KPI管理は、人材マネジメントや採用活動において有効な手段です。KPIでプロセスを管理すると、的確な人員配置や人事評価、採用活動などが実現できます。
人事業務にてKPIを設定する場合、どのような指標を選択すればよいのでしょうか。KPIの意味や役割と共に、人事に関連する指標例をいくつか紹介します。
目次
1.KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)とは?
KPIとは目標達成までの業務プロセスの達成度を数値的に把握し、評価するための重要な指標のこと。適切なKPIを設定することで組織の目的が明確になります。
さらにデータを分析して適宜改善を重ねていけば、目標達成率も高まるでしょう。人事評価や採用活動においてもKPI管理は有効で、個人や組織のパフォーマンスを測るのに役立ちます。
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ビジネスにおいて指標を設定する意味
人事や施策の評価には公平性と透明性が求められます。また適正な評価は、社員の納得感や組織への貢献度(エンゲージメント)を高めるのです。
そうした的確な評価をする上で重視されるのは指標の設定です。指標とは「定めた目標値までの達成度や実行度を測る判断基準(ものさし)」のこと。
目標値や指標を数値で設定・管理すれば、それぞれの進捗状況を客観的に把握できるでしょう。また過去の実績などと比較して適正な評価を行いやすくなるのも利点です。
2.KPIにおける指標の主な分類と具体例
KPIは「成果KPI」と「プロセスKPI」の2つに分かれます。
- 成果KPI:組織の最終目標を定量的に評価するための指標で、KGIとも呼ばれる
- プロセスKPI:成果KPIを達成するためのプロセスを定量的に計測するための指標
効率的な組織運営のためにも、各KPIが持つ役割を正しく理解して、適切に設定・管理しましょう。
①成果KPI
成果KPIは、組織やプロジェクトの最終目標を示す指標で、KGI(Key Goal Indicators/重要目標達成指標)とも呼ばれます。目標値を数値で設定して、目指す成果(ゴール)を明確にするという役割を持つのです。
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②プロセスKPI
プロセスKPIは、各業務プロセスの達成度や実行度を測定するための指標で最終目標を達成するための中間目標として使われるのです。ピラミッド型の組織階層において、いくつかのプロセスKPIは1つ下の階層の成果KPIにもなり得ます。
3.人材育成に関するKPIの設定例
人材は大切な経営資源のひとつ。組織の利益を最大化するには、ニーズに合わせて人材を育成し、適材適所でその能力を最大限に活かすことが求められます。そんな人材育成を戦略的に行うには、KPIの設定と管理が重要です。
KPIには、たとえば教育プログラムの受講率や満足度、資格取得数などを設定して、育成の成果を測ります。人材投資に対するコスト面に注目したり、会社の業績向上や成果に貢献できているか否かを分析したりすることも重要です。
- スキル保有人材数・増加率・増加数
- 1人当たり研修時間
- 1人当たり研修コスト
- 研修満足度
- 研修受講比率
- 育成プラン達成度
スキル保有人材数・保有率・増加率・増加数
特定のスキルやノウハウを保有する人材がどれくらいいるか、全体に対してどれくらいの割合で保有しているか、前期間に比べて(前月比・前年比・前四半期比など)どれくらい増えたか
1人当たり研修受講時間
社員1人当たり、どれくらいの研修時間を費やしたか。研修時間の総数÷社員数
1人当たり研修コスト
社員1人当たり、どれくらいの研修費用を費やしたか。研修費用の総数÷社員数
研修(その他育成施策)に対する満足度
研修やその他の人材育成施策に対する社員の満足度。受講後のアンケートなどで収集
研修受講比率
研修対象者のうち、研修を実際に受講した人数の割合
育成プラン達成度
個人(または特定グループ)の育成プランが、実際にどの程度実行されたかの達成度
4.人員配置に関するKPIの設定例
人員配置に関して注意すべき点は、なるべくミスマッチを起こさないこと。KPIには、必要スキルとのマッチング度、配属に対する満足度、目標達成度などを設定し、ミスマッチが大きい場合は育成や採用方法を見直しましょう。
- 目標の達成度
- 配置に関する満足度(本人・部門長)
- 部署別残業時間
- 部署別有給消化率
目標の達成度
各社員の目標の達成度を、業務とスキルのマッチ度合いとして判断
配置に関する満足度(本人・部門長)
部署に配置された社員、その社員の配属先の部門長、それぞれに満足度をヒアリング
部署別残業時間
部署ごとに残業時間を比較し、他部署や同業界他社と比較してどうかを確認。多すぎる場合は人員不足や配置のミスマッチが懸念される
部署別有給消化率
部署ごとに有給休暇の消化率を比較し、他部署や同業界他社と比較してどうかを確認。消化率が低すぎる場合は人員不足や配置のミスマッチが懸念される
5.労働生産性に関するKPIの設定例
労働生産性とは「1人当たりが生み出す成果」のことで、産出量(成果)を労働量で割ると算出されます。労働生産性を高めるには、人件費や労働時間など労働量に当たるものをKPIに設定・管理して、社員のスキルアップや業務の効率化を図ることが必要です。
- 単位産出あたり人件費
- 1人あたり産出量
- 間接人件費比率
- 間接部門人員数・比率
労働生産性とは? 計算式・高める方法をわかりやすく解説
企業の利益を左右する労働生産性は、経営者にとって看過できない重要課題です。日本の労働生産性は先進国の中でも低いほうにあり、国家規模で問題視されています。
そもそも労働生産性とは何なのか、その内容や計算...
