えるぼしとは、女性の活躍を後押しする企業を認定する制度のことです。ここではえるぼしの認定基準や申請方法、えるぼし認定を受けるメリットなどについて解説します。
目次
1.えるぼしとは?
えるぼしとは、女性の能力が発揮できる環境を醸成した企業に「えるぼしマーク」を付与する制度のこと。このマークには社会でより多くの女性が星のように輝けるよう「エール」を、という願いが込められています。
女性の活躍推進状況が優良な企業に与えられる「えるぼし」の「える」には、Lady(女性)やLabour(労働)、Lead(手本)などさまざまな意味が込められているのです。
厚生労働省が定める一定の基準を満たして獲得した「えるぼしマーク」は自社のホームページや製品、求人広告などに掲載できます。
2.えるぼし認定制度とは?
一般事業主行動計画の策定および届出を行った企業のなかで、特に女性の活躍推進に関する取り組みが優良であるとみなされた企業に与えられる認定制度のこと。
2016年に施行された「女性活躍推進法」という法律にもとづいており、厚生労働省が定める一定の基準を満たした企業に「えるぼし認定マーク」が発行されます。
2020年2月の時点でおよそ1,000社が、えるぼし認定を受けているのです(厚生労働省えるぼし認定企業一覧より)。
女性活躍推進法とは?
女性の個性や能力が十分発揮できる社会を実現する目的で施行された法律のこと。この法律では、企業の行動計画に以下の内容を盛り込むことが求められています。
- 自社の女性活躍に関する情報の公開
- 女性採用比率や勤続年数男女差など、自社の女性活躍に関する状況の把握と課題の分析
- 状況および課題をふまえた行動計画の策定
女性活躍推進法とは? 改正内容や企業の義務をわかりやすく
女性活躍推進法は、働く女性の活躍を後押しする法律として2015年(平成27年)8月28日に国会で成立しました。2019年(令和元年)5月29日に改正法が成立し、同年6月9日に公布され、2022年4月1...
3.えるぼしとくるみん
「えるぼし」と似た認定制度に「くるみん」があります。「えるぼし」と「くるみん」の違いについて説明しましょう。
くるみんとは?
仕事と子育ての両立を支援する取り組みを実施している企業を、厚生労働省が「子育てサポート企業」として認める制度のこと。
「次世代育成支援対策推進法」にもとづいた本制度は、制度の導入や利用によって「くるみん」と「プラチナくるみん」の二段階にわかれます。
2019年5月末時点での厚生労働省の資料によれば、くるみんマークの認定企業は3,104社、プラチナくるみんマーク認定企業は289社にのぼるそうです。
次世代育成支援対策推進法とは?
急速な少子化が進む日本にて、子どもたちが健やかに生まれ、育成される環境の整備を推進する目的で制定されました。
常時雇用する社員が101名以上の企業は、社員の仕事と子育てに関する「一般事業主行動計画」を策定・提出しなければなりません(社員が100人以下の場合は努力義務)。
えるぼしとくるみんとの違い
どちらも女性の活躍推進を図る企業を厚生労働省が認定する点では同じです。しかしもとになる法律や認定基準が異なります。
- えるぼし:女性が働きやすく能力を発揮しやすい環境を整えている企業が対象
- くるみん:出産や育児の支援体制、子育てをサポートする体制を整えている企業が対象
4.えるぼしの認定基準
「えるぼし」の認定を受けるためには、5つの基準を満たす必要があります。それぞれについて解説しましょう。
- 採用
- 継続就業
- 労働時間
- 管理職比率
- 多様なキャリアコース
①採用
「えるぼし」認定基準は、採用に関して以下いずれかの条件を満たしていること。
- 男女別の採用競争倍率が同程度である(競争倍率=応募者数÷採用者数)
- 女性正社員の割合が産業ごとの平均値以上、および女性正社員の基幹的雇用管理区分における割合が産業ごとの平均値以上(正社員に雇用管理区分を設定していない場合、女性正社員の割合が産業ごとの平均値以上という項目にのみ該当すれば問題ありません)
