似た言葉を用いて端的なアクションで指摘すると、受け手にも伝わりやすくなるのです。

行動指針には、「具体的な行動目標」「企業活動や社員行動に直結した内容」「叱咤に類似する厳しい言葉」を組み込みます

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5.行動指針を作るメリットは?

行動指針を作るメリットは2つです。それぞれについて解説しましょう。

  1. モチベーションの向上
  2. 企業の向かいたい方向に対して意識を統一する

①モチベーションの向上

行動指針を作成・提示できれば、社員に行動指針が浸透するため、それに沿って目標達成に向かい、業務に取り組むようになります。

そして行動指針に沿った行動を取る社員は、企業内で肯定され、自身の存在に社会的意義を感じ、モチベーションが向上するという循環を手にするのです。

②企業の向かいたい方向に対して意識統一

行動指針は、理念を達成するための行動基準です。企業の追い求めている姿が行動レベルに落とし込まれているため、社員個人レベルでも、企業が向かう方向性を理解できます。それが、企業全体の意識の統一につながっていくのです。

行動指針をつくると「モチベーションの向上」「企業の向かいたい方向に対して意識が統一される」といったメリットが得られます

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6.行動指針の作成で考えるべきこと

行動指針の作成で考えるべきこととは何でしょうか。下記3つから解説します。

  1. 会社思想を書き出す
  2. 仕事でやりたくないことを書き出す
  3. 創業者の理念も忘れない

①会社思想を書き出す

大きなくくりで構わないので、会社として実現したいものを具体的に設定し、会社思想を書き出しましょう。たとえば下記のようなものです。

  • 利便性や上質なサービス、効率化など、会社が顧客に与えられるもの
  • リラックスタイムや居心地の良い空間など、会社が顧客に与えたもので顧客に満足して欲しいこと
  • 満足感や達成感など、顧客の反応から得られるもの

これらのリストから、企業として実現したいものを可視化します。

②仕事でやりたくないことを書き出す

仕事でやりたくないことを書き出すと、以下のような企業風土を構築できます。

  • 「売上や収益のためなら何でもやる」という状況を避ける
  • 他者に迷惑をかけるといった、トラブルが発生しないようにする

書き出す内容の具体例は、下記のとおりです。

  • 家庭生活は犠牲にしたくない
  • ブラック企業と呼ばれたくない
  • 贈収賄といった法に違反する行為はしたくない

③創業者の理念も忘れない

創業者の理念を共有し続けるのは、とても重要です。時代が変わっても、会社そのものの本質を忘れないようにしましょう。下記のような内容を、可能であれば直接取材するといった方法で確認し、行動理念に盛り込みます。

  • 会社がどのような理由や経緯で誕生したか
  • 創業者がどのような考えで起業したか
  • 創業者が取った行動
  • 創業者とそれを取り巻く周囲の反応

行動指針を考える際は、「会社思想を書き出す」「仕事でやりたくないことを書き出す」「創業者の理念も忘れない」点について検討します

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7.行動指針の作り方

行動指針を作成するにはどのような手順を踏めばよいのでしょうか。下記3つのステップから解説します。

  1. 書き出した内容をまとめる
  2. 行動指針となるようなスリムな言葉にする
  3. 行動指針の言葉の下に行動を設定する

①書き出した内容をまとめる

まず行動指針を考える際に準備した、「会社が実現したいこと」「仕事でやりたくないこと」「創業理念」をリスト化し、内容を精査して集約するのです。

多くの場合、「行動・考え方・存在意義」といったカテゴリーにまとまります。カテゴリーは多くても5つ程度におさえましょう。集約が終わったら、再び集約結果をリスト化します。

②行動指針となるようなスリムな言葉にする

最初のステップで集約したリストを、スリム化した言葉に置きかえる作業になります。「1行に収まる」「シンプル」「スローガン的な要素をもつ」といった意識をもって、言葉をスリム化しましょう。置き換えの例は、下記のとおりです。

「顧客に『ありがとう』という言葉を言ってもらえるような、サービスを提供する」は、「顧客満足主義」

③行動指針の言葉の下に

「顧客満足主義」という言葉を設定した場合、どのように顧客満足主義を実現していくのか、具体的な行動を次のように2~3つ設定していきます。

  • 顧客のニーズを徹底的に把握して、顧客の満足を追求する
  • 顧客が笑顔になれるよう、顧客の要望を100%実現していく

このときのポイントは、新入社員にも理解できるような行動設定をすることです。

行動指針の作成手順は、「書き出した内容をまとめる」「行動指針となるようなスリムな言葉にする」「行動指針の言葉の下に行動を設定する」になります

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8.行動指針の具体例

行動指針は、多くの企業で作成され、実際の企業活動に生かされています。また行動指針は会社の目的をもとに作成されるため、内容も会社ごとに異なるのです。企業が作成した行動指針に触れれば、行動指針への理解も深まるでしょう。

