KPT法とは、仕事を「Keep(継続)」「Problem(問題)」「Try(挑戦)」3つの観点から振り返るフレームワークです。メリット、欠点、進め方などを詳しく解説します。
目次
1.KPT法とは?
KPT法とは、行動や結果を「Keep(継続)」「Problem(問題)」「Try(挑戦)」の3つの観点から整理して、プロジェクトや活動を振り返るフレームワークのこと。
物事の「良かった点(Keep)」と「悪かった点(Problem)」を洗い出し、「改善策(Try)」を見出すという簡潔な方法であるため、ビジネスのさまざまなシーンで活用されています。
KPT法の読み方
KPTの読み方は、「ケーピーティー」または「ケプト」です。「Keep」「Problem」「Try」の3つの頭文字をつなげて「KPT」と略されます。
KPT法を用いる目的
KPT法は、チーム全体でプロジェクトの課題や解決策を共有し、次にやるべき具体的な行動を明確化するために用いられます。シンプルな構造なので、個人の活動から複数の職種をまたいだ大きなプロジェクトまで、さまざまなシーンで活用できるのが特徴です。
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2.KPT法の具体例
KPT法は、プロジェクトの振り返りだけでなく、研修やキャリアカウンセリング、定期報告などに取り入れられています。「Keep(継続)」「Problem(問題点)」「Try(挑戦)」の記述内容について具体例を解説しましょう。
Keep
Keepには「良かった点」および「継続するべき取り組み」を書き出します。具体的な数字や要因などを含めると効果的です。
- リスティング広告からのアクセスが2倍に増え、新製品の売り上げが目標の150%を達成した
- チーム全体で作業手順を共有するアプリを使用した結果、1日の作業量が120%増加した
- クライアントから急な依頼変更があったものの、チーム全員が1時間以内に内容を共有できたため当日中に対応できた
Problem
Problemには「現状の問題」や「今後発生する可能性がある問題」を書き出します。
- 展示会のために用意したサンプル商品の数が少なく、来場者の20%にしか配れなかった
- 残業時間が長い人と短い人の差が大きく、トータルで8時間あった
- クチコミサイトへの投稿が前月から15%減少しており、SNSからの商品購入も減少する可能性がある
Try
Tryでは、Keepをさらに向上させる取組みとProblemを改善する方法を検討し、アイデアを書き出すのです。
たとえばKeepに「チームで作業手順を共有した結果、一日の作業量が増加した」、Problemに「それぞれのメンバーの残業時間の差が激しい」が出た場合、Tryは「各チームメンバーの進捗状況がわかるシステムを導入する」といった内容になるでしょう。
3.KPT法のメリット
KPT法はシンプルな構造であるため汎用性が高く、さまざまな場面で有用です。ここではビジネスにKPTを取り入れる5つのメリットを解説します。
- 課題の早期発見と解決
- 効果的な意見交換の実現
- 組織のアップデート
- やることの可視化
- ポジティブな振り返りと反省
①課題の早期発見と解決
チームでKPTを実施すると問題点が明確になり、解決策の検討が進みます。全員が共有し、次に取るべき行動が明確になるため、早期に課題を発見し、解決に向けたアクションを実行できるからです。
進捗や成果を共有し、フィードバックを受けるサイクルを繰り返すと、より効果的な問題解決と改善が可能となります。
②効果的な意見交換の実現
KPT法では全員が活動内容を振り返り、自身の意見や気づきを共有するため、チーム内のコミュニケーションが活性化し、効果的に意見が交換されます。メンバー全員が意見を出し合えば、新しい視点で解決策を見出せるかもしれません。
③組織のアップデート
KPTを短いスパンで定期的に実施すると、組織をアップデートできます。定期的にKPTを実施すると「活動の振り返り」「改善策の検討」「改善策の実行」が習慣化し、組織やチームの改善と成長を促進するからです。
④やることの可視化
KPTを活用すれば、次の行動(Try)の根拠となる良かった点(Keep)や問題点(Problem)をメンバー全員が共有できます。次にやるべきことが「見える化」するため、メンバー全員の目的意識やモチベーションが向上しやすいのです。
⑤ポジティブな振り返りと反省
KPT法ではTryで問題の解決策を前向きに検討し、決定した行動をチーム一丸となって実行するため、振り返りや反省もポジティブに行われます。そのためKPT法を習慣化させると、問題解決に対するメンバーの意欲を高められるのです。
4.KPT法の欠点
KPT法を活用する際は、注意点も知っておく必要があります。ここでは実施する際の欠点を3つ紹介しましょう。
- Keepの軽視
- 振り返りと問題解決の混同
- 継続的な実施が必要
①Keepの軽視
Problemで抽出した問題にばかり注目しすぎて、Keepで洗い出した「継続するべき好ましいこと」が軽視される場合もあります。問題点にフォーカスしすぎるとポジティブな振り返りができず、チームのモチベーションが低下するかもしれません。
②振り返りと問題解決の混同
KPT法ではProblem(問題点)を洗い出すため、ついそのままTry(挑戦)へ移行してしまうのも少なくありません。この場合、ほかのProblem(問題点)が見落とされる恐れがあります。
またKPT法ではKeep(継続)を維持あるいは向上させることも重視するため、よかった点も忘れずに挙げましょう。
③継続的な実施が必要
KPT法による振り返りは、単発で行っても効果が期待できません。「前回のTryで決めた行動を実行し、その結果をKPTで検証してさらに次の行動を決める」というサイクルを継続的に行うことで精度が上がり、解決策の効果を高めていくからです。
