雇用保険に入る資格がある従業員を採用したとき、雇用者は雇用保険の加入手続きをしなければなりません。ここでは申請に必要な雇用保険被保険者資格取得届と記入方法、提出の仕方について解説します。
目次
1.雇用保険被保険者資格取得届とは?
雇用保険被保険者資格取得届とは、雇用保険の加入手続きをする際にハローワークに提出する書類のこと。従業員の入社後はすみやかに提出しましょう。手続きが終わると、「雇用保険被保険者証」と「雇用保険資格取得等確認通知書」が交付されます。
従業員が雇用保険の対象となる場合に企業が提出する届け
使用者は、従業員が雇用保険の加入条件を満たしているときは必ず雇用保険の加入手続きを行います。新入社員が雇用保険の対象者という場合、入社日の翌月10日までに雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに提出しましょう。
雇用保険被保険者の種類を紹介
加入条件を満たし、なおかつ雇用保険を受ける資格がある労働者は本人の希望にかかわらず、必ず雇用保険に加入しなければなりません。雇用保険を受ける人は「被保険者」と呼ばれ、以下の4種類に分けられるのです。
- 一般被保険者
- 高年齢被保険者
- 短期雇用特例被保険者
- 日雇労働被保険者
①一般被保険者
一般被保険者とは、雇用保険の加入対象者のなかで、下記を満たす労働者のこと。
- 雇用保険が適用される事業所で働いている
- その事業所における平均的な労働者と同様の所定労働時間を定められている
- 31日以上の継続雇用見込みがあり、1週間に20時間以上の労働を求められている
ただし一般被保険者の条件に合致した労働者が65歳以上である場合は、高年齢被保険者となります。
②高年齢被保険者
高年齢被保険者とは、雇用保険加入資格を持つ65歳以上の労働者で、一般被保険者と同等の条件を満たしている人のこと。保険年度が始まる4月1日時点で、満64歳以上の一般被保険者が対象です。
ただし後述する短期雇用特例被保険者や日雇労働被保険者に当てはまる場合、65歳以上であっても高年齢被保険者とはなりません。
③短期雇用特例被保険者
短期雇用特例被保険者は、季節的業務に従事していて下記の項目を満たす人のこと。季節的業務とは、天候や自然現象など季節的特徴に左右される業務です。単なる繁忙期とは異なるため、間違えないようにしましょう。
- 雇用契約における雇用期間が4か月以内とされていない
- 1週間に30時間以上の所定労働時間が定められている
④日雇労働被保険者
日雇労働被保険者は、日々の雇用や短期間雇用を前提にした雇用保険対象者のこと。下記のいずれかに当たる場合が対象です。
- 1日限りの雇用契約を結んでいる
- 雇用期間を30日以内と決めて雇い入れられている
同じ企業での日雇労働については「2か月連続で18日以上働いている」「31日以上続けて働いている」場合、一般被保険者となります。
用紙の準備方法
雇用保険の加入手続きで提出する雇用保険被保険者資格取得届は、ハローワーク窓口かホームページで入手できます。総務省が運営するインターネット行政サービスe-Gov(イーガブ)から、電子申請を利用して手続きを進めるというのも可能です。
2.雇用保険被保険者資格取得届の記入方法について
ハローワークに提出する雇用保険被保険者資格取得届は、記入項目は多いものの、それぞれの項目内容を理解していればそこまで複雑な書式ではありません。書類の書き方や、記入に必要な情報の調べ方、記入のポイントについて解説しましょう。
被保険者番号と取得区分の記入方法とは?
