休憩とは?【トラブルにならないために知っておくこと】

休憩とは、仕事や運動などを行っている途中に少しのあいだ休むことです。ここでは、法律で定められている休憩時間や休憩に関するトラブル、休憩に関する疑問などについて解説します。

1.休憩とは?

休憩時間とは、労働者が労働を中断して、自由に休息する権利が保障されている時間のこと。目的は、労働の途中に少しの休息を挟んで心身の疲れを癒すことです。つまり休憩時間は、労働者が労働から離れることを保障された時間といえます。

休憩が必要なワケ

休憩の目的は、継続した労働による肉体的・精神的疲労を、労働の中断によって回復させること。休憩をはさむことで、作業能率の向上と、労働者の健康な生活の確保を目指します。

継続した労働は、労働者の健康を損なう恐れも高いです。また精神的、肉体的に疲労が蓄積された状態は、作業能率の低下や労働災害の発生を招く危険もあります。

同時に休憩には、「労働者にとって生活の場でもある職場において、社会的・文化的な生活を保障する」といった意味もあるのです。

普段何気なく取得している「休憩」には、肉体的・精神的な疲労を回復させ、作業能率の向上や健康的な生活の確保を目指す、といった目的があります

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2.法律で定められている休憩時間

休憩時間についてさらに詳しく見ていきましょう。休憩時間にはどのような決まりがあるのでしょうか。ここでは休憩時間の原則や付与する際の注意点、雇用形態による違いや休憩を与えるタイミングなどについて解説します。

休憩時間の原則

労働基準法34条にて、休憩時間は「一日の労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えなければならない」と定められています。労働時間に対する休憩時間の長さは、以下のとおりです。

  • 6時間以内の場合:基本的には「不要」
  • 6時間以上8時間以内の場合:最低45分
  • 8時間以上の場合:最低1時間

休憩時間は労働時間の途中で与えられる

労働基準法34条1項では、休憩は「労働時間の途中に与えるもの」と定められています。詳しくは後述しますが、「休憩はいらないので早く帰りたい」という労働者の要望を、会社は基本的に受け入れられません。

労働時間の途中であれば、休憩時間を与える時間帯は自由です。一般的には昼食のための時間と位置付ける場合が多く、労働時間とは明確に区別されます。

一斉付与の原則

休憩時間の付与には「一斉付与の原則」という決まりがあります。労働基準法第34条2項において「休憩時間は一斉に与えなければならない」と規定されており、一般的に休憩時間を一斉に付与する範囲は、作業場単位でなく事業場単位と解されるのです。

しかし一斉付与の原則には例外があります。一部の業種(運輸交通業や商業、接客娯楽業など)と労使協定がある場合、休憩を一斉に付与する必要はなく、交代制で付与できるのです。

自由利用の原則

休憩時間の付与には、「自由利用の原則」という規定もあります。労働基準法第34条3項では、「使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない」と明記されているため、基本的に従業員は休憩時間を自由に利用できるのです。

一斉付与の原則と同じく、休憩時間自由原則にも例外があります(労働基準法施行規則第33条)。警察官や常勤の消防団員、児童と起居をともにする乳児院や児童養護施設に勤務する職員などは、自由利用原則の例外に当たるのです。

何をやってもよいわけではない

前項において、休憩時間は自由に利用させなければならないと規定されていますが、言葉通り何をやってもよい時間というわけではないのです。休憩時間はあくまで、始業から終業までの拘束時間の一部で、休憩時間終了後は労働に復帰しなくてはなりません。

休憩時間中の行動について、休憩の目的に損なわない限り、規律保持上必要な制限を加えることは差し支えない(昭和22年9月13日基発第17号)と規定されているのはそのためです。

手待時間は休憩時間ではない

電話番や来客受付対応、積込係が貨物自動車の到着を待っている時間などのいわゆる手待時間は、休憩時間ではなく労働時間になります。

来客がなかったり片手間に新聞や雑誌を見ていたりしても、この時間は労働時間とみなされ、賃金の支払い義務が生じるのです。会社の指揮命令から完全に解放されていない時間は勤務時間に含まれるため、会社は別途休憩時間を与える必要があります。