振り返りを定着させるためにも、定期的に継続して実施する必要があります。
5.KPT法の進め方
適切なKPT法の進め方は、組織の形態や人数などに応じて変わります。ここでは基本的な進め方を解説しましょう。
また次のようなディスカッションルールも同時に決めておくと、議論がスムーズに進められます。
- 個人の責任を追及しない
- 振り返りの際に言い訳をしない
- メンバーの発言はさえぎらず最後まで聞く
すべてを書き終えたら、付箋の内容を検討し「よかったこと」「継続するべきこと」はKeepに、「現状の問題点」「今後問題になりそうなこと」はProblemに振りわけ、フォーマットに貼っていきます。
Keepは「よかった」で終わるのではなく「なぜよかったのか」「どこがよかったのか」を考え、Problemでは個人の責任を追及するのではなく冷静に原因を分析しましょう。
貼り出した付箋の数が多い場合は、最初に内容を整理して優先順位をつけてディスカッションの時間配分を決めると、効率的に進められます。
「誰がいつまでに何を担当するのか、どのような手順やリソースが必要なのか」などの点をできるだけ具体的に示し、達成値は数字で設定するといった、客観的に評価できる内容にするのがポイントです。
また次回の振り返りで結果を検証しやすいように、決定に至った経緯を明確にしておきましょう。
前回作成したシートを再利用して、効果があった施策や新たな問題点を書きくわえ、必要ないものは削除するといったように、内容をブラッシュアップしましょう。
Tryを実行しながら、各自が「うまくできた点」「うまくいかない点」を記録し、全員で共有しておくと次の振り返りをスムーズに行えます。
6.KPT法実践のポイント
KPT法を効果的に実践する際のポイントは5つです。それぞれについて詳しく説明しましょう。
- 意見しやすい環境の整備
- ファシリテーターの設置
- KPTの定期的な実践
- テーマ範囲の限定
- 過去に実践したKPTの整理
①意見しやすい環境の整備
階級に関係なくメンバー全員が自由に意見を述べられる雰囲気づくりが大切です。次のようなディスカッション時のルールをあらかじめ決めておくとよいでしょう。
- 発言は最後まで聞く
- 発言に対して批判しない
それでも意見が出にくい場合は、進行役が質問を投げかけるなどの工夫も必要です。
②ファシリテーターの設置
KPT法のディスカッションでは、ファシリテーターを設置しましょう。ファシリテーターとは、会議で参加者の発言を平等に引き出し、議論を活性化させて適切な結論に導く「調整役」のことです。
ファシリテーターが、「適切なTryを導き出すために内容の優先度に応じて時間配分する」「意見が出にくい場合に質問を投げかけて議論を活性化させる」などのサポートを行ってくれます。
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③KPTの定期的な実践
KPT法の振り返りは、継続して実践することで効果を発揮するため、定期的に実施すべきです。一連の業務プロセスとしてチーム内に浸透させましょう。活動に連続性が生まれて、各メンバーが成長を実感しやすくなります。
「プロジェクトの終了時」や「月末の〇曜日」など、実施するタイミングを具体的に設定するとよいでしょう。
④テーマ範囲の限定
KPT法の振り返りを効果的に行うコツは、テーマを限定すること。振り返りの項目が多すぎると、論点が定まらず有意義な意見交換が難しくなるからです。
「今月の業務」などの漠然としたテーマではなく、「広告の効果」「新しく導入したシステム」「新商品の売上」など具体的に設定します。
設定したテーマはあらかじめ参加者全員に共有し、各自の考えをまとめておくよう伝えておくと、議論を効率よく進められるでしょう。
⑤過去に実践したKPTの整理
これまで実施した内容を確認できるように整理しておくと、振り返りを効率よく行えます。過去の問題や改善方法は、新しいアクションを決める際の参考になるからです。
過去のKPT法での振り返りを文書化しておけば、新しいメンバーがくわわった際、経緯を共有する資料としても役立ちます。
7.KPT法のテンプレート
シンプルな構造のKPT法に、テンプレートは必要ありません。ホワイトボードと付箋、人数分のペンがあれば実施できます。会議室などに集まり、対面でKPT法での振り返りを行うと、チームのコミュニケーションや議論がより活性化するでしょう。
全員集まるのが難しい場合、オンラインで同時にアクセスできるドキュメントやスプレッドシートに、箇条書きで書き出すだけでも実践できます。できるだけ簡単な方法を選ぶと、短いサイクルで振り返りを実施しやすくなります。
8.KPT法で役立つツール
実施したKPT法の振り返りを記録に残したい場合や、オンラインで実施したい場合にはITツールの活用がオススメです。ここでは便利なツールを3つご紹介します。
Trello
掲示板形式でかんたんにチームのタスクを管理できる無料のツールです。個々のタスクをカード形式で登録し「Board(ボード)」と呼ばれる場所で管理するシンプルな構造なので、活動のプロセスや結果を振り返るのに適しています。
ラジログ
「振り返り」に特化した個人日報用のITツールです。連携したアクションログを確認すれば、その日の作業内容がわかる仕組みになっています。テンプレートにはKPT形式も用意されており、毎日の振り返りに便利です。
KPTon
オンライン上でホワイトボードを共有し、メンバー同士が意見交換できるツールです。過去のホワイトボードを残して確認するのも可能なため、KPT法の振り返りに適しています。無料で利用できるので、費用を抑えたいときにもオススメです。