②継続就業
「えるぼし」の認定には、継続就業に関する基準が2つあります。企業は直近の事業年度にて、以下いずれかを満たしていなければなりません。
- 雇用管理区分ごとの「女性社員の平均継続勤務年数」÷「男性社員の平均継続勤務年数」が、それぞれ7割以上である
- 雇用管理区分ごとの「10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された女性社員の継続雇用割合」÷「10事業年度前およびその前後に採用された男性社員の継続雇用割合」がそれぞれ8割以上である
③労働時間
認定には、労働時間の基準も定められています。直近事業年度の各月で、雇用管理区分ごとの社員の法定時間外労働、および法定休日労働時間の合計平均がすべて45時間未満でなくてはなりません。
ここでいう「雇用管理区分」とは社員の職種や雇用形態、就業形態などの区分で、それぞれ異なる雇用管理を行うために認定されている区分のことです。
④管理職比率
女性の管理職比率の基準もあります。企業の管理職における男女比率は、以下のいずれかを満たしていなければなりません。
- 直近の事業年度にて、管理職に占める女性の割合が産業ごとの平均値以上である
- 直近3事業年度の平均した「課長級より1つ下位の職階にある女性社員のうち課長級に昇進した女性社員の割合」÷「課長級より1つ下位の職階にある男性社員のうち課長級に昇進した男性社員の割合」が8割以上である
⑤多様なキャリアコース
多彩なキャリアコースに関する項目もあります。直近の3事業年度にて、大企業は以下の2項目以上、中小企業は1項目以上の実績を有する必要があるのです。
- 女性の非正規社員を正社員に転換した
- 女性社員のキャリアアップにつながる雇用管理区分の転換をした
- 過去に在籍した女性を正社員として再雇用した
- おおむね30歳以上の女性を正社員として採用した
5.えるぼしのグレード
「えるぼし」は、認定基準に応じて3つのグレードに分類されます。認定マークにあたる星の数で分類される、えるぼしのグレードについて説明しましょう。
- えるぼし1段階目
- えるぼし2段階目
- えるぼし3段階目
①えるぼし1段階目
先に述べた5つの認定基準のうち、ひとつまたはふたつの基準を満たしている企業は、えるぼしの1段階目に分類されます。なお満たした基準の実績は「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表しなければなりません。
また基準を満たしていない項目は、事業主行動計画策定指針に定められた取組の中から関連するものを実施し、実施状況を「女性の活躍推進企業データベース」に公表。さらに2年以上連続して実績を改善する必要があります。
②えるぼし2段階目
5つの認定基準のうち3つまたは4つの項目を満たすと、えるぼしの2段階目に分類されます。こちらも満たした基準の実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表しなければなりません。
基準を満たしていない項目についても第1段階と同様です。事業主行動計画策定指針に定められた取組から関連するものを実施して、実施状況を「女性の活躍推進企業データベース」に公表。さらに2年以上連続して実績を改善していることが条件です。
③えるぼし3段階目
採用や管理職比率、労働時間など5つの基準をすべて満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表している企業は、えるぼしの3段階目に分類されるのです。
事業主行動計画策定指針に沿った一般事業主行動計画の策定と公表、および社員への周知が適切に行われており、女性活躍推進法や関連法令への重大な違反がないことを証明するグレードとなります。
6.プラチナえるぼし認定とは?
