雇用保険被保険者証とは、雇用保険に加入していると証明する書類のことです。発行時期や必要なタイミング、有効期限、紛失した場合などについて解説します。
目次
1.雇用保険被保険者証とは?
雇用保険被保険者証とは、労働者が雇用保険に加入していると証明する書類のこと。下記のような際、必要となります。
- 転職するとき
- 教育訓練給付金を受給するとき
最初に就職した企業が雇用保険被保険者証の発行手続きを行います。そして手続きをした企業がそのまま被保険者証を預かり、退職をしたときに労働者へ手渡されるのです。退職しても、雇用保険被保険者証に記載されている被保険者番号は継続されます。
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離職票との違い
離職票は、正式名称を「雇用保険被保険者離職票」といいます。名前の似ている「雇用保険被保険者証」と混同しやすいものの、まったく違うものです。
離職票は、労働者が退職したと証明する書類のこと。被保険者証と違い、転職先で提示を求められることはほとんどありません。おもにハローワークで失業保険給付の申請を受ける際、失業していると証明する書類として必要になるのです。
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2.雇用保険被保険者証の発行時期
雇用保険の加入手続きは、雇用保険の被保険者となる条件を満たした月の翌月10日まで(翌月10日が休日の場合、翌開庁日)。たとえば3月20日に被保険者の要件を満たした場合、4月10日までに資格取得手続きが必要です。
資格取得手続きは、「雇用保険被保険者資格取得届」を記入しハローワークに提出することで進められます。手続きの方法は下記のとおりです。
- ハローワークの窓口で直接申請する
- 郵送
- 電子申請
3.事業者が雇用保険被保険者証を必要とするタイミング
雇用保険被保険者証を使用する場面として代表的なのが、転職です。雇用保険被保険者証は雇用保険に加入していると証明するもので、転職先でも雇用保険が引き継がれます。被保険者証を退職する企業が保管している場合、企業から受け取っておく必要があります。
転職先に被保険者証を渡すタイミングとして一般的なのは、入社手続きを行う初出社日。入社前に転職先の企業より、雇用保険被保険者証を持参するよう連絡が来る場合もあるので、指示に従いましょう。
そのほか必要なタイミング
雇用保険被保険者証は、転職以外にも必要となる場面があります。
教育訓練給付金の支給申請をするとき
教育訓練給付金とは、雇用保険に3年以上加入している在職中もしくは離職した人が教育訓練を受講した際、支払った費用の一部を支給する制度のこと。支給の手続きはハローワークで行い、その際に雇用保険被保険者証を提出するのです。
教育訓練給付金は労働者に有益な制度なので、雇用保険被保険者証をどこに保管しているか普段から意識しておきましょう。
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65歳未満の人における厚生年金の裁定請求
65歳未満の人が、厚生年金保険における老齢年金の決定請求をする際、雇用保険の被保険者番号を証明できる書類、すなわち雇用保険被保険者証を提出しなければなりません。
もし雇用保険被保険者証を紛失して手元にない場合、再発行が必要です。ハローワークであらためて発行し、老齢年金の年金請求書に添付します。また雇用保険被保険者証以外に、下記の書類を添えるのも可能です。
- 雇用保険受給資格者証
- 高年齢雇用継続給付支給決定通知書
雇用保険に加入したことがない場合、被保険者証を添付できない旨を示すために事由書を提出します。
雇用保険被保険者証を渡すのは事業者の義務
雇用保険被保険者証は多くの場合、事業主が保管しています。被保険者証が発行されたあと、紛失を防ぐため企業側で預かっている場合も多いからです。そして労働者が退職する際、企業は被保険者証を労働者にわたす義務があります。
もし退職したにもかかわらず被保険者証をもらえない場合、企業が返却を忘れている可能性も高いです。早めに問い合わせましょう。
4.雇用保険被保険者証を渡す必要がないケース
事業主が労働者へ雇用保険被保険者証を渡す必要がない場合もあります。それぞれのケースについて詳しく紹介しましょう。
従業員が雇用保険に入っていない場合
雇用保険被保険者証は、労働者が雇用保険に加入していると証明する書類です。そのため雇用保険に入っていない場合、雇用保険被保険者証が発行されていません。よって事業主は被保険者証を労働者に渡さなくてよいのです。
雇用保険の加入要件
雇用保険に加入するための要件は下記のとおりです。
- 31日間以上働く見込みがある
- 所定労働時間が週20時間以上
- 学生ではない
①31日間以上働く見込みがある
「31日間以上働く見込みがある」には、「31日間以上雇用が継続しない」と明示しているのを除いてすべてが該当します。