パートやアルバイトでも原則は変わらない

休憩時間は雇用形態の違いに関わらず、すべての労働者に付与されます。同じ8時間勤務の従業員に対して、正社員には1時間の休憩を与えるが、アルバイトには休憩を与えない、という状況は労働基準法の違反に当たります。

休憩時間は一定の条件を満たした正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト、パート、すべての労働者に平等に与えられます。

休憩時間は労働時間ではないため、従業員を会社の管理下に置けません。賃金は労働の対価として支払われるものなので、労働時間ではない休憩時間に対して賃金は支払われないのです

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3.休憩時間にかかわるトラブル

業務形態によっては、不当な休憩時間がトラブルの原因となるケースも少なくありません。ここでは休憩に関して起きる可能性の高いトラブルをいくつか紹介します。従業員の休憩中に何となく任せている業務が労働になっていないか、一緒に見直してみましょう。

休憩時間中に対応せざるを得ない

休憩時間に関わるトラブルで特に多いのが、従業員が休憩時間中に対応せざるを得ないケースです。これは比較的従業員数が少ない会社に見られます。

一般的に、電話をかけてきた相手にとって、電話を受ける側の休憩時間は関係ありません。お昼休憩の間も電話に出なくてはいけない、来客があれば対応しなければならない、といった会社も存在するのではないでしょうか。

前述のとおり、休憩時間は労働者が労働を中断して、自由に休息する権利が保障されている時間のこと。結果的に電話や来客がなかったとしても、その時間は労働時間となるのです。

手待時間を休憩時間と見なされる

手待時間とは、会社から働けと命令を下されれば、ただちに業務に就けるよう待機している時間のこと。実際に業務をしていなくても、対応すべき事態が起きたらすぐに動かなければならないため、完全に休憩できる時間とはいえません。

「電話が鳴ったら食事中でも出なければならない」「電波の届かないところに行ってはいけない」などの制約も手待時間と見なされ、労働基準法上の休憩時間に該当しない可能性があります。

夜間などの1人勤務で休憩が取れない

夜間のアルバイトなどで店舗に一人きりになり、休憩を取りたくても取れない状況も、休憩時間に関するトラブルの原因となります。

勤務時間が6時間を超え、休憩を取らなければいけないものの、ほかの従業員がいないため休憩を取れない、休憩中でも深夜の来客に対応しなければならない、これらのケースも休憩時間とは見なされません。

「ランチミーティング」も食事を取りながら業務に就いている時間と考えられるため、休憩時間ではなく労働時間とみなされる可能性があります

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4.休憩時間に関するトラブルを解決するために

残念ながら、休憩時間が原因のトラブルは後を絶ちません。労働者に適切な休憩を与えなかった場合、会社は労働基準法違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑となるのです。

ここでは休憩時間に関するトラブルを招かないために知っておきたい、予防策や改善方法を見ていきましょう。

休憩時間は働かないことを伝えておく

社長や上司の休憩に対する認識が甘い場合、休憩時間が労働者の正当な権利であることを伝えましょう。休憩時間は上場企業や大企業だけに与えられるものではありません。個人事務所や従業員の少ない会社でも同様です。

手待時間は、休憩時間ではなく労働時間として数えられる時間となります。会社側の認識が甘い場合は、従業員のほうから「休憩時間は働かない」「休憩時間を自由に使わせてほしい」旨を伝えましょう。

賃金交渉をする

繰り返しますが、休憩時間になんらかの労働を余儀なくされた場合、休憩時間ではなく労働時間になります。机や電話のそばから離れられないため、結果として来客や電話がなかったとしても労働時間と見なされるのです。

