勤めていた企業から雇用保険被保険者証をもらえるのは基本、退職したときです。雇用保険被保険者証は転職の際、必要になります。
目次
1.雇用保険被保険者証はいつもらえる?
雇用保険被保険者証とは、雇用保険に加入した際、発行される証明書のこと。労働者が最初に就職した事業主が発行の手続きを進め、渡し方は以下のいずれかになるのです。
- 会社が受け取ってすぐ、労働者本人に渡す
- 労働者が退職する際に、初めて本人に手渡す
雇用保険の加入手続きは、労働者が初めて就職する事業の事業主が進めます。手続きを行って証明書をもらえる時期は、「ハローワークの窓口で手続きを行う」「郵送で書類を提出する」どれかによってそれぞれ異なるのです。
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窓口申請ならすぐもらえる
事業主が雇用保険の加入手続きを行うのは、ハローワーク。新しく雇用した社員の名前や雇用保険番号などを記入した書類を、ハローワークに提出するのです。
直接ハローワークの窓口で手続きを行った場合、すぐに証明書をもらえます。もし、事業主が郵送で書類を提出した場合、時期によっては1~2カ月後に郵送で証明書が送られてくることもあるので、早めに送ったほうがよいでしょう。
書類が受理されれば、ハローワークからA4サイズの書類が1枚渡されます。この書類の一部が雇用保険被保険者証となるのです。
2.雇用保険被保険者証とは?
雇用保険に加入した際に発行される証明書のことで、労働者が転職する際に必要です。雇用保険の手続きは労働者が最初に就職した企業が行うため、転職経験がなく雇用保険被保険者証の存在を知らない労働者も少なくありません。
雇用保険は労働者が転職する先の企業にも引き継がれるため、転職で入社する手続きでは雇用保険被保険者証が必要です。中途入社員を雇用する場合、記載されている被保険者番号を確認します。
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雇用保険被保険者証とは、雇用保険に加入していると証明する書類のことです。発行時期や必要なタイミング、有効期限、紛失した場合などについて解説します。
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離職票との違い
雇用保険被保険者離職票(離職票)と雇用保険被保険者証の違いは、下記のとおりです。
- 雇用被保険者証…雇用保険に加入していることを証明する
- 雇用保険被保険者離職票…退職したことを証明する
離職票は、失業保険の受給手続きに必要となります。転職先で提示を求められることはほとんどありません。
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被保険者番号とは?
雇用保険に加入している個人に対して割り振られている11桁の番号です。4桁+6桁+1桁という構成になっており、「雇用保険被保険者証」「雇用保険被保険者離職票(離職票)」に記載されています。
雇用保険被保険者番号は、転職や退職をしてもずっと変わりません。労働者が最初に就職した企業で発行された番号を一生使うのです。転職先で事業主が雇用保険被保険者番号を確認するため、労働者は雇用保険被保険者証の提出が必要になります。
雇用保険被保険者証の有効期限
退職から7年以上、雇用保険適用下で働いていない状態が続いた場合、被保険者番号はハローワークのデータから抹消されます。雇用保険被保険者証に記載されている被保険者番号はその人固有のため、転職や退職をしてもずっと同じ番号が引き継がれていくのです。
ただし、出産を機に退職した労働者がずっと無職の状態が続き、7年以上経ち子どもが大きくなってから再就職をした場合、被保険者番号がなくなっています。そのときは新たに雇用保険被保険者証の発行手続きをし直し、新たな番号を取得するのです。
その手続きは、再就職先の事業主が行います。
雇用保険被保険者証を渡すのは事業者の義務
事業主は、雇用保険被保険者証を労働者に渡す義務があります。しかし紛失を防ぐためにそのまま事業主が証明書を保管するケースがほとんどです。
労働者が退職する場合、事業主が労働者へ雇用保険被保険者証を渡さなければなりません。もし退職した労働者に雇用保険被保険者証が交付されなかった場合、事業主側に問題があるとみなされるでしょう。
3.雇用保険被保険者証が必要な場面
雇用保険被保険者証が必要になる場面について、解説します。
- 65歳未満の人の厚生年金を裁定請求するとき
- 教育訓練給付金の支給申請をするとき
- 転職するとき
①65歳未満の人の厚生年金を裁定請求するとき
65歳未満の人が受ける厚生年金保険の老齢年金を決定請求する際、雇用保険の被保険者番号を証明できる書類が必要になります。雇用保険の被保険者番号は雇用保険被保険者証に記載されているので、この証明書を添付することになるのです。
もし紛失によって手元にない場合、ハローワークで被保険者証を再交付してもらい、老齢年金の年金請求書に添付します。雇用保険被保険者証以外にも、「雇用保険受給資格者証」「高年齢雇用継続給付支給決定通知書」を添えて提出するのも可能です。
雇用保険に加入したことがない場合、被保険者証を添えられない旨を事由書に記入して提出します。
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②教育訓練給付金の支給申請をするとき
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目的は雇用の安定や再就職を促進することです。手続きを行う際、ハローワークで雇用保険被保険者証が必要になります。
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③転職するとき
労働者の転職が決まった際、退職時に渡された雇用保険被保険者証を転職先の企業に渡す必要があります。
雇用保険被保険者証を受け取った事業主は、管轄のハローワークで雇用保険の手続きを行うのです。労働者が初めて就職した企業は雇用保険の新規加入手続きをし、転職先の企業はすでに加入済みの雇用保険の再開手続きをします。
そのときに必要となるのが、雇用保険の被保険者番号です。そのため、提出する雇用保険被保険者証はコピーでも構いません。
4.雇用保険被保険者証は紛失後、新しいものをいつもらえる?
