子の看護休暇とは?【わかりやすく解説】有給、無給、法律

子の看護休暇とは、病気やケガなどにより子どもの看護が必要なときに企業から労働者に与えられる休暇のことです。この休暇の詳しい内容について解説します。

1.子の看護休暇とは?

子の看護休暇とは、病気やケガなどで子どもの看護が必要な際、企業が労働者に与える休暇のこと。子育てをしながら、安定して働き続けられるようにする休暇として位置づけられています。

育児・介護休業法に定められた規定のひとつで、対象となる子どもをもつ従業員は休暇を取得する権利を持っているのです。

欠勤扱いにならない

従業員が子の看護休暇を取得しても、欠勤扱いにはなりません。育児・介護休業法によって義務づけられている休暇制度を従業員が申請または利用する際、事業主が従業員に対して不利益な扱いをすることは「育介法10条・16条の4」で禁じられているからです。

企業が欠勤扱いにすると評価や査定に影響してしまうので、従業員は安心して子の看護休暇を取っていけます。

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2.子の看護休暇を定めている法律

子の看護休暇を定めている法律である「育児・介護休業法」について解説します。

  1. 育児・介護休業法の内容
  2. 2021年に行われた改正のポイント

①育児・介護休業法の内容

育児・介護休業法は、育児や介護をしている労働者が、仕事との両立を無理なく行えるよう支援する法律のこと。制定された背景にあるのは、下記のとおりです。

  • 少子化対策
  • 女性雇用の確保と活躍の場の拡大
  • 高齢者増加に対する介護対策
  • 企業の雇用継続・雇用の安定化

こうした背景のなかで育児支援を充実し、少子化対策につながることを期待した制度となっています。

②2021年に行われた改正のポイント

「子の看護休暇・介護休暇」は、2021年1月に改正が行われました。これまで休暇を取得する単位は「1日または半日」とされていたのです。改正法ではそれにくわえ、時間単位でも休暇を取得できるようになりました。

改正によって労働者が柔軟に休暇を取得できるようになり、労働者自身もワークライフバランスを考慮しやすくなったのです。

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3.子の看護休暇の概要

子の看護休暇について、以下の項目を説明します。

  1. 取得できる日数
  2. 取得できる労働者
  3. 対象となる子ども
  4. 認められる事由
  5. 子の看護休暇を取得した場合の給与

①取得できる日数

子の看護休暇の取得できる日数は、勤めている企業に申請した時点での子どもの人数や就業規則により日数が変わります。

小学校就学に達していない子を養育する労働者は、企業に申し出ると、年間で子ども1人につき5日間(養育する小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合は10日間)を限度に休暇を取得できます。

半日単位や1時間単位での取得が可能

子の看護休暇は、これまで半日単位で取得できるものでした。しかし2021年1月の改正によって1時間単位での取得が可能となったのです。改正前後の違いをまとめると、以下のようになります。

  • 改正前…1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は、半日単位で取得できなかった
  • 改正後…1日の所定労働時間が4時間以下でも半日単位で取得できるようになったほか、1時間単位での取得も可能になった

②取得できる労働者

正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員など子どもを持つほぼすべての労働者が子の看護休暇を取得できる対象です。ただし下記のようなケースは対象外となるので注意しましょう。

  • 日雇い労働者
  • 1週間あたりの所定労働日数が2日以下の労働者(労使協定による)
  • 雇用期間が6か月間に満たない労働者(労使協定による)

③対象となる子ども

休暇の対象となる子どもの年齢は、小学校就学の始期に達するまで。1年の間で5日(子どもが2人以上のときには10日)が限度になっているとおり、休暇日数は子どもの人数によって取得日数が変わります。

また該当する子どもが2人以上いる場合、休暇日数の割り当ては自由に設定できるのです。1人だけに10日間割り当てるのも可能となります。

④認められる事由

休暇が認められる事由として挙げられるのは、下記のとおりです。前提として「小学校就学の始期に達するまでの子どもであること」となるので覚えておきましょう。

  • 子どもの病気やケガなどの急な体調不良
  • 慢性疾患による定期的な通院の付き添い
  • 健康診断
  • 乳幼児健診
  • インフルエンザといった予防接種

このほか風邪や短期間で治癒するような症状でも、休暇を取得できます。

⑤子の看護休暇を取得した場合、有給・無給のどちらになる?

看護休暇を取得している間の給与について、法律上では規定が設けられていません。そのため有給・無給のどちらでも問題ないのです。有給・無給は企業の判断で決定します。

ただし、看護休暇は「育児・介護休業法」によって定められている休暇です。事業主は、労働者が休暇を取得した際、不利な扱いをすることは禁止されています。

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4.子の看護休暇と介護休暇との違い

子の看護休暇と介護休暇との違いについて、次の項目から説明します。

  1. 目的の違い
  2. 休暇の対象の違い

①目的の違い

介護休暇とは、介護と仕事の両立を目指す制度のこと。目的は、要介護状態の家族を持つ労働者が、介護のための休暇を取りやすくすることです。以下のような事由によって、介護休暇を取得できます。

  • 食事の世話や排せつといった身体介護
  • 通院の付き添い
  • 介護サービスの手続き
  • 介護に関連する買い物
  • ケアマネージャーや介護職員との打ち合わせ

「要介護」状態とは?