休憩と労働の境目が明確に設けられない業務の賃金計算が、時間計算を基礎としている場合、損のない計算方法に変更してもらうよう交渉してみましょう。

労働基準監督署に相談する

上記のような予防策を講じても事態が改善されず、会社全体として休憩時間の捉え方がおかしいと感じたら、思い切って労働基準監督署に相談してみましょう。休憩時間だけでなく、有給休暇や休日、時間外労働に関する認識が甘い会社という可能性も高いです。

労働基準監督署への相談は、匿名でもできます。また正式な申告だけでなく相談だけでも受け付けているのです。休憩か労働かの判断が難しく、法定の休憩時間が取れているか迷った場合は一度監督官に相談してみるとよいでしょう。

弁護士に相談する

相談先に迷ったら、労働問題に詳しい弁護士に相談する方法を視野に入れましょう。

なかには同じ条件で働いているにもかかわらず、自分のみが休憩を与えられていないという嫌がらせを含んだケースもあり、損害賠償請求ができる可能性も考えられます。法律の専門家である弁護士への相談も、改善方法のひとつとして考慮しておきましょう。

休憩の取得は労働者に与えられた権利です。本来取得できるはずの休憩時間が適切に取得できない場合は、一人で悩まずに相談してみましょう

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5.休憩時間と休息時間の違い

休憩時間とよく似た言葉に「休息時間」があります。混同されがちな言葉ですが、2つの言葉の意味は大きく異なるのです。休憩と休息は何が違い、どのように使い分ければよいのでしょう。

ここでは休息時間そして休憩時間と休息時間の違いについて解説します。

休息とは

休息とは、仕事や運動などをやめて心身を休めること。「しばらく休息をとる」「休息日を設ける」というように、ゆったりとした気分でくつろぐ際に「休息」という言葉が使われます。

休憩と休息、どちらも労働を中断して行う疲労回復ですが、休息には人間性の回復や個人の能力開発、文化社会的活動の実現やコミュニケーション活動といった意味も含まれているのです。

休息は法律で定まっているわけではない

休憩時間と休息時間の大きな違いは、労働基準法で定められているかいないかという点にあります。

  • 休憩時間:労働者に与えられた権利で、労働基準法において明確に定められている
  • 休息時間:法令上の定めはない

休息時間はかつて公務員の間で利用されていましたが、さまざまな不備があり、現在は廃止に向けて動いている自治体もあるのです。

給与に関して

休憩時間と休息時間には、法令上の定めだけでなく給与に関する違いもあります。休憩と休息を労働者側で区別することは難しいため、判断に迷った場合は上司や人事担当者に確認しましょう。ここでは休憩時間と休息時間の違いを給与面から比較します。

休憩時間中の給与

そもそも、給与は労働の対価として支払われるものです。会社の監督下にあっても、基本的に休憩時間に労働は発生しません。そのため労働から解放される休憩時間に給与を支払う義務はないのです。

しかしこれまで述べたとおり、休憩時間でも従業員が自由に時間を使えず、数十秒であっても労働が発生した場合は労働時間と見なされます。会社はその時間に対する賃金を支払わなければなりません。

休息時間中の給与

一方、休息時間はどうでしょうか。休息時間とは、仕事の効率化をはかるため、数時間おきに15分程度与えられる時間のこと。休憩時間と違い、手待時間のような位置付けとなるため、休息時間には給与が発生します。

深夜の勤務では、仮眠を取る場合があります。この仮眠に使った時間が休憩となるか休息となるかは会社によって規定が異なるため、あらかじめ確認しておくと安心でしょう。

休憩時間と休息時間はよく似た言葉ですが、法令上の定めや給与などさまざまな点で違いがあります。トラブルにつながらないよう、前もって確認しておきましょう

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6.休憩時間の原則に当てはまらない特殊なケース

すべての労働者の権利として定められている休憩時間ですが、基本原則にあてはまらない特殊なケースもあるのです。依頼された荷物を目的地に届ける配送業者には、休憩時間の原則の例外が認められています。

具体的に何が違うのか、トラックドライバーの休憩時間はどのように定められているのか、見ていきましょう。

運送業者の休憩時間

トラックドライバーに代表される運送業者は、長距離運転や短納期の要請といった運送業独自の特性から、一般労働者とは異なる休憩時間が設けられています。運送業では、始業から終業までの拘束時間のうち、労働時間以外の仮眠時間を含む時間を休憩時間と定義付けているのです。