雇用保険被保険者証を紛失しても、かんたんな手続きで再発行できます。再発行の手続きは、被保険者が在職中の場合、事業主が行うケースが多いです。しかし被保険者が自ら再発行の手続きをしても問題ありません。
再発行までの期日は、窓口と郵送でそれぞれ異なります。
- ハローワークの窓口…即日で再発行できる
- ハローワークへ郵送…雇用保険被保険者証の到着まで4~5日かかる
- 電子申請をする場合、被保険者名義の電子証明書が必要となります。
代理人で再発行することも可能
雇用保険被保険者証の再発行は、本人ではなく、家族・友人・後見人・介助者といった代理人も申請できます。代理人申請をする場合、下記の4つが必要です。
- 本人記入済みの「雇用保険被保険者証再交付申請書」
- 本人確認書類のコピー(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
- 代理人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
- 委任状
5.雇用保険被保険者証は転職後、前の会社からいつもらえる?
雇用保険被保険者証の紛失を防ぐため、一般的には勤めている企業が保管します。そのため労働者にはなじみのない証明書といえるでしょう。しかし転職の際には必要となるので、事業主から雇用保険被保険者証を渡してもらう必要があります。
雇用保険被保険者証は本来、被保険者である労働者のもの。退職した場合には事業主手渡しで労働者に返却するか、手渡しが難しい場合は郵送するなどして速やかに返さなければなりません。
このケースでも再発行が可能
退職した際、雇用保険被保険者証を以前働いていた企業から手渡してもらう、もしくは郵送してもらう、どちらも難しい場合もあるでしょう。その場合、任意のハローワークで再発行を申請する方法があります。
ハローワークに置いてある雇用保険被保険者証再交付申請書に必要事項を記入し、提出するだけで再発行を受けられるのです。
6.派遣社員の場合、雇用保険被保険者証はいつもらえる?
派遣社員の場合、雇用保険被保険者証は正社員と同じタイミングでもらえるのでしょうか。雇用保険の加入条件とともに解説します。
正社員と同じタイミングでもらえる
正社員と同じタイミングで雇用保険被保険者証を受け取れます。そもそも雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入した際に発行される証明書のようなもの。
雇用保険に入る条件を満たしていれば、派遣社員のみならず、パート・アルバイト・契約社員といった労働形態も対象になります。雇用保険被保険者証を受け取る時期にも差はなく、正社員と同じように受け取れるのです。
雇用保険の加入条件
雇用保険の加入条件は以下のとおりです。それぞれの内容について解説します。
- 31日間以上働く見込みがある
- 所定労働時間が1週間に20時間以上である
- 学生ではない
①31日間以上働く見込みがある
「31日間以上働く見込み」とは、「31日間以上雇用が継続しない」と明確に明示がある場合を除いたすべてが該当します。
もし雇用契約に「更新の可能性がある」という規定があり、31日未満で雇い止めする内容が明示されていなければ、「31日間以上働く見込み」に該当するのです。
雇用契約に更新規定がなくとも、労働者が実際に31日以上雇用された実績があるケースでは、「31日間以上働く見込み」の条件が適用されます。
②所定労働時間が1週間に20時間以上である
労働時間には2種類のタイプがあります。
- 法定労働時間…労働基準法で決められている労働時間
- 所定労働時間…法定労働時間の範囲の中で自由に決められた労働時間
法定労働時間は「週40時間、1日8時間」と規定されており、雇用保険に加入する条件である「所定労働時間が1週間に20時間以上」を満たします。パートやアルバイトでも所定労働時間が週20時間以上なら、雇用保険の加入対象者として検討されなければなりません。
③学生ではない
原則、学生は雇用保険に加入できません。しかし例外のケースでは雇用保険の加入が検討されます。
たとえば、「卒業見込証明書を持っており、卒業前に就職して卒業後も同じ事業主のもとで勤務することが予定され、一般労働者と同じように勤務する」といった場合です。
企業から内定をもらって、そのまま卒業前から内定先で勤務を始めるような場合、対象になる可能性があります。また通信教育・夜間・定時制の学生も、雇用保険加入の対象者になるのです。