もし契約に「更新の可能性がある」と規定があり、31日未満で雇い止めする内容が明示されていない場合、「31日間以上働く見込みがある」とされます。また労働者が実際に31日以上雇用された実績があるときにもこの要件を満たすのです。
②所定労働時間が週20時間以上
「所定労働時間」が週20時間以上であれば、この要件を満たします。もし繁忙期といった一過性の時期に週20時間以上働いたことがあっても、契約のうえで所定労働時間が週20時間未満となっている場合、この要件を満たしません。
③学生ではない
「31日間以上働く見込みがある」「所定労働時間が週20時間以上」の要件を満たしていても学生は雇用保険に加入できません。
ただし学生であっても雇用保険に加入できる例外があります。学校を卒業する前から内的先の企業に就職し、卒業後も引き続き一般従業員と同様に勤務すると予定されていると、例外的に雇用保険に加入できるのです。
また「通信教育」「夜間」「定時制」の学生も例外となります。
条件を満たしているのに未加入は法律違反
雇用保険に加入する適用条件を満たしているにもかかわらず、事業主が加入させなかった場合、事業主の義務違反となります。義務に違反すると、雇用保険法にもとづいて下記のような罰則が科される場合もあります。
- 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
- 雇用保険料の追徴金
- 延滞金の納付
雇用保険に未加入だと労働者が退職したときに失業保険が支給されず、トラブルに発展してしまいます。企業の信用を低下させる要因にもなるので、雇用保険が適正に運用されているか確認しておきましょう。
5.雇用保険被保険者証は派遣社員にも渡す?
雇用保険被保険者証は多くの場合、企業側が保管しています。もし労働者が退職する場合、保管している企業には被保険者証を渡さなくてはなりません。
これは労働者が派遣社員や契約社員、アルバイトやパートであっても同じです。派遣社員が雇用保険の加入要件を満たしていて雇用保険被保険者証を発行していれば、企業は正社員と同じように被保険者証を渡す義務が発生します。
6.雇用保険被保険者証の有効期限
雇用保険被保険者証は、退職してから7年以上が経過した場合(7年以上雇用保険適用下で働いていない場合)、記載されている被保険者番号のデータが削除されます。
たとえば出産のために退職し、子どもが大きくなるまで7年以上無職の状態が続いてから再就職した場合、被保険者証の有効期限が切れてしまうのです。この場合、再就職先の企業が新たに雇用保険被保険者証を発行し、新しい被保険者番号を取得します。
7.雇用保険被保険者証と被保険者番号
雇用保険被保険者証に記載されている被保険者番号について、次のポイントを紹介します。
- 被保険者番号とは?
- 被保険者番号がわからないとき
①雇用保険被保険者番号とは?
雇用保険に加入した個人に対し割り振られる番号のこと。11桁の数字で、4桁+6桁+1桁という構成になっています。
最初に就職した企業が手続きをして発行する「雇用保険被保険者証」に番号が記載されており、有効期限が切れなければ、退職や転職をしてもずっと同じ番号を継続していくのです。
よって転職先に雇用保険被保険者証を提出しても、新しい番号にはなりません。
②被保険者番号がわからないとき
万が一、雇用保険被保険者証を紛失してしまうと、被保険者番号がわからなくなってしまいます。この場合以下の方法で番号を確認できるのです。
- 退職した企業に問い合わせる
- 離職票や失業保険の手続きのときにもらえる「雇用保険受給資格証」などで確認する
8.雇用保険被保険者証を紛失した場合
転職する際、雇用保険被保険者証を紛失していると気づいたら、事業主または転職をする労働者がハローワークで再発行の手続きをします。
ハローワークに「被保険者証再交付申請書」が用意されているので、これを記入・提出して再交付の手続きを進めるのです。新たに雇用保険被保険者証が交付されたら、転職先に提出します。
再発行の手続き
雇用保険被保険者証の再交付は、近くのハローワークで可能です。ハローワークに「雇用保険被保険者証再交付申請書」という書類があるので、ここに必要事項を記入して窓口に提出します。
窓口で手続きをすると最短で即日発行となるので、急ぎのときは窓口で手続きをしましょう。手続きの際、申請書以外にも下記が必要となります。
- 顔写真つきの本人確認書類1点(運転免許証など)、または本人確認書類2点(住民票の写し+健康保険証など)
- 退職した企業の正式名称・所在地・電話番号
- 印鑑
事業主が代理で発行するのも可能
なんらかの事情で被保険者本人がハローワークに行けない場合、代理人申請も可能です。家族や友人、後見人や介助者など、本人以外の人が代理で申請できます。代理人申請の場合は、下記のものが必要となるので覚えておきましょう。
- 被保険者本人が記入した「雇用保険被保険者証再交付申請書」
- 被保険者の本人確認書類のコピー(運転免許証など)
- 代理人の本人確認書類(運転免許証など)
- 委任状