プラチナえるぼしとは、3段階のグレードに分類されたえるぼし認定企業のなかでも、より高い水準の要件を満たした企業が受けられる認定のこと。
より具体的かつ実践的な取り組みが求められる「プラチナえるぼし」に認定された企業は、真の女性活躍推進ロールモデルといえるでしょう。令和2年9月末時点では、3社が「プラチナえるぼし」の認定を受けています。
プラチナえるぼし認定の認定基準
「プラチナえるぼし」の認定を受けるためには、前述した「えるぼし認定(3段階のうちいずれか)」を受けている点にくわえて、以下の要件を満たす必要があります。
- 採用:えるぼし認定と同じ
- 継続就業:「女性社員の平均継続勤務年数」÷「男性社員の平均継続勤務年数」が7割以上、あるいは「女性社員の継続雇用割合」÷「男性社員の継続雇用割合」が9割以上
- 労働時間:えるぼし認定と同じ
- 管理職比率:管理職に占める女性社員の割合が平均値の1.5倍
- 多様なキャリアコース:えるぼし認定と同じ
7.えるぼし認定の申請方法
えるぼしとプラチナえるぼしの基準項目を満たしたら、申請して厚生労働大臣から認定を受けます。えるぼし認定の申請方法について説明しましょう。
- 採用した社員に占める女性社員の割合
- 管理職に占める女性社員の割合
- 各月の法定時間外労働と法定休日労働総時間数の合計平均
- 男女の平均継続勤務年数の差異
- 計画期間:2~5年に区切って定期的に改定する
- 目標設定:数値目標をひとつ以上定める
- 取組内容:数値目標の達成に向けてどのような取り組みを行うか検討する
- 取組の実施時期
厚生労働省は「一般事業主行動計画策定・変更届」の参考様式を公開しています。しかし必要事項が記載されていればほか書式を使っても問題ありません。なお届出先は会社所在地の管轄労働局です。
- 女性社員の職業生活に関する機会の提供(採用した社員に占める女性社員の割合、男女別の職種または雇用形態の転換実績など)
- 職業生活と家庭生活の両立に関する環境の整備(男女の平均継続勤務年数の差異、有給休暇取得率など)
- 認定を受けたあと、公表された実績が基準に適合しなくなった
- 2年間にわたって認定取得時以降の公表を怠った
- 女性活躍推進法および女性活躍推進法にもとづく命令に違反した
8.えるぼし認定を受けるメリット
えるぼし認定を取得すると、企業はどのようなメリットを受けられるのでしょうか。ここでは企業がえるぼし認定を受けるメリットについて説明します。
- 優遇措置の対象になる
- 企業イメージの向上
①優遇措置の対象になる
日本政策金融公庫が実施している「企業活力強化貸付」では、一定の要件を満たしたえるぼし認定企業に低利融資を行っています。またえるぼし認定はワークライフバランスの推進を評価する項目に該当。そのため公共調達の際、加点評価されるのです。
②企業イメージの向上
えるぼし認定を受けた企業は、広告や自社製品、採用活動などで認定マークを使えます。これにより女性活躍推進企業であるとPRできるのです。
また厚生労働省のサイトにも「えるぼし認定企業」として掲載されます。人材の確保や企業イメージの向上につながるでしょう。
9.えるぼし認定を受けた企業
具体的にどのような企業がえるぼし認定を受け、自社女性の活躍推進をアピールしているのでしょうか。ここでは実際にえるぼし認定を受けた企業の実例を紹介します。
- イオン
- シーボン
①イオン
2016年、イオンは「えるぼし」の最高位にあたる3段階目と「プラチナくるみん」の2つを取得。
もともと2013年に「くるみん」認定を取得していました。しかしその後、男性社員の育児休業取得促進や事業所内保育施設の設置、育児補助金制度の実施などが評価されて「プラチナくるみん」の認定を受けたのです。
また同社は2017年に日経WOMANと日経ウーマノミクスプロジェクトが調査した「女性が活躍する会社Best100 2017」にて「女性活躍推進度第1位」に輝いています。
②シーボン
化粧品メーカーのシーボンは2017年に「えるぼし」の最高位認定を取得。女性社員の比率が9割以上を占める同社では結婚や出産、育児や介護などあらゆるライフステージをサポートできるような社内制度を推進してきました。
育児休業期間の延長や再入社制度、配偶者出産休暇などさまざまな制度を整えて、女性の活躍を推進している企業です。