被保険者番号と取得区分は、雇用保険加入歴によって記入内容が異なります。これまで一度も雇用保険に加入していない人や、雇用保険を脱退して7年以上経っている人は、被保険者番号は空けたまま取得区分に1(新規)を記載します。
雇用保険加入歴があり、かつ保険を抜けていた期間が7年未満の場合は、雇用保険被保険証か雇用保険被保険者資格喪失確認通知書から被保険者番号を書き写しましょう。取得区分は2(再取得)です。
個人番号は対象となる従業員のマイナンバーを記入する
個人番号には、雇用保険に加入する従業員の個人番号(マイナンバー)を転記します。個人番号(マイナンバー)とは、日本に住民票がある個人全員に発行される12桁の固有番号で、基礎年金番号や住民票など行政機関で使用する個人情報と紐付いているのです。
個人番号はマイナンバーカードや個人番号通知カードなどで調べられます。
被保険者氏名と変更後の氏名を記入するときの注意点
被保険者氏名には、雇用保険加入を申請する従業員の氏名を記入します。過去に雇用保険に入っていた場合、雇用保険被保険者証や、雇用保険被保険者資格喪失届のとおりに転記します。姓名の間は1マス空けましょう。
雇用保険脱退から7年以上経過しており、「取得区分」が1(新規)の人は、当時と氏名が変わっていても「被保険者氏名」には現在の氏名を書きます。そして「変更後の氏名」欄に変更後の氏名を記入するのです。
事業所番号の記入方法
事業所番号は、雇用保険に加入している事業所ごとに交付された、4桁・6桁・1桁の合計11桁からなる番号です。事業所番号欄に、雇用保険加入対象の従業員を雇い入れる事業所の番号を記入します。
事業所によっては連続10桁の場合もあるでしょう。その際はそれぞれの枠に左詰めで転記します。最後の1枠は空けたままで問題ありません。
性別と生年月日の記入方法
性別と生年月日欄には、雇用保険に加入する従業員の性別と生年月日を記入します。性別・生年月日の元号は該当番号を選択し、年月日をそれぞれ2桁で書き入れます。
年月日が1桁の場合は、頭に0をつけて空欄を作らないようにしましょう。たとえば平成10年4月1日生まれの場合、年月日には「100401」と記入します。
被保険者となった原因
被保険者となった原因では、申請対象の従業員が雇用保険に加入する理由の該当番号を選びます。
- 新規雇用(新規学卒):新卒社員の雇用において、その人が卒業した年の3月1日~6月30日に入社した場合に該当
- 新規雇用(その他):新規学卒と65歳以上を除くすべての新規採用に該当
- 日雇からの切替:1日ごとの雇用契約から、継続雇用契約に変更した場合に該当
- その他:「65歳以上の人を新しく採用した」「雇用保険対象外だった人が、身分変更や異動で被保険者資格を得た」場合に該当
- 出向元への復帰等(65歳以上):65歳以上の従業員が出向元に戻って勤務開始した場合に該当
資格取得年月日に記入する日付とは?
資格取得年月日には、雇用保険加入申請する従業員と雇用契約を結んだ日を記入します。あくまで雇用関係になった最初の日が基準日です。正社員になる前の研修やアルバイト、試用期間がある場合、その期間も含める必要があるので注意しましょう。
年月日の記入は2桁になるようにし、1桁の場合には頭に0を付けます。
賃金の欄に記入する内容の詳細
賃金欄は、採用時の賃金計算方法と、固定給部分の賃金月額を記入する欄です。賃金には通勤手当など毎月支給される手当を含め、賞与や残業手当など一時的または流動的なものは除外します。
計算方法は該当番号を選択し、賃金月額は千円単位4桁で記入しましょう。週給や日給、時間給の場合も、1か月の所定労働時間をもとに月額を算出・申告となるので注意が必要です。
雇用形態の欄には該当する番号を記入する
雇用形態には、下記から該当する番号を選択します。
- 日雇:1日ごとに雇用契約を結ぶ従業員
- 派遣:派遣社員など、登録型派遣労働者
- パートタイム:週の所定労働時間が30時間未満で、登録型派遣労働者でない従業員
- 有期契約労働者:派遣、パートタイム以外の、フルタイムかつ契約期間が限定されている従業員、トライアル採用の従業員
- 季節的雇用:季節的業務に従事する従業員
- 船員
- その他:フルタイムで働く常用雇用の従業員
1週間の所定労働時間とは
1週間の所定労働時間には、採用時に取り決めている雇用保険に加入する従業員の「週の所定労働時間」を記入します。所定労働時間とは、雇用契約や就業規約で決められた、平時の平均的な労働時間のこと。
「1週間の所定労働時間」の項目については通常の1週間が対象となり、休憩時間を除いた始業時刻から終業時刻までの合計時間を書きます。
契約期間の定めの記入方法
契約期間の定めでは、契約期間の有無について該当番号を選びます。契約期間ありの場合、契約開始と終了の年月日をそれぞれ2桁で記入し、更新条項の有無について該当番号を選択します。
契約期間・更新条項の有無は「ありの場合に1」「なしの場合に2」を記入し、年月日が1桁のときは、先頭に0を付けて2桁になるよう記載しましょう。
事業所名と備考欄の記入内容
事業所名には、対象従業員を雇用する事業所の正式名称を書きます。備考には、「被保険者になった原因」で「その他」を選択した場合に内容の詳細を記入しましょう。
なお前職の退職時、雇用保険被保険者資格喪失確認通知書を受け取っておらず、被保険者番号が不明な場合もあります。この場合は、前職の事業所名と在籍期間を書き入れておきましょう。
事業主の欄への記入内容
事業主には、「住所や会社の正式名」「事業主または代表者氏名」「電話番号」
を記入し、代表印と代表者の押印または署名をします。事業主また代表者の氏名が自筆で記入されている場合、個人の押印は不要です。
事業主が法人である場合、住所欄は事業所の所在地を記載しましょう。なお本社ではなく個々の支所などが手続きをする際は、事業所の所在地と従業員が勤務する支所の住所をあわせて記載します。
3.雇用保険被保険者資格取得届に添付する書類について
雇用保険被保険者資格取得届の提出にて、多くの場合、添付書類が不要です。ただし場合によっては添付書類の提出を求められる状況もあります。どんな場合に書類の添付が必要になるか、どんな書類を準備しなければならないかについて、知っておきましょう。
添付書類の種類を紹介
雇用保険の申請に必要な書類は、事業所所在地を管轄しているハローワークの窓口やホームページなどで確認できます。必要な場合、下記の提出を求められることが多いです。
- 賃金台帳
- 労働者名簿
- タイムカード、出勤簿など
- 社会保険の資格取得に関する書類など、対象従業員を雇用した事実と年月日がわかる書類
- 有期労働者の場合は、就業規則、雇用契約書など、労働条件を確認できるもの
添付の必要がある場合とは?