一斉付与の原則は除外される

前述のとおり、休憩時間の付与には休憩時間を一斉に与えなければならない「一斉付与の原則」があります。しかし運送業については、この原則が排除されているのです。つまり運送業には、事業場全体で「何時から何時までが休憩時間」といった規定がありません。

ほかにも商業や保健衛生業、官公署などが一斉付与の適応外となります(業種によっては労使協定締結の必要あり)。

荷待ち時間は休憩時間にはならない

運送業では、積み下ろしの順番待ちや指定時間待ちなど多少の「荷待ち時間」が発生します。運送業における労働基準法違反のなかで多いのが、この荷待ち時間によるトラブルです。

労働基準法において、荷待ち時間は労働時間に含まれると規定されています。そのため荷待ち時間を労働時間に含めず休憩時間として扱っている場合、労働基準法違反になる場合があるのです。

運送業には休息時間が定まっている

トラックドライバーは、原則として勤務と次の勤務のあいだに継続した8時間以上の休息を取らなければなりません。この時間を「休息時間(休息期間)」といいます。

運送業における休息時間は、睡眠時間を含めてまったく自由な時間のこと。またこの休息時間は移動中ではなく、運転手の住所地で行うことが推奨されています。

休息時間の特例

拘束時間に含まれない休息時間には特例もあります。一回の休息時間が継続した4時間に満たない場合、その時間は休息時間として認められず「休憩時間」と見なされます。

また1台のトラックに2人以上が乗り、車両内に体を伸ばして休息できる設備がある場合も特例となるのです。原則、継続した8時間以上が必要な休息時間を、継続4時間まで短縮できます。

疲労による交通事故や災害を発生させないよう、運送業には独自の規定があります。2018年、厚生労働省は運送業のうち8割もの事業所に休憩時間を含む労働基準法の違反があったと発表しました。行政処分になった場合、最悪営業停止になる危険もありますので、必ず確認しておきましょう

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7.休憩時間に関するよくある疑問

休憩時間中に仕事を頼まれた場合はどうなるのか、休憩時間を短縮して早く帰ることはできるのか、タバコやトイレは休憩に含まれるのかなど、休憩時間に関する疑問は尽きません。ここでは特に多い2つの疑問について解説します。

休憩時間を短縮して早く帰ることは可能か

拘束時間は午前9時から午後5時までで午後0時から1時までが休憩時間、とされているケースを例に考えてみましょう。

この場合、労働時間が6時間を超えているため最低でも45分の休憩時間が必要です。しかし従業員から「休憩はいらないのでその分早く帰りたい」と申し出がありました。さて会社は、その要望を受け入れられるのでしょうか。

正解は「NO」です。法律で定められている以上、その要望は受け入れられません。これは休憩時間が労働で疲労した心身を回復し、休憩後の労働に備えるために設けられた時間だからです。

一見、会社にとっては不利益のないように見えますが、6時間を超えた労働は労働基準法違反になる恐れがあります。

タバコやトイレ休憩が多い社員への対処法

休憩時間に関するトラブルのひとつに、タバコやトイレ休憩の多さがあります。「喫煙者はタバコを吸うあいだ休めるのに、タバコを吸わない非喫煙者はその時間がないから不公平だ」という声があがってきた場合、どう対処すればよいでしょうか。

解決方法のひとつに、喫煙の有無にかかわらず一斉休憩を設けるものがあります。1~3時間に5分程度の休憩を挟めば、仕事の効率アップにもつながるでしょう。

またタバコやトイレ休憩の多さを理由に減給することはできません。しかし不適切な休憩であると証明できれば、人事評価や賞与を下げる理由にできます。

従業員に適切な休憩時間を与えることは会社の義務です。労働基準法を正しく理解し、必要に応じて規定を変更するなどの対策を講じていきましょう