ここでは行動指針の具体的事例について、解説します。

  1. 三菱電機の行動指針
  2. Googleの行動指針
  3. ローソンの行動指針
  4. HONDAの行動指針
  5. イトーヨーカドーの行動指針
  6. メルカリの行動指針
  7. キヤノンの行動指針

①三菱電機の行動指針

三菱電機の企業理念は、「技術、サービス、創造力の向上を図り、活力とゆとりある社会の実現に貢献する」です。企業理念を実現するための行動指針には、下記の7つがあります。

  • 信頼
  • 品質
  • 技術
  • 貢献
  • 遵法
  • 環境
  • 発展

三菱電機は7つの行動指針をもとに、下記のような具体的指針を掲げているのです。

  • CSRを企業経営の基本に位置付ける
  • 環境問題や資源、エネルギー問題など社会問題を念頭に置く
  • 製品やシステム、サービスの提供にグローバルに取り組む

②Googleの行動指針

Googleは、自社が「このようにあるべき」と考える10ヵ条の行動指針を設定しています。そのなかの一部を紹介しましょう。

  • ユーザーに焦点を絞れば、ほかの者はみなあとからついてくる
  • 1つをとことん極めてうまくやるのが一番
  • 遅いより速いほうがいい
  • Web上の民主主義は機能する
  • 情報を探したくなるのは、パソコンの前にいるときだけではない
  • 悪事を働かなくてもお金は稼げる
  • 世の中にはまだまだ情報があふれている

③ローソンの行動指針

ローソンは、下記のような事柄を掲げています。

  • グループ理念…「私たちはみんなと暮らすマチを幸せにします。」
  • ビジョン…「目指すは、マチのほっとステーション。」

こうした理念やビジョン実現のための行動指針「ローソンWAY」には、下記5つが設定されています。

  • マチ一番の笑顔あふれるお店をつくろう。
  • アイデアを声に出して、行動しよう。
  • チャレンジを、楽しもう。
  • 仲間を想い、ひとつになろう。
  • 誠実でいよう。

④HONDAの行動指針

HONDAの行動指針は、

  • お客様と社会からの信頼をより確かなものとする
  • 「存在を期待される企業」となる

ための行動基準になっており、下記11項目に大別されています。それぞれの項目には、詳細なアクションも設定されているです。

  • コンプライアンス
  • 交通安全
  • 環境保全
  • 社会貢献
  • 情報管理
  • 安全衛生
  • 差別
  • プライバシー保護
  • 取引
  • 官公庁との関係
  • コミュニケーション

⑤イトーヨーカドーの行動指針

イトーヨーカドーの社提は、次のとおりです。

  • 信頼される、誠実な企業
  • 取引先、株主、地域社会に信頼される、誠実な企業
  • 社員に信頼される、誠実な企業

これらを実現させるための行動指針として、下記を設定しています。

  • 安全で高品質な商品、サービスの提供
  • 公正で透明な取引の確保
  • 地域社会、国際社会との連携
  • 人権の尊重
  • 多様性の尊重と働きがいの向上
  • 会社の資産や情報の保全
  • 持続可能な社会実現への貢献

⑥メルカリの行動指針

メルカリは、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションとした企業活動を行っています。そしてミッションを達成するために「3つのバリュー」と呼ばれる行動指針を設定しているのです。

  • Go Bold – 大胆にやろう
  • All for One – 全ては成功のために
  • Be Professional – プロフェッショナルであれ

3つのバリューが社員に浸透することで、誰と会っても言動にブレがない企業文化の構築に成功しています。

⑦キヤノンの行動指針

キヤノンの企業理念は、「共生」です。「世界の繁栄と人類の幸福のために貢献していくこと」により、「共生」の実現を目指しています。

こうした「共生」実現の行動指針として、

  • 何事にも自ら進んで積極的に行っていく「自発」
  • 自分自身を厳しく管理する「自治」
  • 自分の置かれている立場や役割、状況をよく考え、認識する「自覚」

という「三自の精神」と、

  • 実力主義
  • 新家族主義
  • 健康第一主義
  • 国際人主義

をあわせて行動指針として、より強固な基盤を構築しているのです。

企業はそれぞれ、独自の企業理念を設けています。そして企業理念を実現するために、個性あふれる行動指針を作成しているのです