雇用保険被保険者資格取得届は、たいていの場合は申請用紙の提出だけで問題ありません。ただし下記のような特殊な事情や理由がある場合、添付書類を求められることもあります。
- 事業主としての被保険者資格取得届を初めて提出する場合
- 被保険者資格取得届の提出期限(対象従業員の入社月の翌月10日)を過ぎて提出する場合
- 労働保険料を滞納している場合
- 過去3年間のうちに、事業主の届け出が原因で不正受給がある場合
- 提出した被保険者資格取得届に大きく矛盾や不整合がある場合
- 過去に労働関係法令で重大な違反をおかした事業者が提出する場合
提出する際は添付書類が必要ないか確認して、提出期限に間に合うよう準備しましょう。
4.雇用保険被保険者証について
雇用保険被保険者証は、雇用保険への加入を証明する書類です。会社の雇用保険に加入した際は事業主が発行し、転職や再就職の際は新しく所属する事業者へ提出して情報を引き継ぎます。
一方、雇用保険被保険者資格取得届は、会社の雇用保険に加入する際に提出する書類です。
雇用保険の加入証明になる
雇用保険に入ると雇用保険の被保険者となります。雇用保険被保険者証は、雇用保険の加入とその内容を証明する書類です。被保険者となった各人に雇用保険番号が付与され、途中で7年以上の長期脱退期間がない限りは、勤務先が変わっても同じ番号を使います。
雇用保険被保険者証には、対象従業員の氏名や生年月日、雇用保険番号が記載されているのです。
雇用保険番号は基本的に変わらない
雇用保険番号は原則、同じ番号が使われます。初めて雇用保険に加入した際に固有の番号が与えられ、転職や退職、休職を繰り返しても番号は基本的に変わりません。
ただし雇用保険から脱退して7年以上経過した場合、再加入の際に新しい雇用保険番号が与えられる可能性もあるのです。
新卒などで一度も雇用保険に加入していない場合は新規加入となり、雇用保険被保険者資格取得届には労働者名簿や出勤簿などの添付書類が必要となります。
転職の際に提出する必要がある
勤務先が変わっても雇用保険番号は引き継がれます。そのため過去7年以内に雇用保険に加入した人は、就業先が変わるごとに雇用保険被保険者証を会社に提出しなくてはなりません。
転職・再就職した先で雇用保険に加入する際、雇用保険被保険者資格取得届に記入し、事業者がハローワークへ提出します。この手続きに雇用保険番号が必要となるのです。
会社から受け取るもの
従業員の雇用保険加入手続きは、雇用している事業者が行います。加入対象の従業員が入社した翌月10日までに、氏名や雇用保険番号、加入理由などについて記載された雇用保険被保険者資格取得届をハローワーク宛に提出するのです。
加入が認められると、ハローワークから事業者に雇用保険被保険者証が送付されます。被保険者証はハローワークが従業員宛に発行するものなので、事業者は必ず従業員に渡しましょう。
5.雇用保険被保険者資格取得届の提出方法について
雇用保険被保険者資格取得届は、郵送だけでなくオンラインでの提出も可能です。ハローワークに提出して受理されると、「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」と、「雇用保険被保険者資格喪失届」を受け取れます。
郵送や電子申請でも提出可能
雇用保険被保険者資格取得届は、郵送やオンラインでの提出も可能です。オンラインは24時間いつでも申請が行えるほか、チェック機能で記入の不備や抜け漏れを防げるので便利です。
また時間を有効活用したり、切手代や封筒、印刷代や交通費などを節約したりできるでしょう。反対に郵送はオンラインに比べてやや日数がかかります。期日内に手続きが完了できるよう、スケジュールに余裕をもって手続きを進めましょう。
なお郵送の際は返信用封筒を同封して、控えを送付してもらうと安心です。
事業所管轄のハローワークに提出
事業所の所在地を管轄するハローワーク窓口に提出することも可能です。担当のハローワークは事業所住所によって決まっており受付時間も設けられているので、ホームページなどで事前に調べてから出向きましょう。
現在、厚生労働省やハローワークでは、利便性が高くコスト削減も期待できるオンライン申請を推進しています。