要介護とは、日常生活全般において基本的動作や自分ひとりで行うことが難しく、誰かの介護が必要な状態のこと。状態の例として、下記が挙げられます。

  • お風呂のときに自分で身体を洗えない
  • 排せつ時のズボンの上げ下ろしができない
  • 排せつのときに介助が必要
  • 入浴のときに着替えができない

②対象の違い

介護休暇の対象となる被介護者の範囲には、「事実婚を含む配偶者」「実父母」「配偶者の父母・子」「同居かつ扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫」が含まれます。

介護されている人との間柄がこの範囲に入らない場合、介護休暇を取得できません。介護休暇の対象家族が1人であれば1年で5日まで、2人以上の場合は最大10日まで休暇を取得できます。

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5.子の看護休暇制度の注意点

子の看護休暇制度の注意点について、説明します。

  1. 時季変更権がない
  2. 就業規則への記載が必要
  3. 申請するときのルールを定めておく
  4. 休暇時間数の調整

①時季変更権がない

労働者が取得を希望した時季が事業運営を妨げると考えられる場合、企業側がほかの時季に休暇を与えられる権利(時季変更権)があります。

しかし看護休暇は子どもの病気やケガに対応するための休暇で、ほかの時季では目的にそぐわないため、企業は「時季変更権」を行使できません。よって労働者は、希望日時に看護休暇を取得できます。

②就業規則への記載が必要

子の看護休暇を含む育児・介護休業等に関する規定は、労働者が休暇の取得を申し出ることで法的効果が生じます。しかし企業側は各事業所であらかじめ制度を導入し、法律で規定されている要件をもとに決められた項目を就業規則に記載しなければなりません。

また、育児・介護休業法に定められた最低基準を下回る制度は設けられないのです。このような就業規則を設けた場合は無効となります。

③申請するときのルールを定めておく

看護休暇を申請する際の方法や期限などのルールは、企業が独自に決められるのです。一般的には次の項目について規則を定めて従業員に周知します。

  • 対象外となる従業員
  • 賃金の支給の有無
  • 1年間の期間(4月1日~翌年3月31日までなど)

法律上、書面で申請書を提出する必要はないものの、「当日取得の場合は◯日後までに申請書を提出する」「休暇の理由を裏付けるものを提出する」といったルールを作るのは可能です。

④その日の休暇時間数が所定労働時間を超えないように調整する

休暇が取得可能な時間は、所定労働時間数に満たない範囲まで。たとえば所定労働時間が7時間である場合、取得可能な休暇の時間は1~6時間です。

休暇として取得した時間を合計し、1日の所定労働時間数に相当するごとに1日分の休暇を取得したものとして扱われます。その日ごとに所定労働時間が変わるケースでは、1年間における1日あたりの平均所定労働時間を基準として計算するのです。

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6.子の看護休暇に関連する助成金

子の看護休暇について就業規則で、下記2点を定めている場合、企業は両立支援等助成金である「職場復帰後支援」を受けられます。

  1. 時間単位で取得可能
  2. 有給休暇とする

両立支援等助成金(育児休業支援コース)とは?

働きながら子どもを養育している労働者を守る助成金のこと。下記を導入した事業主に対して助成金を支給して、労働者の仕事と家庭の両立支援を促進し、雇用安定につなげます。従業員は職場復帰をした際に、受給できるのです。

  • 育児休業の円滑な取得
  • 職場復帰の取り組み
  • 子どもの世話をするための有給取得

受給要件

助成金を受給するには、さまざまな要件があります。要件や助成金の支給額について説明しましょう。

雇用保険を適用している事業主

会社を経営する事業主になる場合、国が定めている保険に加入する義務が発生します。事業所単位で保険が適用され、適用を受けた事業所を「適用事業所」と呼ぶのです。適用条件は、各保険ごとに会社の規模や種類によって異なります。

適用事業所は、次に挙げる2種類です。

  • 強制適用事業所…法律により、その保険への加入が義務となっている事業所
  • 任意適用事業所…強制適用事業所にはならない事業所で、厚生労働大臣の認可を受け保険の適用となる事業所

育児休暇復帰後に子の看護休暇制度を利用した実績がある

育児休暇から復帰した労働者が、仕事と育児の両立が難しくなった際に支援する制度があります。こうした制度を導入した中小企業事業者に対し、助成金が支給されるのです。支給を受けるには、次の条件を満たさなければなりません。

  • 育児・介護休業法を上回る「子の看護休暇制度」または「保育サービス費用補助制度」を導入している
  • 対象労働者が1か月以上の育児休業から復帰して6か月以内に、導入した制度の一定の利用実績がある

支給のための審査に協力できる

助成金には公的なお金が使われています。そのため支給を受けるには申請した内容の実地審査に協力する必要があるのです。たとえば次のような対応が必要になります。

  • 支給または不支給を決定するための審査に必要な書類などを適切に保管している
  • 審査に必要な書類などの提出を求められたら応じる
  • 管轄労働局による実地調査を行う

申請期間内に申請できる

助成金の申請期限は「育児休業が終了する日の翌日から起算して6か月を経過する日の翌日から2か月以内」と決められています。この期限内に申請できなければ、助成金は支給されません。

たとえば育児休業が7月15日で終了した場合、その翌日である7月16日から起算します。そして申請期間のスタート1月16日になり、申請期限日は3月15日になるのです。

助成金の支給額

制度を導入した際、1事業主につき1回まで28万5,000円支給されます。制度導入時に助成金を申請できるのは、企業の中で1人目の対象者が出たときです。

また制度を利用するときにも取得時間に応じて1時間あたり1,000円が支給されます。ひとつの企業につき5人まで、さらに1年度で200時間を上限としているのです。

生産性要件を満たすと増額

「生産性要件」を満たした場合、職場復帰時の受給額が36万円に増額されます。生産性要件は次のとおりです。

  • 助成金を申請する直近の会計年度における「生産性」が、「3年度前に比べて6%以上伸びている」もしくは、「3年度前に比べて1%以上(6%)伸びている(金融機関から一定の「事業性評価」を得ていることが条件)」。

これには、3年度前の初日に雇用保険適用事業主であることが必要となります。