単位産出あたり人件費
売上や製品生産量、顧客数など事業に応じた設定指標をもとに、1単位あたりの人件費を測定
1人あたり産出量
人員1人あたりの産出量を測定
間接人件費比率
間接部門の人件費の比率、全体の人件費における割合
間接部門人員数・比率
間接部門の人員数、全体の人員数における割合
6.採用に関するKPIの設定例
採用に関するKPIには、応募者数や採用人数の達成度、内定率、採用コストなどを設定します。また採用の質を見るために、入社後の人事評価や配属先の満足度などを測ることも重要です。これらを把握すると、次回以降の採用方針に活用できます。
- 応募者数
- 採用人員数達成度
- 内定者の辞退者数
- 1人あたり採用コスト
- 入社配属後一定期間経過後の人事評価結果
- 入社配属後一定期間経過後の本人の満足度
- 採用人員の質に対する事業部・部門の満足度調査
- 採用後平均在職期間
応募者数
人員の募集に対してどの程度の応募があったかを人員数・割合で測定
採用人員数達成度
採用人員数の目標の達成度を測定
内定者の辞退者数
内定を出した人材で、入社を辞退した人員の数を測定
1人あたり採用コスト
人員1人を採用するにあたってかかったコストを算定
入社配属後一定期間経過後の人事評価結果
採用した人員の、配属後一定期間(3カ月、半年、1年など)が経過後の人事評価結果を測定
入社配属後一定期間経過後の本人の満足度
採用した人員の、配属後一定期間(3カ月、半年、1年など)が経過後の本人の満足度を測定
採用人員の質に対する事業部・部門の満足度調査
採用した人員の、配属後一定期間(3カ月、半年、1年など)が経過後の配属先(部門長など)の満足度を測定
採用後平均在職期間
採用した人員の在職期間の平均を測定
7.人材活用に関するKPIの設定例
競争力を高めるには多様な人材の活用が欠かせません。中途採用者や非正規社員、外国人などの活用状況を指標化して、人材活用度を測定しましょう。また昇進や昇格など運用傾向をチェックして、人材マネジメントに活かすことも重要です。
- 中途採用社員比率(/新卒採用社員比率)
- 中途採用者管理職比率
- 女性社員比率
- 女性管理職比率
- 非正規社員比率
- 人材活用に関する従業員満足度
中途採用社員比率(/新卒採用社員比率)
全体の従業員のうち、中途採用の社員がどの程度いるのか(または新卒採用の社員がどの程度いるのか)の比率。
中途採用者管理職比率
管理職のうち、中途採用の社員がどの程度いるのかの比率
女性社員比率
全体の従業員のうち、女性社員がどの程度いるのかの比率
女性管理職比率
管理職のうち、女性社員がどの程度いるのかの比率
非正規社員比率
全体の従業員のうち、非正規社員がどの程度いるのかの比率
人材活用に関する従業員満足度
人材の活用に関して(施策や配置など)従業員がどの程度満足しているかアンケート等で測定
8.管理職の育成に関するKPIの設定例
健全な組織運営に関わるのは管理職の資質。期待される責任や役割も大きいため、多角的な評価が重要です。KPIには、業務達成度や人材育成に関するものなど、マネジメント能力の向上に必要な指標を設定しましょう。
- 管理職に対する人事評価の結果
- 部下からの評価(満足度)
- 自己評価と他者評価の乖離
- 人材育成に関する満足度
- 業務目標の達成度
- 部下の目標の達成度
管理職に対する人事評価の結果
(管理職の上司からの)人事評価の結果を測定
部下からの評価(満足度)
管理職の部下からの評価や満足度を測定
自己評価と他者評価の乖離
管理職者の自己評価と、上司や部下の評価との乖離を測定
業務目標の達成度
管理職者本人の業務目標の達成度を測定
部下の目標の達成度
管理職者の部下の業務目標の達成度を測定
人材育成に関する満足度
人材育成に関する施策(研修など)や結果についての満足度をアンケートなどで測定
9.リーダーの育成に関するKPIの設定例
組織を継続的に活性化するには、幹部候補や次世代リーダーの育成が重要です。リーダーとしての資質を測る指標や業務の達成度、教育研修に関する指標などをKPIに設定して、多面的に評価、育成していくことが求められます。
- 幹部候補者に求められる資質の保有率
- 幹部候補者の人数
- 幹部候補者の人事評価の結果
- 幹部候補者の退職率
- 幹部候補者に対する経営幹部の満足度
- 幹部候補者の業務目標の達成度
- 幹部候補者の研修実施時間合計
- 幹部候補者ひとり当たりの教育コスト
幹部候補者に求められる資質の保有率
幹部候補として、保有が必須の(もしくは推奨される)スキルや知識を有してる人員の割合
幹部候補者の人数
幹部候補者が何人いるか
幹部候補者の人事評価の結果
幹部候補者の人事評価の結果を測定
幹部候補者に対する経営幹部の満足度
幹部候補者の人員についての満足度をアンケートなどで測定
幹部候補者の業務目標の達成度
幹部候補者の業務目標の達成度を測定
幹部候補者の研修実施時間合計
幹部候補者に研修を合計で何時間行ったかを測定
幹部候補者ひとり当たりの教育コスト
幹部候補者ひとり当たりに研修等のコストをいくら費やしたか
幹部候補者の退職率
幹部候補者がどれくらいの割合で退職しているかを測定